3年生とのたのしい図工

ものづくり・図工

能登町立○○小学校(当時) 尾形正宏

はじめに

 今年(2011年度)も3年連続の教務(級外)。「学級を持たせてくれ!」と学校長には言うのですが,「学校の職員全体を見て決めている」「若い人が級外なのはかわいそうだろう」「そろそろ若いもんに譲れ」みたいなことを言われてなかなか持たせてもらえません。
 学級担任になると仮説三昧ができます。理科はもちろん,道徳でも総合でも仮説実験授業ができます。教科の時間にもけっこう融通が利きます。でも,級外ではそれも無理な相談です。
 でもでも,そこはたのしい授業学派。この集団には「たのしい授業ネタ」はたくさんあります。
 今回は3年生といっしょに1学期の図工でやった「ものづくり」についての子どもたちの感想とちょっとした私のやり方を紹介します。感想は,1学期の終わりに一括して書いてもらいました。「今までやった中から,どれでもいいから選んで書いて」とお願いしました。

出会いは「色づくり」(2時間)

出展:『だれでも描けるキミ子方式―たのしみ方・教え方入門 』(仮説社,1994)など

 わたしは何年生の図工を担当しても,まずはキミ子方式入門「三原色で色づくり」を楽しんでもらっています。
 今年の3年生は,ほとんどの子が,まともに絵の具やパレットを使うのが初めてだったので,パレットや絵の具の出し方などをゆっくりと教えながらやりました。
 時間があれば,できた色に名前をつけてもらってもいいでしょう。「絵の具に入っているのは,みんなが見つけた色のうち,赤・青・黄・白とあとたったの8色だよ」

「キミ子方式」については,本サイトでも少し紹介してありますので,興味のある方はこちらのページをご覧ください。

授業の評価

わたしたち「たのしい授業学派」は,授業の成功失敗を「子どもたちの感想」から判断します。定期的にやって来る黒服軍団や管理職の評価を気にするのは,それよりもずっとずっと僅かです。その授業の評価は,5段階で聞くことがよくあります。

5 たいへん楽しかった      ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○
4 楽しかった          ○○○○○ ○○○○○ ○
3 楽しくもつまらなくもなかった ○○○
2 つまらなかった
1 たいへんつまらなかった

子どもたちの感想

○三原色で色々な色があってたのしかったです。
○三原色で色づくりは楽しかったです。あんまりいろんな色ができなかったけど,楽しかったです。
○三原色でいろいろな色がつくれるって知ってすごいと思いました。色ってこんなにいっぱいつくれるって知ってすごいなと思いました。
○たった3色で,いろんな色ができるなんてとってもすごいと思いました。
○三原色で色づくりが一番たのしかったです。なんでたのしかったかというと,なに色ができるのか,この色ができるかが分からないからです。

 私は,色づくりをしてもらう前に「印刷博士」(村重政司作)を見せています。これは以前,全国大会で手に入れたもので,とても優れものです。赤色,黄色,青色で印刷されたそれぞれの透明シートを重ねると…あら不思議,極彩色の<錦帯橋>が現れます。まだ販売してくださっているのかな~。
 子どもたちは,たったの3色できれいな写真ができあがった瞬間,「おお~」と感嘆の声を漏らしていました。そして「よーし,いろんな色を作るぞ!」という意欲が高まったと思います。

キミ子方式でもやしを描こう(2時間)

出展:『だれでも描けるキミ子方式―たのしみ方・教え方入門 』(仮説社,1994)など

 キミ子方式で色づくりの次に行うのが「もやし」です。「もやし」は,〈輪郭線を描かない・画用紙の大きさを気にしない・3原色と白で色づくり〉というキミ子方式の3つの束縛と,細筆の使い方・植物の描き方の入門用教材となっています。ですから,この「もやし」も,何学年を担当しようが必ず描いてもらっています。ただ,最近,いいもやしがなかなか見つかりません。今回準備したものも,赤ちゃん葉っぱがほとんど見つかりませんでした。根っこが切れているやつもあたりします。
 最後に,描いたもやしに名前も付けてもらいました。みんな喜んで名前を付けていました。
 この授業は,普段気にせずに食べている「もやし」に愛着がわく人生最初の時間です。

