直小学校(当時) 尾形正宏
2020年9月30日 記
2022年3月24日追記
5年生理科の単元「流れる水のはたらき」の授業について紹介します。わたしは新しい学校に赴任するとすぐに,露頭や川の様子を見に行きます(ついでに植物の様子も)。しかし,本校区には大きな川(河原があるような川)が無く,その様子を観察することはできそうにありません。ただし,となりの校区なら大きな川があるのですがね。それを見るのも大切なことです。
体験活動と地域にあるものを取り入れた授業を組んでみました。また「知識構成型ジグソー法」にも取り組んでみました。
第1時 川はどちらに流れる?
①「流れる水と言えば」
「川」
②みなさんは,家の前にある側溝に流れている水が,どこへ行っているか知っていますか?
「海!」
誰一人として,詳しくは知らない。
③(北海道の石狩川(白地図)を見せて)…川はどこからどこに向かって流れていますか。
[子どもの意見]
北海道地図「地図に色を塗ってあれば分かるのに…」
といいながらも,一人をぬかして全員正解。
Aさん「川は海から陸の方に流れるのだと思う」
多数「川は山から流れる」「水は,低い方へ行こうとする」
最近は,本単元の導入でこの問題を必ずやるけど,これだけ正答率が高いのは珍しい。川の水がなくならないことから,海から陸に向かって流れていると考える子がいても不思議ではない。
今回,ほとんどの子が正しく予想できていたので「じゃあ,なんで,川の水がなくならないのだろう」と振ってみた。森のはたらきに言及する子もいた。
〈川の流域によるようすの違いについて,調べよう〉
④色つきの北海道地図を見せて,出発点には何があるかを確認する。
川の流れが「山地→平地」と流れることを確認すると「社会科みたいや!」との発言あり。「この単元は社会科と理科との橋渡しの授業になるんだなあ」と,指導者は再認識した。
山地を流れているあたりを川の上流,平地に出たあたりを中流,海の近くを下流ということを確認する。
⑤教科書を見て,上流・中流・下流の違いを一覧表にまとめる。
⑥その後,地元珠洲市の川を紹介し,自分達のそばにある川に色を塗る(『珠洲市社会科資料集』より)。
⑦土山作りの場所を指定して,10分ほど作業(その後は課外で)。
第2時 ひたすらフリフリ実験
①丸い石と角張った石を見せて,これらの石は,どのあたりにあったのかを聞く。
「海だ」
「丸いのは下流だ」
〈下流の石が丸くて小さいのはなぜだろう〉
②予想→理由発表
「石どおしがぶつかってけずれていく」
「水も長い年月の間に石にあなをあけるって聞いたことがある」
「水がけずっていった」
③ふりふり実験
わたしたちも流れる水になってはたらいてみよう!というわけ。
このネタは『理科実験の教科書・5年生』より。単純で面白いです。
鉢植えのかけらと角張った小石と水200mLを500mLのペットボトルに入れます。そして,ひたすらふりふりするんです。10分ほどガンバレば,水がどんどんにごってきて,鉢植えのかけらは,しっかり丸みを帯びてきます。そっと,白いトレイの上に取り出すと,割れたかけらも出てきます。ふっていると,たいてい,この写真のような子どもが出てきます。前に来て踊り出すんです。それをみて,みんなニコニコ。
追試をしてくれた前勤務校の職員も,「こんな実験するよ~と言ったら,それまでとは子どもたちの目の色が変わった」と言っていました。お薦めです。
今年の子どもたちは,教室へ持って帰って,さらにときどきふりふりしていました。相当,丸くなりました。
第3時 流水実験…外で派手に!
次は,外で実験です。第1時の最後に,外に出て土山を作り始めましたが,半数くらいの子どもたちは,昼休み,外に出て,山を作ってくれました。その山で実験です。今年は,ホースがとどくように,校舎のそばまで土を運びました。
〈土山に水を流すと,地面はどのような変化をするのだろう〉
①予想→理由発表
「土をけずりとる」「穴があく」「どろどろになる」などの意見が出る。「下に水がたまる」という意見などもでてくるが「下の方に土を運ぶ」は出なかった。
子どもたちは,〈水のようす〉と〈土地のようす〉をごちゃ混ぜて表現しているようだった。改善点あり。
②外で実験
2班(運動会の紅白)に分かれて,山に水を流す実験をする(流れる水の方向を二つつくる)。
「おお,けずられた」「ああ,流れていく」「こっちまで水来たよ~」と興奮気味。そりゃそうだろう,子どもだもんね。何が起きるのかの確認は,次の時間にするので,大丈夫。水遊びしてね~。
子どもたちはとっても喜んでいたので,まとめは次の時間にすることにする。
若い頃は実験を途中で打ち切って教室に戻り,授業を前に進めていたのだが,興奮している子どもたちを強制連行するのはかわいそう。せっかくの機会なので自由にさせたくなってきた。次の時間には,ゆっくりと確認の実験をすることにする。
第4時 流水実験…室内でじっくりと
前時の確認からはじめます。
①前の実験では,流れる水で地面はどのように変わりましたか?
「山がけずれた」
「下の方に土が流れてきた」
「川が何本もできた」
「曲がっていった」
「水がにごった」
「あわができた」…などなど。
やはりここでも,「土地の変化」と「水そのものの状態」とが混同して出てきています。このあたりは,どうやって整理すればいいのでしょうか。このままでもいいような気もしますし,「水だけが流れてきたの」と聞いて整理してもいいような気もします。
②トレイ(小さな斜面)使って,確認実験をする。
この方法は,前勤務校にいた頃からやりはじめました。もとはネットでよく似たものを見つけたことから始めたんだと思います。
実は,卒業生が置いていった「机の引き出し」と「給食で使ってるトレイ」が実にピッタリなんです。引き出しの間切りに使うすじにトレイを合わせると,ちゃんと「土地のかたむき」が作れるんですよ。その坂道にペットボトルのフタに穴をあけたところから,水を流します。とても簡単でしょ。
教室の中でも流水実験ができるのが,とてもいいです。外でやると準備も大変だし,準備したわりには,結局,水遊び,外遊びで終わっちゃう子もいますよね(それはそれでいいと思います)。
その点,この方法は,流れていく水のようすや川の流れが変化するようすをじっくり見ることができるので,とてもいいです。
最近の教科書には,同じような実験が出ているそうです。
③実験結果…どんなことが起きましたか?
「川が何本もできた」
「いちどできた川が合体した」
「水の落ちたところに穴が空いた」
「流れの方向が変わった」
「砂が下の方に流れていった」
「やっぱり水のいろは泥水」
「大きな石は,残っていた」
④まとめ
流水のはたらき(侵食,運搬,堆積)を教える。ここでは漢字で示してあげる。教科書のような「たい積」では,のちのち,子どもたちは勝手に「体積」という字を使って書くことがある。たとえば,ヨウ素液と紹介しても,時間が経つと「養素液」と勝手に判断する子がいる。「養分があるかないかを見分ける液」だからという連想だろう。だからこそ,まだ習っていない漢字でも,一度は本当の漢字を見せてあげた方がいい(沃素液)。
コメント
授業の流れ、とても参考になります。「この日の放課後〜」は、今まで気づかなかったことに気づくのが理科の面白さだと改めて思いました。
コメントありがとうございます。
子どもたちが知らないうちに夢中になってしまう授業をしていきたいですね。仮説実験授業をやっていると,それ以外の単元にもよい影響を与えるようです。
面白い
こんにちは