珠洲たの通信・2025年9月号

2025年度

やっと涼しくなってきましたね。
今年の夏は,早いうちから暑くて,しかも雨も少なくて,シロウト家庭菜園もなかなかたいへんでした。NPOで作っているお米(ひゃくまん穀ともち米)も,いつもより収穫が落ちたようです。ほかの農家さんとは比べものにならないくらい,だらしなく作っていますからね。アズキもまったくダメでした。収穫ゼロ。こんな気候が来年からも続いていくとすれば,ゾッとしますね。
さて,9月といえば,秋祭りシーズンですが,けっこういろんなところで――縮小しながらも――祭りが行われたようです。わたしの地区では,だれも「祭りをしよう」と言い出さなかったので,ありませんでした。それでも,神社境内の草刈りだけして,どさん子で反省会をしたときには,「来年は山車を作りたい。祭りをしたい」という声も聞きました。隣家の金沢で働いている娘も「せっかく祭りだと思って休みを取っておいたのに…」「4月に年間の年休計画を入れるので,来年もちゃんと休み取っておくからね」と圧力をかけていきます。若い子が帰省してくれるのならやらんなんですね。

今月の参加者  N.T  N.R  S.Mi  O.M

今月の写真①

今月の話題本

academia
全国日本学士会の機関誌。Amazonでは手に入りません。ゴメンナサイ。
著作:復興への展望

今月の資料

1 「父を見送る」  B5  6ぺ  S.Mi
今月は,「父を見送る」経験と,学校での「平和学習」への取り組みについて書かれています。
父を見送る
Sさんのお父さんは,6月15日に転倒し入院。その後,8月22日朝に息を引き取られました 。この2ヶ月間で心の準備ができたため,それほど寂しさは感じていないとのことです 。
お父さんの入院中,Sさんは沖縄へ行ったり,夏の大会へ行ったりしつつも,基本的には面会に通いました。夏休みに入ってからは,毎日面会に行かれたそう。
8月6日の夕方,危篤状態を直感したSさんは,気仙沼にいる父親の兄弟姉妹に現状を伝えました 。遠方に住むおばたちは5人で能登まで面会に来てくれました。おばたちは弱った兄と話せたと喜び「教えてくれてありがとう」と繰り返しながら帰路につかれたそうです。その3日後の朝,お父さんは誰にも看取られることなく息を引き取られました 。
葬儀で,喪主である兄に代わって挨拶をしたSさんは,参列者に故人(父)のことを少しでも知ってほしいと考え,亡くなった経緯や人となりを話す文章を前日に作成し,読み上げました。気仙沼のおばたちからは,「とてもいい話だった」と喜ばれ「原稿がほしい」とも言われたそうです。わたしもお通夜に参列しましたが,Sさんの両親の出会いから,お父様の「よそ者としてのたいへんな苦労」を知りました。いい話でした。
平和学習のとりくみ
勤務校では,生徒会主催で「平和学習」を行っており,今年は訳あってSさんが関わることになりました。6月末に沖縄へ行ったことを受け,Sさんの沖縄訪問を中心にした内容だったそうです。
Sさんは,沖縄の基地問題と沖縄戦を伝えることに焦点を定め,沖縄県作成の基地問題の動画やクイズ,NHKアーカイブの沖縄戦の映像を使い,淡々と事実だけを伝える内容のPowerPointを作成。それを生徒会生徒2人にプレゼンしてもらう形をとりました。
学習後,Sさんは,あえて生徒に手書きで「5行は書くこと」という条件付きで感想文を書かせました。感想文からは、戦争が過去の遠い出来事ではないこと,平和について深く考える中学生の正直な思い――たとえば,ある男子生徒の感想文に「なにをすればいいのか分からない」とあった――が読み取れたといいます。

