第5時 流水実験(室内でじっくりと)+知識構成型ジグソー法
ここで「知識構成型ジグソー法」(以下,ジグソー法と略)を導入しました。ジグソー法でやると,何種類かの実験が同時にできる…という利点があります。
〈流れる水のはたらきが大きくなるのは,どんなときだろう〉
①予想→理由発表
予定していたものが出てきました。「水の量を多くする」「坂をもっと急にする」「高いところから水を落とす」の3通りです。
時間もないので,理由発表はせず,出てきた3種類でエキスパート活動に移りました。
実験に移る前に「条件統一」「対照実験」について,再確認しようと思ったのですが,時間がないと思ったので割愛。ま,プリントに書いておいたのでいいかな。
②ジグソー法の進め方を説明する。
班の作り方やもどってきてやることなどを簡単に説明しました。昨年,算数のチャレンジにいた子たちは,「ああ~,あれか。」と言っていたので,覚えていたのだと思います。班を作るのに,5分はかかった気がします。初めてやるときには,この時間をとることが必要です。
③エキスパート活動(約15分)
そのとき,もう一度,前回と同じ実験をやって,その同じ実験道具を使ってで,どれか一つの実験をやるようにしました。これで,「変える条件は一つだけ」という条件制御の実験になります。5年生でやっている対照実験,そのものですね。
結果は,「水の量」と「土地のかたむき」は,その違いが一目瞭然でしたが,「水の落とす高さ」の実験の結果はビミョーでした。高くすると,トレイに当たった水がとびはねて外に出ていったりして,なかなかむずかしいです。何かいい方法がないかなあ。
④ジグソー活動(約10分)
次に元の班にもどって,交流です。
エキスパートでやった実験結果を聞いて,それをまとめるのですが,これまた難しそうでした。
⑤クロストーク(後ほど5分)
当日は,クロストークができず,時間切れ。
理科の時間の前が体育だったためか,理科室に全員がそろったのは,すでに5分を経過していました。この時間に行った実験も欲張りすぎた感もあります。ま,こうして試行錯誤するんですけどね。
そんなわけで,少しだけ,他の時間をもらって,まとめをしました。
第6時 「ジグソー法」で課題解決にせまる(研究授業)
本時で取り上げた指導内容(使用したプリント等の形式)は,CoREFで紹介されていた実践例をもとに行いました。参考資料は,ここで見ることができます。
本時は校内研修の一環として「ジグソー法」を紹介したくて,このような授業をしてみました。
この形の授業で一番難しいのが「課題」とその課題にあった「エキスパート活動」のネタを準備することです。この時間の授業プランには先行実践があります(CoREFのサイトに掲載されています。リンク先はこのページの最後を見てください)。しかし,そのサイトには実際に授業で使用した動画が出ていません。そのため,エキスパート活動に合う動画を集めるのに一番苦労しました。ネットを探しまくりました。今回は主に「理科ねっとわーく」のクリップ動画を利用しました。
<どうして川のカーブが大きく曲がったのかを考えよう>
①予想→発表(簡単に)
大井川の中流域のようす(動画)をみせて,川が大きく蛇行するのはなぜかを考える。予想を発表させる。
②ジグソー活動の進め方を説明する。
まだ,2度目なので,しっかり確認しました。が,ここで,それぞれのエキスパート活動がなにをするのかを全体でいう必要はないようです。時間のムダ。少しでも討議の時間を確保したいと思うのです。
③エキスパート活動
3種類のエキスパート班に分かれて,実験の動画を見てもらいます。各班で,30秒~1分ほどの動画を2本ずつ用意しました。映像を見て学んだことをメモしてもらいました。
ただ,子どもたちは,これまでの教師の指導の成果(もちろんマイナスの)か,〈動画に出てきたことをもらさず全てメモすること〉にいっしょうけんめいで,課題を念頭に置きながら,〈自分たちの学んでいることは,その課題とどのようにつながりそうか〉を考えていなかったように思います。これは,たぶん,何度か繰り返すしかないのでしょう。少し時間もかかりました。
