正院地区
15.Passing ウー・ジーツォン&チェン・シューチャン
倉庫の高い天井から大きなスクリーンがつり下がり,そこに大きな影絵が映し出されます。その影絵はゆっくりと動いていきます。スクリーンの裏に回ると,そのからくりが分かります。その影絵は,漁網や枯れ木などの後ろにある,たった1個の電球が上下することによって作り出されていることが分かります。ずっと見ていても飽きない世界でした。実際,この倉庫の中には,結構長い時間滞在していたような気がします。
直(ただ)地区
19.Silhouette Factory 角文平
これはきれいで,わかりやすい作品でした。倉庫のとを開け放した向こうには日本海が見えます。青空と海をバックにして,精巧に作られた金属の切り絵が風でゆっくり動き,シルエットを見せてくれます。
切り絵は,珠洲市にちなんだものなので,なじみ深いです。子どもたちと行ったときは,何があるか,当てっこしていました。
20.触生ー原初ー 田中信行
古い土蔵の中身を全部出してしまい,がらんどうになった土蔵の中に,漆の作品を2点飾ってありました。「乾漆技法による,生々しく赤が映える作品と大きな壁面状の立体を制作」(057ぺ)したそうです。ここへも学校の子どもたちと行ったのですが,その壁面のようなくねくね踊りを見せている男子もいました(ちょっと休憩①を見てね)。
21.善でも悪でもないキオスク ギムホンソック
旧のと鉄道の珠洲駅。この駅舎の前には「すずなり」という道の駅があって,珠洲のお土産などを購入することができます。駅のプラットホームも取り壊されることなく,ここにありました。
そのプラットホームにあのキオスクが登場…と思いきや,なんだか売っているものが不思議です。水やビールに加えて,韓国などで発刊された哲学書も…。
「見慣れた組み合わせと,違和感のある商品たち。日常の仕組みを通して,日本と海の向こうの国々との関係を考える場となった。」(058ぺ)
飯田地区
27.小さい忘れもの美術館 河口龍夫
さいはてらしく,今回は,旧のと鉄道の駅がよく利用されていました。本作品は,わたしが高校時代によく利用した飯田駅の駅舎とプラットホームに続く階段,そしてホームに止まっている貨物列車です。
待合室の壁には「忘れもの」の輪郭が浮き出ていて,駅員の休憩所は「忘れもの」も含めて壁一面が黄色く塗られていて,「記憶」というような言葉を想像させてくれます。階段には,所々に忘れものの傘が突き刺さっていて,ホームまで案内してくれます。
ホームに停車しているのは客車ではなく貨物車。「貨物」という響きから「いろいろな思い出が詰まっている」ような気分になります。貨物車の中に入ると全面が黒板になっていて,チョークで自分の思いを自由に書くことができます。久しぶりに能登に帰ってきた人,初めて珠洲を訪れた人,さまざまな人の思いが,この貨物車に積まれていくのです。
「忘れられた駅が『忘れもの美術館』として蘇った。」(060ぺ)
23.物語るテーブルランナー・珠洲編 鴻池朋子
鴻池さんが地元住民から聞き取った個人的な思い出を下絵に描き,その下絵を元に話をした当事者が手芸で作品を制作し,それらを35枚並べたものです。
会場には,それぞれの作品を作った地元の方もいました。その方が説明をするのだそうです。当然,その制作者の中には元教員や地元の手芸店のおかみさんなどもいて,久しぶりの出会いに,話に花を咲かせました(右上の3名の女性は,みんな知人でした)。
こうして自分の作品が芸術祭に参加するというのも,なかなかいいものだと思います。
みなさん,いろんな芸を持っていますね。
24.JUEN 光陰 吉野央子
「そういえば,ここに来てよくカラオケ歌ったよなあ」と,とっても懐かしくなった場所。市中心部飯田町の飲み屋街(といっても今では数件しかないが)にあった「じゅえん」というお店が舞台。わたしの知っているホールもあったけれども,その奥には,いろんな部屋があったことを初めて知りました。作品31の3階建ての建物(宝湯)のような雰囲気でした。もしかしたらここにも遊○がいたのかも。
スイスイ,スイスイ。今は海の中。目の前で泳ぐ魚やイカの群れ。大きなかにや大きな魚も。
S.A
木の彫刻,表面のおうとつ,そしてかすかな色だけで出来た海の生き物。それだけなのに,今にも動き出しそうなほど,本物に似ている。…(中略)…大きなかには,まったく色がついていない。木そのものの色をしている。今にも動き出しそうなのは,きっと足の一本一本が関節の部分まで細かく作られているからなのだろう。…(中略)…
大きくても小さくても,木で細かく作られたのは,木が山,魚が海を表しているのだと思う。きっと里山里海を表しているのだろう。いろいろな人に,里山里海の美しさを見て,里山里海を大切にしてほしいという願いを作者は伝えたかったのだろう。
26.潮流-ガチャポン交換器 力五山
制作者の「力五山」というのは,加藤力さん,渡辺五大さん,山崎真一さんの名前の一部を取って並べたものです。
この巨大ガチャポンのカプセルの中身を入れるのに,地元の小学生も参加しました。キーフォルダーやら松ぼっくりなど,いろんなものを入れていました。
「カプセルの中には住民から収集した思い出のかけら,沿岸にたどり着いた漂着物,旅行者の品々などがメッセージと共に入れられ,会期中約7700個のカプセルがガチャポンから流れていった。」(066ぺ)
