珠洲たの通信・2023年10月号

2023年度

 今月は,珍しい人が来てくださいました。古くからの仮説実験授業研究会の会員で,京都で勤められていた村西さんです。このたび,ふるさとの石川・金沢に帰郷することになったそうです。引越の荷ほどきも終えないまま,珠洲のサークルに顔を見せてくださいました。ありがとうございます。後日談,石川でも高校教師の登録をしたそうです。まだまだ現役で働こうという意欲,素晴らしいなあ。
 さて,珠洲全域で展開されていた奥能登国際芸術祭2023が終わりました。8月頃から何かとこのイベントに関わってきていて,とくに開会してからは玄関前掃除などを日常的にやっていました。現在(2023/11/15)は,だ~れも利用していない保育所に戻って,静かなもんです。
 また,9月上旬から8年ぶりくらいに亀ヶ谷池の水を抜いていて,NPOおらっちゃとしても,その池の生きものの捕獲やら処分やらで,何度も亀ヶ谷に行きました。1m以上の泥がたまっていて,胴長を着ていても一歩しか足を踏み入れられない感じでした。とりあえず,洪水吐きのあたりの泥をほんの少しだけ除去して,今は,水を溜めはじめています。一応,土地改良区や池の管理組合との打ち合わせでは,来年からも水抜きを続けていこうという話になりました(2023/11/14)。
 わたしの近況は,こんな感じです。

例会の参加者   M.M(初) N.T  W.T  S.Mi  O.M  

今月の写真・本

今月の資料

1 「実験はまだまだつづく」 B5 3ぺ  S.Mi
 右膝を痛め,病院へ行ってきた帰り…というSさん。結局,11月上旬にちょっとだけ入院して簡単な手術をすることになったそうです。膝って,痛めると大変ですよね。階段を昇るのもしんどいですし。
 で,今回のレポートは,なんと,車を運転しながら自分の声を録音し,それを一太郎Padで文字化し,変換ミスなどを修正して持ってきたそうです。なんともすごい気合いじゃないですか。そして,こんなことができる時代になっているんだということに,改めてビックリです。
話題1 3日ももたなかった…
 話題の一つめは,サトシ(仮名)のこと。このところかなり安定してきたなと思って,「サトシの座席を一番前にしてみる」という実験をしたそうです。その結果は…。残念ながら時期尚早。まわりに迷惑をかけてしまうさとしに戻ったそうです。
今まで一番後ろの席だったから自分の気が乗らないと,ふらりと立ち上がってできた気分転換ができなくなったことも災いしたようです。つまり,その気分転換ができない分,それの代替行為として,二人にちょっかいを出すようになったのです。(レポより)
とSさん。さもありなん,ですね。
 わたしが感心したのは,この実験結果を見てサトシの座席を元に戻そうと判断した時のSさんの丁寧さです。わたしならば(凡人ならば)「やっぱり,前の座席だとダメだね。一番後ろの座席に戻ろう」と言ってしまいそうです。しかし,Sさんは,「何の説明もなくやってしまうと,彼との関係が崩れてしまうので,校長と相談して…」と周りに手を回し,サトシの了承を得て元に戻ったのでした。
この実験結果から見えたことは,彼の行動は,そう簡単には変えられないということでした(レポより)。
 相変わらず,授業にはほとんど参加しないくせに,休み時間にはみんなの中心となって(なろうとして)遊ぶサトシ。周りの子どもたちが成長するにつれて,サトシのわがままさが許せなくなってきているようです。それでも,これまでの関係を崩したくない子どもたちは,今のところサトシのわがままに付き合っているようですが…。こんなこと,最後まで続くわけがないですね。
 愛着不足っぽい性格が,サトシに友だちに対する迷惑な行動を取らせてしまうのでしょうが,彼も少しずつ成長しようとしていることは確か。長ーい目で見て,諦めずに付き合っていくしかなさそうです。
話題2 割れないシャボン玉 その後
 先月のサークルで紹介した割れないシャボン玉。そのシャボン玉の膜にするのにオーロラテープを準備するのが大変という話が出ました。それで,もっと幅の細いオーロラテープがないかと探し,見つけたそうです。ところが,今度は,そのオーロラテープは,丸まっている時の形状を記憶しているのか,回転したときにもそのねじれが出てきて,本物のシャボン玉のようなきれいな円形にならないんです(写真1枚目)。さて,どうする,Sさん。解決策として,「アイロンをかければいいのではないか」という意見がありました。どうだったでしょうかね。

