「酸性雨」を授業する

理科・科学

○○○小学校 眞智富子
2009.12.19

 先月のサークルで,4日後に実施するという指導案をみなさんに見てもらいました。まあ,本当ならもっと早くに意見を求めればよかったのかもしれませんが,なかなか考えもまとまらずにいたのです。
 公開授業のための授業案づくりでは,わたしの理科の指導案の出来上がりが一番遅かったと思います。何か新しいことを思いつくと,そのつど,職員室にいる理科部員(尾形さんと教頭さん)や理科支援員に相談していました。
 その中で,一番問題引っかかっていたのが,サークル通信にも書いてありましたが,「見栄えのする実験の危険性」と,「科学的事実を伝える大切さをどうするか」というものでした。
 この授業は,6年理科「水溶液の性質とはたらき」の一番最後にやったものです。

第1時 雨は本当に酸性なの? 

【質問1】
 水溶液の性質とはたらきを3つ言ってください。

・水溶液には固体ばかりでなく,気体が溶けているものがある。
・水溶液は,酸性・中性・アルカリ性に分かれる。
・水溶液は金属を変化させるものがある。

【質問2】
 この銅像の表面の様子を見て気づくことはありませんか?

・白い。
・色うすい。
・色がはげている。

銅像新【質問2追加】
 この銅像が出来たのは今から34年前です。出来たときには右下の写真のような姿でした。黒に近い深緑色だったんです。
・時間が経っているから変わったんだ
・雨が当たってとけたんじゃない? 
・酸性雨のせいだ。
・酸性雨って聞いたことある。

校庭のブロンズ像(現在)
校庭のブロンズ像(制作当時)

【問題1】雨は本当に酸性なのでしょうか?

<予想>
・酸性だと思う…22人
・酸性ではないと思う…たったの1人

<理由・討論>
・僕はないと思う。だって,そんなものが降っていたらぬれても危ないし,雨には味もない。
・それは,いつの雨ですか。
・最近も口あけてみたけど,すっぱくなかった!酸性じゃないと思う。
・でも,雨にはにおいもあるし,何かとけとると思う。
・うちの人に,雨に当たったらはげるって言われたし,賛成でとけると思う。
・新聞で,酸性雨で木が枯れるって話を読んだことがあるし,銅像も木と一緒やと思う。
・ぼく,Kさんの話から,予想を変えます。

 討論のあと,一人が少数派の「酸性ではない」へと予想変更をしました。

【質問3】どんな方法で確かめればいいですか?
・雨水を蒸発させればいい
・リトマス紙で調べればいい

【実験】
・蒸発の方はそのままにしておいて,リトマス紙の反応を班でやってもらいます。雨は前日に取っておいたものを使いました。
<リトマス紙>
・反応がいまいち
・微妙!
・中性じゃ
・弱酸性?
 この実験では普通リトマス紙では「酸性」と断定できるほどはっきりした変化が出ません。そこで,次にBTB液を登場させます。

【説明】
中学校の理科で使うBTB液を持ってきました。BTB液は,酸性なら黄色,アルカリ性なら青,中性は緑になる薬です。

<BTB液>
・雨水の入ったビーカーに入れると,さあっと黄色に変化します。

【質問4】酸性っていうことは何かとけているんだね。何がとけているんだろう?
・蒸発しても何も残らなかったから,気体だと思う
・排気ガス
・二酸化炭素
・二酸化炭素は水によくとけるし

【演示実験】
 じゃあ,やってみようか。
 水道水を汲んでBTB液を入れ,教師が息を吹き込む。
      ↓
 見事に黄色に変化する

【説明】
昔から,ふだん降っている雨は空気中にある二酸化炭素がとけているので酸性だったんです。それは,リトマス紙には分からないくらい弱い酸性=弱酸性です。

【次の時間の予告】
 次の時間には「排気ガス」がとけたら酸性になるのかどうか実験してみましょう。

第1時を終えて

 今回の授業では,いろんなことを学びました。
 私が,最初考えていた華々しいというか,毒々しい実験をそのまましていたらどうなったでしょう。「雨は怖いもなんだ」ということを子どもたちに刷り込み,「人間の努力でそれを少なくしている」ということに進んでいかざるをえませんでした。
 子どもたちの方がずっと純粋で,今まで学んだことを確実に活用して,予想を立て,検証方法を考え,その結果から学んでいきました。

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