珠洲たの通信・2023年4月号

2023年度

 2023年5月5日,珠洲市でまさかの震度6強。わたしが以前勤務したことのある校区が大きな被害を受けました。これまでの生活が一変してしまった人も居るようで心配です。先日のマスコミ報道によると割れた瓦や大型の家財道具を廃棄しようという軽トラの列が100mも続いたとか…。
 一昨年から続いていた群発地震については,珠洲市当局も,研究者を交えてのシンポジウムを開催したりして,いろいろと心配はしてきました。そこでは「今後また地震が起こるとしても昨年6月の6弱レベルだろう」という判断が大勢を占めていた気がします。しかも,最近,「地震は収束に向かっていると思われる」という新聞記事が出ていた矢先でした。今回の地震の規模の大きさを考えると,新たに「地下の流体(これまで悪さをしてきたもの)が,活断層に作用したのではないか」という可能性も指摘されています。今後も研究者の研究結果を待つだけですが,住民としては少しでも減災に努めなければならないと思います。命は一つですから。
 さて,4月の例会では,新しい子どもたちとの出会いが紹介されました。異動した方はもちろんのこと,同じ学校であっても担当クラス(や校務分掌)が変わることで「よし! 新しいスタートだ!」という気分になるのが,教師稼業のいいところだと思います。

例会の参加者(5名)  W.T  N.T  S.Ma  S.Mi  O.M  お子さん1名

今月の写真

今月の資料

1 「異動」 A4 1ぺ  W.T
 正規採用になってから,初めて転勤を経験したWさん。新しい学校,新しい子どもたちとのわくわくな出会いを紹介してくれました。
 担当は5,6年生複式。はじめての複式です。仕事量も昨年の2倍くらいに感じるとか…。慣れるまでたいへんですね。でも,いつの間にか慣れちゃいますよ。力のぬき方入れ方が分かってきますから。
 前勤務校と比べ,新しい学校のいい部分は「自分で決められる」「学級で裁量がある」ということだそうです。実は現勤務校も,昨年度は,ドリルにしてもノートにしても,学校で統一して決めたものがあったらしいです(これは,わたしが最後に勤めた学校でも同じで,何でもかんでも決められていたことにビックリしたことを思い出します)。現場に若い者が増えてくると,「ドリルもノートの使い方も分からないだろうから,学校で統一して準備してあげよう」という「善意」が生まれてくるのでしょう。しかし,担任が教育活動で利用するノートやドリル類くらいは,担任で決めるべきでしょう。ベテランの人たちは,相談に乗ってあげればいいだけです。
 今年度の新メンバーで話し合った結果,自由に担任で選ぶことにしたそうです。Wさんは,しっかり精選できたようでなによりです。「時間はかかりましたが,色んな教材やテストを見て考えたことが自分のなかでプラスになってきているように思います」とWさん。急がば回れ,ですよね。
 また学級では,最初の1週間からたのしいネタを紹介しているようです。担任自己紹介クイズ,漢字マッキーノ,授業プラン〈見れども見えず〉,おり染め,モーニングクイズ,世界のさようなら,交換日記等々…。
 複式独自の授業形態などもあって,慣れるまでたいへんでしょうが,経験者に相談しながら,自分のリズムをつかんでいって欲しいと思います。

2 「立場」 B5 1ぺ  N.T
 3年連続の5年生担任となったNさん。昨年度よりも授業書をやっていきたいと思っているようです。Nさん自身は異動がなかったものの,勤務校では,今回の異動で職員室はますます若返ったようで,Nさんはいつのまにか中堅教職員になってしまっているとか。40代近くになっても一番下っ端だったわたしたちと比べて,今の学校はたいへんですね。こんな状況ですから〈教師の促成栽培〉に一生懸命となる教育委員会の気持ちも分からなくはないです。がしかし,そのためにかえって学校がブラックな職場となってしまい,教員が若者の敬遠する職業になってしまったのは皮肉としか言い様がありません。
 今年は,管理職も新しくなり,仮説実験授業もやりやすそうな気がする…とか。さっそく,《もしも原子が見えたなら》を始め,子どもたちからも大歓迎されたようです。
 さて,どんな1年になるのか。楽しみですねえ~。