授業の評価

5 たいへん楽しかった      ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○
4 楽しかった          ○○○○○ ○○○○○ ○○
3 楽しくもつまらなくもなかった ○○○
2 つまらなかった        ○○
1 たいへんつまらなかった

子どもたちの感想

○もやしをかくのはちょっとむずかしかったです。いままでもやしはただの白かと思っていたけど,ただの真っ白じゃなくて,ほかの色もまざっていてびっくりしました。

 もやしがない! いいもやしがなかなか見つかりません。なにかいい方法はないですか?
 今回,細筆を全てこちらで準備しました。ちょっと高くつきますが,毎年描いてもらうことを考えると持っていてもいいかもしれません。
 イカを描くときは太筆を買うってのはたいへんかも知れませんが,ある程度は持っていた方がいいと思っています。

なまえデザイン(3時間~4時間)

出典:『たのしい授業・2011年3月号』(仮説社,2011)

 今年『たのしい授業』に掲載された記事を見てから「これは3年生の教材にもってこいだ!」と思いました。自分の名前が,なぞなぞのようにデザインされるのも楽しいし,色塗りと区切られた中の繰り返し模様のデザインが組み合わされているのも楽しいです。

授業の評価 

5 たいへん楽しかった  ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○
4 楽しかった      ○○○○○ ○○

子どもたちの感想

○名前デザインの楽しかったところは,文字をつなげるところです。つなげるとたくさんのへやができました。いろんな色をつけると自分でもなんてかいてあるか分からなくなりました。
○ハートとかボールをかいたところがくふうしました。くものすみたいなのもかけました。さいごにきれいにできたのでよかったです。
○もようやひらがなで書いたデザインは,くるくるしたもようなどをくふうしました。わたしがだいすきなバスケットボールの形などをくふうしました。
○「し」と「ぶ」の「ぶ」の「、」のところをつなげてはんたいにしたらハートがたになるようにしました。よつ葉がすきなのでデザインによつ葉をかきました。
○同じ形は一つもないけど,にている形があります。直線が多いです。きれいに書けました。

 子どもたちには,『たのしい授業』にも谷岩雄さんが書かれていたように,
①完成作品を見せる(今回は『たのしい授業』に掲載されていたものを投影して見せました)。
②教師の名前を使って一緒に順番に作っていく。

というようにやりました。するとスムーズに進めることができました。
 この作品がキレイに見えるポイントは「2度名前の線を引くところにある」と思います。最初の線と色塗がかぶってしまっても,もう一度,絵の具や太マジックやポスカやクレヨン(いずれも黒)でしっかり線を書くことでとてもくっきりとした作品に仕上がりました。
 特に名前の線の仕上げはクレヨンがいいです。子どもにはクレヨンは身近だし,しかも迫力のある鮮やかな仕上げになります。
 繰り返し模様には細ポスカが必要です。高い(3000円/12色セット)ですが準備をしてやりたいです。

折り染めで「ミニ手帳」づくり(3時間)

 折り染めも,学年・年齢問わず子どもたちが大変喜んでくれる教材です。毎年,どの学年を担当してもやってきました。
 今回は,折り染めの紙を使って「ミニ手帳」を作りました。「ミニ手帳」は,画用紙に折り染め用紙を貼るだけでオリジナルな雰囲気の手帳ができあがるので,低・中学年にはぴったりだと思います。高学年でもミニ手帳を作ることがあります。

授業の評価

5 たいへん楽しかった  ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○
             ○○○○○ ○○○○○ ○○○
4 楽しかった      ○

子どもたちの感想

○おりぞめでミニ手ちょうづくりは色をつけてひらくときすごくドキドキしました。きれいにできました。家にかえってつくってはんちょうにあげたら,「ありがとう」って言っていたのでうれしかったです。
○おりぞめがとても楽しかったです。いろんな色があって,とてもきれいでした。できるのが楽しみで,あけてみると花になっていて,びっくりしました。またおりぞめをやりたいです。
○おりぞめでミニ手ちょうづくりが一番楽しかったです。わけはいろいろなもようができてかわいかったからです。つくるのも楽しかったです。
○おりぞめで色をつけるのが楽しかったです。
○おりぞめでミニてちょうづくりがたのしかったです。わけはいろいろの赤とかきいろとかがきれいだから,たのしそうでした。

 三角形に折るのが少しむずかしそうでしたが,2度目にはみんなできるようになりました。輪ゴムをかけるのも大変そうだったので「そのままきつく指で押さえていてね」と言ってやりました。それでもそれなりの染め物になるのが折り染めのいいところです。

