例年よりはやい春。桜とチューリップと一緒に咲いている風景は,なにか変。近所の方の農作業もタイヤ交換も早くて,なんか急かされているような気持ちになります。実際,4月に入ってからタイヤ交換をしていると,「Oさんらしくないね~」なんて声がかかったりもしました。
3月末,母親と犬を施設&ホテルに預け,関宿・伊賀・伊勢方面へ2泊3日の旅行に行ってきました。今回の行程はすべて神さんが決めました。行く前に,旅行先に関連した『ブラタモリ』で復習というか予習をしてから出発しました。その旅の様子は,わたしのブログ(3月26日~4月14日)に詳しく書いています。よろしければ,ご覧ください。
さて,わたし,新しく軽トラをゲットしました。新車ではなくて,ボロボロの中古です。知り合いから10数万円で譲り受けました。20年前の車で,しかも19万キロも走っていますが,まだまだ動きます。NPOの軽トラは23万キロ走っていますからね。乗木(田んぼや竹藪がある)での農作業や市のため池調査に行くときには,やっぱり普通車よりも便利です。いつまで持つか分かりませんが(^^;)。
ところで,みなさん,新しい環境で新しい子どもたちとの出会いはどうでしたか? 4月の例会で話を聞かせてくださいね。
例会の参加者 W.T N.T O.M
今月の写真
今月の資料
1 「サークル資料」 A4 2ぺ W.T
卒業式を控え,なにかと忙しい時期に,担任も子どもたちもインフルエンザに罹患して,十分な準備もできないまま卒業式を迎えたそうです。
行事の全体指導での違和感
Wさんは,卒業式練習中に感じたことを次のように書いています。
指導?というより恫喝?「声出せ!」「ビビッとるなあ」「もう1回!」,これが何度も繰り返される。毎日朝の○年教室には3人の先生が監視?に来て声を出しているかをチェックされていきました。私自身,もっとしっかり声を出すよう指導するようにと注意を受けました。
これを聞きながら,「現場はなんもかわっとらんなあ」「怒鳴るだけ,怒るだけなら,教師じゃなくて,素人でもできるなあ」と思った次第です。なぜ,学校現場では未だにこんなことがまかり通るのでしょうか? 特に行事の練習となると,みんな単なる軍の教官に変身してしまう。これは「少しでも本番の見栄えをよくしよう」という学校側の保身でしかないんですよね。もう少し,指導法などを学習してほしいなと,心から思います。
一方,これに対するWさんの感覚には,素敵なものがあります。
みんなそれぞれの声の大きさだったり,きんちょう感だったりはちがうのだから,じぶんのなかでの精一杯の気持ちが伝わるようなふるまいをしよう。
そしてその手立てとして,
いきなり声を出すのはだれでも緊張するし,そもそも出しにくい。だから,声を出す前には腹式呼吸で息を吸って,ステージの前の校章に顔を向けよう。
という的確な指示も出しているのです。
しかし,やっぱり他の先輩教師たちは「そんなことよりも気持ちが足りん。腹から声出せる! もっとデカい声出るんやから出せ!」ですって。
一体どっちが,教師としての経験を積んでいる言葉なのか,ほんと,分からなくなるほど現場の主流派は情けないですね。
サークルでは,行事などで担任を超えて子どもたちに直接指導が入る場合の対策を話し合いました。
全校の前で,平気で,「○年! 声が出ていない!」なんてことをいう教師がいるんですよね。全体の前ではほめてもいいけど,こんなふうに否定したのでは可愛そうです。担任も自分の指導が否定されたようでモヤモヤします。そして,もっともよくないのは,教室に帰ってから,そのことを取り上げて,同じような指導をしてしまうことです。本来なら,ここで子どもたちをサポートしてあげる必要があります。「○○先生はあんなことを言ったけど…」ってね。ただ,こういう対処療法は,あまりよくありません。本来なら,次のようなことが大切だろうと思います。
全体練習に取り組む際のPoint
①学級の子どもたちに,本時の目標を持たせる。一人一人に持たせるのが難しかったら,担任の方から「今日は昨日よりもハッキリゆっくり声を出す」とか「前回よりも素早く整列する」とか,明確な目標を示す(本来なら,全体練習に入る前に,こういうことを示しておくのが全体の指導者だとわたしは思います)。
