珠洲たの通信・2023年1月号

2022年度

 1月のサークルの例会,通信編集子のわたくしは突然の欠席で,スミマセンでした。おかげさまで,無事,葬儀を終えることができました。こういう冠婚葬祭(とくに葬儀)時には,久しぶりに一族が揃うので,子どもたちや孫(亡くなった人から見たら孫とひ孫)たちは,なんか悲しさよりも再会のうれしさの方が勝っている感じです。葬儀前後の宿泊もたのしく過ごすという,なんとも大往生の葬儀らしい数日間でした。これで,わたしたち夫婦の両親で残っているのは94歳のうちのお袋だけとなりました。彼女も,すでに大往生の歳を過ぎています。家にいても,ずっと寝てばかりだけれども,食欲は人一倍。まだまだ長生きしてくれると思います。
 さて,そういうわけで,今月のサークル通信は,S.Miさんに書いてもらいました。お忙しい中,ありがとうございます。おかげで,今月もこうして発行できます。文章は少し編集させてもらっています。あしからず。

例会の参加者(4名)  N.T  W.T  S.Ma  S.Mi

今月の資料

1.「サークル資料」 A4 1枚  W.T
話題1「リモート通知表渡し」
 2学期末,コロナウィルス濃厚接触者になり,自宅待機を申し渡されたWさん。とりあえず残り数日間の自習プリントなどを大急ぎで用意したものの,学期末と言えば「通知表渡し」がある。その通知表渡しを,なんとリモートですることになったのです。その方法は,学校の端末をWさんが家に持ち帰り,Google meetで学校と自宅をつないで行いました。当日学校では,教頭さんが通知表などを渡す役をして,テレビ画面の担任と保護者が画面越しで向かい合って通知表を渡したそうです。途中音声が途切れてつながりにくくなり,スマホで通話をしたとか。
 時代と言えば時代だけど,そこまでやらなくてはいけないのかなと正直思いました。
話題2「読むことを中心にした国語」
 山本正次さんの資料※1を読んで,自分の国語では「よむこと」が足りないと感じたWさんが,授業の最初に必ず本文を読むという活動を取り入れているそうです。3学期の最後に感想で,子どもたちがどう感じたかを聞いてみるそうです。
話題3「〈割合プラン〉と数直線」
 「若い先生を育てたい!」という管理職の強い希望のもと,学期に1回ずつ指導主事さんを要請して授業をさせられているWさん。3学期は「算数」を見てもらうことになったそうです。
 見てもらいご指導を受ける予定の単元は割合。この単元では,新居信正さんのプランをもとに実践しています。プランを進めていくにつれて,子どもたちがきちんと立式できている様子に喜ぶWさんです。
 が,しかし,要請訪問でこの授業をそのまま見せるわけにいきません。そこで苦肉の策で,プランの進度に合った部分の教科書の問題を取り入れようと考え,指導案を作成し提出しました。しかし予想通り?教頭・教務からは,「数直線で考えさせた方がいい」としつこくアドバイスされたと言うことです。Wさんは,そのアドバイスをのらりくらりとかわしたようですが,タケノコ図(兵庫県の出口陽生さんのプランに出ていたもの)と数直線のどちらかを選択できるようにしたそうですが,さて本番はどうなったんでしょうか。2月のサークルで聞けるかもしれません。
 以下,Oよりの付け加え。
 ここまで読んできて,教育界の実験感覚のなさにはホントに呆れると思いました。割合の問題が数直線で解けて,みんなが割合をできるようになっているのなら,苦労はしません。その方法でやればいいのです。しかし,実験結果はどうでしょうか。教科書通り,数直線で教えられた子どもたちは,割合がわからなくなり,中学校へ行っても高校へ行っても,割合嫌い,割合わからないという子を作ってきたのです。そんな子どもたちを作ってきたのは,いま現場で「数直線で指導しろ!」と言っている先輩ずらした人たちではありませんか。もし,算数の嫌いな子でも,数直線で割合をたのしく学べる方法があるのなら,それこそ,「考えろ!」ではなく,若者に教えて上げてほしいものです。