④ジグソー活動
ここでは,まず,学んできたことを交流するのですが,これもまた,〈順番に発表〉の感が否めませんでした。ここでは,黙って聞くのではなく,それについて,どんどん横から発言させることが大切です。とにかく,「普通の会話の状態のとき」を想定して,みんなで作り上げるのが大切なんです。
どの班も,3つのエキスパートを順番にならべただけで終わっていました。やはり,動的なものを扱う説明なので,その解説の仕方はとても難しいのですが,それでも,もう少し,何か方法がないかと思います。
⑤クロストーク
私の中では,この進め方が一番課題として残りました。実際,教材研究をしているときも,この部分は,なんとなく考えていただけでした。
これもまた,今までの方法〈順番に説明させる〉になってしまいました。あるときには,それでもいいのですが,今回は6班もあったので,それだけで時間がかかってしまいます。あの場でそれぞれが質疑をうけるともっと時間が必要になってとても1時間では終わりません。
あとの整理会で「クラスみんなで課題に挑戦!」と言ったからには,そんなふうなクロストークができないだろうか?と,考えました。で,話しているうちに,いいことを思いつきました。それは,グループごとに発表させるのではなく,それぞれの班が考えたことを説明しながら黒板に書いていくのです。
そのとき,黒板に,小さな磁石をたくさん使って川をかいておきます。子どもたちにそれを使って説明させるのです。すると途中まで説明してつまったりしたら,次々助け船が出てきて,結果として,クラス全体で,侵食-運搬-堆積という流れる水のはたらきによって,川の流れが変化していくようすを説明してくれたのではないか…と思うのです。ここでは,教師自身が,今までの発表の型に囚われた結果,スムーズに課題解決に進めなかったと反省しました。(実際,翌年の実践で,このように黒板で課題解決をしたところ,みんなでワイワイと進めることができた。)
⑥確認の動画を見せる
クロストークの深まり次第で,この動画をいつ見せるのかを考えていました。今回は,繰り返し行われたこと…が,分かっているようで,分かってないようだったので,まとめの前に見せることにしました。
これで安心して,まとめに移れたと思います。
⑦まとめをかく
個人でまとめることにしました。図をかいてもいいことにしたので,全体での発表はしませんでした。こんなことがあってもいいと思います。18人中16人はしっかりかいていましたが,2人だけ,よく分かんないことをかいていました。
参観者からのコメント
以下の〈視点〉は,当時の勤務校の授業で目指していたものです。
〈視点1〉「自分の立場を明確にして書く。既習学習や体験を理由づけて書く」
・既習事項を生かして簡潔にまとめていた。
・これまでの学習の振り返りができていた。
・元のグループに戻った際,エキスパート活動で学習したことを,図を使ってしっかり伝えようとしていた。「なんで?」「どういうこと?」という質問も自然にされていた。
・テーマ別にVTR,ワークが作られ,区別することで,「エキスパート」の意味も伝わり,テーマ別にすることで,解決の見通しができると思った。資料等の苦労が生きた。
・自分が調べ考えをもっていく役割があり,考えをもとうとする意識ができる。
・それぞれが責任を持って考える場,説明する場があった。
〈視点2〉「ねらい達成のくふう(つかむ,考える,深める,まとめる)
・ジグソー活動の内容が,パソコンごとに違う内容で,持ち寄って話し合うのでよかった。
・エキスパート活動で考えをもったあとなので,ジグソー活動の際に「聞こう!!」という意識があり,「話そう!!」と積極的に話し合っていた。
・3人の思いを交流するのは楽しい。だって,やってないから,聞きたくなり,知りたくなる。
・かんぺきではないので,それぞれの意見を合わせて答を作っていくことがとても楽しい。必然性あり。
・映像の力はすごい…。ただし,準備は大変だと思う。映像があると具体的なイメージを持つことができていた。
