気温のグラフから天気を予想する

教科書授業+αのタネ

尾形正宏

気象庁「過去の気象データ検索」を使おう!

 4年生理科の授業で「天気と気温」というような単元があります。「晴れている日は,気温の変化が大きいけど,雨や曇の日は気温の変化は小さいよ」ということを教えるだけの単元です。それに未だに百葉箱というのも出てきて,いい加減にしてくれよと思います。今じゃ,気象庁だって使っていない? さて,そんな天気と気温の学習には,気象庁「過去の気象データ検索」のサイトが便利です。
 このサイトは,全国各地のアメダスの過去の気象データを検索することができます。たとえば,わたしたちのサークル名になっている石川県珠洲市では「降水(降雪)量,気温,相対湿度,風向・風速,日照時間」が10分おきに記録されます。
 検索で,観測地,年月日などを選ぶと1時間ごとの値や,1日の変化のグラフまでワンクリックでに作ってくれます。これを使わない手はありません。

単元の進め方

 わたしの単元の進め方を紹介します。
① 天気によって気温が違うことをこれまでの経験を基に話し合う。温度計の使い方を説明し,みんなで気温を測りに行く。そのあと,仕方なく(^^;)百葉箱について,説明する。(1時間)
② 晴れた日を見つけて,1時間毎に測定をする。(課外)
③④ 気温の折れ線グラフを書いて,分かったことを発表する。他の日のグラフ(雨や曇の日)を見せて,なぜ,気温の変化が小さいのかを予想する。そして,日照時間や降水量を確かめ,予想があっていたのかどうか,確認する。(2時間)
⑤ ミニプリントとテスト(1時間)
 以上,しめて4時間+課外で,終わり。教科書準拠では,6時間の配当ですが,これで1~2時間もうけ。

気温の変化を見て,天気を予想する

 気象庁のサイトにある「過去の気象データ検索」を使うのは,③と④です。

観測日の24時間の結果を調べる

 ③では,学校で自分たちで測定できるのは8時~4時までなので,まず,その結果をグラフで表します。そして,自分たちが測定した日のアメダスのそれ以外の時刻の気温を見てもらいます。すると,一番気温が低いのは,だいたい夜明け前だということがわかります。
 厳密には,学校とアメダス観測地とは違いますが,そんなに大きな違いはないでしょう。

気温の変化を見て,天気を予想する①

 ④では,右上のようなグラフを見せて,
「なんで,この日の気温は,あまり変化がないのか」
と聞きます。すると,ほとんどの子が「曇っていたのではないか」と答えるでしょう。ま,温度計が狂っていたなんて答えも出ることがありますが(というか,今回,そんなことを言う子がいて,びっくりした)。
 そこで,次に,同日の日照時間のグラフ(右中)を見せるのです。これらのグラフはボタン一つで切り替わるので,とても便利です。上の③の時に,晴れの日の日照時間のグラフも見せておくと,その違いが分かってよいでしょう。
 このように,「過去の気象データ検索」のサイトは,なかなか有用です。

2014年6月22日の気温の変化のグラフ
2014年6月22日の日照時間のグラフ

気温の変化を見て,天気を予想する②

 では問題です。2014年7月18日の珠洲の気温は,右下のグラフようにあがったり下がったりのグラフになっています。
この日は,どんな天気だったのでしょうか? 
いったい,何が起きたのでしょうか? 予想してみて下さい。

→答えは,このページのアイキャッチ画像(タイトル画像)のグラフを見てください。

典型的な日はそんなに多くない。待ってもいられない。現場は忙しいのだ

 教科書では,「曇りの日や雨の日を選んで,一日の気温の変化を調べよう」なんてことになっています。でも,特に理科専科の場合には,自由に授業時間が使えるわけではありません。また,一日の天気だって,一日中曇りとかずっと雨なんて日がそうそうあるわけではありません。しかも,気温は,いろんなことに影響を受けるので,典型的なデータを取ろうとすると何度もやってみることになります。実際,わたしも,何日も子どもたちに挑戦させたことがあります。しかし,そのうち,気温の測定を忘れる子が出てきたりして,なにをやってんだか…休み時間もなくなるしね。
 その点,この過去のデータを利用するというのは,便利です。天気がどうだったのかは,もう過去のことなので教師は分かっています。その分かっているデータを扱うのだから,子どもたちも考えやすい。その上,大体理解できた上で「天気を予想する②」の様な複雑な問題を投げかければ,ノーミソが働き出します。その結果は,データを見せるだけです。これも立派な実験です。
 なんでもかんでも,体験したほうがよい…と思われがちですが,大切なのはしっかりと概念を身につけてもらうこと。休み時間のことを気にしながら,中途半端な測定(教師がついているわけにはいかない)から分かったことを,あれこれやるよりも,教師が選び出したデータで学習した方が身につく場合も多いことを,今一度,考えてみてもいいのではないか,と思います。

 なお,「気象データ検索」は,全国各地のアメダスの様子が分かりますので,社会科での授業(たとえば沖縄の気温を予想する)でも使えます。是非,一度ご覧下さい。

2014年7月 記
2023年4月 追記

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