2 「創造的復興に向けてできること」 note記事  N.T
本資料は,短い文章なので,全文をそのまま紹介します。

夏休み最後の研修で、副知事から「能登の創造的復興」についてのお話があった。東日本大震災の復興事例も紹介され、とても刺激的な内容であったが、なぜか心に響かない自分がいた。最近、Kさん主催のサークルで外部支援の話を聞いた時も同じように感じた。
それは、挑戦する意欲がないわけではないけれど、「どうせ無理だろう」という気持ちがどこかにあるからかもしれない。
なぜそう思うのかというと、これまで現場で提案してもなかなか通らなかったり、上からの指示で動くことが多かったりしたからだ。そういった経験を繰り返すうちに、言われたことを効率よくこなすことに慣れてしまった。
本当にやりたいことなら、管理職に粘り強く掛け合ったり、時には対立してでも実現させるべきなのでしょうが、そこまでのエネルギーはない。もしかしたら、そこまで本気でやりたいことではないのかもしれない、とも思ってしまう。
まるで諦めの境地のような心境だが、それでも、自分が育った能登、そして子供達が育つ能登のために、何かしたいという思いはある。一教員の自分に、創造的復興のためにできることはあるのだろうか。


これまでの現場が,上意下達・トップダウンだったのに,今さら「みなさんの意見を吸い上げて…」などと言われても興ざめするだけでしょう。地震発災後も,子どもたちの心のケアどころか,学力を下げないために…とか,ネットを利用して…などというトップダウンの指導の下,子どもも教員もたいへんな思いをしていることを,トップは分かっていないのでしょう。まさに,ああ無情!です。 
こんな時だからこそ,少人数でいいので,これまでのがんじがらめの教育課程から離れて,いま――大災害のど真ん中――でしか体験できないことをやっていくような教育ができないものでしょうか。教科書の知識なんてあとからいくらでもついてきます。そんな意味では,宝立小中学校の七夕キリコ祭りの取組はよかったと思います。もっとも校長は「こんな取組が学校に入ってくるのは今年だけにして欲しい」と言っていましたが,いやいや,普通の勉強より楽しんでいたんじゃないのかな。わたしは「今でしかできないことをやることの方が大切だろう」って言いましたが…。高校受験…飯田高校の倍率は0.5だから,それなりに勉強しておけば入れるよ。それが問題っていう方がおかしい。震災のおかげで,奥能登では高校全入。いい時代だ,と考えればいいのでは。

3 「AIと共に」 note記事  N.T
Nさんは,今年の全国大会で「新しい技術大好き分科会」に参加し,AIとのやり取りをテーマに初の資料発表を行ったところ,発表は予想以上に好評で「面白かった」との声を多く得られ,自分の作ったものを共有し反応を得る楽しさや,交流が深まる喜びを実感したそうです。
しかし同時に,発表内容が「試してみた」レベルに留まり,研究会の発展に貢献できるような「本格的な研究成果」という従来のイメージには届いていないのではないか,という複雑な思いも残ったといいます。
そして,この経験を掘り下げるため,NさんはAIと対話して〈良かった点〉と〈課題点〉を整理してみました。さすがですねえ。
すると,AIからは以下のような指摘が出てきたそうです。
【良かった点】 発表の楽しさ,人との繋がり,自信への繋がりの3点。
【課題点】 研究の深掘りの不足,「仮説実験授業研究会の発展」への貢献意識の欠如の2点。
【今後の取組】研究会の発展に繋がるテーマ選定,研究の深掘り,実践との連携・検証
Nさんは「以上のようなことをAIと相談して作成することで,自分の思考の整理になると思いました」と述べています。なんだかスゴいなあ。時代が進んでいる。

4 「喃々レポ・2025年9月号」  A5  12ぺ  O.M 
今回は,能登半島地震からの文化財レスキュー,アニメ『瑠璃の宝石』の話題,あとは地震関連の本など。
昨年のサークルの日(9月21日)に能登地方を襲った線状降水帯による豪雨災害,本当に大変でした。大谷町では,まだ土砂が積まれたままだし,自宅裏の溝も埋まったままでした。しかし,サークルで話したように,美容師のボランティア団体が溝を綺麗にしていってくれました。