②全体練習の際,もし担任が学級の子どもたちに近づくことができるなら,練習が始まる寸前に,「今日の目当て覚えているか,その点だけでもがんばろうな」と一人一人に声をかける。心配な子には肩のひとつも叩くといい。
③全体練習で,学年を指定されるくらい,ボロのカスに言われていようとも,教室に帰ったら,それには全く触れずに,今日の目標についての達成度を一人一人に聞く。
・もし,大多数が目標を達成していたら,「ところで,あの全体練習で指摘されたことって,なにが足りないのかな」と聞いて,次の目標を決める。
・もし,大多数が達成されていないと判断したら,「なんで,できなかったのかな。ちょっと目標が高すぎた? それとも達成する方法が分からなかったのかな」と教師の方の不十分さも考慮しながら話をする。そして,最後に「それが全体練習に指摘されることにつながったのかな」などと言って,次の目標を確認する。
とにかく,担任が全体指導の先生と一緒になって子どもを批難するということだけは絶対やめましょう。そして,担任は,全体指導をしている教務主任,生徒指導主事,体育担当者等々の言葉や指導の仕方をしっかり見て,反面教師として学べるところは学んでいきましょう。
わたしも若いときには,職員室でいろいろと言われたことを,それをそのまま学級で話したこともありました。そうすると,なんだかとても気まずくなるんです。そして,気分を入れ替えて授業を進めるんだけど,最初の5分~10分は損をした気持ちになりました。そんなことはもったいない。
2 授業プラン〈割合〉授業感想 A4 3ぺ W.T
1月~2月にかけて授業をした授業プラン〈割合〉の,子どもたちの授業授業をまとめてきてくれました。
割合の単元は,言わずもがな,小学校算数の鬼門です。ここで算数・数学が嫌いになることも多いです。「基準量」「比較量」,一体どっちがどっちなのかよく分からないまま進んでいってしまいます。
わたしたちの研究会でも,これまでいくつかの授業プランが発表されてきました。どれも,授業書として確立しているとは言えないのですが,けっこういい線いっているプランも複数あります。算数に苦手意識を持っている子の感想を紹介しましょう。この授業プランの威力が分かるでしょう。
・最初は全く分からなかったけど,( )や~,__などを使ってミミズの式を立ててたのも良かったです。ミミズの式がわからなかったら,たけのこ図を書いてするととても分かりやすかったです。プリントをしていくうちに慣れていってわかると嬉しかったです。テストでは50点くらいで終わると思っていたけど100点だったのが,やっぱりタケノコ図のおかげだと思います。一番自分を(ママ)覚えておきたいのは,( )や~,__でした。(かんな)
教科書に出ているからと,執拗に線分図で理解させようとする現場教師たち。この「たけのこ図」を見た管理職は,その有用性を認めながらも「線分図でも書けるように」みたいなことを言っていたそうです。もうこうなったら教科書教(宗教)ですね。彼らは,教科書に線分図が載らなくなっても,同じようなことを言うのかな。仮説実験授業研究会員で算数教育研究家の新居信正さんは,生前,教育雑誌に載せた文章で,「啓林の走狗たち」といって,啓林館の教科書に出ているからと,子どもたちが如何に混乱しても暗算先習を譲らない現場教師(主に管理職)たちを鋭く批判していましたが,程度の違いはあれ,子どもの〈分かりざま〉よりも〈教科書に出ている指導法〉を優先したがる教員が未だにこの現場にはうんといるようで,大変残念です。この実践のように「算数が苦手な子にも通用する授業があるのだ」という実験結果を見たら,「数直線がわかりやすいはずだ」という予想を変えてほしいけどなあ。これで助かる子どもたちは多いと思うけどなあ。
線分図が,特に算数の苦手な子にとってなぜわかりにくいのか。それは子どもたちにとって有用なシェーマ(半具体物)とはなっていないからです。タケノコ図の方が,イメージとしてもよく分かるんです。そして,タケノコ図やミミズの式を使いながら,いつかは,それも必要なくなる。それでいいんです。数値(量や率)の意味を考え,それを図で表し,さらに式にして,答えが図のイメージと合っているのか確かめる。タケノコ図は,子どもたちの頭の中で,ちゃんとそういう意識の流れが生まれるようにできているシェーマです。