・まとめの前に,動画で確認してからまとめさせた→確かめてから,まとめを書かせることで,理解定着につながるので,よいと思った。
・内と外の違いに関心が行った。まとめて解決につなげることを全体で取り組むことで「情報をどうまとめるか」を学んでいけると思った。
・(授業の最初に,流れる水の)はたらきを確認したことで,課題に対する答を書くときに,けずる,侵食するということを確かめることができた。
・時間は短いが,これをくり返すことで慣れてくるかな。
・ジグソーの話し合いの資料の手立て(3パターン)をそれぞれが書くことで,個々の力はついてくると思った。
本校の職員にとって「ジグソー法」を取り入れた授業を見るのは初めてのはずです。本来,実験を見せるはずの理科の授業でのジグソー法の授業に,新鮮さと驚きと,その可能性を感じてくれたようです。校内研修会でやった甲斐があるというものです。教育事務所の指導主事たちも勉強しだしたようなので,今後が楽しみです。が,その一方で,単なる型のマネが流行る予感もあって,注意が必要です。
ジグソー法をやってみたい方は必ずCoREFのサイトで学習してください。
第7時 外で,流水実験,堤防づくり体験
まず,石狩川の三日月湖を見せました。前時のプリントを見ていたからか,写真を見せただけで「三日月湖」という声があがりました。
「どうして,こんな形の湖になったの?」と簡単に聞いたあと,今日の課題にうつりました。
<川の水がふえると,どのような災害が起きることがあるだろう>
①簡単に予想する。
②実際に,外の山で川を作り,流水実験をする。
最初は,第6時の確認(外側が寝食を受け,内側に堆積する)をする。色砂も利用しておいたのですが,使わなくてもよく分かりました。
ほおっておくとカーブの外側が決壊するので,みんなで堤防を作る。水を止めてから,小石などで堤防をつくり,再度水を流す…という実験をする。
③まとめ
子どもたちは,一生懸命堤防作りを始めたので,教室に戻る時間がなくなりました。こんな時には無理をせず,思いっきりやらせました。
だから,まとめは,次の時間とからめてやることにしました。
第8時 災害を防ぐくふうについて(ジグソー法で)
<水害から守るために,どんな工夫をしているのだろう>
本時も「ジグソー法」を使ってみた。エキスパート活動用の資料には「くふうをしめす写真〉を載せておいた。その写真が何を表しているのかを教科書で調べる。最後は,「天井川」の写真を示し,なぜ,川がこのようになったのかをジグソー活動で考えてもらうことにした。
①予想する
自分たちがやった実験から考える。防災・減災には,他にもどんな方法がありそうか…。防災,減災と言う言葉も教えたい。とくに減災。
②エキスパート活動
ここは,教科書を読ませて,(○○の工夫)というふうな呼び方をつけてもらう。
エキスパートA…水の力を弱めるための工夫(堤防やブロックなど)
エキスパートB…水を逃がす工夫(放水路,遊水池,地下タンクなど)
エキスパートC…水をためる工夫(ダム,自然のダム・森づくり)
③ジグソー活動
それぞれの良さと弱点を話し合う。
「天井川がどのようにできたのか」を考える。
④クロストーク
天井川のでき方について,クラス全体で解決する。第6時の反省を生かしたとりくみをしてみたい。さて,ちゃんと解決できるだろうか????
こんなことを考えていたのだが,残念ながら,できなかった。
また天井川のネタについては,次時にやってみたのだが,難しすぎて,子どもたちだけで解決することができなかった。
ただ天井川をどのように教えていくのかは,災害対策と新たな災害を考えるキッカケにもなるので,今後も考えてみたい。
上の写真は,能登半島の天井川宝達川の様子です。FBの友達が撮ったものです。トンネルの上に川があります。
コメント
授業の流れ、とても参考になります。「この日の放課後〜」は、今まで気づかなかったことに気づくのが理科の面白さだと改めて思いました。
コメントありがとうございます。
子どもたちが知らないうちに夢中になってしまう授業をしていきたいですね。仮説実験授業をやっていると,それ以外の単元にもよい影響を与えるようです。