2.「3学期始まっちゃった~」 B5 4P   S.Mi
 3学期が始まってすぐに《生類憐れみの令》を始めました。子どもたちには「私が楽しいと思うことをするから,付き合ってね」というスタンスで授業を進めています。はじめは,ブツブツ言っていた子どもたちも,わがままな担任に付き合ってくれています。
 私も実に久しぶりに,この授業書をしていますが,当たり前だけど,本当によくできています。そのできばえに?子どもたちがうまくはまっていきます。問題を進めていくと,理由として必ず「理由は,生き物だからです」と問題に出される予想を全てを「あてはまる」を選び続ける少年がいて,その答えを回りの子どもたちが期待していたり,自分の考えを話している途中で,予想変更をしたりする子が出るなど,授業書の完成度の高さに感服しています。2部まで終わったので,2月のサークルで,その様子を詳しく伝えられそうです。
 もう一つの話題は,ちょっとした「生徒指導」がらみの話。体育館の天幕(本校の天井は,幕で覆われている不思議な天井)の上に,6年生男児が,低学年用のボールを3つも上げてしまったことが分かった後の展開です。
 ボールを故意に上げ続けた子も,それを見ていて「すごい!」と褒め立てた子も,やってしまったことについて,丁寧に説明をして,よくないことだったと伝えました。その時に,「謝罪」を考えたけど,謝罪をするのは…関わった子は12名もおり,この数で謝罪しても「楽しいお謝り会」になりそうで…やめておきました。それが災いを呼ぶことになったのは,その後1週間後。休み時間にサッカーをしていた少年が,ボールを蹴って,そのボールが天幕の上に上げちゃったのです。それをやった日が,次の日に,新しく買ってもらったボールを使って,学級指導をしようとしていた絶妙の日だったのです。なんだかなと思いつつも,5・6年生に,改めて指導しました。
 そして,一連のことを終礼で話すと,「その子たちは校長先生に謝ったんですか」という意見が出たのです。まぁ予想していたけれど,それに対して「来ていません」という校長の一言。それで仕方なく,翌日,代表として,ボールを最初に3つ上げた子と,サッカーで上げた子を謝罪に向かわせようとしていたら,校長さんが6年教室に来て,約5分間,一連のことに絡めて「6年生とはなんぞや」みたいなことを説教されていったのです。そのことを聞いていなかった私は,よほど謝りに来ていないことにご立腹だったのかなと思ったのですが,なんだもかんでも「校長先生の所へ」というのは,見直していかないといけないなと思ったのです。

今月の体験 プラン〈不登校の児童生徒数の推移〉    作成:Takeda.Kさん

 欠席しているOさんが用意してくれたプランを4人で楽しみました。本プランは,これまでの文科省(旧文部省)が採ってきた教育政策と児童生徒の不登校数との間になんらかの相関関係はあるのかどうか,ということを考える内容となっています。作成者は,研究会なかまのTakedaさんです。
 全ての問題の予想分布を紹介します。

【問題1】 ア:0人  イ:3人  ウ:1人
【問題2】 ア:3人  イ:1人  ウ・エ:0人
【問題3】 ア:4人  イ・ウ・エ:0人

 私(S.Mi)は全ての問題になっている年代に学校現場で働いていたのに,しっかり予想を間違えてしまいました。不登校児童を,自分が受け持ったことはないけれど,今も続いていることなんだと考えさせられました。そして,「ゆとり」が全くなくなった今は,「不登校」になれない大人が,心を病んでいるのだと強く感じました。
 以下,プランが終わった後の4人の感想を紹介します。

●ゆとり教育の時期に不登校の児童数が停滞しているのは,驚きでした。児童の学習内容や時間にゆとりがあったのかもと思いますが,教員の時間のゆとりもあり,それが児童との関わりへの余裕にもつながったいるのかなとも感じました。(S.Ma)

●今日のプランを体験して,へぇ~って感じでした。実際その時を過ごしていたけど,こんなにもはっきりと不登校児童生徒数に変化が見られたことに驚きました。「ゆとり」は,ちょっとは役に立っていたんですね。そして,こういうことに目をつけて,グラフ化してくれた竹田さんに感謝します。(S.Mi)

●ゆとりのない今の学校現場は,大人も子どもも疲弊しています。結果ばかり求められれば,そりゃ子どもも学校に生きなくないでしょう。不登校になった子たちを切り捨てて,点数を上げて何になるのだろうか。考えさせられました。(N.T)

●ゆとり教育の中を生きてきた自分にはびっくりのグラフでした。たしかにゆとり教育以外の要因はあるのかもしれないけど,子どもたちにとってもいい面があったのかもしれません。自分が小学生の時は,土曜日の授業がなくなり,5限の日が2日あるなど,今と比べるとたしかにゆとりはあったのだと実感しました。不登校になりたくなかったような子を救えていたのかもなあと思います。(W.T)

今月のものづくり 「ミニクリスマスリース」(『たのしい授業№317』初出)

 私(S.Mi)が6年生と一緒に作ったのですが,数セット分だけ材料が余ったので,4人で作ってみました。はさみがなかったので,リボンの端を仕上げてないのですが,4人で1ヶ月遅れのクリスマスを楽しみました。
 季節外れではありますが,こうした,ものづくりネタを自分の「たのしいネタバコ」に入れておくことで,次年度以降もすぐに取り出せますからね。
 みなさんも,季節外れのネタでもいいので,持ってきてください。

