第9時 川の観察…砂浜にいきました
〈川の様子を観察して,川の様子や流れる水のはたらきを調べよう〉
モデル実験で行ってきた流れる水のはたらきについて,実物の川がどうなっているのかを確認するために,出かけることにした。ただし,今回は,砂浜へ行くことにした。
学校から歩いて約10分。
住宅地から流れてくる水は,下水道が完備されているおかげで結構キレイ。
まずは,モデル実験でやったことがここでも見ることができるのかを確認。
①川の外側は崖になっているが,内側には,砂が貯まっている。
②流れが緩やかなところでは,ほとんど何も起きていない。
③流れの速さの確認をしようと思ったのだが,大きなカーブの所で水たまりができていて,ほとんど水は動かなかった。
④そこで,最後に,海への川筋を少し作ってみた。すると,川の流れは大きく変化して,両側の砂がどんどん運ばれ,川幅もみるみる広がり,これまで川だったところは,干上がってきた。
本校の近くの川には,河原がなく,河原に降りれる場所もないので,砂浜に連れて行ったが,これもありなのではないかと思う。
この日の放課後,数名の子どもたちは,この砂浜に遊びに行き,川の流れが,また変わっていたことを報告してくれた。この子どもたちは,海岸で遊ぶたびに,水の流れの変化に気づくことだと思う。そんな意味でも,砂浜にできた川の観察は,なかなかの教材だと言えるのではないだろうか。
一方,やっぱり,自分達の身近な川のはたらきについても,見ていきたい。
第10時 これまでのまとめ
見学のまとめをします。見学の時に撮った写真を元に,流れる水のはたらきについてまとめます。これまでの時間調整でもあります。確認プリントをしたりNHKなどの映像を見せてもいいでしょう。
第11時 私たちの住んでいる土地について考える
川のはたらきは,山を崩し,土を運び,低地を作ることです。子どもたちにとって,自分の住んでいる土地は,「もともとあるもの」「はじめから平らだった場所」でしかありません。そこをなんとかできれば,川のダイナミズムを感じることが出来るのではないか。そんな気持ちから,今回は,遺跡の発掘写真を導入に使ってみました。
〈わたしたちの住んでいる土地は,どのようにしてできたのだろうか〉
①この写真から,分かることは…
教師「この写真は,どこでしょう。何をしているんだろう」
子ども「遺跡の発掘。昔の住居跡やら…いろいろ出てくる。」
教師「これ,地面から50㎝くらい下からでてきたんだけど,なんで,地面の下にあったんだろう。」
子ども「…だれかがうめた?」「自然災害?」
教師「専門家は,今の野々江地区の両端にある若山川や金川が氾濫したときに上流から運んできた土で埋まったんだと言っています。さて,埋まったのは,ここだけだと思いますか?」
学校の東側にある本江寺(ぼんこうじ)遺跡の発掘写真も見てもらいました。下には水が貯まっています。私たちの地面の下は,けっこう水っぽいのでしょう。
②低い土地は,流れる水のはたらきでできたことを知る
野々江地区の地形図を渡します。Googleマップの画像を編集して作成しました。5m以下の土地には,予め線を引いておいてあげます。
この低い部分を青色で塗っていくことで,そこには田がたくさんあること,自分の家が建っている場所も,同じような環境にある…そう,みなさんの家の下の地面も,川のはたらきでできたのです。
今は護岸工事が終わって,とても土地を変化させているようにはみえない小さな川も,以前はこの土地を自由に流れていたことをイメージ出来たのではないかと思います。
このような地元の地図を出すと,自分の家がどこらあたりにあるのかを,一生懸命探そうとします。それもまた,実感を伴った理解につながるのではないかと思います。
なお,日本の地形図は「ウォッちず – 国土地理院」というHPで見ることができます。「地質図ナビ」も機能が豊富です。これについては,6年生の「大地のつくり」で触れる予定です。
③若山川のハザードマップを見る
珠洲市が作っている「若山川のハザードマップを見てもらいました。これは,第8時にも見てもらったものですが,ここまで学習して,改めて川のはたらきによって,泥水で覆われる可能性のある土地について,考えることができます。
ついでに,山の方に住んでいる子どもたちには「崖崩れハザードマップ」も見てもらいました。低い土地との間の部分は,結局,崖になっていて,そこでは,水の削るはたらきが大きいことが分かります。そのあたりに住んでいる子は,「わたしの家の裏に,なにやらそんな注意の看板があった」って教えてくれたりもしました。
④まとめる
「わたしたちの土地も,川が運んできた土砂が堆積してできた。」
わたしの感想 … 実体験だけがいいわけではない
以上,今回の授業の概略を述べさせてもらいました。いちいち子どもたちの感想をとらなかったので,反応は今ひとつ分かりませんが,私の手応えをしては,これまでで一番よかったと思います。
いい動画をたくさん見せる
実際に川を見に行っても,しっかり勉強している子は少ないですね。最初はいいけど,すぐにあきる(というか,違う遊びを見つける!!。でもわたしは,それが子どもというものだろうと思うんです。ポイントを絞って見学した後は,教師はゆったりと構えていればいい)。
こういう「遊びになってしまうのを教師のテクニックや押しつけでどうにかしよう」と思うよりも「〈学習の押さえは教室で〉…子どもたちには気分転換を…」と思っていた方がいいと思います。そう思っていた方が,教師・子ども双方にとっても,精神的に楽だしね。
授業で行う〈流水による実験〉も,土の質の違いやでこぼこなどで,典型的な姿を見せてくれるとは限りません。そこで,動画を登場させて,じっくり確認するようにすれば,少々の実験上でのブレは,解消されるでしょう。
とくに「NHK for School」や「理科ねっとわーく」には,30秒~2分の動画がたくさんあります。これらの動画を上手に利用することで,自分だちで実体験したことを,整理することができるでしょう。
参考にした図書・サイトなど(THANKS)
○科学教育研究協議会編集『理科教室』バックナンバー
○宮内主斗編著『理科実験の教科書・5年生』(さくら社)
○県埋文センター編『野々江本江寺遺跡出土の「木製笠塔婆」及び「木製板碑」について』(平成19年)
□NHK for School
□理科ねっとわーく
□CoREFプロジェクト推進部門(2022年に東京大学から独立した機関となりました)
□珠洲市ハザードマップ
□地質図表示システム「地質図Navi」
□石川県河川総合情報システム
□ウォッちず – 国土地理院(このサイトは別の名前に変わったようです)
コメント
授業の流れ、とても参考になります。「この日の放課後〜」は、今まで気づかなかったことに気づくのが理科の面白さだと改めて思いました。
コメントありがとうございます。
子どもたちが知らないうちに夢中になってしまう授業をしていきたいですね。仮説実験授業をやっていると,それ以外の単元にもよい影響を与えるようです。