2 サークル例会資料 A4 3ぺ  W.T
 指導主事訪問と他校との合同修学旅行(の幹事校)とがあって,バタバタした日だったようです。初めての学校は,1年たつまでそのリズムもよく掴めないまま過ぎていきますが,今回は,他校との修学旅行の計画などもあって,大変だったと思います。幹事校にはどんな準備が必要なのか,ちゃんとマニュアル化しておかないと,余計な負担がかかりますね。面倒でも,来年度のために,引き継ぎファイル一覧でも作ってあげてください。
話題1 女子3人のその後PART2~PRAT3
 なかなか仲よくなれない女子たち。そもそもびちゃびちゃと仲よくなる必要があるのかどうかも含めて考えていかないといけないのですが,高学年女子は,そうはなかなかならないんですよねえ。特に人数が少ないと大変だなあと思います。
 今月はこの3人の女子の関係よりも,もっと重いお話でした。ここには書けませんが,Wさんが子どもたちと日記を交換していることによって,早期に対応ができて,学校も協力して解決に向かっていったようです。
 今回の顛末を聞いて,子どもたちって本当にいろいろなことを抱えながら学校に来ているんだなあと思いました。本来なら,学校という社会で少し緊張しながら(自分というのを押さえながら)生活することでたまってくるストレスを,家庭でリセットする,そして,また,明日がんばろうと思う…のが,子どもたちの生活リズムの良循環だと思うのです。しかし,無条件に自分を包み込んでくれるハズの家庭で,リセットできない,エネルギーを充填できない,それどころかかえってストレスがたまる…という状況では,学校でも安定した生活ができないのも無理はありません。これは,先のサトシの例でも言えることです。
 ただ,家庭をしっかりさせるのは教師の役目じゃないので,わたしは「子どもたちを早く自立させないと…」と焦ったりしてしまっていました。でも,これもよくないことですね。実際のところは,ここぞと言う時には教師に甘えさせるしかないんですよね。そういう意味では,甘い教師,大いに結構。高学年になっても担任の教師のことを「お父さん」「お母さん」と間違えて呼ぶことのある子どもたち,可愛いね。
 がしかし,ここで危険なのが,「一部の子どもたちだけに甘えさせている」という風に見える教師の姿です。これでは,問題をこじらせてしまいます。
教師が相談に乗るというのはどういうことか
 今月話題になった一部の女子の話し相手になっている教師の例では,そういう危険性がありますね。ただ,職員室の対応も不思議で、ちょっと理解できない。
 話をしたくて寄ってくる子どもたちに対して「それは○○さんへの悪口だから言わないでと伝える」「愚痴をいうなららもうあなたとは話さないよと伝える」「どうしたらいいですか,っていう相談なら聞いてあげるよと伝える」というような分類をすることなんてできるのでしょうか? まだ発達途上の未熟な子どもたちが,こんな使い分けできるのでしょうか。わたしは,できないと思います。Wさんが,
私自身なんだか違和感があります。悪口と愚痴,そして相談とかの関係性がなんだかよく分からなくなっています。シンプルに考えたいのですが,どうしても自分の中でこんがらがってしまいます。(レポより)
と書いているのは当たり前だと思います。大人だって,相談しているつもりが単なる愚痴になっていたり,相手への悪口になっていたりすることはよくあることですから。だから,このような「使い分けを守りなさい」ということは,「あなたたちとはもう会話しませんよ」と言っているようなもんです。これは状態をより悪くしてしまいます。子どもたちのはけ口がなくなる分,ストレスはどこにも発散されませんからね。
 じゃあ,どうすればいいのか。それは,愚痴でも悪口でもいいから,子どもたちの主張をしっかり受け止めてあげる。ただし同意する必要は無い。そして「この件に対してどうして欲しいのか」を聞く。「話を聞いて欲しかっただけ」なのなら,それでいい。しかしそれが何度も続くようなら,「また同じ話をわたしにしてくるけど,そんなに気になるのなら解決策を考えた方がいいんじゃない」「あっちはどう思っているか聞いたことある?」とかなんとか少し助け船を出す。「聞けるわけないじゃん!」と言えば「じゃあ,先生の方から聞いてみようか」と。ま,それくらいじゃないかな。
6年理科「大地のつくり」
 「大地のつくり」の単元は,ついつい教科書中心の授業になってしまいがちなので…ということで,わたしが提案したいくつかのことをさっそく授業に取り入れてみたそうです。やはり,この行動力は半端ない。
・ある事務所へ電話をしてボーリングコアの貸し出しと地層見学会を設定
・カラーサンドを用いた堆積実験
・ペットボトルを使った実験(2日後にひっくり返してみることも実施)
・寒天地層のボーリング実験
「実験・活動多めでたのしくを特に意識しました」をWさん,ほんとすごい!
わたしでも,これを全てやった年はなかったんじゃないかなあ。
寒天地層ボーリング
 Wさんのレポートには,寒天地層ボーリングの授業をやってみて,「M(註:3人娘の一人)が『今日の理科はたのしい』と言ってくれたことと,Iが『こうやってボーリングってやってるんだ』としみじみつぶやいていたのを聞けただけで,やってよかったと大満足」という一文が書かれていました。子どもたちのつぶやきを拾い,自分が準備した授業に大満足する教師の姿。授業を評価するのは黒服集団などではなく,子どもたちですものね。この感覚だけは,失わないようにしたいものです。
 一方で,寒天地層ボーリング技術的な課題も残りました。一番の下の寒天がきれいに上がってきてくれないのです。わたしが,細いガラス管でやったときも同様でした。うまくボーリングするコツを知りたいですね。

