珠洲たの通信・2006年11月号

2006年度

 早いもので,もう師走です。昨年の今頃は,中さんの会の準備に心ドキドキウキウキわくわくだったはずです。「やっぱ,去年みたいなのをやりたいなー」とは,視聴覚教育研究大会でお隣に座った若者教師アッコの言葉。じっくり授業を受けるのもいいし,たくさんのものづくりなどを体験するのもいいし,あこがれの教師と夜を語るのもまたいいです。来年は何かしますかね。来年のことをいうと鬼が笑うっていうから,これくらいにしておきます。
 県の理科大会と視聴覚大会。2週間連続で七尾鹿島へ行ってきました。理科大会は高校生が元気だったのが新発見。総じて視聴覚大会の方がおもしろかったです。詳しいこと(というか頭に残ったこと)は,12月のサークルか忘年会でお伝えしますね。

■11月の例会の参加者
M.T(NYSB)  K.Y(NYSB)  M.S(NYSB)  K.H(S市O中)  M.O(S市S小)

今月の写真

資料の紹介

1.「太郎の課題学習」 A4  2ぺ  K.Y
 自閉症の1年生との授業の取り組みの様子を持ってきてくれました。先月困っていた「おしっこ」という言葉でその場を避けるーということも少なくなってきたそうです。
 授業でやっていることは,「しかけ絵本の読み聞かせ」「食べ物の名前カード202」「身近な道具の名前(くもんのカード)」「色合わせ」「形の弁別」「体の名前」「数字」などです。
 これらを繰り返しやりながら,少しでも新しい概念を獲得していって欲しいといいます。色については,だいぶ指導者の願う方向に行っているようですが,体の名前などはまだまだ。「ちょっと欲張りすぎじゃない」という意見も。
 数の認識について,少し話をしました。
 順序を数えるものとしての「数」と量の固まりとしての「数」について,どのように教えるのがいいのだろうかという話になりました。「数を認識する」というからには,単なる順序数ではいけないのではないか。それは,小さな子どもが,1,2,3,…,10と数えることができても,彼が「10」を量として意識できているかどうかとは別問題だということからも分かるでしょう。順番より量としての数を優先して指導すればいいのではないかということでしたが…。こんなことも個人差があるのかも知れませんので,一概には言えないのかなあ。

2.「30までの道のり~勝手な思いこみは失敗の元」 B5  6ぺ  M.S
 10までの数字が読める,タイルを見ただけで数が分かる-ようになった二人の子どもへの次なる課題は…Sさんは次の二つの方向を考えました。
 ①「和が10までの足し算」
 ②「30までの数」
 Sさんは,②を選んで指導を試みました。
 10を超える数に行くときのキーポントはもちろん位取りです。「1のタイルが10こで1本のタイル」-このタイルを十の位に置けるかどうかがポイントです。
 Sさんは指導している間に,10が分かるからと言って30まですんなり言えるものではないと気づきます。そこで,30まで一気に行くことを断念し,とりあえず20までの数を指導することにします。その指導法も,10までの数の時と同じく
数字を順序にそって読む→数字をバラバラにして読む→タイルカードを見て数字を答える→数字を見てブロックを並べる
という流れにしました。すると徐々に読めるようになってきたと言います。そして,30までをもクリアしてきたそうです。こうなれば,あとは99までいけますよね。
 性格も障害も違うマサキとキョウヘイの二人のわかり工合を比べながら試行錯誤する教師の姿を,今月も見せてもらいました。