また,サークルメンバーの小学3年生のRちゃんに刺激されて,Prime Videoでアニメ『瑠璃の宝石』を見ました。第1シーズンを見終わりました。このアニメは鉱物採集の話で,自然保護とか,地球の壮大なドラマに関する場面もあって,見応えありました。地学が好きになる子も出てきそうな予感。ただ,主人公の先生役の大学院生・凪の巨乳っぷりがちょっと気になっちゃって…ああいう漫画には不要な気がするんだけどね(笑)。これについては,メンバーから「大人の男性をターゲットにするにはそうするのが一番なのではないか」という意見も。なるほど…とは思うけど(^^;)

8月26日に金沢の石川県立歴史博物館で「未来へつなぐ―能登半島地震とレスキュー文化財―」という夏季特別展を見てきました(開催期間:2025年7月26日~8月31日)。文化財レスキューって,仏像とか掛け軸だけじゃなくて,能登の人々の昔の生活が垣間見える生活の道具なんかも救出してるってわかりました。展示では珠洲関係のものもたくさんあって,旧宗玄家(現橋元家)の襖の下張りや,旧西川旅館さん(現 SHO-TATSU)の「寿」の書(作者は西川松達さんで,お店の名前の由来らしい)や古今雛とか。
特に興味深かったのが,珠洲市上戸町高照寺の木造薬師如来座像。数十年間行方不明だったのが,被災した他の仏像の応急処置中に厨子の中でバラバラのパーツとして見つかって,接合したら薬師如来像が姿を現した。しかも室町時代の制作と判明して「長い間見失っていたものが見つかり,修復される」っていうプラス効果もあったのがせめてもの救いかな。輪島市岩倉寺のバラバラの毘沙門天立像(鎌倉時代)は痛々しかったです。昔,このお寺から千体地蔵まで歩いたんだけど,おそらく今は道は崩壊してるかもしれないね。
 「令和7年度夏季特別展」https://ishikawa-rekihaku.jp/special/special_top.php?cd=2025061601
この展示を見たわたしは,「地元の知人宅の資料も文化財的価値があるんじゃないか」と思い,図々しくもれきはくに連絡してみたら,学芸員さんが珠洲に出張のついでに見に来てくれることになりました。明治期の宝立町の漁業関係の資料(文化年間のものも!)と,戦中の資料(近兄のおじさんの戦死に関するもの)を見てもらいました。特に戦中の資料には,父親宛の手紙に息子の戦死の様子が絵と手紙で生々しく示されていたのにビックリしました。自分たちだけで見たときには気づかなかった資料でした。
能登半島地震関連の本もいくつか紹介しました。中でも『地理・2024年8月号』の特集「速報 能登半島地震」は,専門的だけど読みやすく,地震の仕組みや被害がまとまっていて刺激になりました。能登半島みたいな過疎高齢化が進む半島地域での地震の教訓は,日本全体にとっても重要だと確認した図書でした。
ほかに紹介した本は,以下のもの。
○全国日本学士会編『会誌ACADEMIA № 201 能登半島大震災から1年半を過ぎて~被災地の現状と復興への課題』(全国学士会,2025,95 ぺ,1000 円)
○農政ジャーナリストの会編『能登半島地震∼復興への展望(日本農業の動き224)』(農山漁村文化協会,2024,152 ぺ,1320円)