数教協が提唱したシェーマに「かけわり図」というものもあります。こちらも量や割合の三用法の立式には使えるのですが,わたしの授業経験からいうと,割合の問題では,図に表せない子が出てきます。おそらくこのシェーマは,タケノコ図よりも抽象化が進みすぎているからだと思います(線分図はもっと抽象化が進んでいます。だから分かりにくい)。
3 ミニ授業書〈円と円周率〉授業感想 A4 2ぺ W.T
授業書4時間+教科書/テスト2時間で,本単元を終えたそうです。
・楽しさ度…5と4で100% ・分かりやすさ度…5と4で85%
と,大変歓迎された授業となったようです。
仮説の授業書らしく,哲学的(数学史的)な話題もある授業書なのですが,子どもたちがそういう部分をしっかり受け止めていることに感心しました。
・円周率がどこまでも続くことが分かってすごいなと思いました。
・円周率をがんばって求めるこんじょうがすごいと思ったし,バカらしいとも思った。
・予想を考える時も楽しかったし,昔の人の話もおもしろかったです。
こんな素敵な感想がいっぱいです。これについて,Wさんは,次のように授業を振り返ります。
円周率がどこまでいっても続く数だということを,子どもたちは一番おどろいていた。お話パートは子どもを引きつけていて,絶対に必要なんだなあと思った。
授業書の中にあるお話部分は,大人が読むと「こんなの難しすぎるなあ」とか「文字ばかりでだれてしまいそう」,あるいはもっと現実的に「教科書ではこんなこと出ていないから飛ばしても大丈夫だろう」なんて思いがちなんですよね。でも,子どもたちにとっては「自分たちが学んだことが広がっていく楽しさ」をじっくり味わっているのがお話なんです。だから,お話をよりわかりやすくする工夫(例えば写真を出したり,実物を出したり,紙芝居にしたり)をすることはあっても,「文字ばかりだから」といって省略することのないようにしてほしいです。
授業で使った実験道具も紹介してくれました。授業プランでは,円周を測るのにハンダを使っていましたが,アルミのはり金でも充分できたそうです。これなら,手に入りやすいのでいいですね(上写真1枚目)。
4 校内研究通信「研究ぷらす」 A4 数ページ N.T
Nさんが研究主任として学校で発行している「校内研究通信」(上写真2枚目)を見せてくれました。例会では,綴りを見せてくれました。わたしの第一印象は,若いのにすごいなあ,と思ったことです。学級の準備だけでも大変なのに,こうして校内へも呼びかけているなんて…。内容も充実したものです。私が出していたのは白黒でしたが,最近はやはりカラーなんですね。とても見やすくなっています。写真をふんだんに取り入れたりすることは,今の若い衆には必要なことですからね。
ここでは,後から送付してもらった2通の「研究通信」の内容について,取り上げてみます。
No.12は,理科の授業での予想の大切さ,そして校内研究でやっている「伝え合い」の薦めです。予想を立てることの大切さについては,板倉さんのこういう言葉もあります。
予想をすれば、やってみたくなる。 やる前に 話したくなる。 他の人の考えも 知りたくなる。 実験してみて 予想が当たれば うれしくなる。 予想が はずれれば 本当のことがわかって かしこくなる。 そして、やっぱり たのしくなる。
仮説実験授業や板倉聖宣という言葉を出すのをビビっているNさんですが,出したところでどうってことないと思います。ただし学校内でゲリラ的に授業書をやっているのならば,あまり公にはしない方がいいでしょう。保身のために。ただ,若い子たちに少しでもたのしい授業を広めたいのなら,通信を読んだ子が自分で本を取り寄せられるようにはしておいた方がいいでしょう。
また,伝え合いの国語の部分を読んで,「これは山本正次さんがずっと前から言っていたことだよ」って思いました。よむ,とく,かたる,かく,このくり返しで教材を扱っていきます。
No.13は,Nさんが学校で公開した研究授業の結果報告です。授業は「人の誕生」。授業プラン〈赤ちゃんの誕生〉を参考にした授業の一コマです。本授業を参観した同僚の方々の感想が,Nさんの授業のよさを充分表してくれているので紹介します。
