珠洲たの通信・2012年7月号

2012年度

 またまたずいぶん前の資料をまとめてみます。もういま(2023年3月)から十年以上も前のサークルですから。まだまだわたしも若かった(^^;)
 そんなわけで,参加者も分かりません。4人のレポートがあるので,4人以上来ていたのは確かです。

今月の資料

1 「風のようにおもむくままに」 B5 6ぺ  S.Mi
 9名しかいない学級から一人転校したそうです。先生が「○○くんのさようならの会をしよう」と言ったら,子どもたちから「さようならじゃなくて,ありがとうの会の方がいい」と返されたそうです。なんとステキな子どもたちだでしょう。「ありがとうの会」は,思いっきり賑やかに歌ってゲームをしたそうです。
 現勤務校には,夏休み前に臨海教室(全校海水浴)があります。珠洲市の学校にはプールのない学校が多いので,夏休みには海で泳ぎます。そのとき,PTAの方達が交代で監視をしてくれるんです。これは編集子が子どもの頃もやっていました。最近,少子化のために,その海水浴さえもなくなっていくようですが,この小学校では未だにやっているんですね。それで,夏休み前に,「海水浴の入り方」の学習も兼ねて全校海水浴が計画されているわけです。
 前置きはこれくらいにして…担任の子どもたちと一緒に久しぶりに海に入ったSさん,波が来て少し海水が入った瞬間に,昨年の津波のことを思い出したそうです。
自然の楽しさと残酷さを一瞬感じながら,子どもたちとじゃれあいました。
というSさんの言葉が印象的です。
■楽しかった図工
 さて,授業の話題は図工で取り組んだ「ダブルスピンケース」です。これは,『ものづくりハンドブック6』(仮説社)に唐澤道朗「ダブルフィルムケースをまわそう」という記事でも取り上げられています。子どもたちは,フィルムケースの色々な場所にシールを貼り,自分で工夫して遊びだしたそうです。子どもたちの感想を読むと,楽しかったことが分かります。
・わたしのものは,大かんらん車に見えました。上と下を同じにするとどちらもいっしょです。けど上と下をかえてみるとちがうように見えます。チューリップやにんじんに見える人もいました。すてきにするとにぎやかになりました。できあがったらすごくうれしかったです。シールをはったらすごくよくできました。いろいろもようをたくさんつけたから,大かんらん車に見えたと思います。作ったらたのしいです。(K)
・わたしのはちょうちょみたいになりました。ちょうちょうがうかんでいるように見えました。(S)

最近は,このフィルムケース自体が手に入りにくくなっています。メルカリなどでも販売されていますが,バカ高いやつもあるので,仮説や科教協の研究会などの際の研究会員のお店(楽市楽座)で探した方がいいかもしれません。(2023/03/23追記)

 また「くるくる迷路」にも取り組んだそうです。これは2003年の仮説実験授業研究会の広島大会で滋賀のHさんが紹介されていたものです。ここでは巧く紹介できないのでスミマセン。
■dLはなんのために教えるのか
 dLという単位についての話もありました。小学校2年生の算数で教えてきたdLという単位。イヤ,以前はリットルを「ℓ(斜体字のエル)」と書いたものです。しかし最近はなぜかリットルを「L」と大文字で書くようになりました。ただし,世間ではmLと書くよりもmlと書いてあるものが多いような気がします。この混在はどう考えればいいのでしょうか。そもそもデシリットル(dL)というような,大人になると誰も使わない単位をなぜ小学校2年生で教える必要があるのでしょうか。その答えを見つけようと,ググってみたという話題です。
 Wikipediaによると「尺貫法ベースの計量単位が商取引に使えなくなったため,1合(約1.8039デシリットル)に比較的近い2デシリットルを販売の基準としている」(2005年9月当時の記事)と書かれています。Lとlとℓ(斜体字のエル)についても,その混在と最近の教科書での表記について書かれていますので,気になる方はWikipediaをご覧ください。
■タイルの有効性
 2年生とは,ずっとタイルを使って数の学習を進めてきたそうです。その効果が,ここに来て明らかになってきました。十進数を使えるようになってきたのです。
「百が10こで千」というところでは,十進数のタイルの面積で見事に捉えてくれて,百のタイルが10個だと…めちゃくちゃでかいタイルになる!と興奮していました。それを黒板に貼ってみせると,すご~い!を連発。気の早い子は,これが10個集まったら,もっとでかくなる~とすでに一万を考えていました。(レポより)
 教科書のように,10円玉10個を百円玉に替えたり,100円玉10個を1000円札に変えたりしていたのでは,十進数(✕10)の量感覚は身につきませんからね。お金で表すのは,もっと後でいい。まずはタイルで,数の量感覚を身につけさせたいものです。

