「エコログ」を持ってスイスへ

レポート綴

「エコログ」とは?

 さて,今回は「エコログ」の紹介をしたいと思います。というのも,この「エコログ」というセンサーのことは『理科教室』(新生出版)の広告にもでていて,以前から,とても気になっていました。今回,どんなものなのかを実際に見てみて,それが思った通りなら,すぐにでも手に入れたいと思っていたのです。
 実際,中村理科さんは,パソコンも持ち込んで,その使い方を教えて下さったので,ボクはすぐにでも欲しくなったと言うわけです(中村理科さんとの出会いは、このページの下の方(次ページ)に書いておきます。
 それでは,その機能を紹介しましょう。広告から引用するのが一番でしょう。

環境データーがリアルタイム,ワンタッチ操作で測定できるカード型データーロガーです。気温・湿度・気圧・光・音のセンサをハンディサイズのカードに内蔵。
携帯でオフライン測定やパソコンと接続してオンライン測定いずれにも対応。
測定データーはソフト“エコラボ”(付属)にてパソコンで解析。
さらに,表計算ソフトのエクセルやロータス1-2-3等へのデーターの変換も可能です。
・仕様:温度(-10~40度),湿度(0~100%),気圧(796~1095hp),光(0~5000Lx),音(70~130dB),外部入力用端子2個

 以上が,『理科教室』に載っていた広告です。
 さらに,付け加えると,この外部端子用に,「温度センサー(-10~110度)」「pHセンサー」「電圧センサー(3種)」「電流センサー(2種)」がオプションで準備されていて,中学校の授業にも十分絶え得るようになっています。
 そして,例えば,7種類のセンサーを一度に測定する場合(そんなことは滅多にないが),30分間隔で3日間連続の測定ができます(「エコログ」本体にデーターを保存できます)。それが10秒間隔だと1時間の測定です。もし,2種類のセンサーを働かせた場合には,30分間隔で60日間の連続測定ができます。10秒間隔だと10時間です。
 それが,パソコンで即処理できるというのですから,大変便利なものです。
 しかも,パソコンにつなぎながら測定すると,リアルタイムでグラフができあがります。また,測定方法をパソコンから送ってやって,離れたところでデーターを取ることもできます。要するに外にずっとつっておくこともできるわけです(後からじっくりパソコンで処理すればよい)。

タイトル写真の「エコログ画像」は,2022年に手に入る「エコログ」です。

日食を調べる準備

 さて,ボクは,1999年の夏,8月5日~16日にかけて,チェコとスイスの方に行って来ました。チェコにいる日本人学校のN先生のお宅におじゃまをしに行ったのです。
 1999年8月11日は,今世紀最後の皆既日食がヨーロッパで見られる日です(「理科年表」で2年ほど前に知った)。それで,当初の旅行の日程では,ドイツ国内で皆既日食をみようと思っていたのですが,まあ,いろいろあって,今回は結局,約95%程の日食が見える場所にいることになりました(スイスのグリンデルワルトにいた)。
 7月の理科研究会で「エコログ」の便利さを知ったボク(後述)は,「是非これを手に入れて,スイスで日食の観測をしてこよう」と思いました。7月中旬,中村理科を扱っている内浦町(現能登町)の朝倉さんに「エコログ」を注文すると,1週間以内にボクの手元に来ました(いままだに,料金は未納(-_-;))。
 この「エコログ」の使用方法も,旅立つ2日ほど前に,しっかり確認。
 ボクが知りたいのは,日食と気温と明るさの関係です。
 よく,テレビなどで「皆既日食になるとあたりが暗くなる」とかいってますが,それは本当に暗くなるのか。暗くなるとすれば,その時気温も下がるはずだが,それははっきりと分かる程なのかということを知りたかったのです。
 そこで,測定するセンサーを「光」と「気温」に設定し,時間は10秒間隔としました。これで最高10時間の観測ができます。
 また,ついでにDVビデオも購入しました。できれば日食の様子をビデオにも収めたいと思ったからです。でも,相手は自然です。晴れてくれるとは限りません。まあ,天を点に任せて…。さらに,遮光板と虫眼鏡もケースに入れて(娘の研究のため),いざヨーロッパに出発です。