・全員が顔を上げているのがとても良かった。反応もすてき。子どもたちが楽しそうなのが印象的。 ・授業序盤に赤ちゃんの人形を抱っこさせることで,子どもたちが共通体験を得ていた。それを個々の思考の拠り所としていた。 ・根拠を書かなくても予想を立てる段階で理由を考えて選択肢に丸をつけていた。 ・理由が「なんとなく」の子に,他の子の意見を聞いて「なるほどと思うものは?」と尋ねることで,一人ひとりが根拠のある予想を基に授業を進められると思った。 ・子どもの発想が豊かでおもしろかった。 ・「それに対してどう思う?」の問いかけで,子どもの発言がつながっていた。 ・理由を聞いて,予想変更をする姿がよかった。 ・予想がメインの授業は想像がつかなかったが,今回でイメージが具体的になった。
仮説実験授業をやっているといつの間にか身についている授業運営などのことが,授業を見た先生方にとっては,まるで新しい発見のようにして感想の中に書かれています。いつの時代も,仮説実験授業は教育の最先端なんだなと思います。だからこそ,まずは仮説実験授業を勉強すれば,教材研究の早道なんですがね。教師用赤本を使って,自分の力でどうにかしようとあがいている教員が多いようで残念です。そして時間だけが過ぎていく…。
Nさんの「授業者より」の文章も,今回の授業で伝えたかったことが明確に書かれていてよかったです。授業で大切なことは「子どもたちが思わず考えたくなる問題を準備すること」「問題には,その問題にてきした選択肢があること」を,しっかりと伝えています。仮説実験授業の伝道師として歩んでいる姿が,うれしいなあ。
5 「喃々レポ2023年3月号」 A5 8ぺ O.M
な,なんと,今回は8ページすべて俳句についてまとめてきました。こりゃあすごい。自分でもこんな時が来るなんて考えたこともなかった。
まずは夏井いつきさんの著作から学んだ「俳句入門」について。わたしもこの方法で俳句を作り出していますが,作ったのはほんの10句あまり。俳句を作るのは愉しいけれど,時間がかかります。
わたしが好きな俳人は金子兜太さん。兜太さんのことは,以前の勤務校で毎年まとめていた「親子教師文集」にも取り上げたことがありました。そういえば,その文章を紹介していなかったなと,今回コピーをしてきました。兜太さんの著作も紹介しました(上写真3枚目)。これからも,俳句をつくるようになっていくのか,三日坊主で終わるのか。それは,まだ,分かりません。旅で作った俳句を2句。
・伊勢参り活きエビ食らふルビー婚
・伊賀の春信号待ちのチビ忍者
言いたいこと伝わりましたかね。
クラスで行う「ミニ句会」の方法も紹介しました。当時の学級通信(2018年10月)も持ってきました。なにかの参考になればうれしいです。
今月の授業書体験《生物と種》
今月はメンバーが少なかったのですが,仮説実験授業の授業書《生物と種》を体験してもらいました。〈種(しゅ)〉という概念についてたのしく学べる生物の授業書です。わたしも,2度くらいしかやったことがありませんが,子どもたちは生きものがとても好きなので,必ずやたのしい授業になるでしょう。
今回は,研究会で手に入れた資料やわたしが本からコピーした写真(上写真4枚目)などを使って進めました。
お二人には授業書体験の感想を書いてもらったので,紹介しておきます。
○気が遠くなる話でした。昆虫にも人間と共通する遺伝子があると聞いて驚きました。地球という宇宙船の中で、生き残るために長い時間をかけて形を変えていく生き物たちの神秘を感じました。キメラ動物の話では、人間の業の深さで怖くなりました。使われなくなった機能や身体の一部にその生き物の過去が現れている話が面白かったです。(Nさん) ○自分自身、種と種類って何となくで使ってた言葉だなあと思いました。 レオポンやライガーなど一代限りの生き物の話では、一代限りになっていることが生き物の、そして自然の仕組みとかを壊さないようにシステムとして組み込まれてるんだろうかなど、より大きな考えをしてしまいました。 35メートルのうちの10センチメートルのなかで、私たちはこの環境を急激に変えている。この事実を改めて知ると、過去や未来について興味や恐怖を感じました。(Wさん)
以前,子どもたちと授業をしたときのミニ記録は,ここに掲載してあります。楽しそうな雰囲気が伝わってくるでしょうか。
自分がたのしく知ったことは,子どもたちにも伝えたくなります。知識はたのしく知ることが一番です。
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