珠洲たの通信・2021年10月号

 わたしにとってはあっという間の1ヶ月でした。よく働いた1ヶ月でした。働くのは久しぶり,10月末からの2週間なんて,能登学舎に通い詰めでしたからね。
 退職して1年半,ここに来て「不思議だなあ」と思うことがあります。それは,〈自分に与えられた時間について〉です。現役時代は,朝から晩まで本当に忙しくて…それでも隙間時間を見つけては,自分の趣味的なこと(サークルのこと,音楽に触れること,ブログやHPを更新すること,録画番組を見ることなど)をしてきました。その点,退職してからは,たっぷりと自分の時間があります。だから,これまで以上にいろいろなことができると思っていました。「珠洲たのしい授業の会HPのリニューアル」を考えたこともありました。ところが,実際に生活してみると,いつの間にか時間がなくなっていくんですね。どう考えても以前よりは時間がたっぷりあるんですが,なぜかなくなるんです。特にパソコンでいろいろやるってことが,だんだんと面倒くさくなるというか,後回しになるんですよ。「パソコンの前に座るくらいなら,外でも行こうか」ってなっちゃうんです。だから,雨が降ると選択肢が減った分,安心してパソコンの前に座れます。しかし,それも長続きしない。読書を優先してしまいます。
 これまで長々と書いてきましたが,これは今月のサークル通信が(も?)遅れてしまった言い訳でした。この通信,19日の朝5時ごろから書いています。現役でもあるまいし,どうして朝,仕事をしているんだ!って思いますわ。ゆっくり寝ろよ!

■10月の例会の参加者(7名)
 H.K   S.M   N.T   K.M   S.M   W.T  O.M  

資料の紹介

1 「話題ありすぎ!」 B5  4p  S.M
 仮説実験授業研究会のグループで行っているZoom研究会の参加報告をしてくれました。今回のテーマは「学力テスト」です。全国1位になった石川県で,どのような取り組みが行われているのか,他の県はどうしているのかが,話し合われました。石川の現状を赤裸々に語ったのはSさんです。Sさんは,自分の勤務校での「学テへの取り組み」について,「学テ前の補充授業」「学テ後の自校採点と分析」「日々のスキルタイムと教育課程(5分間休み)」について報告したそうです。
 その反応について,Sさんは,
この話をしている間に,チャット欄は大炎上したようです(笑)発表途中にもいろいろ質問を受けて答えるという形でしたが,そこまでやっている(私としてやらされているのですが)ことに驚愕の声が上がり続けました。
と書いています。
 他県の様子もよく分かりました。お隣福井県でも,石川と同様な時もあったようですが,トップが変わった今では,学習の方向性が「楽しい」「子どもたちが興味を示す」授業へとシフトしたそうです。また他県では「学テのことが職員室で話題にも上がらない職場もある」そうです。いや~,日本は広いですね。そして,石川県の教育界もそろそろ考えて直して欲しいものです。チャットには,
 そういう場所でのたのしい教師の存在は,ほんとうに重要ですね…絶滅危惧種として保護されるかもしれない…
という力強い応援発言もありました。ますます,わたしたちや,このサークルの存在意義が高まっているということでしょうね。
 わたしたちは,〈シャープゲンゴロウモドキ教師〉として大切にしてもらえるのですよ。大切にしてくれるのは,もちろん,子どもたちとその保護者たちです! 学校で在来種のふりをしてテリトリーを増やしているだけのミドリガメやアメリカザリガニには負けてはいけません。そんな輩こそ,本来は外来種であり,子ども中心主義の和を乱す元兇なのですから。
 低学年の定番メニュー《足はなんぼん?》の報告もありました。これはSさんの好きな授業書だそうです。
生活科でバッタやカマキリなどを追いかけて,虫かごで飼ったあとの授業です。子どもたちは虫を見ていても足を見ていません。だからおもしろいのです。
とSさん。この〈見れども見えず〉〈予想しなければ何も見えない〉という仮説実験的考え方を知っていることが,仮説実験授業を実施できるかどうかの分岐点の一つかもしれません。「何度も見ているから分かっているだろう」「分からないのはしっかり観察しないからだ」なんて思ってしまうのが常識的な考え方をする教員の姿のようですので…。これじゃあ「事実を教えて終わり」としたくなるのも無理はないです。授業後の子どもの感想に
・むしのあしがぜんぶ6ほんなのがすごいです。
というのがありましたが,まさにこれが仮説実験授業の魅力です。〈新しい知識を感動的に知る〉ことは,今後の学習意欲に繋がる貴重な経験だと思います。
 《足はなんぼん?》の最後は「足算」というカードゲーム。見た目には楽しんでいる様に見えない子どもたちでしたが,授業が終わったあとで「あ~,楽しかった」「こんなのを知っている先生はすごい」と言っていたそうです。
 「漢字カードあそび」の話も興味深かったです。実物のカードを見せてもらいながらの報告でした。「数字で1があるのにどうして一もあるのか」「数字の漢字にはなぜ読み方がいっぱいあるのか」を,なかなか理解できないようです。そこで,カードの登場。低学年って,大人にとっての常識的な概念の指導をするので,大変だなあと思いました。
 それにしてもわたしたちは「一つの漢字に複数の読みがあること」を,どのようにして覚えたのかなあ。違和感はなかったのかなあ。
 改めて考えてみると数字を漢字に翻訳するなんて,不思議な変換だよなあ。「100を百」なんて,なんか変だなあ。「漢字はひらがなの代わり」じゃないんだなあ。
 中一夫さんが板倉さんの文章を紹介してくれた資料「知恵を生かして乗り越える」も配付してくれました。この板倉さんの文章は,2008年の講演であることを考えておかなければいけないですね。今の様な退職後の再任用制度がなかった頃に,敢えて教師を続けたいと思うような人はどんな人なのかだと思います。

