珠洲が(も)舞台の作品

さいはての街・珠洲

能登半島最先端の町・珠洲市。本州一人口の少ない「市」だそうである(2023年3月31日現在:1万2808人)。本ページでは,そんな過疎の町を舞台(の一部)にした文芸作品などを紹介したいと思う。もちろん,わたしの知り得る範囲で。

珠洲も舞台の作品

小説『妖しいご縁がありまして』(汐月詩作,2020年~)

第1巻の帯には「金沢在住の作者が描く能登の町をモデルとした懐かしくも易しい物語」とあります。まさに「能登が舞台」。
漫画・アニメ『スキップとローファー』と同じく女子高校生が主人公だ。ただ『スキップとローファー』の方は,能登から東京の高校に進学したみつみが主人公だが,こちらの方は田舎に住む祖母の死をきっかけに(しかも高校進学の年に),都会から能登に引っ越しすることになった八重子が主人公。八重子は,父親の実家である能登で3年間(7歳~10歳)ほどお婆ちゃんに育てられていた期間があっただが,なぜか,いま,その記憶がない。しかし,引越後,久しぶりにあった幼なじみだったらしい小町や昴,商店街の人たちは「あら,八重子ちゃん」などといって懐かしがってくれるのだ。
八重子の記憶を取り戻すための秘密は,鈴ノ守神社の縁(ゆかり)という神様や,そこに住む二紫名(にしな)という狐が…。
物語には,禄剛崎,千里浜,能登島,恋路海岸,見附島などの地名が出ててくる。商店街の人の名前には飯田さんという骨董屋兼カフェのおじいちゃんもいる。ただ能登がモデルといっても能登は広い。しかしわたしは,次のような表現から「これは珠洲に違いない」と断定した(そんな判断をしなくても充分楽しめるが)。

目指すは,ずっと南にある倶利迦羅峠内の公園だ。ここから車で二時間以上かかる。今まで訪れた場所を考えると一番遠いことになる。(第1巻,219ペ)

海…といえば,隣町にある恋路海岸が一番近い。私も望さまの神社に行くついでに何度か訪れたことがあった。(第3巻,213ぺ)

ちなみに,Googleマップによると見附海岸から倶利迦羅峠までは,車で1時間55分,飯田町からなら2時間2分かかる。これは珠洲市だね。また「望さまの神社」とは実際に恋路にある神社だ。ただし旧国道からは見えないので知らない人が多いかもしれない。
第3巻の大切な舞台として,大きなキリコが海に入る祭りが出てくる。これ「宝立七夕キリコまつり」だ。「近所の銘菓,いも菓子」という表現も。
本作品,小説の内容としてもなかなか面白い。わたしはこれを読んでいて『となりのトトロ』を思い出した。『となりのトトロ』の青春版という感じかな。

2023年6月現在の既刊作品
第1巻 お狐さまと記憶の欠片
第2巻 わがまま神様とあの日の約束
第3巻 常世の里と兄弟の絆

本作品は,連続モノですが,それぞれ読み切りになっていますので,どの巻からでも読めます。わたしもまずは2巻から読みました。でも,やっぱり,1巻から読んでみてね~。


漫画『君は放課後インソムニア』(オジロマコト作,2019年~2023年)

この作品は,夜眠れない(インソムニア)な2人の高校生を主人公にしている。石川県七尾市にある七尾高校が舞台になっていて,七尾市をはじめとして能登のいろいろな場所が取り上げられている。それで,マンガの聖地巡礼ということで,漫画で描かれている場所と同じところで写真を撮ったりしているものをブログにあげている人も何人か居るようだ。
珠洲市が出てくるのはコミック第5巻「第43話・第44話」。宝立小学校前バス停に降りた2人は見附島で星空を撮影する。なかなかいい感じ。
こんなブログを見つけました。聖地巡礼・見附島編。
コミックは「全14巻」で終了です。高校卒業まで。

アニメ『君は放課後インソムニア』(監督:池田ユウキ,2023年)

2023年4月から,テレビ東京系列でアニメが放映され,第13話まで。放映時刻は夜中なので,毎週,録画して見ていた。オープニングテーマは,aikoの「いつ逢えたら」。

映画『君は放課後インソムニア』(監督:池田千尋,2023年6月23日上映開始)