2 「ブログ的気楽レポ・2012年7月号」 A5 12ぺ  O.M
■放射線の授業をしたいが
 仮説実験授業研究会の間で話題になっている放射線の授業プラン「放射線とシーベルト」について,わたしの違和感をまとめてきました。
 昨年の福島第一原発の爆発事故以来,放射線に関する授業を義務教育段階でも積極的に行うように,文科省側も資料を作ったりしています(実際,学校にも配布資料が来ていました)。しかし,その内容は,以前,珠洲市において珠洲原発推進派が新聞折り込みをしてきたビラの内容とずいぶん重なっているような気がしてなりませんでした。また,研究会内部で放射線を授業で取り扱う場合のプランについても,ちょっと違和感が抜けません。
 わたしの違和感のポイントはいくつかあります。
違和感1 ICRPの出している値を基準として話をしていること
 ICRPは原発を推進するため(原子力の平和利用ともいう)に作られた機関であり,それだけで党派制があることを押さえておく必要がある。また「許容量」という考え方をしっかり捉えていない。「0がいいけれども,仕方なしに認めざるを得ない」という部分が弱い。武谷三男を読んでほしい。
違和感2 癌の発生率などを他の場合と比べている
 放射線を浴びた場合の死亡率の増加等について,レントゲンや飛行機事故の確率などと比べているのですが,そもそもこれらは比較できません。レントゲンも飛行機も自分で選ぶことができますが,原発事故による放射能汚染は自分で選んだわけではありません。
授業をするなら『エネルギーと放射線の授業』を使って
 本書には研究会員の平林浩さんが書かれた「放射線ってなんだろう?」という授業プランの実践記録が載っています。ここには,他の発がん発生率と放射線のそれとを比べたりするような内容はありません。これは意識してのことだと思います。
■理科教育はどこへ行く
 奥能登地区での公開研究授業とその授業整理会で感じたことをまとめてきました。ネット上で具体的に書くと,授業者と指導主事に申し訳ないので…ただ,「言語活動の充実」なんてものに目先の興味だけで取り組むと,科学教育上の大切なことをうっちゃってしまうよ…ということだけ,言っておきます。

追記(2022年3月)

もう時効なので,そのときのわたしのレポートをネットに挙げました。というのも,学校現場では,未だに形式的な言語活動が行われているからです。いい加減にしてほしいですね。→『「言語活動」栄えて,理科滅ぶ』はこちら。 

3 「ちっちゃな科学者たち」第2号~第4号 A5 14ぺ  O.M
 小学2年生の生活科の時間を使って仮説実験授業《空気と水》をしました。その授業記録を持ってきました。毎時間,とてもいい感想を貰いました。
 「もんだい7」のジュースの缶に1つだけ穴を開けるという課題では,
・さいしょ,ウにいたんですけど,友だちのいけんをきいてイにいきました。かわったとき「これでだいじょうぶかな」と思いました。さいご,本当かじっけんするときに,さいしょ1しずくこぼれて「あっ」と思いましたが,つぎ,出なくてよかったです。(ありさ)
・でてこなかったのでかなしかったです。わたしもイがよかったです。あっていたひとは4人でした。とてもかなしかったです。こんどおうちでもじっけんしてみたいです。わたしはとてもかなしかったです。(ことね)

というような感想がありました。「もんだい9」のあとには,次のような感想もありました。
・水とくうきのべんきょうおもれー。くうきつよいな。(とうよう)
 とうようくんは,「空気があると水が入ってこない」という現象を「くうきつよいな」と表現しています。すてきな喩えですね。
 授業書を終えてからの感想も1つ紹介します。
・わたしは,いつもまちがえていて,さいしょはとてもくやしかったです。だけどみんなとじっけんできてとてもうれしかったし,とてもたのしかったです。水とうやプッチンプリンもくうきにかんけいしていたのがわかって,すごかったです。ふしぎでした。今日でおわりだけどももっとしたかったです。(あいな)

