教育の原点が見えてくる…『ドラゴン桜』の台詞

わたしの琴線の在処

『下流社会』に刺激されて

 ベストセラー三浦展著『下流社会』(集英社新書)を読んでいて紹介されていた『ドラゴン桜』を読んでみたくて,サークルでお願いしたところ,Hさんの弟さん(弟さんは私の同級生です)が持っていらっしゃるとのこと。それで借りて読んでみました。なんで自分で買わなかったのかというと,買ってみて「おもしろくなかった」らもったいないからです…う~ん,せこい話。
 しかし,読んでみると,結構おもしろい。教師が読むには,なかなか刺激的です。せっかくなので,気に入った(気になった)言葉を書き出してみました。
 教育の常識を疑ってみませんか?
 教育の原点を失っていませんか?
 学ぶとはどういうことですか? 

『ドラゴン桜』のセリフが気に入ったわたしは,この年以降,高学年向きの学級通信にこれらのセリフを紹介したりしていました(^^;)

琴線に触れたセリフ 『ドラゴン桜』より

2限目 ドラゴン桜
お前らガキは社会について何も知らないからだ。知らないというより大人は教えないんだ。そのかわり-未知の無限の可能性なんて何の根拠もない無責任な妄想を植え付けてんだ。そんなものに踊らされて個性生かして人と違う人生送れると思ったら大間違いだ!社会はそういうシステムにはなっていない。それを知らずに放り出される。そこに待っているのは不満と後悔が渦巻く現実だ。 (桜木建二,以下「桜木」と略す)

10限目 数学はスポーツだ
数学とは…ゲームだ…遊びだ! 勉強と思うからイヤになる。これは回答という結果を出し達成感を味わうゲームなのだ。(柳鉄之介,以下「柳」と略す)

12限目 東大と京大
“カタ”がなくてお前に何ができるっていうんだ。素のままの自分からオリジナルが生み出せると思ったら大間違いだ! 創造するってことはまず真似ることから始まるんだ!基礎となるカタをまず身につけ,それを工夫とアイデアでアレンジしていくんだ!(桜木)

14限目 特別進学クラス崩壊!?
子供にとって理想的な成績の伸ばし方は,壁にちょこちょこ当たってその都度乗り越えていくこと。逆に右肩上がり一辺倒で行くと,ちょっとしたつまずきで急降下する危険が多い。成績が伸び始めたからといって一気に尻を叩くのは良くない。時には失敗を経験させ,反発力を養うことも大切。(柳)

16限目 白紙の問題
問題とは天天から降ってくるものじゃはない。人間が考えてお前達のために作っているのだ。(柳)

ものを考える時は手を動かすといい…つまりは何かを書くこと。答案のはじになんでもいいから書きながら考える。(柳)

普通は問題を一方的に与えられるから気持ちが受け身になってしまう。そうではなく作る人の立場から落ちついて考えてみるとすると,何を問いかけているのかが見えてくる。文章題を後略するには,まず出題者の意図を読み取ること。これさえできれば何も恐れなくていい。またそのためには,時々,自分で問題を作ってみることが非常に有効なのだ。(柳)

17限目 蛍光ペンは使うな!
人間の体の構造上,脳と手は連動しているから書くことによって手を動かすと,脳もより一層活発に動くのだ。だから視覚に頼って記憶するよりも何十倍もの効果がでる!何かを覚えようとするのなら,とにかく書け! ノートでも紙切れでも,そばにあるものに書いて書いて書きまくれっ!(柳)

19限目 ペーパーテスト至上主義
人間を判別するのに,“人物評価”ほという言葉ほど曖昧で疑わしいものはない。そこにはいくらでも容姿・コネなど不透明な要素が入り込める。(桜木)

21限目 授業の改革
要は生徒達に勉強意欲が湧かないのは刺激がないから。毎日が平坦で自分の変化・成長に気づく機会が少ないのだ。平均化という名の下に国が制限を加えて,成長する機会を奪っている。新生龍山高校は毎日毎時間これを与える。そして自分の変化を自分の目で確かめられる結果を与えるのだ。その結果という刺激が,まさに…テストの点数なのだ!(桜木)

23限目 東大新聞を読め!
つまり自分の意見を主張するにも…判断下すにも…考える材料がいっぱいなきゃダメってこと。それも,人からただ教えられたり偶然やラッキーじゃなく,自分で調べたり…とか,わかんなかったら聞く…とか,「知る」ためのトレーニングを,今,積んでいるってことね。なるほど,これが“勉強”ってやつか…(生徒:水野・矢島)