実写版の映画もできました。七尾高校を舞台に,星空の写真を撮るために奥能登に出かける2人です。
左のサイトでは「予告編」を見ることができます。
現在上映中(2023年7月現在)です。なかなかよかったですよ。


のと鉄道のラッピング列車だよ~。運転手さん撮影。


漫画『スキップとローファー』(高松美咲作,2018年~) 

もう、珠洲市出身だな!この作者。それだけで読みたくなるーと思っていたのだが、調べてみると作者は富山県射水市の出身。珠洲市には母親の実家があるのだそうだ。大学は金沢市。
主人公はみつみ。東京の高校に進学した鈴市凧島町(いかじまちょう)出身の女子高生という設定。単に「田舎者が都会に出たら…」という話ではない。彼女の根っからの天真爛漫さが、これまで殻をかぶってきた都会出身の同級生たちの心を少しずつほぐしていく。
地元公民館の図書室で見つけて読んでたんだけど,続きも読んでみたくて自分で購入したわ。2023年8月現在,第9巻まで出ている。
第9巻では,夏休み,東京の同級生たちが,みつみの故郷・凧島町にやってくる様子が描かれている。珠洲弁もいっぱい出てくるぞ~

アニメ『スキップとローファー』(監督:出合小都美,2023年)

上記の漫画をアニメ化した作品。2023年4月から放映開始。第12話で終了。
みつみをはじめ,声優たちの声も,漫画のイメージと合っていてしっくりきている…と個人的には思う。アニメの第9話は,夏休みに帰省したみつみの話。大いに珠洲弁を聴くことができる。蛸島町の高倉彦神社も出てくる。
舞台になった珠洲市もけっこう盛り上がっている。ぜひ,聖地巡礼をお願いしたい。
公式ホームページはこちら。

映画『追憶』(監督:降旗康男,2017)

殺人事件が起きるのが能登の輪島付近。容疑者田所(小栗旬)の妻(木村佳乃)が産気づき,急いで自家用車で病院まで運ぶのが刑事の四方(岡田准一)である。そしてその病院が,珠洲市総合病院なのであった。まあ,それだけだわ。

25年の時を経て交錯する7人の愛の行方とは――
富山県の漁港で殺人事件が起きた。事件によって、かつて親友だった3人は、刑事、容疑者、被害者として再会することになった。
刑事、四方篤(岡田准一)―――
妻(長澤まさみ)へ自分の心をうまく伝えられず、すれ違いの日々を送る。
なぜ、愛する人にも心を開くことが出来ないのか。
容疑者、田所啓太(小栗旬)―――
会社の好転、妻(木村文乃)の妊娠、新居の建築と幸せの絶頂の中、なぜ、事件の真相を語ろうとしないのか。
被害者、川端悟(柄本佑)―――
倒産寸前の会社と家族のため、金策に奔走していた。なぜ、殺されなければならなかったのか。
25年前、親に捨てられた3人は、涼子(安藤サクラ)が営む、喫茶「ゆきわりそう」に身を寄せていた。常連客の光男(吉岡秀隆)とともに5人はまるで家族のような間柄になった。
だが、ある事件を機に、その幸せは終わった。無実を信じる四方の問いかけにも、田所は口をつぐむ。一体、何を守ろうとしているのか。3人の過去に何があったのか。
複雑に絡みあった壮大な人生のドラマは、25年の時を経て、再び運命の歯車を回し始める。(Amazonの商品紹介「ストーリー」を転載)

映画『さいはてにて やさしい香りと待ちながら』(監督:姜秀瓊,2015年)

故郷である奥能登のさいはての海辺に帰り、焙煎珈琲店を開いた岬と、この地に住むシングルマザーの絵里子。生き方も価値観も全く異なるふたりが出会い、やがてそれぞれがほんとうの自分、そして大切なものに気づいていく…。
主演は『八日目の蟬』で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞した演技派・永作博美。凛々しい佇まいの中に哀しみをにじませた岬を色鮮やかに表現する。初のシングルマザー役に挑戦したのは佐々木希。強さと弱さが同居する絵里子の複雑な想いを体現し、女優として新たな魅力を花開かせている。
メガホンを取ったのは、アジアの巨匠エドワード・ヤンの後継者とも目される台湾出身の女性監督・姜 秀瓊(チアン・ショウチョン)、撮影はロンドンを拠点に活躍する真間段九朗。石川県珠洲市のオールロケで捉えられた美しい映像の中、国籍を超え誰の心にも寄り添う普遍の物語が、あたたかく心地よい感動をお届けします。(Amazonの解説を転載)