2 『「プチ革命」って何だ?』 A4 4p   K.M
 このサークルでも何度か話題に上ったドアリン助川著『プチ革命 言葉の森を育てよう』の読書感想文+意見表明文を書いてきてくれました。
 同じ本を読んでも,読者がその文章から受ける印象,あるいは何か引っかかる場所は,人それぞれです。まさに「〈見かた〉によって〈見え方〉が変わる」(K)わけです。今回のKさんのレポートは,1冊の本について書かれたものとしては…うちのサークルでは…最長のレポートかもしれません。読書感想文が,このようにしてスラスラ書けるのは,自分の生き方と比べて綴っているからでしょう。
 ドリアンは「革命」について次のように語っています。
革命とは,意識的な行為をもって,自分の状況を変えていくことだ(本書p.22,孫引き,以下同じ)
 目的意識的に自分の状況を変えていくこと,これが革命ならば,わたしたちたのしい授業学派の教師は,自分の状況を変えようとしているし,また,少しずつ変えているでしょう。まさに,革命の中を生きているのです。その時の社会状況に自分を合わせながら生きていくという「りこうな生き方」をしていると,時代が大きく変わったとき,その時代の終焉と共に泥沼に引きずり込まれるかもしれません。
どんな時代が来ようと,どんな環境にあろうと,あなたの心に自由な飛翔があるなら,そしてそれを信じられるなら,フロンティアの最前線に立ち続けることは可能。(p.23)
 ドリアンは,心の自由な飛翔のためには「言葉」が必要だといいます。わたしたちはもともと言葉の森の中に住んでいて,その言葉の森に支配されて話したり考えたりしています。しかし,少しの革命をしようとしたいのなら…
この言葉の森に,あえて自分で選んだ一本の木を植えてみるという行為が始まりとなります。意識的に,自分の好きな木を植えるのです。(p.41)
 その「選んだ一本の木を植えてみる」具体例としてとして,Kさんは,朝日新聞に掲載されたドリアンの記事「名詞の森」を紹介してくれています。
 言葉はあなたを助ける。言の葉が寄り集まって森になるとき,そこから柔らかな風がふき始め,あなたの背中を押してくれるからだ。…中略…どんな言葉があなたを助けるのか。次の一年はまず,名詞の葉っぱをたくさん集めてみよう。(朝日新聞2012/12/27より,孫引き)
 ドリアンは,本記事で「ある分野を選んで,それに関する名詞を徹底的に覚える」ということを提案します。その時,その名詞をしっかりしたイメージと共に覚えることで,その名詞はあなたの中に新しい森を作ってくれるのです。
 わたしにとっての新しい言葉の森は,仮説実験授業でした。仮説実験授業に関する本を集め,それに関する名詞をイメージ豊かに覚え,さらに,研究会に関わる人たちの本を読み,その人たちが影響を受けたという本も読む。このくり返しで,わたしは,世の中の変化に翻弄されることなく,40年近い教員生活を続けてくることができました。
 レポの最後に,Kさんは,自身が子どもたちと取り組んできた様々な実践を〈名詞〉で紹介してくれています。いずれも「心,動かすための」ものです。これらの実践は,この〈名詞〉を知らなければできないことです。新しい〈名詞〉を知り,しかもそれを〈イメージ豊か〉に捉えていてこそ,実践に繋がります。それが,自分の自己変革・プチ革命にも繋がってくるんでしょう。
 サークルというのは「〈新しい名詞〉を知る場所」でもあるような気がしてきました。