3.『ブログ的気楽レポ・11月号』 B5  12ぺ  M.O
 話題は次の4つ。
 一つめは仮説実験授業《光と虫めがね》のこと。久しぶりに担任をして,ある程度自由にできる時間があるので,《光と虫めがね》をやってみました。これは私のお気に入りの授業書の一つです。第1部には,問題が数問しかありませんが,なんせ虫めがね一つで驚きの連続。サークルでも「へ~,それは知らなかった」という意見があるほどです。こんなことなら,虫めがねとカメラを持ってくればよかった。
 ピンホールカメラについて調べていたら,なんと,ピンホールカメラで撮ったきれいな画像を公開しているサイトを見つけました。「珠洲たのブログ」にリンクしておきましたので,興味のある人はそこからご覧下さい。
 二つめの話題は,例の3人の女の子。先月は「ペアが変わったようだ」という話をしましたが,今月は,仲良し情報を。
 給食を終えた休み時間,なんと3人が同じ話題で笑っているんです。集まっているわけではなくて,一人が黒板に馬鹿なことを書いて,それを見て教室にいる他の二人が笑っています。4月に担任して以来,初めて見る3人娘の光景。これが引き続きいい方に向かっているのかどうなのかは,次回のサークルで。
 三つめの話題は「古本」について。Kさんの実家の蔵から,大量の古本が出てきたというので学校に持ってきてくれました。その中のいくつかをネット上でいろいろと調査してみた結果をまとめてみました(レポートを見たい人はこちら)。
 手帳サイズの『町村教化指導者必携』というもの。この本の中身は,すごいよ。なんせ「皇祖ノ神勅」から始まるんだから。中央教化団体連合会という団体についても,少し調べてみました。12月のサークルでは,このとき出てきた本をダンボール箱に入れて持ってきますので,興味のある方は,そこでじっくりとご覧下され。
 四つめの話題は,久しぶりに「分子模型」について。
 娘の中学校の文化祭用(親の作品展示コーナー用)に作った「タバコの中の有害分子」の話と,モルカを始めたクラスの子供達のつぶやきを紹介。ここでも,「モルカ」を知っているという前提で話をした私がいけなかったですね。反省しきりです。
 お薦めの本棚では以下の本を紹介しました。
○中沢新一著『哲学の東北』(青土社,1995,238ぺ,1800円)
○田中智学著『日本とはいかなる国ぞ』(天業民報社,昭和3年,306ぺ,80銭)
○板倉聖宣・中一夫著『学力論の構造』(ガリ本,2006,85ぺ,?円)
○岡田哲朗著『気持ちよく生きる』(キリン館,2006,164ぺ,?円)
○板倉聖宣他著『仮説実験授業のある人生Ⅱ』(ガリ本図書館,2006,139ぺ,?円)
○姜尚中著『愛国の作法』(朝日新書,2006,206ぺ,700円)
○週刊金曜日編『教育基本法「改正」のここが問題』(週刊金曜日,2006,63ぺ,600円)
○茂木健一郎著『「脳」整理法』(ちくま新書,2005,220ぺ,700円)
○鈴木美智子撰『ドドイツ・オン・エア』(たる出版,2003,233ぺ,1200円)
○石原莞爾『最終戦争論・戦争史大観』(ネット上・青空文庫)
 田中智学の本は,昭和三年の古本。ネットの古本屋から手に入れました。1300円だったかな。これが,とってもおもしろいのです。夢中になって読んでしまいました。読み終わった頃は閉じているところが外れて全ページがバラバラになりましたが…。あと,NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀」の大ファンの私は,これからも茂木さんの本を見るたびに買うのではないかと思います。

4.『進路だより №3,4,5』 B5  14ぺ  K.H
 中学校で出している進路だよりの最新号を持ってきてくれました。
 №3は運転手さんの仕事について書かれた文章の紹介。№4がO中の先生達から聞き取りした進路決定の話について書かれたもの。
 №5は,珠洲市・能登町にある高等学校の紹介です。
 №4は,自分の学校の先生達のことでもあり,子どもたちも興味を持って読んだのに違いありません。残念ながら3年生の感想はとっていないとのこと。こういう子どもに刺激のある内容を取り上げたときには生徒さん達の感想をとって,次の号にその感想を載せたりすると,もっともっとツーウェイな「進路だより」になると思いますよ。
実際,「その学校・その職業が自分にあっているかどうか?」なんて,それに進んでみなければ分からないものです。ましてや,他の人には決して分からない。それだからこそ,「その時,とりあえず自分で決めた」ということが大切だと思います。変わる可能性があるからこそ,他人が決めるのではなく自分が決めることが大事だと思うのです。(№4より)

5.『MY BOOK』 B5  4ぺ  K.H
 ここ2ヶ月で読んだ本を紹介してくれました。
○小笠毅他著『数楽力への挑戦』(新評社)
○筑紫哲也著『スローライフ』(岩波新書)
○小原茂巳著『たのしい教師入門』(仮説社)
○芳沢光雄著『子どもが算数・数学好きになる秘訣』(日本評論社)
○小原茂巳著『いじめられるということ』(ガリ本)
○梶田叡一著『形成的な評価のために』(明治図書)
○山路・中・二階堂共著『教育という仕事を考える』(ガリ本)
○鍋島・菅原・松本共著『学級崩壊をこえて』(ガリ本)
○明橋大二著『子育てハッピーアドバイス3』(一万年堂出版)
○井上・山田『授業記録 落下運動の世界』(ガリ本)
 『数楽力への挑戦』は,「算数・数学の根本を考え直すための良い本です」とHさん。
 中学校の数学教師として,このあたりのことを視野に入れておくのとそうではないのとでは,授業づくりにも子どもを見る目にも相当違いがありそうです。
 芳沢さんの本については,メンバーから反論あり。受験対策のご家庭向けならいざ知らず,教師の立場として「算数数学は予習中心で」とは言えません。予習していることを前提にした授業ほど,子供達を分断するものはありません。