30限目 TOEFLと日本人の英語力
日本人が英語をできないと思い込んでいる原因は完璧主義。なんでも完璧にやらないと気が済まない潔癖さと物事をネガティブに考えてしまう国民性がそうさせているんだ。だから本当は胸張って,English is my second language,so splease speak slowly fou me.とか言って,図々しく開き直ってどんどん英語を使えばいいのさ。(川口)

44限目 屋外での授業
“正しく読む”能力を身につけるには常になぜという「疑問」を持つこと。町を歩く時にも本を読む時にもしなくてはいけません。ぼんやり歩くのではなく文章の字面を目で追うのではなく疑問を投げかけるのです。本を読んでいる時は,筆者に向かって問いかけ議論しているようなもの,すなわち“正しく読む”とは筆者との心のキャッチボールなのです。(芥山龍三郎,以下「芥山」と略す)

46限目 型を覚えろ!
まず自分の意見を述べる。それに予想される反論を述べる。その反論を否定して自分の論理の正当性を証明する。反論を用意すると客観的になりやすい。抽象的だったり一般的すぎたりしないように,自分の経験なども述べて具体的にするのも重要です。(芥山)

47限目 桜木の説得
親子の会話の常に「なぜ」があるようにするといいのです。通常母親は会話の中で命令長が多くなる。「~してはいけません」「~しなさい」しかし,これでは子供の思考は遮断され先に進まない。そこで「なぜ」という疑問で思考に連続性を持たせるようにする。『食事を全部食べなさい」ではなくて「なぜ食事を残してはだめというと思う?」と問いかけるのです。子供が答えたらまた問いかけるのです。『お米を作った人は残されたと思うとどんな気持ちかな?」など。そうした会話でも深くじっくり考える癖をつけられるし好奇心も刺激される。(芥山)

たとえ人間は自分の望むものすべてを手に入れても必ず何かを悩む。(桜木)

すべてをさらけ出して本音でぶつかり合う。そんな世界が息苦しくないか。誰もが分かり合う。理想的かも知れないが誰にでも本音を言うのはかなり無理がある。そんな状況下でまともな人間関係が育つとは思えない。本音を良しとして建前を悪くいうことが多いが本当にそうか?建前は人間関係の潤滑油となる。(桜木)

55限目 万里の長城
定期テストは生徒の学力のつき方を確認するためであって入試問題のように生徒の選抜が目的ではないからです。平均点が低いのは教え方に問題があって生徒が理解していないということを教師は反省すべきです。(柳)

テスト直前には類似問題を解かせて,それだけでも完璧にさせる。やれば点が取れるのだと生徒に期待を持たせることが大切だ。(柳)

56限目 リハーサル
いいか…人を番付するななんてホザくやつは肝っ玉の小せい甘ったれ野郎だ。ナンバーワンにならなくていい,オンリーワンになれだぁ?ふざけるな。オンリーワンっていうのはその分野のエキスパート,ナンバーワンのことだろうが。(桜木)

いいかね。人間が自分の力を100%出せるのはどういう場合か。それは慣れていてリラックスしている時だ。一流のオーケストラでも演奏会の前には何度もリハーサルを繰り返す。演劇でも歌舞伎でも徹底的に稽古して舞台を踏む。その経験と慣れが飯沢を出させるのだ。(柳)

57限目 報酬は与えるな
子供を褒めることが大切なのはよく言われているが,もっと大切なのは子供が自立し自分で知的好奇心を満たすように促すことだ。だから子供のやる気を出させるために玩具やお金など報酬を用意してはいけない。子供が報酬のためにのみ努力するようになってしまうからだ。報酬がなくても知識をえる喜び,達成する喜びを自分で味わえるようにならなくてはいけない。(桜木)

65限目 スクラム勉強法
自分だけのためとなると相当強い意志がないとやり通せないが…他人のためとなると案外一生懸命になれるものだ。(桜木)

67限目 ヘルプとサポート
サポートする時に大切なのは,たとえ今できなくてもできるようになると相手を信頼すること。相手の話をさえぎらずに聞く態度から相手への信頼は始まる。相手への信頼が伝わると相手はそれに応えようとする。するとやる気が出て潜在能力が引き出されていく。我々が係わるのはここまで。あとは相手の自立にまかせる。サポートは我々が予想もしない結果を生み出す可能性がある。(桜木)

71限目 E判定
実力が徐々についてきてテストに真剣に向かえば終わった後自分のミスが気になる。すると悔しさが芽生えてくる。それはいい兆候だ。上昇しようとするとき悔しさは強力なバネになる。だから終わった直後に多少落ち込んでもいい。一回しゃがむのだ。悔しさを胸に秘め勉強をして反発力を生かして,一気に飛び上がるんだ!(桜木)