3 「新しい管理教育…凡事徹底」 A5 10ぺ  尾形正宏
 数年前から市内のある中学校でよく聞くようになった言葉に「凡事徹底(ぼんじてってい)」という言葉があります。当時,わたしもその中学校区の小学校に在籍していたので,何度も何度も耳にしました。そのころから,この言葉に対してはなんとなく〈違和感〉があったのですが,今回,改めて自分の中の〈違和感〉について考え,整理してみました。
 なぜ,もう現役の教員でもない今になって,そんなことを考えてみたのか。それは,最近,この中学校(やその卒業生)で不登校生徒や不適応生徒(荒れる?)が多いらしいということを耳にしたからです。小学校から中学校へ子どもたちを送り出していた者として,「退職したからもう中学校でのことは知らない」とは言っておれないのではないか…という焦りもありました。
 レポートの流れだけ…
・ある焼き肉屋で
○「凡事徹底」について
○「凡事徹底」という言葉
○実際の「凡事徹底」の内容とは
○「凡事徹底」の問題点とは
○「凡事徹底」の先は,名を変えた管理教育

 詳しくは,レポートの方を読んでいただけるとうれしいです(まだアップしていません。そのうちアップします)。そして,ぜひ,このままの指導方針でいいのかどうか,当該学校現場の方々(PTAにも)に考えて欲しいと思います。このレポートは,それこそ近くの中学校の指導姿勢への批判になっているので,レポートには,わたしの名前を公表しておきます。もちろん,反論もお待ちしています。

4 宝立町(内浦側)にも揚げ浜塩田はあったの? A5 4ぺ  尾形正宏
 本文をまとめたのは,珠洲市のSDGs学習会での若い参加者(教員)の質問からでした。
 特に自分の住んでいる宝立町の歴史の本(写真2枚目),発行されている能登地方の写真集,ネットで見つけた揚げ浜式製塩のpamphlet(写真3枚目)を紐解きながら,短くまとめてきました。
 サークルの参加者からは「揚げ浜式製塩が縮小してきたのはなぜか」という質問も出たので,そのあたりのことをもって詳しく知りたいと思い,サークルの後,さらに調べ,題名を珠洲市全体に変更し,「珠洲の揚げ浜式製塩(プチ歴史)」というページにまとめてみました。
 このレポートは,地元の小学校高学年~中学生の授業用(調べ物用)としても利用できるのではないかと思っています。ぜひご利用をお願いします。これだけコンパクトにまとまったレポートはないのではないかと自負しております。
 これをまとめてからも,いくつかの新しい情報が見つかりました。それは,どこかで,また紹介することがあるかも知れません(内輪では,次回の例会で紹介します)。

5 喃々レポ2023年10月号 A5 2ぺ  O.M
 今月は他のレポートを勢いでまとめちゃったので,そのほかの話題は,「NPO法人のHPづくり」「奥能登国際芸術祭2023」の2つ。いずれも最近のわたしのやっていることを書いてきました。
 わたしは,学校での教師生活はキッパリと定年でやめたものの,いろいろと新しい世界で活動しています。1つはNPO。そして,近所の人たちとの親密なおつきあいです。いずれも,教えることよりも学ぶことの方が圧倒的に多い大人同士の世界で,この逆転現象が気持ちいいです。こういう生き方もある…ということで。

6 村西正良著『京都と出会う…もうひとつの別の京都ガイドブック』 A5 152ぺ  村西正良
 前書きにも書きましたが,京都の学校で40年近く勤めてこられた村西さんが地元に引越されました。そして珠洲のサークルにも顔を見せてくださいました。製本された立派なガリ本も持ってこられました(写真4枚目)。まだ,しっかりとは読んでいないのですが,まずは,御礼ということでここに記しておきます。
 わたしと村西さんとの出会いは,2009年5月末,平等院鳳凰堂の近くの会場で企画された「仮説実験授業入門講座 たたのしい〈社会の科学の授業〉への招待」の際に,お話ししたのが初めてです。もちろん,それまでもお顔などは存じていましたが,そのとき,はじめて村西さんが石川県出身であることを知りました。その講座では,村西さんが宇治茶を取り上げたプランを紹介してくれたことを覚えています。今,いただいた単行本を開いてみると,そのプランが〈日本茶とブランド〉というタイトルでまとめられています。40~41ページには,2009年のプランから本書に収録されるまでのいきさつが述べられていて,なかなか興味深いです。
 またじっくりと読んでみますね。というか,本来なら,みんなでプランを受けてみるのが一番なんですがね。

 ほかにも「理科学習指導案「流れる水のはたらき」(Nさん),資料「宝立の製塩」『宝立の今昔』より(紹介:O)などもありました。
 相変わらず,厳しい指導が入る労働現場。リタイアする人がいても,なかなか変わろうとしません。自由度のない,やらされるだけの労働は,ただただ生きる気力を奪うだけであることにどうしたら気付いてくれるのでしょうか?
 現場や世の中が変わってくれるのを待つより,逃げながら生きる方がいいね。ローリング・ストーンだ。アルマジロだ(「叫ぶ詩人の会」の歌が再生されます)

「アルマジロ」が収録されている、叫ぶ詩人の会のアルバム。

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