3 「Gibbous moom」 B5  2p          N.T
 「いろいろと」と題されたレポートに書かれているのは,次の4点。「川崎たのしい授業体験講座」「朝の連続小説」「きっと,うまくいく」「授業書・プラン等」です。
 「授業体験講座」では,Zoomとは言え,Nさんは初めて講師を務めました。しかも2コマも…です。今年子どもたちと初めてやってみた授業書《ものとその重さ》でしたが,これを機会に本人も勉強になったようです。こうして仮説実験授業に関わり始めたばかりの人でも講師ができる…このことこそ,仮説実験授業(授業書)の科学的な性格を表してます。この講座についてNさんは,
スタッフから助言もしていただき,準備や予備実験に時間をかけたので,子どもたちにした授業よりもスムーズにできました。これから自分の授業書の定番になりそうです。
と書いています。この「助言を受けた」という点について,会を主宰した横山裕子さん(神奈川・小)が,『たのしい授業2021年10月号』で次のように述べています。
各講座2回の練習会を行い,スタッフの分担練習だけでなく,画面の作り方のアドバイスから,授業書の狙いについての突っ込んだ討論まで,濃厚な研究会のような時間を重ねました。(p.149)
 「濃厚な研究会」というのがとても素敵です。講師になった人たち自身が学んでいるのです。横山さんは同報告の「最後に」でも,今回の講座の準備段階の意義について熱く語っています。
 実行委員・講師,それぞれの全力傾注,世界を笑顔に押していく,思いのつまった3日間でした。いや,この3日間に至るまでに費やした精力の方が膨大です。知識と技術をもったベテランたちが,若い講師の皆さんに,ハンドリングやグッズなど,講座運営の選択肢を惜しげもなく伝える機会にもなりました。それを,1対1でなく,集団で行えたことで,若い講師や実行委員のみなさんの飛躍的な学びを作ることができました。
 講座準備は猛烈に大変ですが,得るものも大きい機会にできていると思います。ともに学んでいきたいと思ってくださる人たちと,今後も歩んでいけたらと思います。(p.153)

