このページでは,小学3年生が「空と友だちの後ろ姿」というテーマで書いた絵のことについて紹介します。
以下の文章は,そのときに発行した「学級通信(2013.10.18発行)」の文章です(ここに転載するにあたり,ふりがなは省略してある)。保護者には「キミ子方式」のことも知らせたかったので,その解説も書いてあります。
以下,学級通信より。
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その日記より
ずこう F.T
きょう,1じかんめからずこうがありました。1じかんめと2じかんめと5じかんめがずこうでした。
かみのけと,みみと,ふくをえのぐでかくのが,むずかしかったです。でも,できました。とてもたのしかったとおもいます。じょうずにできたとおもいます。くろをつくるのがたいへんでした。
「昨日は,朝からずっと絵をかいていた」という感じでした。学校によっては「秋の写生大会」なんかがあって,1日中絵をかいたりしますが,何となくそんな感じでした。
なんで,そんなに急いで絵をかいたのかというと,「昨日の放課後〆切の作品展」に出品するためです。
うちのクラスの図工は,月曜日にありますが,2学(がつ)期(き)に入り,月曜日はよく休日になっていました。しかも,先に粘土の作品を作っていたために,絵に取りかかるのを後回しにしていました。さらに,この審査会の〆切を聞いたのがとても遅かったため,図工の時間を待つことができなかったのです。
「キミ子方式」という描き方
わたしが教師になってからこの間,図工では,ずっと「キミ子方式」というやり方で,絵の描き方を教えてきました。松本キミ子さんという方が考えた絵の描き方です。
キミ子方式の特徴
この方法の特徴的なのは,
・輪郭線をかかない(絵の対象が自然物の場合)
・となりとなりと描いていく
・3原色と白を使って色を作る
・画用紙の大きさも気にしない(構図をはじめから気にしない)
いうことです。
輪郭線をかかないという不安
下書きをしない(輪郭線をかかない)ために,けっこう不安になります。それだからこそ,「となりとなり…」とだんだんと絵を広げていって完成させるのです。3年生の子どもたちにとっては,ほとんどはじめての「絵の具との出会い」なので,わりとすんなりと「いきなり筆で描く」ということになれてくれます。しかし,高学年になってから,はじめてこの方式をとりいれると,「え~,いきなり筆で描き始(はじ)めるの~」とびっくりしたり,「下書きさせて~」と抵抗したりします。それでも,「そのとおりやった方がそれなりの絵が自分でも描ける」ということがわかると,ちゃんというとおりしてくれます。
また,いきなり筆を持って描く緊張感は,<自分が描こうとしている対象をしっかり見ること>にもつながります。
自分で色を作る
子どもたちは(大人たちでも)「自分で色を作る」ということも,なかなかできません。だから,まず「3原色と白だけで,さまざまな色ができる」ということを体験してもらいます(4月の最初にやっておく)が,だからといって,すぐに「この服の色」「あの木の色」なんて,作れるはずがありません。しかし,それが大切なんです。「この色でいいのか」「いや,あまりにていない」と試行錯誤する中で,知らず知らずのうちに<自分が描こうとしている対象をしっかり見ること>になります。それがたいせつなんですね。
髪の毛の色も自分で作る
今回の絵では,F.Tさんが日記で書いているように,「髪の毛」の色を作ってもらいました。3原色で黒を作るのもむずかしいですね。時間の関係で,今回は,少しだけ絵の具の黒色を入れた子どもたちもいましたが,それでも,ただの黒だけで描いた髪の毛とは違い,柔らかい感じの絵になったはずです。描いている時間よりも,色を作っている時間のほうが長いかも…というくらいの子もいました。
テーマは「空と友だちの後ろ姿」
今回のテーマは「空と友だちの後ろ姿」です。3年生でも,描くのにあまり時間がかからなくて,しかも1まいの作品がそれなりに見映えのする絵ということで選んでみました。
描く順序は次のとおり。
①空を描く(空の色を3原色と白で作り,どんどんうすくしていく)…1時間
これ,すぐできます。そして空らしくなります。この方法を覚えると,空を描くのが好きになります。空は「太筆」で描きます。
②友だちとペアになり,髪の毛を描く…2時間~3時間
髪の毛の描き方を、何種類か教えました。そのあと,クジで決めた友だちの後ろ姿を描いてもらいました。黒を作るのに四苦八苦していました。髪の毛は「細筆(0号)」で描きます。
③首・耳と服(ふく)を描く…1時間~2時間
髪の毛の絵の具が乾くのをまって,描きました。服はエンピツで下書きをしてから描きました。これは,「細筆」や「中筆」で描きます。
☆ 以上,学級通信終わり
追試をしてみたい方へ
この実践を追試してみたい方は,下記の雑誌・著作をご覧下さい。ただし『たのしい授業』のバックナンバーは手に入りにくいです。仮説社に連絡を取ってみるのが一番だと思います。空の描き方は『だれでも描けるキミ子方式』(仮説社,1994)に紹介されています。
いきなり,この教材に取り組むのはハードルが高すぎます。
キミ子方式による絵の指導は,まず「色づくり体験」から始めた方がいいでしょう。キミ子方式については,別に説明していますので,そちらをご覧下さい。
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