新聞紙でオオトカゲ(2時間)

出展:『たのしい授業・2009年6月号』(仮説社,2009)
もとは 木内勝『工作図鑑』(福音館書店,1988)

 これもまた『たのしい授業』誌上に紹介されたときから,一度やってみたいなあと思っていました。サークルでも「中学年でやってみた」という報告があって,ますますおもしろそうと思っていました(これこそ低中学年向きだと思っていました)。7枚の新聞紙からオオトカゲができるなんて…その変化にビックリするに違いない。
 私は自分で作ったオオトカゲを引っ張りながら教室に入ると,「おお~,すげー」の大合唱。

授業の評価

5 たいへん楽しかった  ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○
4 楽しかった      ○○○○○ ○○○○

子どもたちの感想

○新聞紙でオオトカゲは,とても楽しかったです。ペットがほしかったのでちょうどよかったと思います。かわいがろうと思います。
○新聞でオオトカゲをつくったとき,こわかったです。1週間分でオオトカゲがつくれるってびっくりしました。
○自分でとかげができるなんてびっくりしました。
○新聞紙でオオトカゲを作って楽しかったです。新聞でトカゲが作られるなんてすごかったです。
○オオトカゲがいちばんたのしかったです。つくるのでおなかがふくらんでいていきているようにつくれたからとてもおもしろかったです。びっくりしたことはなによりも大きいことでした。「なんだこれっ」て思っていたけど,先生がつくっていたオオトカゲは,よく見たらとてもかわいかったです。
○オオトカゲはすごくたいへんでした。でもつくるのがとてもたのしかったです。
○オオトカゲをつくるのがたいへんでしたができてよかったでした。これからももっとつくりたくなりました。オオトカゲのつくりかたをおぼえてよかったでした。

 『たのしい授業』誌上で品野さんも書いているように,つくる前にちゃんと<途中途中の部品>を複数用意しておきました。そこで,ややこしい組み立てもとてもスムーズに進めることができました。
 組み立てたあとは,「もっとデザインをしたい」という人もいるし,「早く,散歩をしたい」という人もいます。どっちを優先するのかは,子どもに判断させました。
○セロテープは幅広のものでちゃんと接着力のあるやつがいいです(百均のはすぐにはがれます。新聞紙には油分があるのでよくつきません)。
○首を輪ゴムで縛るのはたいへんだけど,しっかり首の部分を作った方がかっこいいと思います。新しい輪ゴムを準備してあげてください。
○途中で壊れたら「ケガをした!」といって教室に帰ってきました。「救急治療コーナー」を設けておくとおもしろいかも知れません。ただ,それが「ケガした」「死んだ!」などという遊びになっても困るけど…。

一枚の紙から○○(ガイコツ君)ができる!(1時間)

出展:『ものづくりハンドブック・4』(仮説社,2014)

 夏休み前,最後の図工に切り紙「ガイコツ」君をやりました。たったの1時間しかなかったので,これを選んだのです。
 予定には「○○」としか知らせてありません。(画像が粗くて申し訳ありません)

「○○って何だと思う」
 … 原紙を見せる …
「ガイコツ???」
… 切って見せます。慣れれば5分くらいでできますが,完成品を用意しておいた方がいいでしょう。ちょっとだけ泳がしてみると…
「きゃー,こわーい。」
と大騒ぎ。いやーいいですねえ。夏にサイコーです。

授業の評価

5 たいへん楽しかった  ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○
4 楽しかった      ○○○○○ ○○
3 楽しくもつまならくもなかった ○○○

子どもたちの感想

○すごく楽しかったです。わけは竹につないでうごかすのが楽しかったからです。
○1まいの紙からがいこつができるのは,すごかったし,切っておるだけでできたからです。それにきもだめしにもつかえそうだから楽しかったと思いました。
○1まいの紙でガイコツができるなんてすごいと思いました。わたしはげんかんにかざりました。切るのはむずかしかったけど,じょうずにできてうれしかったです。
○1まいの紙からガイコツができるのが楽しかったです。はじめは,ガイコツができるのがびっくりしました。1まいから,いろんなのができるのでふしぎでした。
○ガイコツを切るのが楽しかったし,竹につるしてあそんだのが楽しかったです。
○1まいの紙からガイコツができるとは思っていなかったです。ガイコツがこわかったです。
○家に帰ったら赤のボールペンで血をかいたらこわかったです。ねらった人はお母さん,おばあちゃん,お父さんでした。でもみんな「すごいね」といってびっくりしませんでした。わたしはびっくりしたのにちょっとがっかりしました。
○ガイコツは,竹につるしたりするのがとても楽しかったです。またしたかったです。