 引き受けた講師をほっぽり出さない。しっかりサポートしてくれる。それは,若手教師の学びになるのはもちろん,ベテラン教師にとっても「どのようにサポートすればいいか」という学びにもなる。講座そのものが,研究会の発展に寄与していることも,また真実でしょう。
 Nさんは,これを機会にいろんな場所で講師を引き受けるようになるでしょう。楽しみです。と同時に,この能登でも,久しぶりになにかやってみてもいいかなと思います。
 授業書を体験している子どもの感想に,
こんな色々な面白いことを教えてくださり,ありがとうございました。
という言葉があったそうです。卒業や学年末を控えた感傷的な頃ならいざ知らず,普段の授業の中で子どもから感謝の言葉を受けるなんて,まさに教師冥利に尽きるというものです。これからも,重心をぶらすことなく,前に進んで行ってください。
 たまたま見たというインド映画『きっと,うまくいく』というのを教えてくれましきっとうまくいくた。インドの学力社会を風刺している映画です。「今の石川の教育界と重なるような気がする」というので,わたしも見てみました。いやー,面白かったです。そして考えさせられました。自殺までする人がいるのに,あそこまで陽気に仕上げられているのは,さすがインド映画ですね。でも中味はあります。是非,ご覧になってください。きっと何か心に残ることでしょう。AmazonPrimeVideoで見ることができます。
日の出の勢いで躍進するインドの未来を担うエリート軍団を輩出する,超難関理系大学ICE。エンジニアを目指す天才が競い合うキャンパスで,型破りな自由人のランチョー,機械より動物好きなファルハーン,なんでも神頼みの苦学生ラジューの“三バカトリオ”が,鬼学長を激怒させ,珍騒動を巻き起こす。 抱腹絶倒の学園コメディに見せつつ,行方不明のランチョーを探すミステリー仕立ての“10年後”が同時進行。根底に流れるのは学歴競争。加熱するインドの教育問題に一石を投じ,真に“今を生きる”ことを問いかける万国普遍のテーマ。(https://www.amazon.co.jp/きっと,うまくいく-字幕版-アーミル・カーン/dp/B00ITGLFVK 参照 2021年11月19日)

4 「喃々レポ 2021年10月号」 A5  8p         O.M
 最近の自分の生活についてダラダラと書いてきました。だから,あまりみなさんのためになるものはないと思います。でもわたしの中では,これまでに自分のなかにはなかった言葉(名詞)がたくさん入っているんです。農作業の言葉,植物の言葉,絶滅危惧種に関する言葉などです。これらが,もっともっとイメージを持って迫ってくるようになれば,それこそ「どんな経済変動がやってこようとびくともしない,わたしの,わたしだけの財産」(ドリアン)になるのだと思っています。
 もう,今月は,ドリアンの言葉で締めくくるしかないな。
言葉をイメージでき,覚えられるなら,あなたはいくらでも森を作れる。虹をかけられる。生きていける。生まれて良かったと本当に思えるあなたの人生を進んでいける。(上掲,新聞記事より)
 秋の夜長,わたしも,もう一度『プチ革命 言葉の森を育てよう』を読んでみようかな。

 「仮説実験授業・夏の全国合宿研究会能登大会」のDVDもお分けしました。これからも新作を紹介しますので,ご期待ください。
 今月も新しいメンバーが加わり,一段と楽しい会になりました。若い人も増えてきたので,今後,毎月一本ぐらいは,なにかプランのようなものをやりたいなと思います。
 わたしのいまの考えとして…。
 自分の近況レポートも書いてくるかもしれませんが,それは,配付するだけ(あるいはDropboxに入れるだけ)にします。そして,3時ごろからの30分~40分ほどいただいて,いろんなプランをやってみる時間を取ろうと思っています。これがいつまで続くか分かりませんが,ちょっとだけ挑戦してみます。ベテランの人たちにとっては,既に知っているプランが多いと思いますが,「これはどうなるの?」という新しい謎も生まれてくるかもしれません。みんなで考えるたのしさを味わえたらいいなと思います。

 Nさんへの質問です(11月のサークルで聞かせてください)
 横山さんが,先の報告で次のようなことを書いています。
 授業書丸ごとの体験は時間的に不可能です。内容を精選し,予想討論に時間をかける問題と,予想を聞いたらすぐに実験に移る問題とを見定めてメリハリを相談。その上で,基本の授業書は2枠とって時間を確保。授業運営の実際の様子を再現しました。(上掲書,p.149)
 Nさんが担当した《ものとその重さ》では,どのように精選されたのでしょうか。教えてください。他の講座に参加された方も,もし覚えているようでしたら,どのように授業書や授業運営をしていたのか,教えてくだされば幸いです。今後,自分たちが講師になって講座を開く時に,こういうテクニックは必要になると思いますので。
 勢いよく書いていたら,久しぶりに長くなっちゃいました。

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