珠洲たの通信・2023年7月号

2023年度

 7月のサークルの様子を紹介したいのですが,月日は過ぎ,今日は8月末日。今日の天気の予想最高気温は36度なんて出ていて,いったいどうなっているのやら。梅雨が明けてからというもの,とても暑い日が続いた夏でしたね。
 一方,現場は,相変わらず,学力学力! 全校で形式統一! という意見ばかりが幅をきかせていて,自分らしさを出そうにもなかなかできなくて過ごしにくそうな世界ですが,そのあたりは,上手に渡り歩いて欲しいな…と,外野から見ています。

例会の参加者   N.T  W.T  S.Mi  S.Ma  O.M

今月の写真(詳細は下の記事を読んでね)

今月の資料

1 「1学期を乗りきった!」 B5 4ぺ  S.Mi
話題1 所見欄
 ベテランの教師に対して,小さいことにこだわる小さい管理職がいるらしい。「通知表に書くのは所見であって所感ではないので…」という管理職からのご意見。ならば…ということで,『広辞苑・第七版』を開いてみると…

所見…①見たところのもの。見た事柄。観察・診断などの結果。四河入海「此二句は水閣より―の景ぞ」。「医師の―」
②考え。意見。「―の一端を述べる」

所感…①〔仏〕善悪の行為によってひきおこされる果報。覚海法橋法語「この業力―の故に」
②心に感ずるところ。感想。「年頭の―」

 確かに単語が違うので,そのままその単語を入れ替えるわけにはいかないようだ。「所見の一端を述べる」とは言うが「年頭の所見」とは言わない。「医師の所見」は聞きたいけど「医師の所感」では変な気もする。が,しかし,所見には「①見たところのもの。見た事柄。観察・診断などの結果」だけではなく,「②考え,意見」という意味もある。そして,この通知表の所見欄というのは,「見たところのもの」だけではなく,それに対する「教師の考え,意見」も書くところではないのか。某管理職は,「教師の考えや意見は,面談の時に言えばよろしいのです」と言っているらしい。では,「所見欄」にはどんなことを書くのか。「いつもまじめに掃除をしています」「とても凝った作品を仕上げました」という部分から,教師の考え(や感想)を取り去ると「いつも掃除をしています」「作品を仕上げました」となって,全員,同じ文章になってしまう。これでは,結局,Sさんが言うように,そもそも所見欄など必要ない。
 そもそも,通知表自体にあまり意味を見いだしていないわたしなので,こういう話題に付き合うのは苦手。それよりも,子どもや保護者には別の評価きじゅん(規準・基準)の存在を伝えてあげたいと思ってきた。それが,授業記録や授業感想文の紹介なんだよなあ。
 ま,現場では,些細なことに変にこだわる大人もいるので,そんなことへの対応にはあまり力を使わずに過ごしていきたいものです。
話題2 退学宣言少年との1学期
 わずか7才にして,周りの同級生から「サトル(もちろん匿名),おわっとるよな」と言われる男子・サトル。わがまま且つ自分が気に食わないと友だちに迷惑になることを敢えてする。今年4月,そんなサトルと出会ったSさんが,1学期の間,どのようにサトルと付き合ってきたのか,そしてその結果,今,サトルはどんな状態なのか。今後の見通しは…。そんなことをまとめて語ってくれました。
 サトルの詳しい事実関係は省きますが,Sさん曰く…「サトルの行動は3歩進んで2.9歩下がるみたいな感じですが,進んでいることは確かです」。
 夏休みを挟んでの新学期がはじまります。数歩,下がっていないことを祈るばかりです。
話題3 『たのしい水泳授業のへそ』の効果
 学校では,一斉に水泳指導が始まりました。その指導を端から見ていたSさん。1,3年生は,峯岸さんの『たのしい水泳授業のへそ』の指導法に則って教えられた子どもたち。一方,2年生は,普通の水泳授業。その違いは歴然だったそうです。学年差よりも指導法の差の比重が大きい。これは仮説実験授業でも同じ。
 この事実から学べることは,「子どもたちが,ついついやってみたくなる授業内容と授業方法をしっかり学んでいきたいな」ということです。

