水生昆虫観察と生物の分類(2008.5.29)

金沢大学連携ゼミ報告

2008年5月29日
ゼミ担当教授:川幡佳一
報告:尾形正宏

なんとなく乗り気ではない水生昆虫の観察

 ゼミの第1回目は,浅野川中流域(ジャスコ杜の里付近)の水生昆虫観察です。
 私は,この水生昆虫観察って,昔からなぜかあまり好きではなかったのです。
 自分では,それがなぜなのかわかりませんでした。ただなんとなく,「カゲロウがいるから…」とか「トビゲラがいるから…」とかで川の汚れを判断することに,なにか腑に落ちないものがあったのです(これがなぜなのかは,このゼミが終わった時に,分かったのです)。
 でも,まあ,とにかくせっかくの機会です。あまり乗り気ではない中,長靴をはいて川に入っていきました。川は昨夜から午前中までの雨のせいで,ちょっと水かさがあり,川の中央までは入っていけません。
 しかし,石をめくり白いトレーの上に置いて表面をそおっとこすると,いろいろな動物がトレーの上でうごめいています。何なのかわからないけれど,プラスチックのビンに入れていきます。

浅野川で水生昆虫を捕獲します
石の上にはいろんな生き物が…

「蠢く」=うごめく

大学の実験室で分類学と観察

 30分ほど採集したら,大学の実験室に行きました。
 そこでは,生物の分類進化の話,あるいは参考図書の話などをお聞きしました。
 ここでは,
・リンネの分類…界門綱目科属種
・最近はもっと細かくなっている
 私の「ほ乳類とかの言い方について」の質問に答えて,
・「類」というのは,どんな段階でも使える便利な言葉。これも科学の言葉と言ってよいが,どの段階なのかを知っている必要がある。
・「昆虫」というのもありえるし,「節足動物門・六脚亜門・外顎綱」という言い方もある(だったっけなあ?)。

ということも教えてくださいました。う~ん,来た甲斐があった。
 さて,いよいよルーペや実体顕微鏡での観察です。
 カゲロウの幼虫やユスリカの幼虫,トビケラなどがいました。プラナリア(扁形動物門)もいて,初めて動いている本物をみました。メチャクチャかわいかったです。
 どんな生き物がいたのかは,下の学級通信を読んで下さい。

昆虫の進化(系統図)
リンネの分類
顕微鏡で観察

「学級通信」でゼミの紹介

ハタと膝を打った最後のお言葉…来てよかった!!

 川幡教授は,最後に次のようなことを述べておられました。
・川に入って生き物を観察する。このとき,生物の多様性に感動しながら観察することが大切なのに,環境教育の一つに使われるのは変ではないか。
・例えば自由研究の一つにしてしまっていて,たくさんの生物を見るというより指標生物になってしまっている。どういう種類の生き物がいついたとか…。
・豊富な研究の成果があるのに,生き物がいたことを点数化して表したりしているのが変だと思う。
・豊富な内容(生物の多様性)を貧弱(指標生物のみ)にしないでください。

 私はこれを聞いて,
「そうだ,オレのもっていた水生昆虫観察の違和感というのはここにあったのだ」
と気づかされました。

環境に適応しながら生きている生物のダイナミズムこそ,子どもたちに伝えたい
 たくさんの生き物が,それぞれの環境に合わせて住んでいます。一生懸命生きているんです。
 それは,きれいな川であろうが,汚れた川であろうが,いろんな生き物がその環境に適応しながら進化してきた証であり,その一端を私たちは見ているのです。「生物の多様性」を大いに感じた後で,指標生物の学習をするのならばいいのですが,どうも環境教育と称して行われている水生生物観察は,そうとは言えません。
 川幡教授は,割と遠慮気味にこのような自分の考えを言っておられましたが,私は〈研究者としての強い思い〉と受け止めました。
 今回のゼミは,環境指標生物としての水生生物を学んだのではなく,生物の多様性を感じるための学習だったのです。
 ホントに,行ってよかったと思った会でした。
 帰りは,車の中でも興奮していました。いい視点を与えてくださいました。

紹介してくださった教科書・図鑑…どれもこれも高価です(^_^;)

■小林興訳『キャンベル生物学』(丸善,2007,1540p,1万5000円)
最高峰のオールカラー生物学テキストの完訳。特色ある図が随所に盛り込まれ、よりよく理解する手助けになっている。
日本ではあまり重視されていない形態学や分類学についても詳しく述べられており、それらが最先端の分子生物学や生理学とうまく結びついている。また、地球規模で問題となっている環境科学や生態学、行動学といった分野も網羅し、生物
学の一貫した考え方として「進化」の視点を柱に据えた点から記述してある。(Amazonの商品紹介より)

■川合禎次他編集『日本産水生昆虫・第2版』(東海大学出版部,2018,1752p,4万1800円)
日本産水生昆虫11目141科を収録―双翅目、カゲロウ目、トビケラ目などの幼虫・成虫分野の分類検索の大改訂。他の動物群も最新知見のもとに大幅な改訂を行った。水生昆虫研究と河川や湖沼の生態研究、応用研究に必須の図鑑。(Amazonの商品紹介より)

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