27.さいはての『キャバレー準備中』
ここは,もとは佐渡島との定期船の待合室だったのですが,その後しばらくの間は喫茶店兼スナックだったような気がします。芸術祭後は「キャバレー」と呼ばれていて,貸し切りできるお店として市民で活用しています。わたしも数回お邪魔したことがあります。還暦記念Concertやなにかの打ち上げ会などです。
上戸地区
29.青い舟小屋 眞壁陸二
朝日の昇る方角(日本海の方)に舟小屋への入り口があり,そこからは人間だけではなく,光も入ってきます。また,スリット状に開けられた窓からは淡い光が,さらに小窓はステンドグラスになっていて,そこからも色を帯びた光がやってきます。その光たちは一秒として同じではありません。
「朝日が昇るその瞬間が永遠に続くかのような瞑想空間」(070ぺ)
若山地区
34.月を映す花舞台 アートキャラバンKAMIKURO 中瀬康志
旧上黒丸小中学校を舞台に,たくさんの作品が繰り広げられました。運動や校庭には,脚立を組み立てたものや,円形の花舞台が設けられました。この舞台で,いろいろなイベントが行われたようです。
作品番号0 旧上黒丸小中学校の中の展示作品
また体育館や校舎の中には,キリコをはじめ,学校にあったものに作家が手を加えて新たに生き返らせたもの,あるいは,なにやら変な物体(失礼!)などが飾られていました。音が出るものもありました。しかし『奥能登国際芸術祭2017』を読んでみても,作品34の解説には,上記2枚の写真の作品についてしか載っていません。
というわけで,校舎のものを作品番号0として紹介しておきたいと思います。これでも一部です。
会場の外で配られていたイモやミニトマト。ありがたいお心遣いです。
北山分教場というのもあったが…
本当に,どこまでが芸術祭の作品で,どこからが,誰かが勝手に作った? あるいは,便乗した作品?なのか…。矢印の案内に導かれるようにしてススキの中を進んでいくと,奥にあったのは「北山分教場」というバス停の看板となにかのオブジェ。なんですか,これは。しかし,「順路」看板の前にあるアワビの殻で,これもまた,芸術祭の一部であることが判明した…つもり。続いて,作品35へ。
35.海のこと山のこと-在郷まわりと五芒星 竹川大介
珠洲に住んでいながら,これまで,北山や南山といった場所まで来たことはありませんでした。今回の芸術祭めぐりで,初めて訪れた集落がたくさんあり,新しい発見もたくさんありました。それにしても,作家さんたちは,よくこんな場所を見つけられましたねえ。
ここに来たのは雨の後だったのですが,それもいい感じでした。
「作品全体のテーマは海と山の交易である。地域の伝統色である「こんかイワシ」を積んだリアカーを引き,輪島の海士町から上黒丸の村々まで物々交換をしながら歩く。…中略… 古民家・尾間谷家と南山古道の竹泉水源を起点に,珠洲市の山間部である上黒丸地区の集落に,五芒星の形で水・金・土・木のドームを配置し,移動式の劇場をしつらえた。」(082ぺ)
広域展開・イベント
37.珠洲海道五十三次 アレクサンドル・コンスタンチーノフ
珠洲市内の道路沿いにある4箇所のバス停を作品にしたもの。「真珠が貝殻の中にあるようにバス停を構造体で覆うことを考えた」そうです。なぜ真珠かというと,「珠洲」という地名からの連想だとか。
38.炙りBar Noto Aburi Project
珠洲市の珪藻土コンロと手作りの木炭を使って珠洲の特産品(おつまみ)を炙って食べようというイベント。芸術祭会期中,いつ,どこに出没するのか,分からないのがおもしろいです。会期中は1200人以上が利用したそうです。残念ながら,わたしはイベントに参加しませんでしたので,会えませんでした。
そして,やっと出会えたのは,1年後の,2018年8月11日,禄剛崎灯台でのプロジェクションマップのイベントの時でした。なんか食べたはず。
39.饗(あえ)の事導(ことしるべ) 鬼太鼓座
40.寿受狂言の会 和泉流宗家incl.三宅藤九郎
この2つのイベントには参加できませんでした。だから写真もないし紹介もできません。
番外編:おらっちゃの芸術祭
芸術祭会期中に,珠洲市内のいろいろな地区で秋祭りなども行われていました。例年見られるものですが,ある意味「芸術」っぽいかもしれませんね。
番外編① 宝立地区鵜島の曳山(9月15日)
これだって,ある意味芸術作品ですよね。
わたしの地元のお祭りの曳山。9月中旬の祭礼のために,毎年8月下旬頃から作り始めます。
番外編② 直地区のキリコ祭り(9月24日)
キリコ祭りは,奥能登独特のお祭りです。キリコと呼ばれる奉燈が,神輿の先導をするのですが,どうも,そのキリコの方がメインになっています。地域によって,少しずつ形も違うし,かけ声も違います。たいこのリズムも微妙に違います。漆塗りで作られているものもあれば,海へ入っていくものもあります。
番外編③ 県立飯田高校の学級立て看板
飯田高校では体育祭の際に,毎年学級で立て看板を作ります。その看板を,地元の業者が足場を設置して飾ってくれています。これも毎年のことです。
今回は,帰省した娘たち(もちろん飯田高校卒業生)を連れて,夜,撮影してきました。
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