2 学級だより「どきん」(2号分) A4 2ぺ  S.Mi
 大きな字で書かれた通信。漢字を使っていますが,しっかりふりがながふられています。だから,子どもも読めます。取り上げられている内容は,授業中のことから日常的な出来事までさまざま。
 この学級だよりが〈本物〉なのは,毎日教室掃除に来てくれている6年生が,教室に掲示してある学級だよりを読んで「先生のどきん,おもしろい!」と言ってくれたというエピソードからもわかります。
 学級通信にまで検閲が入る現場が多くなってきて,わたしは心配してます。学級通信ぐらいは,担任の責任で発行したいものです。「学校から家庭に渡る文章は全て公文書だ」だなんて,なんと管理的なのでしょう。事なかれ主義からは,新しいこと(創造的な仕事)は生まれません!
「何かあったら俺が責任取るから,お前たち,自由にやれ!」
って,言ってくれる管理職,いなくなりましたねえ。さびしい限りです。

3 「たのしい授業メニューの整理と追加」  A4 3ぺ W.T
話題1 転任1年目の1学期
 今年4月,初めての異動を体験しての気持ちを伝えてくれました。
自分に期待しすぎず,「自分が元気なことが仕事では一番大切だ」と,なんとか乗り切るためにハードルを低くして臨んだことが幸いしてか,なんとかここまできました。
とWさん。さらに,
自分に甘いっていう人も絶対にいると思うけど,まずはこれでいいって思っています。
とも。そうですよね。「お前,そりゃあ,自分に甘過ぎだろう」という人には言わせておけばいいんです。教師は,自分を甘やかしながら,ゆとりをもって子どもたちと向きあう。そんな余裕の中から,子どもの変化に気づいたり,新しい知識を獲得していく。あれもこれも,いっぱいいっぱい,の中では,新しいことを考える余裕もありませんからね。
話題2 たのしい授業メニューを増やす
 これまで『たのしい授業』を初めとする教育雑誌や研究会などで開発された「たのしい授業」のタネや実を,少しずつ自分のものにしていっているというお話です。教科書を少し離れれば,本当に,たくさんの「たのしい授業を保障する教育内容と方法」が整理されて残っていますからね。
 この1学期には,前校でもやってきた「おりぞめ」「マッキーノ」社会科プラン〈日本の食糧自給率〉〈日本の水産業〉たのしい水泳指導,そして各種ものづくりを実践してきたそうです。さらに,今回初めて取り組んだのが,授業書《食べ物とウンコ》算数プラン〈小数倍〉社会「沖縄のくらし」追試です。
 うれしかったのは…手前味噌ですが…わたしが以前指導プランを作った〈沖縄〉の追試をしてくれたことです。仮説実験授業のミニ授業書にも〈沖縄〉というのがありますが,わたしのやったのは,教科書からあまり離れずに沖縄の特徴を感じて欲しいというようなものです。このサイトに掲載してある資料を見ただけで実践できたのですから,載せておく価値はあったというものです。Wさん,ありがとう(^O^)
その効果(引用者註:事前に日本の気候の特徴を地形との関係から押さえておくこと)は,沖縄のくらしの授業1時間目から見られました。沖縄の水事情を地形の事を思い出して予想する子がいたことです。このことが後の琉球石灰岩の話にもつながっていき,全6時間の大満足の学習となりました。(Wさんの資料より)
 また,授業参観で「消えたパンダ金魚」という短編推理小説を扱った授業を行ったそうです。参考にしたのは『どんどん読んで書きたくなる国語』(たのしい授業・2015年11月臨時増刊号,仮説社)に掲載されていた実践〈「消えたパンダ金魚」で推理の授業〉です。子どもたちだけではなく,保護者からもいい反応をもらえたようで何よりですね。なお『消えたパンダ金魚』は,杉山亮編著『朝の連続小説』(仮説社,2003)に掲載されています。上掲の2枚目の写真は,その授業で配布したプリントです。
 一方,そんなWさんにも悩みはあります。それが複式で行う算数です。「わたり・ずらし」という複式指導でよく聞く言葉のとおりには,なかなか行きません。そりゃそうですよね。これは,試行錯誤というか,予想を持って進んでいくしかないでしょう。一番簡単なのは,前時の復習問題(答え合わせも子どもたちで行う)から始める学年と,本時の課題から始める学年を設定することなのですが,それも,すぐに「宴たけなわ」となったりして,なかなか難しいですからね。
話題3 初めての生徒指導主事
 少人数の学校に勤務すると,若くてもあっという間に「主任職」が回ってきます。「自分の学級だけでも大変だと思っているのに,全校の事を考えろっていうのか!」という愚痴も吐きたくなります。
 校内だけだとはいえ,会を主催する側として「研修時間を守ること」を意識しているそうです。だらだらと続く会議は,やる気を奪いますからね。
 また,自分のクラスの中にも生徒指導的な問題を抱えていて,そちらのほうの対応にも苦慮しているようです。いずれにせよ,予想(いくつかの選択肢)を持って問いかける。ヤバそうな雰囲気に流れそうなら別の選択肢を試みる…それしかありません。そして,「自分が問いかけたこと」と「子どもたちの反応」をしっかり記録しておくことも大切です。その記録から,生徒指導対策としてのある一定の法則が見つかるかも知れませんからね。また,後日談を聞かせてください。
話題4 教えてもらう側に立って
 なんと,週一で金沢に通っているそうです。なんのために…「将棋」を学ぶために,です。すごいバイタリティーです。さらに,自動二輪の免許を取ろうと教習所にも通っているそうです。この前向きな態度は素敵です。以下,赤文字は,Wさんの言葉。
○将棋クラブでは…強くなるためには「素直さ」と「リスペクト」が必要です。
○教習所では…教えてもらう中で,「やって見せてもらえることでの納得感と安心感」と「うまくいかないことの楽しさ」の2つを感じています。
 いずれも,学校教育とは関係のない場所なのですが,Wさんは教える立場になって学んでいることを自分の教育実践に活かそうとしているようです。
この先意欲を折ってしまうくらいにできないと思うことがあるかはわかりませんが。どちらもこれからの自分の授業に活かしていける視点かなあと思います。

