「奥能登国際芸術祭2020+」私的参加報告記

奥能登国際芸術祭2020+ さいはての街・珠洲

日置(ひき)地区

05.きのうら,きのうら  蓮沼昌宏 

 木ノ浦ビレッジを会場に,いくつかのキノーラという「パラパラ漫画」が置かれていました。自分でハンドルを回すと,漫画が動き出します。よく,教科書の端っこに絵を描いて,パラパラやったことを思い出していました。

作品に具体的なストーリーはなく,木ノ浦海岸や珠洲にまつわるものや出来事を軸に,コロナ禍のなか過ごした木ノ浦での日々に感じたことをところどころに織り込んでいった。アニメーションに登場する子供は,作家の長男がモデルになっている。

『奥能登国際芸術祭2020+公式記録集』p.47
これ,著作権は大丈夫でしょうか。もしダメならすぐに削除しますので,教えてください。

06.Identification-同一視すること  原 広司

 今回の芸術祭で,よく分かんなかった作品の一つが,この「同一視すること」です。
 木ノ浦海岸全体を使って表している(らしい)のですが,それが一体何なのか?(上写真および右上写真)
 木ノ浦ビレッジの中には,立体作品の見本が置かれていたり(右中写真),たくさんの写真が貼られていました(右下写真)。
 一生懸命(というほどでもないけど)理解しようとしたのですが,わたしには…というか,わたしたちには…(^^;)

木ノ浦のシャク崎側に「シグマ(8つの孔)」と「ブーケ(8つの花びら)」という2つの東屋を並べて置き,それを遠巻きにするように東,西,北を示す3基の三角柱を配した。原さんは「遠く離れた8つの場所と物語を選んでみよう」と,古今東西の文字を列挙し,その物語の舞台となっている世界各地の海と木ノ浦を結んでみせる。(18ぺ)

08.幻想考  さわひらき

 光と闇と映像と音の世界。この作品もよく分かんなかったのですが,分からないなりに面白かったです。部屋の中を飛行機が飛ぶ映像なんて,意味は分からないけど,見ているだけでたのしい。
 なんと,作家のさわひらきさんは,石川県出身。それだけで身近に感じます。

さわさんが奥能登の神事「あえのこと」で録音した「おいで,おいで」という古老の声に促されて観客は奥の部屋へと誘われ,いつしか作者独特の世界に魅了されていく。(19ぺ

09.ornaments house  キジマ真紀

 キジマさんは,前回の芸術祭では,旧日置小中学校の中庭で地元住民が作成した旗を展示しました(「奥能登国際芸術祭2017」見学記)。
 今回は,狼煙地区にある船小屋を会場に,地域住民が作ったオーナメントを多数展示してありました。キジマさん曰く,
「皆さん,とても素敵なアイディアを持っていて,地元の人から刺激を受けることが多いです。自分の作品のお手伝いをしてもらうというよりは,一人一人がアーティストとして参加してもらうという感覚です。」(20ぺ)

三崎地区

10.Autonomo/図書室  カールステン・ニコライ

 面白いこと考えますよねえ。
 ピッチングマシーンからランダムな向きで硬式テニスボールが打ち出されます。それが対面の壁に当たり,跳ね返り,天井から吊されている大きな円盤にあたったときに大きな音が不規則に出るんです。ここは旧粟津保育所の遊戯室。遊び心を表現するのにはピッタリの場所ですね。
 ここへは2度も足を運びました。最初行った時,受付の方から「今,マシーンが壊れています」と言われたので,中に入らないで帰ったのでした。
 転がってきたボールは係の人が集めます。これもまた,人間的でいい。

写真右には,テニスボールを集めに来た係の方のブラシが写っています。このボール集めの姿も含めて「作品」ですね。

蛸島地区

14.珠洲(16mm)・珠洲(デジタル)  カン・タムラ

 実はこの作品も,わたしにはよく分からなかったもののひとつです。
 珠洲焼資料館の2階ではフイルム映写機が回っていました。外にある登り窯の奥にもデジタル映像があったらしいですが,わたしは気づかずに通り過ぎてしまいました。

15.漂移する風景(2017)  リュウ・ジャンファ

 奥能登国際芸術祭2017では,奥能登の観光地である見附海岸に設置されていた作品です。前回の芸術祭後,珠洲焼資料館横に置かれています。今回の芸術祭でも,そこで展示されていました。
 前回の作品紹介は「奥能登国際芸術祭2017」見学記をご覧ください。

16.mesocylone/蛸島  青木野枝

 芸術祭では,駅や保育所と共に,お風呂屋さんも,作家にはなにかピンとくる場所のようです。2017年の正院町恵比寿湯を舞台にした2つの作品のことも,ちゃんと頭に残っています。お風呂屋は,人々が集う場所ですから,いろんな人々の思いが融け込んでいそうです。今回舞台になったのお風呂屋さんは蛸島町の元高砂湯です。
 脱衣所には鉄のリングが天井から下げられていて,浴場のタイルの上には石けんが積み重ねられている。「湯の記憶」と言ったところかな。

17.連続する生命  田中信行

 2017の時にも,野々江町の土蔵の中に漆塗りの作品を展示した田中さん。今回は,蛸島の島崎家の建物(「浜屋造りの母屋」と「土蔵」)を舞台に乾漆による立体作品を2点展示しました。なお,会場となった島崎家は,北前船の時代に海商として栄えた家だそうです。
 玄関に入ると,島崎家にもともとあった家具類も飾られていて,「一斗升」なんてはじめてみました。