5 「銀化ガラスの作ろう」他1作品  4つ切り画用紙・冊子   N.R
Rちゃんは,学校の夏休み作品展に提出した作品を2つ持ってきてくれました。
ひとつは「銀化ガラスを作ろう」『瑠璃の宝石』を読んで取り組んだものです。7月のサークルで,実験途中のガラスを持ってきてくれました。その後,ちゃんと銀化したガラスになったというのですから,大したものです(上記写真)。
もう一つが「私の石図鑑」と題された冊子と自分で集めた石標本(上記写真)。これも,収集の一部を以前のサークルで発表してくれましたが,冊子には,もっと多くの石についてまとめられていました。まさに「好きこそものの上手なれ」ですね。Rちゃんが買ってもらった双眼実体顕微鏡も見せてもらいました。小学3年生でこの立派な顕微鏡はスゴイ!
わたしも小学生の時に夏休み作品展に「岩石標本」を提出したことがありましたが,そのときは,石の名前と産地を書いただけで,説明文書なんてつけた覚えがないです。しかも,わたしが提出したのは小6の時。レベル違いすぎですね(^^;)

6 「蛇腹ホースの実験」の発展  口頭  O.M
今夏のわくわく科学教室で取り上げたのは「音の正体」。内容は,サイエンスシアターのネタから頂き,オルゴールを使った実験と,蛇腹ホースを使った実験を軸としたものでした。Rちゃんも参加してくれるということだったので,サークルでは,敢えて詳しい内容は紹介せずにきましたが,今回,講座の内容を組み立てる際に学んだことを紹介しました(参考図書『音を楽しむ』)。
それは「カルマン渦」のことです。

カルマン渦(またはカルマン渦列)は、流れの中に円柱などの障害物が置かれた際、その下流で交互に規則正しく発生する渦の列です。この渦列の発生周波数は流れの速度と比例関係にあるため、カルマン渦式流量計ではこの原理を利用して流体を測定します。自然界では風に吹かれる旗がはためいたり、電線がうなったりする現象の原因となったり、気象衛星が捉える島や山に沿った雲の渦巻きとしても観測されます。 (Google Chrome AIによる概要より)

蛇腹ホース(エアコンのドレンホース)を早く振り回すと音が聞こえてくるのは,ホースの内部でカルマン渦が生成されるからだそうです。
「フエラムネ」というお菓子も,原理は同じ。ラムネの中には空洞があって,その中でカルマン渦が生成され音が出るという。
そこでそのフエラムネを模したものが作れないかと調べていたら,ネットに出ていました。
ひとつは,5円玉や50円玉とフィルムケースの蓋とのコラボです。フィルムケースの蓋に小さな穴を空けて,穴の空いたコインと重ねて空気を吸うと,音が出ます。また,ヤクルトの容器(2つ)の底に穴を空け,底同士をくっつけて,一方の口から息を吐いたり吸ったりすると,やっぱりちゃんと音が出ます(上記写真)。
この〈穴あきコイン+フィルムケースの蓋〉や〈ヤクルトケース2こ〉は,その間にふえラムネと同様の空間ができ,その空間を空気が通るときにカルマン渦が発生するというしくみです。 

今月の写真②

ほかにも,「仮説実験授業研究会夏の全国合宿研究会 石川・能登大会に向けて」という資料をNさんが出してきました。この決意にはビックリ。能登で全国大会を開いたのは,2010年のこと。あれから15年。地震の後の能登で大会をするのも,なかなか刺激的。やりたいことも詳細に書かれていて,その本気度に圧倒されました。
ただ,こういう大きな行事は勢いだけではできません。心配なのは,実働部隊がどれくらいいるのかということ。珠洲たのサークルには60代とそれ以外と半々。しかも弱小チーム。石川県・あるいは北陸圏下のたのしい授業サークル関係者の応援がないとできないことです。若い人たちに来てもらうためには,子どもを預かるサマースクールも充実したいです。「地震による能登半島絶景ツアー」もやりたいし…と,夢は膨らみます。和倉温泉の復興具合も気になります。
来年の立候補に向け,ボチボチ準備をしていきましょう。
とりあえず,石川で声を上げ,のと楽へ行ってきましょうかね。

Sさんから,大きな粒のブドウ(クイーンルージュ)を頂きました(今月の写真②)。美味しかった。さらに,Sさん提供=N宅にプレゼントのマジカルミラージェスチャーゲーム「Guesstures」もありました。

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