4 「喃々レポ・2023年7月号」 A5 8ぺ  O.M 
話題1 評価について考える
 通知表の季節だということで,評価についてまとめてみました。
 Sさんのレポートにもありましたが,どうも最近の学校現場では,「評価には教師の主観が入ってはいけない。客観的な事実のみで成績をつけるべきだ」というような風潮があります。わたしは,これはこれでいいと思っているんですが…もう少し話を聞いていくと,当の本人は自分の主張とは逆に「それこそ,あなたの主観じゃないですか?」みたいな判断で平気で成績をつけている人もいるのではないかと思うのです。「ノートのきれいさ」「授業で発表した回数」などを教科の評価に入れるって人が多かったりするんですが,それを評価に入れること自体があなたの主観じゃないですかって思うんです。それならば,業者テストの点数のみで評点をつけた方が,よほど,平等のような気がします。教師の主観は入っていないから。
 おっと,わたしの思いを書いているとレポートそのものになってしまうので,気になる人は,このページを見てください。
話題2 日本人の自然観
 これは寺田寅彦の同名の随筆を読んでまとめたものです。ほとんど引用文ですが(^^;) これも,わたしの個人的なページに掲載したので,興味のある方は,こちらでお読みください

今月話題になった本

仮説社で販売

 ほかにも「授業構想シート」(Sさん),「テンセグリティを作ろう」+制作用紙(Nさん,写真まん中)の紹介などもありました。さっそく,Sさんが家で作った作品写真がメッセンジャーで送られてきました(左写真)。

第2部 喫茶店で

 いつもの喫茶店へ行くと,なにやら机の上には宴会?の準備が…。そのうち,続々,田舎の男たちがやって来てビールを飲み始めていました。ま,地元なので,ほとんど私の知っている人たちですがね(^^;)
 でも,うちらは気にせずに隅っこの方で,夏休みに向けてのいろんな話題を交流していました。がしかし,残念ながら,準備をしていた「最新版・百均モータで作る綿あめ製造機」(写真4・5枚目)の実演ができませんでした。次回,必ずやりたいので,よろしくです!
 なお,この綿あめ製造機についても,百均からふさわしい部品を物色して制作し,さっそくやってみたメンバーがいて,実演写真を送ってくれました(左写真)。ますます,やってみたいです。

 さて,この夏,全国大会へ行ってきた人。たのしい授業フェスティバルへ行ってきた人。いろいろです。どこにも出かけられなかったわたしは,次回のサークルでその報告が聞くのが楽しみです。

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