キミ子方式とは

キミ子方式とは

自由になるために絵を描く

 わたしが,先生と呼ばれるようになった1983年の初任の時から,図工の絵の時間に取り組んできたのが,松本キミ子さん発案の「キミ子方式」と呼ばれる絵を描く方法です。
 このキミ子方式で絵を描かせると,今まで「絵が苦手だ」と思っていた子も,楽しく描くことができるようになります。そのユニークな考え方は,「絵の描けない子」を自分の教師と考える中から生まれてきました。

松本キミ子さんは,2022年3月に亡くなられたそうです。まだ80歳でした。これまで指導していただいたことに感謝すると共に,ご冥福をお祈りします。合掌

キミ子方式のルールとは

①三原色(赤青黄)+白を使って色づくりをしながら描く。
 三原色さえあれば自分の色が作れます。「黄」のかわりに「やまぶき」を使います。モデルによっては「青」のかわりに「あいいろ」を使うこともあります。この4色と白で色づくりをしていきます。

②輪郭線は描かない。筆で直接画用紙に描いていく。
 キミ子方式では,下書きをしないで直接筆で描いていきます。
 モデルによって,描きはじめがあります。植物なら成長の順に,動物なら毛並みの方向に…などです。描きはじめを決めたら,あとは「となりとなり」と描いていきます。疲れてきたらそこで終わり。
 人工物によっては簡単に輪郭線を描くこともあります。

③画用紙の大きさにこだわらない
 1枚の画用紙に構図を決めて描くというのが今までの常識。ですから,「一番描きたいのを大きく描きましょう」なんて言われて書き直された人もいたのではないでしょうか。キミ子方式では,となりとなりと描いていくので,どこまで行くのかは分かりません。小さくまとまれば画用紙を切ればいいし,はみ出していけば画用紙を足せばいいだけ。あくまで「自由になるために描く」のです。人間中心の考え方です。

④いやになったらいつでもやめよう
 絵はイヤイヤ描くものではありません。嫌になったらいつでもやめましょう。途中でやめても立派な作品です。「イカの頭」「編みかけの毛糸の帽子」など,タイトルはなんとでもなります。これも「となりとなり」と部分を完成させながら進めるからできる方法です。 

入門は「色づくり→もやし→イカ→毛糸の帽子」の順で

<色づくり>
 三原色と白で色づくりをします。
 子どもたちは,自分で思っている以上にいろいろな色ができることに驚き,夢中になってつくります。
 できたら適当に画用紙を破いて,台紙に貼って掲示します。

<もやし>
 最初に描く作品が「もやし」です。なんでもやしなのか…それは植物の基本だからです。根っこがあって茎があって,葉っぱの赤ちゃんもあるし,豆もある。
 細筆でゆっくり描いてください。

<イカ>
 2つ目のモデルは「イカ」。
 もやしとは違って,太筆でべちょべちょにして描きます。
 子どもたちの場合,ドンドン大きくなって画用紙をつぎ足すことになります。
 ガムテープをあらかじめ切って用意しておきましょう。
 もやしと比べて大胆なので,このイカで活躍する子も出てきます。

<毛糸の帽子>
 次に描くのが「毛糸の帽子」です。帽子は何色かの毛糸が混じっている物がいいでしょう。人工物の代表として取り上げてあります。
 毛糸の帽子は中筆を使って,ふわっふわっと本当に帽子を編むように描いていきます。
 この毛糸の帽子の絵が好きだと言う人もいます。
 モデルにしやすい毛糸の帽子は「キミコ・プラン・ドゥ」でも扱っています。

<植物→動物→人工物>
 入門が終わったら,あとは,この繰り返し。少しずつ難しいモデルに挑戦していきます。

カット絵・彫塑も

 キミ子方式を応用すると「絵の具」を使った絵だけでなくて,ペンで描く「カット絵」や粘土による「彫塑」にも使えます。下記の参考書をご覧下さい。

キミ子方式に関する参考図書

絵の描き方について学びたい方

本ページの著作のリンクはAmazonになっていますが,ほとんどが古本です。
新しい本を購入したい方は,「キミ子方式公認HP」のショップからご注文下さい。

『三原色の絵の具箱・全3巻』(ほるぷ出版,1982)

が一番です。わたしも教師1年目にこの本を手に入れて,始めてキミ子方式を教えました。まだ自分はまったくキミ子方式の体験をしていなかったのに,ちゃんといい作品ができましたよ。
残念ながら今は古本屋でしか手に入らないようです。ネットの古本屋からでも探してみて下さい。

『ひろびろ三原色・全8巻』(ほるぷ出版,1986)

 1.もやし、イカ、毛糸の帽子 
 2.つくし、すみれ
 3.空、三輪車 
 4.タラ 
 5.ネギボウズ、タンポポ
 6.ネギ 
 7.桜と梅の木 
 8.なずな、さつまいも

『続・ひろびろ三原色・全8巻』(ほるぷ出版,1986)

『 ひろびろ三原色』の続編です。

 1.カボチャ 
 2.動物 
 3.やさい・くだものⅠ
 4.やさい・くだものⅡ
 5.人工物 
 6.葉っぱと野草
 7.りんご並木 
 8.絵日記

これらは,基礎から応用まで,幅広く網羅されているので,外の景色の写生にも威力を発揮します。
ただこれらは「分売不可」なので相当高価になります。
こちらも,古本屋やメルカリ,Amazonなどでは安くてに入る場合もあります。

『はがき絵の描き方』(日貿出版社,1988)

キミ子方式の絵も描いてみたいし,概略も知りたいという方にお薦めなのが,この本です。カットの描き方も出ています。

『カット・スケッチの描き方』(仮説社,1999)

カットスケッチの描き方に特化した本です。ここに出ている「落ち葉」や「ビスケット」「たわし」など,わたしでもうまく書けました。また小学生の子どもにも描いてもらいましたが,自分の絵に満足していましたよ。
これはとても重宝します。
これ1冊をクリアすると,もうあなたはカット画家です。

『ひろびろ三原色(彫塑編)・全3巻』(ほるぷ出版,1986)

これはキミ子方式を〈彫塑〉に応用したものです。
本物をさわる,「となりとなり」という原則を守れば,あら不思議,彫塑も怖くない。「うさぎ,にわとり,顔」の作り方が出ています。分売不可。Amazonでは古本しかないようです。

キミ子方式から見えること,エッセイなど

『絵のかけない子は私の教師』(仮説社,1982)

これこそキミ子方式が世に出るきっかけとなった話題が満載の本です。
キミ子さんのエッセイは,とても人間愛にあふれたものです。だから,どれを読んでも,子どもたちの素晴らしさ,人間の素晴らしさに感動することでしょう。以下の本も,どれもお薦めです。

●『教室のさびしい貴族たち』(仮説社,1984)
●『宇宙のものみんな描いちゃおう』(太郎次郎社,1987)
●『キミ子方式魅力事典』(ほるぷ教育開発研究所,1988)
●『絵を描くってことは』(仮説社,1989)
●『だれでも描けるキミ子方式』(仮説社,1993)
●『80歳の母が絵を描いた』(日貿出版社,1993)
●『モデルの発見』(仮説社,1999)

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