3 「なんとなくのスタート」 B5 4ぺ  S.Mi
 「ひたすらに耐えて待って信じた1年」(Sさん曰く)だった昨年度。「そこそこの及第点」を自分に与えながらも脱力感に襲われるSさん。だから今年度は,気がつけばいつのまにか「なんとなくスタート」していたそうです(^_^)
 3月のサークルを欠席したSさん。まずは昨年度の卒業生に関する話題を話してくれました。
○〈一文字のキセキ〉の追試
 この短い授業プランを実施するのは初めて。主人公の浦上さんが口で文字を書いていることに感動している子どもたちの感想がたくさんあったようです。でも「あまり伝えたいことが分かりませんでした」という感想もあり,これはSさんも(プランを紹介してくれたNさんも)少なからず感じていたことでもあり,このプランを改良する必要もありそうです。一度,検討してみてもいいかもしれません。
○卒業しちゃった子どもたち
 久しぶりに6年を担任して迎えた卒業式。トモキ(仮名)との別れの場面を引用してみます。

良くも悪くもいろいろあった1年でした。その都度報告してきたので、改めて書くこともないのですね。 でもちょっとだけ自分のために書いておきます。優等生で,なんでもそつなくこなし, 《もし原》で「クソだった」とかいたトモキ(仮名)は、すごく柔らかくなって、素直な子になって卒業していきました。通知表を一人ずつに渡して,それぞれに声をかけたのですが,トモキには「トモキは変わったよね。 気持ちに余裕を持てるようになって柔らかくなったよ。」と話しました。すると、彼は「はい」って言って,ポトリと涙を落としました。この涙だけで十分でした。

 素敵な話ですね。「別れの前って感傷的になるもんだ…」という常識的判断以上に,素敵な師弟の交流です。今,Sさんの1年前の資料(6月例会)を読み返してみると,彼女が張り切って準備した授業を,完全否定の言葉で返しているトモキくんの姿に右往左往のSさんがいました。でもじっくり待つ。「ひたすらに耐えて待って信じた」からこそ,たどり着いたトモキの〈1つめのダンゴ〉のゴール地点だったんじゃないかな。Sさん,お疲れさまでした。トモキくんからいいプレゼントを貰いましたね,「教師冥利」というプレゼント。
 気合いを入れて作った「卒業文集」ももってきてくれました(上掲「今月の写真」1枚目,以下同じ)。これを見て,やっぱりこういう文集は製本されているものがいいなあと思いました(わたしは,いつからかCDに焼いたデジタルものを配布していましたので)。
○新しい1年始まる!
 今年度は2年生担任。クラスの第一印象は「個性的な子が多い」だそう。
 出会いは「曲がるスプーン」。2年生の反応は「先生って魔法使いや~」。いいですねえ,低学年は。
 「くるくるシャトル」も作ったそうです(『ものづくりハンドブック9』仮説社)。実際に,サークルでも作ってみました。簡単にできて,遊べるのがいいですね(写真2枚目)。
 そして,2週目には「おりぞめ」(写真3枚目)とそれを使った「たまモノ」(写真4枚目)づくり。「とにかくもめないように,すねないようにを心がけて」指導したそうです。たいへんですねえ,低学年は。「おりぞめ」をした用紙を使って「たまモノ」を作成。従来の「たまモノ」より少し小さめ(約70%)に作ったそうです。これを学級目標を書いた模造紙の周りに貼って掲示物の完成です。
 学級通信のタイトルは「どきん」。これはもちろん,谷川俊太郎さんの詩のタイトルから採りました。「1日に1回でいいから,楽しいことで『どきん』とできたらいいなと思います」とSさん。いいですね。おりぞめをやったときの「どきん」も持ってきてくれました。その通信から子どもたちをいくつか紹介します。
・いろがかわいかったです。いろがきりんのいろでかっこいかったです。
・いろをつけるのがたのしかったです。あしたのかんせいがたのしみです。
・そめるのがたのしいから,またやりたいです。

○つまらない1年も始まった
 何がつまらないか。それは,研究主任(の単なる思い込みだけ)の指導に付き合わざるを得ない状況が…です。Sさんの話を聞いていると,学力向上のための主任が謳う指導方法とは,ただただ多く問題をやらせる,なんども繰り返して練習させる…などという,ほとんど教師としての指導法の研究などをほっぽり投げたような,素人が考えるような指導を「徹底したい」というだけの方法です。こういう押しつけいっぱいの指導に対して,どうすれば担任の子どもたちや自分を守れるのか。これは,これからのSさんの力の見せ所ですね。やったふりして,やらない。たのしい方法に変換して,見た目,主任の好きそうな「学力」を上げる。全く無視して仲間を増やす。なんとでもできますよ。さあ,予想を立てて実験だ!

