学級展示は「世界の国旗」で

レポート綴

M中(当時) 尾形正宏
1992.07.28 記

0.はじめに

 中学校によっていろいろと違いはあると思いますが,現在,僕の務めている学校には文化祭があります。文化祭の内容は,学級展示・合唱コンクール・私の主張コンクール・劇・On Stage・ゲーム大会などで,まるまる2日間かけて行われます。このうち,学級展示と合唱コンクールは,学級単位での取り組みとなり,担任に負担がかかって来ます。
 こういうお祭り事が好きな先生も中には(例外的に)いるのですが,たいていは学級展示のテーマを決めたり,合唱の練習をしたりすることに対して,「あ~あ,余計な仕事だな~。生徒にどう動いてもらおうか?」と思っている人のほうが多いのが現実の学校の姿でしょう。
 また,地元の小学校には<学芸会>があります。これも,劇やら学習発表やらを学級単位でしているのが普通ですから,担任の先生は大変負担に思っているのではないでしょうか(最近は「卒業生を送る会」「学習発表会」という名前に変化しているようです。2023年追記)。
 しかし,やるからには「たのしくありたい」というのが,僕の生きる基本です。考え方次第でたのしさを見つけることだってできるということを,仮説実験授業研究会で学んできた僕です。
 以下は,1991年度中学3年生を対象とした実践報告です。

1.学級展示の条件

 学級展示(模造紙1ε枚+飾り付けなど)のテーマを決めるにあたって,僕は次のような条件を考えました。
 ① 作成段階で全員が参加できること
 ② 時間もかからず,簡単にできること
 ③ 過去にあまり取り上げられていないこと
 ④ 見学者にも「なるほど」と学習してもらえるようなこと
 ⑤ 時代とマッチしていること(タイムリーなこと)
 さて,①については,学級のどんな行事にも言えることだと思いますが,一部の人間だけが四苦八苦して,あとは知らん顔しているようじゃ何をやってるのかさっぱり分かりません。学級のまとまりがうんぬんということより,作業を見ている教師が何もやっていない子に対していらいらしてしまうんじゃ,やっぱりマイナスですからねえ。せっかくやるんだから,教師も生徒もニコニコしながら作業をしていきたいと思います。
 ②は,当たり前。早くできて見栄えの良いやつがいいです。すると,一度授業に取り上げたことナンかが展示のテーマとして有力候補となります。一度やってんだから,いくつかの工夫だけで早くいけるのではないか・・・と。しかし,授業でやったことといっても,どのクラスも同じ授業をやってるんじゃ,展示内容に新鮮味がありません。そうなると,③と④の条件に当てはまらないことになります。だとすれば,僕だけが授業をしている(つまり,仮説実験授業)の中からやってみるのもおもしろいかも知れません。
 また,条件⑤は,<できればその方がいいだろう>という努力目標のようなものです。かなえられれば,それにこしことはないと・・・。

2.学級展示「世界の国旗」

 『たのしい授業No.100(1991年3月号)』「社会の科学劇・世界の国旗」という伊藤善朗さんの記事が載っています。伊藤善朗さんは,このほかにも仮説実験授業の授業書数本を劇に仕立て上げており,大変好評を得ているようです。僕は,以前,小学校に務めていたこともあり,「今度また小学校に戻ったら,ぜひ,このような劇をやってみよう」と思ってます。
 さて,僕は,この伊藤さんの記事にヒントを得て学級展示のテーマを「世界の国旗」にすることに決めました。「世界の国旗」は1で述べた学級展示の条件①~⑤のすべてに当てはまりそうです。
 幸い,2学期の初めから道徳・学活の時間を使い,自分が担任しているクラスに対して,授業書《世界の国旗》の授業をしていました。しかし,授業にかけたのは,『たのしい授業』に載ったダイジェスト版の方です。それなら,なおさら丁度いい。学級展示では,もう少し内容を膨らまして授業でやらなかったこともまとめたりできる。あとは,生徒の了承を取りつけて,実行あるのみです。

学級展示「世界の国旗」の内容紹介

展示内容   (各模造紙1枚分)