映画「ヨダカ珈琲」の元となった焙煎コーヒー店は「二三味珈琲」さん。実際に,珠洲市飯田町と木ノ浦にお店があり,おいしい珈琲をいただくことができる。もちろん,焙煎した豆も購入できる(うちで入れている珈琲は二三味さんのものだ)。本DVDも販売している。
また,木ノ浦のお店からは,日本海が一望できる。静かな海もいいけど,荒海もまたよろし。

小説『さいはてにて やさしい香りと待ちながら』 (柿本奈子著,2015年)

集英社文庫。上記映画作品のノベライズ本。

東京で小さな珈琲店を営んでいる女性・岬。自分だけを信じて生きてきたが、幼い頃に生き別れて行方不明の父を待つため、能登の海辺、父の残した舟小屋を改装した場所に店を移転する。さいはての海辺で出会ったのは、キャバクラ嬢でシングルマザーの絵里子と、その子どもたち・有沙と翔太。彼らと触れあううち、頑なだった岬の心に変化が……。(Amazonの商品紹介より)

NHK連続テレビ小説『まれ』(2015年上半期)

今(2023年)でも,のと里山海道の別所岳パーキングを過ぎたあたりの道路から,「まれ」のテーマソングが聞こえてくる。あの道路に付けられた溝は,けっこう長持ちするよなあ。ちなみに,主題歌の作詞はヒロインの土屋太鳳さんである。
ドラマ「まれ」の舞台は輪島市になっているのだが,実際には,桶作元治の揚浜塩田は「珠洲市外浦」にある角花家が守ってきた塩田である。またタイトルに出てくる灯台は,これまた禄剛崎にある白亜の灯台だ。

映画『珠洲のジイちゃん 夏物語』(監督:水上猛之,2012年)

画像は「映画.com」より

珠洲出身の監督が,珠洲市民をそのまま使って作った映画。監督自身も出演している。役者稼業の人もいるにはいるようだが。
ロケ地は,もろ珠洲。最初っから,すずなりと北鉄バスが登場し,その後,蛸島町のケビンで一夜を過ごす親子4名。そこへ一夜限りのおジイちゃん・おバアちゃん役が登場し,地元の食材でもてなす。使っているコンロは鍵主工業の珪藻土コンロ。並べられているお酒は地酒の大慶,そして宗玄大吟醸,虎の涙も出てくる。木ノ浦の景色,宝立七夕祭のキリコ海中乱舞の様子も。テーマ曲は,わたしの大好きな高校の先輩大畠優さんの歌まで入る。
ただ,ほとんどの役者が素人なのでもろ劇っぽい。もっと方言を使ってほしかったなあと思う。「ダーツの旅」のような自然さが欲しい。
左の写真をクリックすると「映画.com」に飛ぶ。DVDも販売しているのだが,Amazonには商品の紹介がなかった。

漫画『釣りキチ三平・平成版12 御座の石/能登のタコすかし』(矢口高雄作,2010年)

本の見開きに書かれていた矢口さんのサインと印鑑。この本は,「NPO能登半島おらっちゃの里山里海」の事務所にあったものなので贈呈されたものなのではないかと思います。

釣り愛好家じゃなくても,この漫画のタイトル名はご存知だろう。本書には2つの地域の話が収録されている。「御座の石」も化石の話が出てきてなかなか興味深いのだが,ここでは能登にしぼる。
おじいちゃんと付き合いのある珪藻土工場と,魚神さんの縁のあるラブロ恋路の支配人という設定で能登を訪れている。
珠洲の舞台としては,まず,切り出し珪藻土の工場・丸和工業が出てくる。丸和では,製品のコンロの紹介だけではなく,珪藻土採掘坑道にも入り三平が切り出しを体験したりもする。禄剛崎灯台も出てきて,ここでタコすかしを初めて見る。その日は能登町(当時は珠洲郡内浦町)のラブロ恋路に宿泊し,翌朝,赤崎海岸タコすかしを体験する。
 この平成版には,矢口さんのそれぞれの作品に対する「あとがき」がある。それによると,矢口さんは友人のテレビディレクターの一本立ちの取材に協力して能登を訪れ,珪藻土工場などの体験をしたことがきっかけとなっていることが書かれている。