今月の話題から…山本正次さんの本の紹介

 Wさんが紹介されていた山本正次さんの資料というものがどんなものなのかわかりませんが,今,わたしの本棚にある山本正次さんの著書を紹介します。ガリ本(普通の本屋では手に入らない自家製本)もありますのでご了承ください。
山本正次編著『よみかた授業プラン集』(仮説社,1992年)
 最後に紹介した『授業書案集』から9編選んで編集発行されたものです。巻頭の「よむことを軸にした授業」も大変読み応えがあります。収録されている授業プランは「はるなつあきふゆ」「ことこ」「ふしぎなふろしきづつみ」「のはらうた」「重さの錯覚」「一年生たちとひよめ」「ふんすい」「やまなし」「たいこ」。「ふんすい」は,うちのサークルの定番授業となっています。
●山本正次著『国語の授業―きく・はなす・よむ・かく (やまねこブックレット教育) 』(仮説社,2015年)
 出版社による解説を転載しておきます。
長年,国語科「よみかた」授業の研究を続けてきた著者による,やる気さえあれば誰にでもまねのできる国語の授業。明快でシンプルな提案はすぐに役立つ! 「きく・はなす・よむ・かく」という国語の基本をどう教えるかを、わかりやすくとく。
はじめに/すきなところがありますか 感動から出発する国語の授業/話しあうことのたのしさをもとめて/誰にでもできる作文指導/「授業」への提言/編集を終えて

山本正次著『子どもに向かって歩く…優等生教師からの脱皮をめざして』(太郎次郎社,1977年)
 山本正次氏の教師一代記です。「あとがき」によると,本書の内容は,雑誌『教育国語』(麦書房刊)に19回にわたって連載した「サークルのなかの教師」を元にして書き直したものだそうです。山本氏の退職を機に太郎次郎社の編集部からお願いがあって,このような本が生まれたそうです。
 とってもステキな本です。
●山本正次著『小さなドラマ』(キリン館,自家製版,1989年復刻)
 本書は,サークルの集まりで発売されていた自家製版・ガリ本なので,一般書店では手に入りません。もしかしたら,古本屋にはあるかも知れません。本書の内容は,上掲書『子どもに向かって歩く』の続編となっています。本書「まえがき」から,山本氏のの言葉を引用しましょう。
そのころ私はもう四條畷学園小学校を退職していたのですが,その『のびのび』編集部から「子どものはなしを書いてほしい」という依頼を受けました。これはたぶん板倉先生が私を紹介してくださったのだろうと思います。
 山本氏は『のびのび』への原稿を当時担任していた1年生の学級通信「きりん」の記録を元に書いたそうです。そのご,その記録を読んだ国語研究会の仲間が本書を編集発行しました。そんなわけで,本書はしばらく品切れとなっていたのですが,仮説実験授業研究会の音田輝元さんが,仲間にも読んでほしいと復刻を願い出て,いま,こうして私の手元にもあるというわけです。
 この文章もたいへん心温まる文章です。教師にはこんな出会いがあるから辞められないんだよって思います。
●山本正次著『国語科よみかた授業書案集』(キリン館,自家製版,1982年~)
 このシリーズは,それまでいろいろな場所で公開授業をされてきた山本氏の授業書案を集めて発行したものです。わたしが持っている低・中・高学年向けの3部作は「1984年1月15日,16日高知県宿毛市でひらかれた四国たのしい授業ゼミナール国語集中講座の資料」として作成されたものらしいです。その後,第4集も発行されています(1988年)
 収録されているプランを紹介します。
・第1集(1・2ねん)…ぴよぴよ,大きなかぶ,一年生たちとひよめ,こったら豆こ,子どものすきな神さま,きょうはなんの日。以上7編
・第2集(3・4ねん)…みかんの木の寺,石ころ,ふしぎなふろしきづつみ,茂作じいさん,わらわれたっていいのです,ぞうきん,ふんすい,たいこ。以上8編
・第3集(5・6ねん)…いなご,あとかくしの雪,空をかついで,重さの錯覚,じろはったん,戦友,モンシロチョウのなぞ。以上7編
・第4集…やまなし,ことこ,3びきのやぎ,ぶらんこ,ごんぎつね,きつねのおきゃくさま,以上6編
 以上,いずれも山本正次さん手書きの文章でビッシリです。まさに「ガリキリによる原稿」の本といえるでしょう。最近,ワープロの文字しか見なくなっていますが,名文を名筆で読めるなんて,なんという贅沢でしょうか。だから,こんなシミがいっぱいのわら半紙の本も捨てられないんです。

1989年復刻版
手元には低/中/高+1冊あります

山本正次:1913年北海道室蘭市生まれ。幼いころ両親を亡くす。1933年大阪・天王寺師範学校卒。1947年私立帝国学園(中・高)に勤める。1953年私立四條畷学園(小)に勤め、1976年まで教師を続ける。芦田恵之介の「恵雨会」、「日本作文の会」等に参加。授業研究の会を主宰。仮説実験授業研究会会員。大阪国語教育連盟委員。2001年逝去

仮説社の本・奥付けより

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