 ガイコツは白い紙で作りました。違う色でもよかったかも。
 できたガイコツは,50㎝くらいのたこ糸を使って2mくらいの笹につけてもらいました。笹を持って走ると,ゆらゆら動きます。やっぱり持って廊下を走り回っていました。その日の帰り道,ガイコツを肩に担いだ子どもたちを見て,通学路に面した銀行員の方も「なんだあれは…」と話題になっていたとか(^^;)。
 ガイコツを家に持って帰ると家庭がうるさいかも…「なんで,こんな縁起の悪いものを作るんですか。教科書に載っているんですか」…なんてね。そこで,世界で「ガイコツを掲げて祭をしているような場所がないか」とネットを探したら,ありました。メキシコの「死者の日」というお祭りです(あとで調べたらメキシコだけではなさそうです)。
 まずは,写真を見せながら,ガイコツをつくる意味=「世界ではガイコツを飾って死者の霊を慰める,日本のお盆のようなお祭りがあるんだって」という説明してからやりました。
 紙を切り抜くだけなので3年生でも,1時間で十分時間はあります。

番外編(かさぶくロケット)

出典:『ものづくりハンドブック8』(仮説社,2015)

 雨の日のデパートなんかで配布される「濡れ傘入れ用の袋(傘袋)」を使ってつくる簡単ロケット(名付けて「かさぶくロケット」)というものづくりもあります。これもやってみたので,写真だけですが,紹介しておきますね。

真似するネタがあると言うこと

全体(1学期の図工)を通した子どもたちの感想

○ぜんぶ楽しかった。そのわけは,ぼくは作るのが楽しかったからもういちど作ってみようと思いました。
○いろいろ作ったし,じょうずにできたりしたので,楽しかったです。またいろいろと作ってみたいです。
○3年生でいろんなものがつくれてうれしかったし,たのしかったです。

 1学期の図工では,上のほかにも「紙粘土を使って置物をつくる」というものをやりました。これは教科書に出ていたものです。確か6時間くらいかかりました。そのものづくりの評価も「たいへん楽しかった…21人,楽しかった…9人,楽しくもつまらなくもなかった…2人」で,たいへんいい評価でした。3年生くらいだと,もともと図工が好きなのかも知れません。
 しかし,作ってみようという意欲がわかなかったり,作っているときのわくわく感がなかったり,完成したときの満足感がなかったりするような教材では子どもは受け入れてくれないでしょう。
①作ってみよう,やってみようと思わせる方法
②材料とできた作品にとてもギャップのあるもの
③できてからも遊べたり,使ったりできるもの
④もう一度家でやってみたくなるもの

 このような教材を用意することができれば,子どもたちは食いついてくるに違いないのです。 「たのしい授業学派」が開発してくれたそのような教材をたっぷり持っているわたしは,学年や集団の違いにより,その持っているものを少しずつ小出しにするだけで,すぐに楽しい授業が実現できます。
 ここで「持っている」といっても,文字通りこれは「そのネタが出ている本を自分の本棚に持っているだけ」でいいのです。あとは,時々実践してみてポイントを教えてくれるサークルの仲間や全国大会での報告が私の「やってみたいなあ」という気持ちを後押ししてくれます。
 このレポートが,「まだやったことはないけど,これって楽しそうだなあ」「へ~,思ったよりも子どもが喜んでいるね」と思ってくれて,「今度,うちの子とやってみようかな」というきっかけになればいいと思います。

 以上,1学期のネタを紹介しました。この年度には,「木と動物と夕焼け」(アフリカの絵)やお面づくりなどにも取り組みました。「アフリカの絵」の進め方は,本サイト別ページに紹介してありますので,興味のある方はご覧ください。

ここで紹介した授業ネタの出典

色づくり・もやし

なまえデザイン

折り染め

折り染め

ガイコツ君

かさぶくロケット


2011/07/28 記
2023/06/22 追記

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