がんばれ! 丸和工業

2023年5月5日,珠洲市を襲った震度6強の地震で,このマンガに描かれている丸和工業さんの珪藻土の焼き窯が大きく崩れてしまいました。それでも社長さんは「もうひとつの工場で生産を続ける…」とインタビューに答えていました。度重なる災害にもめげずに「切り出しコンロ」づくりに励んでいる丸和工業さんに,応援をお願いします。(2023/05/18記)
公式サイトは,ここです。

映画『能登の花ヨメ』(監督:白羽弥仁,2008年)

同DVDに収録されているメイキング映像より。三崎町小泊地区にて。泉谷珠洲市長も出てくる。

石川県出身の女優・田中美里が花嫁,能登に住む姑役が泉ピン子。泉ピン子の能登弁がなかなかいい。
能登のしきたりに慣れない花嫁だが,最後は,そのしきたりに則って素敵な結婚式を挙げる。子どもの頃は,花嫁行列が通る道路の前に「縄張り」をしてお金をもらったり(これは映画にも出てくる),2階からばらまかれた小銭を拾いに行ったりしたなあ(これは映画に出てこない)。
珠洲市が出てくるのは,最後のキリコ祭りの場面。このキリコ祭りを披露してくれたのは,珠洲市三崎町小泊地区のみなさん。この地区も少子高齢化のために,普段,キリコにはタイヤがついているのだが,映画ではちゃんと担いでいた。担ぎ手を見ると,知っている女性や男性の顔が…。偶然かどうかは分からないが,同地区は『釣りバカ日誌』の撮影場所となったところでもある。

都会育ちの花嫁が田舎へやって来て起こす数々の騒動と心の交流を描く、ハートウォーミングな快作!
慣れない習慣、土地、近所付き合い、そして初の嫁対姑。失敗続きで挫折しそうになる主人公の弱い心を勇気付ける、地震にめげずたくましく生きていく人間模様、そして人々と共に生きていく喜びや家族と一緒に暮らしていく素晴らしさが描かれた、美しい自然、優しい人情、温かい心に満ちあふれる感動の人間讃歌が誕生!
ヒロインはNHK連続テレビ小説「あぐり」でデビューの田中美里、対する姑を演じるのはTBS「渡る世間は鬼ばかり」の大女優・泉ピン子、ふたりを見守るばあさんに漫才協会の名誉会長もつとめる内海桂子。そして、甲本雅裕、松尾貴史、本田博太郎ら実力派が共演!
監督は、「She’s Rain」(93)に続き本作が2作目の白羽弥仁。撮影は「HANA-BI」の山本英夫。サントラは大江千里、主題歌は岩崎宏美と精鋭スタッフが顔を揃える!(Amazonの商品紹介より転載)

映画『釣りバカ日誌17 あとは能登なれ ハマとなれ!』(監督:浅原雄三,2006年)

後ろの校舎が旧小泊小。写真左には,能登の地酒・宗玄のラベルも見える。

釣りバカサラリーマンのハマちゃんが活躍する人情コメディ、シリーズ第17作。金沢や能登半島を舞台に、お馴染みのメンバーが騒動を繰り広げる。ハマちゃんが勤める鈴木建設営業3課に、かつて社内のマドンナ的存在だった沢田弓子(石田ゆり子)が再雇用される。3課の仲間たちは大喜びだが、弓子の再就職には何やら事情がありそう。心配して声を掛けたハマちゃんに、弓子は相談を持ちかけるが……。ゲスト出演は石田ゆり子、片岡鶴太郎(弓子の兄,輪島塗の塗師)、大泉洋(弓子の近隣アパートに住む高校の美術講師)ほか。(映画.comの解説を加筆・転載)

主な石川県のロケ地は輪島市。和倉温泉の加賀屋も出てくる。珠洲では,旧小泊小学校の校舎が出てくる。わたしも勤務経験がある小学校だ。鈴木建設が「廃校になった校舎を老人ホームに改築する」という仕事を請け負い,その起工式に社長(三國連太郎)が出席するという設定。旧小泊小の運動場には珠洲市という文字の入ったテントも並んでいる(左写真)。大泉洋さんも出ていたんだなあ。彼,若いわ。第1回 松竹 STAR GATE グランプリを取った海老瀬はなさんのデビュー作でもある。

映画『暗号名・黒猫を追え!』(監督:井上梅次ほか,1987年)

