大桑(おんま)層の地層観察(2008.6.19)

金沢大学連携ゼミ報告

2008年6月19日
ゼミ担当教授:杉本幹博
報告:尾形正宏

「大桑貝殻橋」と化石

 第2回目は,犀川中流域にある大桑層という地層の観察に行きました。
 大桑(おんま)層の地層観察は,以前,地元の珠洲市理科研究会で行ったこともありましたが,そのときは,別の露頭を見たように思います(あまりイメージがない)。でも,今回行った場所は,すごいです。ここを観察するだけで,充分,地層や化石の学習ができます。
 観察場所は,その名も「大桑貝殻橋」という名前の橋のある河原です。メール(ゼミのメーリングリスト)で観察場所の名前を聞いたので,私はすぐにメールで質問をしました。
「この橋の名前は金大の先生が考えたのですか?」
と。
 しかし,このような私のつまらない質問に,メールではだ~れも反応してくれませんでした。

大桑貝殻橋

ゼミ当日

 でも,当日,教室に行くと,ちゃんと説明してくれました。
 この場所は,昔から金沢市字大桑小字介殻淵と呼ばれていて,「貝(介)殻と淵のある川の付近の土地」という意味だったようです。だから,そこに架かる橋なので「貝殻橋」となったみたいです。橋も1990年代にできたとおしゃっておられました。
 私は,
「土地の名前にまでなっているのだから,この地層に貝殻が入っているということを地元の人も知っていたということなのだろう」
「それほどまでに,簡単に貝の化石が見つかるにちがいない」
と予想を立てたというわけです。

 なお右下の橋の写真は,ゼミ当日に現地で撮影したものです。それまでは,当然ながら橋にこういう説明書きがあることも知るよしもありません。

橋には大桑貝殻橋の説明も

現地では…

 現地について,川に下りると,太公望たちがアユ釣りに興じています。そこをむさい姿の男たちがリュック(地層観察用の機材入り)を背負ってウロウロするんですから,ま,変な景色ではあります。
 柔らかい地層は,川の流れにけずられ,たいへん滑らかになっています。時々表れる貝殻の化石は,珠洲の平床貝層のようで,貝殻がザックザック出てきます。
 こんな様子なら,いくら化石や地層に興味がない一般人でも,ここに貝殻が出ることはわかります。私の予想どおりでした。
 岩石の様子は,平床よりは石っぽくなっているし,貝殻の一つ一つも大きいようです。
 この大桑層は今から150万年~80万年前の地層だそうです。珠洲市正院町にある平床貝層は,約13万年前の地層だそうですから,大桑層はそれよりはずいぶん古い地層だということです。そんな地層が,橋の下流の方に広がっていて,それが斜めに傾いているために,地層の広がりと重なりがよくわかるのです。
 火山灰が固まった凝灰岩の層もあったし,生痕化石もありました。

太公望たち
(実は化石も見えている)
大桑層の貝殻の化石

 

甌穴(おうけつ)群も

 また,河床のところどころに写真のような甌穴を見ることもできました。しかもこの甌穴には,しっかり丸石が入っています。深い所だと50㎝はあったかも知れません。長い年月に自分も削られて丸くなり,周りも削って穴を掘り…が,繰り返されたんだなあと思います。
 私は,以前から甌穴興味があったので,
「おお~これは甌穴だ!」
と叫びましたが,他の方々はあまり興味がなさそうでした。ここに化石採集に来る小学生たちは,この甌穴に気づいているのかなあ。