雲と雨の中の日食

 さて,いくら日食を見たいからと言っても,折角スイスくんだりまで来ているのに,それにつきっきりになることは,あまりにももったいないです(日食観察の為だけに出かける人もいますが)。
 そこで,ボクは,宿の窓(2階)の南側に「エコログ」をセットし,掃除に来た人が不思議がらないように「今は測定中です。触らないで」と慣れない英語で書いた紙を置いておきました。時間は7時10分頃です。夕方の5時頃まで測定することができます。そしてこの日は,朝のバスでグローセ・シャイデックまで登り,そこからフィルストまで,約2時間歩くコースをとることにしました。
 上手くいけば,ちょうどフィスルトについた頃に,太陽が一番欠ける頃です。
 アルプスの山々を見ながら2000メートル級の山道を楽しく歩きました。最初からやや曇っていたのですが,少し晴れ間も見えます。時々顔を出す太陽にちょっと期待しながら,カウベルの音を聞きながらアルプスの道を歩きます。しかし,山の天気は変わりやすく,そのうちに太陽は全然見えなくなりました。11時30分過ぎ,久しぶりに見えた太陽は,既に,右の方が1割ほど欠けていました。そして,それ以来太陽の姿は見えず,その後,細かい雨も降り出し,フィルストについたころ(12時30分頃)には,もう日食を見ることをあきらめていました。
 しかし,フィルストの展望台について荷物を降ろし,昼御飯でも注文しようかと店内を見回していると,ベランダの方で空を見上げているではありませんか。いそいで外に出ると,なんと雲間から時折太陽が顔を見せています。しかも,この雲がちょうどフィルターの役目をしてくれて,遮光板なしでも,そのまま日食の様子をビデオに撮ることができます。
 小型のビデオカメラ(液晶画面)が珍しいのか,ボクのまわり(というか後ろ)には,たくさんの人が来て興奮して画面を見ていました。この液晶画面にきれいな日食をとらえたときには,まわりから(もちろん知らない外人さん達から)思わず拍手がくるほどでした。言葉はよく分かりませんが「おお~,テクノロジー」と言っていたのは理解できました。
 そんなわけで,12時半過ぎから1時40分過ぎまで,時々顔を見せた太陽をビデオに収めることができました。その間,ボクと5年生の娘は合羽に身を包みながら,かみさんが持ってくるコーヒーを飲んみながら観測をしていたのです(まともな昼食はずいぶん遅かったなあ)。
 ボクたちが観測できた日食は,ピークを過ぎたすぐ後のだんだんまん丸になっていく方でした(資料①)。

日食と照度と気温の関係

 一方,宿の方では,「エコログ」がちゃんと働いているはずですが・・・。
 この日のグリンデルワルト(宿のあるところ)は,時々曇ったけれども,ちゃんと晴れていたそうです。宿のおばちゃんの英語がそういうことを言っていたようです(う~ん,英会話に自信がない)。しかし,この結果は,帰国してパソコンにつないでみないことには,ちゃんと測定できているかは分かりません。

帰国後、パソコンにつないでみると

 帰国後,旅の疲れも見せずに,理科教師はパソコンの前に座ります。それで,データーを読み込み,それをエクセルでグラフにしたのが,右のグラフです
 変化の激しいのが「照度」です。最大値は5000Lxを越えているので,もしかしたら直射日光が当たっていたのかも知れません。最小値は12時半頃の98Lxです。余り変化の激しくない方が「気温」のグラフです。それでも,日食の途中には気温が上下しているのがはっきりと分かります。

さいごに

 このように「エコログ」というセンサーは,なかなか使い勝手がありそうです。前に紹介したように,外部センサーにも面白いものが揃っています。
 ただ,この「エコログ」自体が,約4万円 。外部センサーは,1つが1万円(pHセンサーは2万円)もするので,結構,高価です(ソフト「エコラボ」はただです)。学校で買ってもらう時には,せめて班の数は欲しいです。でも,自分でいろいろと遊べるおもちゃとして,一台持っているのもいいかも知れません。自分で買うともったいないのでいろいろと工夫して使うようになるかもね。
 ソフトの方も,少しずつバージョンアップしているようですが,まだまだ使いやすいとは言えません。でも新バージョンは,ホームページからダウンロードできるようなので,早めに手に入れても後悔はしないと思います。
 どうですか「エコログ」を1台買って,いろいろと測定してみませんか。
 このセンサーでどんなことができるのかを研究するのも面白いと思います。

1999.9.29記

中村理科さんを珠洲に迎えたときの話は,次ページへ

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