内容の詳細を知りたい方,購入希望の方は,上の写真をクリックしてください。購入ページに飛びます。Amazonでは売っていませんでした。
プロモーション映像より。
1980年代の映像なので,画像は4:3です。昭和を味わってください。

タイトルは「コードネーム・ブラックキャットをおえ」と読む。映画を見て「本作品はプロパガンダ映画といってもいいな」と思った。DVDの出版元が「スパイ防止法制定推進国民会議」というところで,今でもその団体はあるらしい。その「スパイ防止法」の制定を目指すための啓蒙映画なのだ。
本作品は,社会に出た大学ラグビー部の先輩・後輩メンバーたちがスパイ活動に巻き込まれていく様子を描いている。柴俊夫(主人公の警視),国広富之(ジャーナリスト),榎木孝明(商社マン),高岡健二(貧困撲滅ボランティア活動),そして警視の兄にウルトラセブン(もろぼし・だん)役の森次晃嗣(警視の兄)など,それなりの配役が出てくる。それにしても,身近な友達がみんなスパイ関連という設定がすごい。アリエンだろう。
主人公の野々村警視が能登半島出身という設定で,珠洲市寺家地区とその港が出てくる。以下は,DVDケースに書かれていた文章である。

往年の豪華キャストに加え,スクリーンいっぱいに繰り広げられる洋上の大追跡は,能登半島沖の海上で,実際の不審船事件を再現し,大小の船に加え,ヘリコプターを駆使し,10日間に渡る大ロケーションを敢行して撮影したもので,真実が持つ迫力に,思わず引きこまれる。(DVDケースより)

また,この映画の存在を教えてくれた古くからの友人(珠洲原発建設予定地だった寺家の男性)は,FBで次のような会話をしてくれた。

黒猫を追え。珠洲と言う依り、寺家です。撮影している時に、俳優さん達と話しをしました。寺家の人達が、エキストラで出ています。寺家の船も二艘、出て来ます。私は出ていませんが。寺家漁港、漁港近くの、石坂さんの家、親戚のお婆ちゃん達が出て来ます。(Iさん談)

この映画を本サイトに取り上げたからといって,わたしが「スパイ防止法制定」に賛成しているというわけではない。この法律は,使い方を間違えると個人の人権(や自由)を奪う可能性があるし,後で述べるように,そもそも政策に絡んでいた団体がやばい!

DVDを手に入れたあとで知ったことだが,本作品は,結局,上映禁止となったそうだ。その顛末は,以下のようなものである。ありゃま,今話題の統一教会まで絡んでいたのか…(^^;) 本作品を購入するとその団体へのカンパになってしまうので,購入を躊躇してしまうんだが…。

この映画の支援・監修をしているのは,スパイ防止法制定推進国民会議という名の現存する団体である。その名のとおり,スパイ防止法の制定を目指して活動している団体である。/この団体の運営母体は反共産主義活動をすすめる政治団体・国際勝共連合。この政治団体は統一教会(世界基督教統一神霊協会)とのつながりが深い。70年代末頃から,国際勝共連合は,共産主義勢力のスパイ活動を取り締まるべきとして …中略… 1985年には,関係議員らのいる自民党からスパイ防止法案(第3次修正案)が通常国会に提出されている。しかし,野党の抵抗で審議未了で廃案に追い込まれている。/それでも法案制定をあきらめない国際勝共連合は,スパイ防止法の国民への啓蒙のために本作の製作を企画する。…中略… 反対派が運動の中で特に問題としたのは,国際勝共連合の運動や映画の製作資金が統一教会から出ていたことである。

沢辺有司著『ワケありな映画』(彩図社,2011),p.40~p.41, 文字の色,下線は引用者

付録:能登が(も)舞台の作品

小説『能登怪異譚』(半村良作・村上豊絵,1987年)

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能登に伝わる怪異な物語を集めたもの…じゃないと思う。わたしの手元にあるのは,1987年出版の単行本なので,解説もついていない。だから,半村良が,どんな経緯でこの小説を書いたのかはナゾである。わたしは,半村良の創作だろうと勝手に思っているのだが…。全編,能登弁で綴られている。なんと漢字についているルビが能登弁なのである。たとえば,本文の一行目は次のように始まる。