 能登町神野にも,甌穴の見られる川があります。なかなか立派ですよ。一度ご覧あれ。

甌穴がいっぱい
こんなに深い甌穴も

犀川層(高窪層)という地層

 貝殻橋の上流へ行くと,そこは地層の雰囲気が少し変わります。
 それもそのはず,この地層間には不整合面があり,橋の上流の方は「犀川(さいがわ)層」と呼ばれる地層になるそうです。この地層は,今から約1500万年前の地層です。犀川層からは,主に植物の化石が出てきました。
 あまりにも簡単に植物の炭化化石が出てくるので,私は,
「これって,誰かバーベキューでもしたんじゃないか?」
なんて冗談を飛ばしていたら,杉本教授は,
「そうなんです。よくここでバーベキューをしている人を見かけます」
ですって。あははは…。実際,少し河原を歩くと,炭を焼いた跡も見つかりました。

不整合面
炭化した木片の化石

 楽しく地層観察をしてから,再び大学へ。
 杉本教授は,ゼミ生一人一人にA4版の資料集をプレゼントしてくださいました。この丁寧な扱いにびっくり。ちゃんと読まなきゃもったいないなと思っています。

去年からの疑問をお聞きしてみた

 ゼミ生が帰った後,わたしは研究室に寄って(図々しいなあ),去年,宇出津や石川県の「地質図」を見ていて「はてな?」と思っていたことを尋ねてみました。
「地質図には,○○層という言い方と,遠島山段丘とかいう言い方がありますが,なんで段丘みたいのだけ,そんな地形を呼ぶときのような言い方をするのですか?」
 それに対しては,
「それは,まだしっかりと岩石になっていないからです。新しい地層なので,便宜上そう呼んでいるのです。」
というような回答だったと思います。
 とにかく,行ったからには時間を有意義に使おうとする私なのでありました。
 なお,大桑層の化石については,いろんなHPでも紹介されています。

『学級通信』で紹介

大桑層という地層の見学 - 金大連携ゼミに参加して -

 3限目から学校を出て,金大連携ゼミに参加してきました。今回は,金沢で見られる地層(大地をつくっている砂や泥や石があつまったもの)の観察が主な活動。今にも雨が降りそうな中,どうにか活動が終わるまでは雨に当たらずに観察できました。
 場所は,大桑層(おんまそう)といわれる有名な地層が見えるところ(露頭という)で,その名も「大桑貝殻橋」という名前の橋がかかっています。橋に「貝殻」という名前がついているのは,このあたりの地層に貝殻の化石がたくさん出るからです(右の写真を見てください。白っぽく見えるのがその貝の化石です(ネットでは省略)。誰が見たって,「何でこんなに貝があるの」と思うことでしょう。
 この大桑層は,今から150万年~80万年前貝化石の浅い海底に堆積した地層で金沢の周りに広がっているそうです。
 このような化石から何がわかるのかというと,その当時の,この場所の生物の様子だけでなく,海の様子や気候までも想像できたりします。
 この貝の化石を研究した人によると,ここ地層に入っている貝の種類が,地層の上と下では違っているそうです。暖かい所に住む貝と寒い所に住む貝が交互に出てきます。ということは,昔このあたりは,暖かい気候と寒い気候が交互に表れたことになります。
 暖かい気候と寒い気候が交互に表れるのはなぜか,これがまた,新しい疑問として研究対象になるのです。う~ん,奥が深い。
 この貝殻橋の上流側へ行くと,大桑層よりも古い地層(犀川層)も見ることができます。その地層は今から約1500万年前くらいの地層だそうです。その地層からは,写真(ネットでは省略)のような植物の化石があちこちに見られました。
 この橋のあたりは,大桑層と犀川層の境もみることができます。
 その境目をはさんで一歩跳ぶと,150万年前から1500万年前までジャンプできるんです。
 そういいながら跳んでいたのは私だけでした(^^ゞ

北村晃寿・文/夏目義一・絵『暖かい地球と寒い地球』(福音館書店,1998年,1300円)

 大桑層を全面的に扱った絵本が出ています。学級通信の最後の方に書いたようなことがしっかりと出ています。小学校高学年なら読めるでしょう。
 石川県の犀川から「氷期と間氷期」「地軸の傾き」まで話が広がる,壮大な地球史の絵本です。


コメント

タイトルとURLをコピーしました