『サンタのおばさん』は,東野圭吾・作,杉田比呂美・絵による,たいへん面白い本です。
「そういえば,まだ読書感想文を書いてもらっていないな…」(うちの学校ではクラスから読書感想文の代表者を一人出す必要があるのだ)と思い立ち,感想文の材料にでもなればと思い,読み聞かせをしました。
たった70ページの本ですし,途中に杉田さんの絵もあるので,1時間もあれば読み終えられます。
子どもたちは,ときどき笑いながら聞いてくれました。読んでいる方もたのしく読むことができました。
内容は,次のようなものです。(HP「絵本ナビ」より)
場所はフィンランドの小さな村。
そこではサンタ協会の毎年恒例サンタクロース会議が開かれます。
今回の議題はアメリカ・サンタの引退による後任者の選出。
各国のサンタ10人の承認がなければサンタになれないのです。
なんとサンタクロースの候補者は小太りな女性だったのです。
さて その女性・ジェシカは無事にサンタに承認されるのでしょうか?
アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、オランダ、日本、 ベルギー、カナダ、フィンランド、アフリカ、ドイツ
それぞれが反対意見を唱えたり、かるーく他国のサンタを批判したりする様子が,各国のお国柄を表していてなかなか笑えました。
日本は結構批判されていましたが,なかなか的を射ていて冷や汗ものですね。
かなり反対意見が優勢になってしまったころ,ふとジェシカは自分がサンタ候補に選ばれたいきさつを語り始めたのです。
温かい親子の愛がそこにはありました。
書いてもらった「感想文」も子どもたちの本音がたくさんつまっていました。
「サンタたちの話し合いがとても面白かった」というものから「女のサンタはやっぱり変だ」「いや,女・男と言う方がおかしい」「そもそも,いろんな差別があるのではないか」「私だって嫌な思いをしたことがある」などです。
読書感想文の学級代表は,次に紹介するせれなさんの感想文にしました。
子どもたちの感想
■せれな わたしは『サンタのおばさん』を読んで,「人ってそんなにちがうと思われているものなのか」「男の人と女の人はそんなに遠いものなのか」と思いました。わたしは,人間が国籍や性別でそんなにちがっているとは思っていません。 この物語には,ジェシカという女性が出てくるけど,その人はわたしに「男と女はそんなにちがう生きものではないよ」ということを教えてくれたような気がします。 物語に出てきた世界中のサンタたちは「そんな簡単にサンタクロースのイメージは変えられない」と言って女性がサンタになることに反対していたけれども,最後にはジェシカをサンタクロースとして認めてくれたのでよかったです。 わたしにも「サンタクロースは男性」というイメージがありますが,女性がサンタをしてもおかしくないと思います。サンタたちの話し合いの中でも,「父性」など,男性のイメージが出てきます。でもそれは,サンタクロースを始めた人が男性だったからであって,もし女性がサンタクロースを始めていたらサンタのイメージは女の人になっていたと思います。だから「今まではこうだったから…」と勝手にイメージを創り上げて「だからダメだ」というのではなくて,人それぞれでいいのだと思います。 それにしても,アメリカ・サンタはいい人を連れてきたと思います。それにえらいと思います。それは,ジェシカを「女性だから」といって差別しなかったからです。差別せずにサンタに一番ふさわしい人を連れてきたからです。また,世界中のサンタクロースたちに「女性だからといって,差別してはいけない」ということを教えてくれたからです。 また,サンタクロースになろうと思ったジェシカも立派だと思いました。女だからといってあきらめることなく,自分の息子の願いをかなえること,自分の夢に向かうことを目標に最後までがんばったからです。 わたしは小学校四年生の時に,テレビで見て「女の大工さんがいる」というのを知りました。そのときはビックリしたけど,男性・女性の差別をしないで働いているのは,とてもいいことだと思いました。 世界中の人たちも,男の仕事は女がやっちゃダメ,女の仕事は男がやっちゃダメって考えないでほしいです。男だから,女だからって差別してほしくないです。国がちがうからといって差別せずに仲良くなるといいです。サンタだって大工さんだって,女がしてもおかしくないし,それでいいと思います。保母さんだって男がしてもおかしくないし,それでいいと思います。男の仕事・女の仕事なんてないから,みんな好きなことをして夢をかなえるようにがんばればいいと思います。 わたしも,男・女と差別せずに,みんな仲良くしたいです。やりたいことを見つけ,それに向けてがんばりたいです。
■みずき 私もサンタは女でもいいんじゃないかなあと思いました。子供を愛していれば,サンタは女でも男でもいいんじゃないかなあと思いました。 私は『サンタのおばさん』を読む前は「男のやる仕事と女のやる仕事はぜんぜんちがう!」と思っていました。けれども『サンタのおばさん』を読んでからは,「前までは,漁師は男の仕事だろっと思っていたけど,よーく考えてみれば,女でも漁師をやっている人もいるし,スポーツを教える先生も医者でもピアノを教える先生でもパイロットでも保育士でも,男も女もなんでもそうだけど,決まっていないんだなあ」と思いました。 私は野球とか好きだけど,友達に, 「なんか野球とか好きだけど,男みたいでやだー。」 「えっ!野球好きなん。へんなの~」 とか言われたときには「野球も知らんがに,勝手なことをいうなよ!」と思ったことがあったけど,そんなこともあまり気にしなくていいんだなあと思いました。 お父さんに, 「お前,意外と5年生にしては力あるなあ。仕事,兄とつげばぁ。」 と言われた時に, 「ぜったいやだ! それ男の仕事やろ。」 と言っていたけど,女でもできる仕事なんだなあと思いました。
<担任より>
子どもを愛していれば女でも男でもいい…という意見に賛成です。子どもに夢を与える仕事に男の女もないよ。野球が好きな女の子は変ではありませんよ。うちの真ん中の娘(東京在中)は,よく友達と東京ドームに行くそうですから。女だから,男だからと言っていると,自分の行く先をせばめることになるかも知れません。
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