「酸性雨」を授業する

理科・科学

第2時 排気ガスが溶けた雨は酸性か?

【説明】
 前時の復習をします。
○雨は,もともと弱酸性である。(リトマス紙ははっきち反応しないが,BTB液は黄色に)
○蒸発させても固体が出てこないので,気体が溶けている。
○その大部分は,二酸化炭素だろうと考えられる。しかし,排気ガスが酸性雨の原因と聞いたことがある。

【問題1】
 排気ガスがとけた水溶液(雨)は,酸性なのだろうか?

 ・普通の雨も酸性だったから酸性だろう
 ・普通の雨よりももっと酸性が強いと思う
 ・リトマス紙でも変化するくらいの酸性かも知れない
 ・そんな酸性の雨が本当に降っていたら怖いだろう

【実験】
右のようなふくろを用意して,「空気」「二酸化炭素」「排気ガス(普通車)」「排気ガス(トラック)」をそれぞれ入れ,上から水を入れて気体をとかし込む。

<BTB液の反応>
A:空気だけの袋は,BTB液が緑色
B:二酸化炭素の袋は,BTB液は黄色
○石灰水で白濁することも確認する。

C:排気ガス(最近の普通車)の袋も,BTB液は黄色

  排気ガスも石灰水に白濁反応
      ↓
  排気ガスの中にも二酸化炭素が入っていることも確認

D:排気ガス(トラック)の袋も,BTB液は黄色

リトマス紙でもう一度やってみることにする
A:変化なし
B:ん~微妙…前時と同じ
C:やはりそんなにはっきりしない
D:青色リトマス紙が赤変する

2段構えの袋

 理科支援員の方のこの袋の工夫がすごくよかった。
 気体だけを入れて紐で縛ってあり,子どもたちが上の部分に水をいれ,上図のようになる。
 間のひもをはずすと,雨が降るように水が音をたてて落ち,その後,ふり混ぜる。
 雨が降るように落ちていくところがミソである。

【説明】
 排気ガスがとけた雨は二酸化炭素だけがとけた雨よりも酸性が強そうですね。とくにトラックなどは…。

※トラックの排気ガスが手に入らないときには,塩ビを燃やした気体を入れると強い反応がでる。実験方法はいろんなサイトに出ているので参考にして下さい。

【説明】 酸性雨にによる被害
 酸性雨について説明します。
 この新聞記事を見てください。いずれも『北國新聞』の記事です。
 上の記事は,能登半島沖にある舳倉島で酸性雨が観測されたというものです。
 「2008年の5月末に舳倉島で採取した雨を分析した結果,強い酸性であることが分かった。工場などのない舳倉島で降る酸性雨の主要原因は,中国大陸から偏西風で飛来した大気汚染物質と見られる」と書かれています。
 また下の新聞記事には「兼六園の土が酸性になってきて有名な木が枯れるかも知れない」という話です。
 「地表より30㎝以下の土壌がpH3台の強い酸性となった。大陸から運ばれる大気汚染物質の影響で県内に一年中降る酸性雨が土に染み込むためだ」と学者はいっていると書かれています。

『北國新聞・2008.06.30』
『北國新聞・2009.08.10』

【説明】酸性雨とは

<スライド1>
 酸性にもアルカリ性にも,その程度によって強い弱いがあります。
 中性に近いほど性質は弱くなります。中性から離れれば離れるほど,酸・アルカリの性質が強くなるので,直に触ったりすると危険なことも多くなるし,自然界にも色々な影響をあたえることになります。
 
 ここではpHというものは教えずに,今まで理科の授業で使ってきたものがどのあたりのものなのかを確認しながら,酸性雨と普通の雨とのちがいを示しました。

<スライド2>
 雨水は大気中の二酸化炭素が溶けているので,酸性を示します。また,工場や自動車の排気ガスに含まれる物質が雨水に溶けて強い酸性の雨となり地上に降ることがあります。特にpH5.6以下の酸性を示す雨を酸性雨といいます。

絵は,当時のサイト「環境問題の部屋」から引用しました。

【説明】畑のお話
昔から畑に灰や石灰を入れたのは,雨が酸性で,そのままにしておくと長年の間に土が酸性に傾いているからです。それでアルカリ性のもの(灰や石灰)を入れて,酸性でなくしていた生活の知恵なのです。

(子どもたちは,これまでの授業の中で,酸とアルカリの性質の時に,酸にアルカリを入れると中性,アルカリ性になっていく,アルカリに酸を入れると中性,酸性になっていくことを見つけている)

※上の写真は,ブログ「じいじの日記…孫の成長と菜園の記録とじいじの独り言」(2007年02月25日の記事)より

第2時を終えて

 第2時の排気ガスの実験では,理科支援員の先生が,排気ガス,二酸化炭素,空気入りの袋を準備してくださいました。この袋の工夫がすごくよかったです。
 また,降りまぜた水をビーカーに取り,BTB液を入れると,二酸化炭素・排気ガスは黄色になり,空気入りは緑でした。さらに,子どもたちは「二酸化炭素かどうか,石灰水も入れてやってみてくれ」リクエストしてきたので,石灰水入れてふると,もちろん白くなりました。
 私も刺激されて,「排気ガスにも石灰水入れてみてください」とお願いしました。排気ガスがとけた水溶液もやはり白くにごりました。
 排気ガスの中にも二酸化炭素が入っているのはわかっていましたが,さらに実感が増しました。
 Kさんの感想※1から「<排気ガス悪者>授業にならなくて本当によかった」と思っています。

※1「Kさんの感想」というのは,『珠洲たの通信2009年11月号「6年理科指導案」』をご覧下さい。

参考にしたHPなど

水博物館へようこそ(http://www.niikawa.or.jp/mizuhaku/)
アイスフエトコム(http://isfet.com/news2k/)
水これっ!飲みたいっ!(http://mizu.1pun.net/2006/11/post_184.html)

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