18.Something Eliseis Possible/なにか他にできる(2017)   トビアス・レーベルガー

 この作品は前回の奥能登国際芸術祭2017からずっとこの地にありますので,珠洲市民にとってはこの風景が日常になっています。もっとも,双眼鏡などは,芸術祭会期中だけ設置してあるのだと思います。「奥能登国際芸術祭2017」見学記もご覧ください。


こんな風景も②

会場を外から見た写真や見学途中で見つけた「勝手に芸術作品」。

正院地区

19.第一波  デイヴィッド・スプリグス

 こんな作品は,わかりやすいし,大好き! 以下は『奥能登国際芸術祭2020+公式記録集』より引用。

90枚の透明シート1枚1枚に図像を描き,重ね合わせることで現出した幅9メートル,高さ4.5メートル,奥行2.3メートルの荒れ狂う赤い津波は,その物質的な厚み,大きさ,血のような鮮烈な色で,見るものに深い感情的は経験をもたらす。…中略…こちらに押し寄せ,砕け散る寸前の《第一波》がもたらす緊張は,パンデミックの初期の局面で私たちの多くがもった感情と類似するものであろう。

『奥能登国際芸術祭2020+公式記録集』p.83
横から見ると,スクリーンが何枚も重なっているのが分かります。

20.植木鉢  大岩オスカール

 大きな植木鉢(元は酒造会社のタンク)に植物が植えられています。ま,言ってみればそれだけです。展示会場になっているのは,元のと鉄道の正院駅。タンクが大きいので,植物も樹木です。秋になると紅葉するようです。毎年楽しめそうですね。

21.ごめんね素直じゃなくて  クレア・ヒーリー&ショーン・コーデイロ

 このお店によく通ったよなあ。珠洲に帰ってきたころは喫茶店として,その後はある議員の事務所として。
 部屋に入ると大きな満月のようなものが。近づいてよく見ると,表面は漫画雑誌の用紙でできているようです。クレーターもあるので,月を表しているのに違いありません。
 作品のタイトルが「ごめんね~♪ 素直じゃなくって♪」ですが,これってあの有名なアニメ「セーラームーン」の主題歌の出だしですよね。
 月にかわって おしおきよ~

昔の漁師たちが,月の満ち欠けを頼りに漁に出ていたことから着想を得て,漫画雑誌の古本を素材に満月のオブジェを制作した。(41ぺ)

22.海図  盛 圭太

 壁に線を書いてあるように見えるが,近づいてみると,この線は何本もの絹糸や金属線で描かれていることが分かります。

盛さんは,糸の端をある一点に張り付け,そこから「360度ある無限の可能性」の中からもう一つの点を見つけて張り付けて,線にするという手法を取っている。円に見えるものも直線の集合体だ。(42ぺ)

 こういう説明を読むと,何やら数学で習った積分を思い出すのは,わたしだけかな。奥の深い作品だと思いました。

23.再会  ムン・キョンウォン&チョン・ジュンホ

 元瓦工場にはほぼ操業時のままの機械が置かれていました。その設備に音の仕掛けを作って,この瓦工場がもう一度生き返ったかのような雰囲気を作り出していました。
 音源を探ろうと思ってキョロキョロしてみましたが,分かりませんでした。
「土地の歴史や失われた産業に捧げられるラプソディ」(43ぺ)

24.スズズカ(2017)  ひびのこづえ

 ひびのこづえさんの作品は,パフォーマンスがあってこそ。2017年にも増して一般市民にも門戸を開いてのパフォーマンスが繰り広げられました。スズズカを抜け出し,ラポルトの屋外をはじめ,珠洲市内13カ所でも行われました。元同僚の娘さんも可愛いダンスに参加していました。珠洲ではもうすっかり定着したイベントになってきましたね。

25.あかるい家 Bright house  中島伽那子

 小屋の外から透明なアクリルパイプを通して光が差し込み,小屋の中にその光の○が映し出されています。この小屋は元珪藻土工場の事務所。光の不思議な世界を体験できました。

コメント

  1. すごく充実したサイトですね。
    反原発の記録も貴重ですね。「今」はどうなのかな。小宮山さんを思い出しました。
     ( 今日『たの授』11月号の最終校正の日です。「サークル案内」の校正ついでにアクセスしちゃいました)
    奥能登国際芸術祭,とても見ごたえがありました。
    このように,「好み」で対象をしぼって紹介してくださると,とても見やすく,興味を持てます。

     「山岳渓流釣師」とは誰のことだろう。興味あり。だいたい, 「奥能登」は憧れの地です。死ぬまでに行ってみたいところです。あっ,じゃ,いそがないと! と気が付きました。
     

    • なんとまあ,竹内会長さんからコメントを頂くなんて,喜ばしい限りです。
      細々と続けてきたサークルも,若い子が来てくれるようになって,こちらも気合いが入ります。
      サイトの内容についても,感想を述べてくださり,ありがとうございました。

      奥能登へは,ぜひ来てください。
      全国大会の時の会場だった和倉温泉は,中能登あたりですからね。ちなみに,金沢に近い部分を口能登と言ったりもします。

      お待ちしています!!

タイトルとURLをコピーしました