4 「MY BOOK 2012年7月号」 B5 6ぺ H.K
 今月は,中一夫著『〈不登校〉が示す希望と成長』(ガリ本)について,詳しく紹介してくれました。以下は,仮説社のサイトに掲載されている本書の紹介(中さんご本人が書かれた)です。

 この本を手にしたあなたは,担任するクラスの子どもの不登校に,「どう対応すればいいのか?」という対処法を探している先生でしょうか。それとも,わが子が不登校で,先が見えずに苦しい思いを抱いておられる保護者の方でしょうか。切実さはなくとも,一般的に,〈不登校〉という現象に興味を抱き,その考え方を探ってこの本を手にする方もいらっしゃるでしょう。
 この本は,そういうさまざまな思いを抱いたみなさんに,〈不登校〉についての新しい視点を伝えるものです。「不登校とはどういう現象で,なぜそうなるのか?」を根本的に考え,それをもとにさまざまな関わり方・対処法を探ったものです。
 〈不登校〉は,本人にとっても,家庭や学校にとっても,「困った事態」と考えられるでしょう。けれども,その中には確かな「希望と成長」があります。そして,子どもの〈不登校〉は,〈家族〉や〈自分自身〉にも大きな変化を与えるものになりうるのです。そのことを伝えられたらと思って,この本を書きました。

5 小原茂巳講演記録「仮説実験授業に出会ったみなさんへ」 B5 6ぺ  H.K
 今月もテープ起こしをしてきてくれました。2013年2月。千葉県勝浦で行われた講演(の一部)です。
 小原さんは,明星大学の先生です。半年間の授業では,先生のたまごの大学生たちに仮説実験授業《ものとその重さ》第2部を行い,《空気と水》の模擬授業をしてもらったそうです。そして,そのあとで学生たちに「たのしい授業の成立条件とはなにか」を聞いたそうです。さて,仮説実験授業を体験した学生さんはなんと答えたでしょうか?
 たのしい授業の成立条件のベスト3は,「いい問題」「おしつけのない授業運営」,そして一番多かったのが「先生の笑顔」だったそうです。これって,とても大切なことを教えてくれますよね。もし「最近,自分の授業がしっくりいかないな」と思ったら,この3つの視点を振り返ってみることをお薦めします(自分自身にも言い聞かせます)。
 きっと「確かに忙しすぎて子どもの前では笑顔が減っていたな」「やらなければ…という思いが強くなっていて,押しつけがきつかったような」「教科書にあるからという理由だけでやってしまってたな」と気付かせてくれることでしょう。
 学生さんたちもなかなかいいことを教えてくれます。

6 「すずたのレポート・2022年7月号」 A5 3ぺ  M.N
 今年の全国大会へ行く決意をしたNさん。なんと自家用自転車を持っていくそうです。自転車が大好きなNさんだから,旅そのものも楽しもうという魂胆でしょう。自転車を運ぶための専用の袋などもあるんですね。知らない世界です。
 自転車以上にオリジナルな話は「禁煙に挑戦」という内容です。わたしも禁煙したこともあるので,珍しいことではないように思いますが,Nさんは,ちゃんと地元の病院へ行って「禁煙外来」に通っていることです。病院で血中の一酸化炭素濃度を測ったもらったら30ppmだったとのこと。これは,ヘビースモーカーの値だそうです。非喫煙者の値は3ppmくらいだといいますから,10倍もあることになります。数値で見せられるとちょっと焦りますね。その後「チャンピックス」と呼ばれる薬を処方されたそうです。この薬を飲み始めてからの変化もまとめられていました。まさに,自分の体を使った人体実験ですね。結果がどうなるのか,楽しみです。
 ジャガイモの葉のデンプンヨウ素反応が,今年もうまくいかなかったという話。朝,日当たりのいい場所にジャガイモを植えてあるプランターを移動して,午後実験したというのですが,なぜなんでしょうか。経験上,陽の光が強くないとなかなかできないような気もします。ヨウ素液が新しかったのかどうかとかも関係しますからね。
 一方,導管の実験の方は,うまくいく染料を見つけたそうです。「押し花専科」の切り花着色剤です。これ,なかなか良さそうです。

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