おら長男(あんか)や,無愛想な(あいそむない)男やさかい,宴会(よばれ)ども行ったかて,いつまでもああして黙っとるのやわいね。

さて,この物語が能登であることは確かなのだが,珠洲であるかどうかはわからない。ただ,「蟹婆(かにばあば)」という物語に,栄螺(さざえ)の尻(けつ)みたいな土地やさかい,こっちから出て行くことはあっても,よそ者(もん)の来るわけやなし」という文章があるので,能登は能登でも奥能登であることは確かだろう。

市助の8人の子らが夜ごと寝間を抜け出して、朝まで箪笥の上に坐っている。そのうちに市助を除く家族全員が夜な夜な箪笥に上がるようになって————(「箪笥」)。土蔵いっぱいに湧いたナメクジに塩をまき、その中に浮気した妻を放り込んだ男は―――(「蛞蝓」)。能登を舞台に玄妙な語り口で綴る9つの不思議な物語。独特の画風で人気の村上豊の挿画27点とともに贈る恐怖と戦慄の半村フォークロア。(文庫本のカバー裏の解説)

児童小説「トキのいる山」(橋本ときお作,1970年)

『新少年少女教養文庫32 トキのいる山』橋本ときお作,梶山俊夫画(牧書房,1970年)

古本屋で見つけてください。能登半島でのトキの放鳥を前に,ぜひ読んでいただきたい物語です!

本作の著者である橋本ときお氏は,珠洲市出身である。長年小学校の先生を務めながら児童文学を書いておられた。わたしも数回お会いして話を聞いたこともある。家には,ときお氏の本が数冊ある。
本作品は,まだ能登にトキがいた頃(昭和35年~40年頃)のことが書かれている。出てくるのは羽咋市の眉状山の近くの分校に通う小学生たちだ。その子たちが,村中義雄(本名は村本義雄)さんと一緒になって,トキを守る活動に参加していくのだ。そしてそれは学校を巻き込み,村を巻き込み,県まで動かしていく。本当の新聞記事を参考に創作した児童文学の名作だ。まだ,地元小中学校の図書館にはあるだろうか?

このごろ公害の問題がクローズアップされていますが、人間以外の生きものにとっては、公害はとっくのむかしからあったわけです。これまでに滅びてしまった鳥や植物をかぞえるならきりがありません。これらは繁殖力がなくなって絶滅したものもありますが、人間が、もっとまえから気をつけていれば絶滅からすくわれたものもたしかにあるのです。被害者が植物や小動物であったから、どんどん死滅してもあまり問題にもされずにきたのですが、生存の危機が拡大して人間にまでおよぶようになって、はじめて大きくとりざたされるようになったわけです。(本書「後記」264ペより)

コメント

  1. 小泊小学校とは!
    うっかり泊小学校と読んでしまいました。
    というのもわたしは泊小学校出身だからです。
    現在も泊小学校はあります。
    泊という地名は昔からの港があるところなので,同じ日本海つながりで珠洲市に親しみを感じています。

    • コメントありがとうございます。「泊」という地名は,けっこうあるようです。あの北海道の原発も泊ですからね。
      この旧小泊小学校は,現在(2023年),金沢大学能登学舎として,大学の研究や里山里海の学習の拠点として利用されています。
      NPO能登半島おらっちゃの里山里海の事務局も,この学舎の1F(元職員室だった部屋)にあります。

  2. 地元が舞台だと嬉しいですね。ぜひ、この春アニメがスタートした「君は放課後インソムニア」も入れてください。七尾が主な舞台ですが、主人公たちが珠洲市にも星の写真を撮りに来ています。

    • みことさん,コメントありがとうございます。
      確かに,『君は放課後インソムニア』にも,珠洲市が出てきますね。「宝立小学校前」というバス停も出てきていました。珠洲弁は話していたのかな。

      • 「釣りキチ三平」に珠洲の珪藻土コンロ(三平の祖父が竹釣竿を作るのに使う)と恋路海岸あたりで蛸すかし漁をする話があった。実家に単行本があるはず。

        • ヒゲキタさん ありがとうございます。
          このときの『釣りキチ三平』は,たしかラブロ恋路に勤めておいでた人も出ていて,学校でも話題になった記憶があります。職員室にも,掲載された本が置いてありました。
          わたし自身は,コミックをもっていませんので,どこかで手に入れてみてみたいと思います。珪藻土の話は,あまり覚えていません。それなら,恋路だけではなく,珠洲市も舞台ですね。まあ,こんなことを書きながら「珠洲にこだわる必要はないな」とも思っているんですがね。能登一般で充分なんです。

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