6.『落下運動の世界・授業記録』 B5  11ぺ  K.H
 数学の時間で中3の生徒とやった仮説実験授業《落下運動の世界》の授業記録をまとめてきてくれました。
 問題1~問題3にかけて「二つの球は,ほとんど同時に落ちる」ことを学んだ生徒たちは,問題4の「10mくらいのところから落としたら,どうなるでしょう」に対しても「ほとんど同時に落ちる」を選んでいます(なんと全員です!)。実験結果に「え~」っと声が上がったと言うのも頷けます。まさに「カシコイからマチガエタ」んですね。こう言うときこそ,子どもたちの感想をとって,「真理は多数決で決まらない」「カシコイからマチガエル」などという,コトワザを教えていけたらいいなあと思います。

7.『学級通信・つむぎMAX』 B5  8号  M.O
 今月持ってきた学級通信のテーマ(というか内容)は次の通りです。
№68「<ゴミと環境・第1部>の感想」…仮説実験授業≪ゴミと環境≫の感想
№70「作者から返事が来ましたよ」…『宇宙船…』の作者からのお返事
№75,76「<いのちの授業900日>を見て」…道徳で見たビデオの感想
№79「誕生日ってどんな日?」…「今日は何の日」というHPの紹介
№80「道徳<瞬間の一打>の授業」…道徳の感想文
№81「<わらぐつの中の神様>を勉強して」
№82「建前は人間関係の潤滑油」…ドラゴン桜の一言。なんでも本音で-は危ない
№83「<自分らしさ>を考える」…GTと行った道徳の授業の感想文集
 こうしてみると,ずいぶん道徳を真面目にしているのがわかります。副読本をやることはそんなにありませんが,週に1回の道徳は,みんなでいろんなことを考える時間として大切にしていることは確かです。《生類憐みの令》もやりたいのだけれども,3学期時間があるかなあ…。

8.『飲酒運転は増加しているか?』 A5  6ぺ  中(紹介:S)
9.『<いじめ>は増加しているか?』 A5  8ぺ  中(紹介:S)

 昨年,珠洲に来ていただいた中さんから,二つのプランが送られてきました。
 最近話題に上っている,「飲酒運転」と「いじめ」を,統計から見たものです。この二つとも,「今ほどひどくなったことはない」というような報道ばかりが先走っていて,危険さえ感じていました。マスコミの報道に踊らされることなく,きちんとしたデーターを知って,じっくりと地に足をつけて対応していきたいものです。
 両プランとも,予想しながら進められるようになっていて,楽しく学ぶことができました。
 飲酒運転もいじめも,以前と比べればとっても減ってきているのです。
 それにしても,素早くこういうプランを作ってくださる中さんは,やっぱりすごい人ですね。
かえって,少なくなればなるほど一つの事件が衝撃的に聞こえてきます。そして,その少ない事件がこと細かに報道されることになります。 (中略) いつの間にかみんな「増えているに違いない」と思い込んでしまうのです。そして,危機感や不安感が高まってしまいます。けれども,そういう大きな問題を解決するのは危機感や不安感ではなく,正しい問題の理解と分析です。(「飲酒運転」6ペ)

 その他にも,「フックの書いたシラミの図」,校内研究通信「koudou」第7・8号(O),「蔵から見つけた紙芝居」(S),「速く走る方法」(中,紹介:S)もありました。
 この紙芝居は,ちゃんと枠まで付いていてこのまますぐに学級で見せてあげることができます。「京のかえる 大阪のかえる」の落ちが分からなくて「…」だったのは,約2名でした。ホントに情けないねえ。子どもたちは分かるかどうか,わたくし,そっくりそのまま借りていきました。
 さて,5年生に読んであげました。この物語のおもしろさが分かった子は,12名中1名しかいませんでした。この紙芝居の注意書きにも書いてありましたが,読み方に工夫をしないと,小さい子には分からないと思います。

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