信じるときにはまず材料を用意しそれをもとに具体的にイメージを作ることが大切だ。イメージが湧くものは努力すれば実現可能だ。イメージがあると努力も苦になりにくい。結果が出てくると自信が生まれ好循環し,より豊かなイメージも湧くようになる。信じることはエンジンの潤滑油。努力する時に高回転を生み出すのだ。(桜木)

72限目 当たり前のこと
日常生活の当たり前度を上げるためには,子供が小さいときに親が教えなければいけない。大人には当たり前でも子供には当たり前ではないのだ。自分で気付くのには限界があるから当たり前度が低いまま大人になってしまう。子育てではまず当たり前のことを何度も教える。そして当たり前のことが当たり前にできるような子供にするのが。当たり前のことを繰り返し教えられた子は地道な努力が苦になりにくい。苦にならなければ続けられる。人間として大成するために下地は突飛なものでは出来ていない。当たり前のことができる子が何十分もリフティングできるようになっていくのだ。(桜木)

74限目 竹馬
1,2年生の間は,「部活動を一生懸命やることは勉強のためにもなる」という接し方がもっとも望ましい。部活動はもともと子供が好きでやっていること。好きなものに熱中していいと親に後押しされた子供は3年になったら今度は勉強に頑張れるだろう。そして部活動で得た経験はより“いい脳”を作り勉強に本気になった時の支えになってくれる。(桜木)

82限目 直感的思考段階
小さい子の脳は会話による刺激で非常に活発に働きます。ささいなことですが,毎日の積み重ねで成長には差が出てくるでしょう。そして国語力の育成が子供には大切です。文字がまだ読めない子供には絵本の追い読みが効果的です。教育で大切なのは変わったことではなく保守的なことです。(桜木)

84限目 飢餓感
若い時は人格が形成される大事な時期です。その時期に若い人達が精神的に成長するために何が必要か…それは…満腹感ではなく,飢餓感だと思うのです。(芥山)

86限目 アイメッセージ
とにかくどんな場面でもいい,相手のいいところを無条件でホメる。これが「承認」だ。相手の人格をすべて受け入れる。そこから人間関係が始まる。心が通い出せば,言葉が自然と相手の胸に響いてくる。(桜木)

ホメることは非常に大切だ。けれども相手胸に響かなければ意味がない。肝心なのはホメるのと一緒に自分の気持ちも伝えること。これが“確認”だ。相手と自分で感情を共有するのだ。(桜木)

90限目 コップに半分の水
大概,人はものごとを否定的に考える時,自分自身ではなく周りのせいにしたがる。勉強に集中できないのは部屋がないから…とか部活が忙しいからとか。心の中でバツをどんどんつけていって,だから自分はできないとネガティブに考える。そうではなくそれらをみんなマルに変えてみる。部屋がないのはマル。かえって自習室で集中できる。部活があるのはマル。生活にメリハリができて充実感を得られる…。一人で勉強して孤独だけどマル。その方が闘志が湧いて気合い十分って感じだ。このように自分の周りの環境を一度すべて肯定する。すると前向きでポジティブな思考ができるようになる。(桜木)

93限目 答案二分割法
早く走れるフォームとは見ていて美しいフォームである。数学もこれと同様。美しい解答の型を習得することで解き方がわかってくることがある。(柳)

95限目 全問解くな!
実は数学は英語に似ている。数学の世界の言語は数式なのだ。コンピューターの言語がC言語であるのと同じように,日本語で書かれている問題文を数学の言葉・数式へと翻訳して考えるのだ。この翻訳がうまければ答は自然とわかる。数学の問題文を読みながら,数式へと翻訳する作業を意識しながら,解く癖をつけるのだ。(柳)

98限目 ルールと自由
高度な文明社会はすべてにおいてルールに基づいたシステムによって機能している。自由に思うがまま生きているつもりでも,結局それは釈迦の手の上の孫悟空と同じ。縛られていないつもりでも知らずに誰かが作ったルールの中で動き回ってるだけなのだ。そんなものは自由でもなんでもない。自由に生きたいと思うなら,ルールの内側へ入りルールを作る側に回って自分の力で環境を変えるんだ。
本当の自由とは…自分のルールで生きるってことなんだよ。(桜木)

参考図書

○小林公夫著『論理思考の鍛え方』(講談社現代新書)
○菅原裕子著『コーチングの技術 上司と部下の人間学』(講談社現代新書)
○竹岡広信著『ドラゴン・イングリッシュ基本英文100』(講談社)
○陰山英男著『学力の新しいルール』(文藝春秋)
○三田紀房著『ドラゴン桜』(講談社モーニングKC)
○親野智可等著『「親力」で決まる!』(宝島社)
○親野智可等著『「プロ親」になる!~「親力(おやりょく)」パワーアップ編~』(宝島社)
○親野智可等著『「ドラゴン桜」わが子の「東大合格力」を引き出す7つの親力』(講談社)

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