 番外編として,ある学校行事の失態の話もありました。管理職の仕事って,学級通信の誤字脱字の点検をすることではなく,もっと大切なことがあるんですよね。本末転倒になっているからこその,出来事なんだろうなと思います。

4 「喃々レポ・2023年4月号」 A5 4ぺ  O.M
 NHK朝ドラ「らんまん」が始まりました。1年前から始まるのをたのしみにしていました。そして,実際,毎朝,珈琲を飲みながら朝ドラを見るのがわたしの日課になっています。
 これをきっかけに,名前しか知らなかった牧野富太郎について自伝などを読んで調べてみました。そして富太郎の年図(個人の年譜のこと。何も出来事がなかった年もちゃんと空欄で示しておくところがミソ。板倉聖宣から学んだ)も書いてみました。こういうのを書きながら本を読むのは久しぶりで,けっこう自分でも「やった感」があります。
 最初にわたしがに読んだのは『牧野富太郎自叙伝』(青空文庫版)です。これを読んで,牧野富太郎の破天荒ぶりというか常識知らずというか…そういうものにビックリしました。そして,そうじゃないとこんな研究はできないのかも知れないなとも思いました。詳しくは,ご自分で読んでみることをお薦めします。青空文庫はネットで(しかも無料で)読めますので。ここからリンクを張っておきますね。
 新しい発見は,富太郎がことあるごとに俳句・短歌を作って残していることです。その作品は,わたしが読んでも「うまいなあ」とは思わないレベルの作品なんです。これはこれでとてもうれしい。「俳句や短歌はもっと気楽に詠んでいいのだよ」と,富太郎に背中を押されている気分になったからです。
 『自叙伝』と朝ドラとは,違う設定になっているものも多々あります。それを見つけるのも面白いです。
 続編(その後見つけた短歌や俳句)は,また,次回の例会で紹介していくつもりです。 

体験コーナー

「57577カード」(写真5枚目) 紹介 N.T

 5音と7音が書かれたカードをカードの山からめくり,それを並べて,5・7・5(俳句・川柳)あるいは5・7・5・7・7(短歌・狂歌)を作り,偶然できた作品をみんなで愛でて遊ぶというカードです。こうしてカードで遊んでいると,偶然できた作品なのに深ーい意味を感じたりして面白かったです。7・7・7・5の都々逸もできるかもしれませんね。もう少しじっくりやってみたかった。無理矢理できた作品の解釈を考えることで,ノーミソが動きます。

Twin Cube  紹介 S.Mi

 立方体のキューブ。
 パタンパタンと開いて行くと,あら不思議! 別の立方体に早変わり。もう一度立方体を開いて行くと…? 一つになったり二つになったり,絵柄がどんどん変わったりと,七変化する様子に目を奪われる不思議なキューブ。気がついたらず〜〜〜っと触ってしまうのでご注意を…。『たのしい授業』No.541 (「いたずら博士のオモチャ箱」)で紹介されました。(仮説社サイトより転載)
 けっこう夢中になりますよ。何種類かあるようです。商品は右の写真をクリック。仮説社サイトに飛びます。

「Twin Cube」の絵柄は何種類かあります。

 そのほかに,忍者文字一覧と「忍者文字学習帖」(O,伊賀観光のお土産:本ページのタイトル写真)もありました。
 前書きにも書いたように,5月5日に起きた地震は,わたしたちの生活を一変させました。地震と共に生きてく覚悟を持つ必要に迫られた気もします。学校現場ではどんな変化があったのか,なかったのか。そんなことも聞いてみたいです。減災への取り組みは,「学力向上」以上に必要なことだと思いますが,さて,現場はどうなのでしょうかね。

今月話題になった本・グッズ(amazon)

喫茶店で第2部
 わたしは途中,市民図書館へ行っていたので詳しくは分かりませんが,5月の連休中の旅行計画についての話があったようです。そして,実際にたのしんできたようです。その話は,5月の例会に聞けるだろうと期待しています。学んできたことを教えてくださいね~。

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