①展示をみる前に考えてみよう
 いくつかの質問を読んでもらって,自分の簡単な予想をもちながら展示を見てもらうために設けた一枚です。コレらの質問に答える形で,以下の展示が張られています。
②十字の国旗(掲載されている国旗の数10枚[以下同じ])
 5カ国の国旗と英国の国旗の由来をまとめてあります。
③三日月のある国旗(9枚)
 三日月と星の入った国旗の意味などを紹介。イスラム教の話を少々。
④赤十字旗と赤新月旗(2枚)
  赤新月旗の紹介とそれを利用している国を地図上で図示してみました。
⑤社会主義の国旗(7枚)
 「赤旗」と星印の意味について書いてあります。最後に「激動するソ連邦の今後を予想したい人は『今,変わる国旗』へどうぞ」と結んでみました。
⑥国旗に緑色を取り入れている国(5枚)
⑦アラブ諸国の国旗(8枚)
 中東の地図の上にアラブ諸国の国旗を並べ,それらの国旗が良くにている理由をまとめてみました。また,イスラエルの国旗がそれとにていない理由も少し書きました。
⑧三色旗(4枚)
 フランス,イタリア,オランダ,ドイツの国旗とその意味を書いて,どれがどの国の国旗かを予想する問題を出しました。
⑨民主主義を表す三色旗(13枚)
 ⑧に答える形で三色旗の意味を導入し,そのほかの国旗をたーくさん紹介してみました。
⑩韓国(2枚)
 お隣の韓国を知ってもらうために,大極旗を紹介。また,韓国・朝鮮を初めとするアジアの人々が,日の丸等に敏感なのはなぜなのかを,簡単にまとめてみました。引用文献は『写真記録日本の侵略:中国/朝鮮』(ほるぷ出版)です。
⑪変わる国旗(7枚)
 ロシア革命で変わった旗,第2次大戦後にドイツ・イタリアが国旗を変更したのに,日本は変更していない事などを紹介。
 おしまいに「未来の日本の国旗を考えよう」というコーナー(画用紙とポスカをおいといて,勝手に国旗を考えてもらった)を設けたところ,約30人程の参加がありました。
⑫今も変わる国旗(9枚)
 ソ連邦の各共和国が,国旗を変えていっている様子を紹介。『たのしい授業・No.108(1991年10月号)』を参考にしてまとめてみました。まさに,できたてのほやほやの本から,展示物を作成していたことになります(文化祭は11月上旬だった)。コレを担当した生徒は,なんと「ソ連邦は,もう長くないだろう」と予想していました。実際この年の12月,ゴルバチョフは,ついにサジを投げたのです。
⑬,⑭100人に聞きましたーアンケート結果
 世界の国旗のハンカチを持って校内を回り,アンケートした結果をまとめたものです。マア,こんなお愛嬌も必要でしょう。質問は,
「一番好きな国旗とその理由」
「日本の国旗を変えたほうが良いと思うか。また,その理由は」
の2つ。

早く済ませるポイント

国旗を書くときは,〈画用紙に書き,それを模造紙に張ること〉を基本としました。コレは二重手間のようですが,大変便利な点があり(いっせいにたくさんの人が作業できる,失敗しても画用紙1枚ですむ),結果的に作業をスムーズに早く終えることができます。

教室の飾り付けなど

◇万国旗…近くの小学校から借りて来た万国旗を教室中に張り巡らせました。これもシンプルで良かったです。
◆世界の国旗ハンカチ…壁の空いた所に,4枚ほど張りました。
◇黒板…ここには,テーマ「世界の国旗」と世界地図略図です。
◆音楽「小さな世界」…ご存じ,ディズニーランドの中のテーマ曲。この曲をバックミュージックにしました。

参考・引用文献

・『たのしい授業』No.100(1991年3月号),No.108(1991年10月号)
・板倉聖宣著『世界の国旗』(仮説社)
・黒羽清隆・梶村秀樹解説『写真記録日本の侵略:中国/朝鮮』(ほるぷ出版)
・森重民造著『世界の国旗』(偕成社)
・吹浦忠正監修『学習漫画・世界の国旗事典』(集英社)
・その他,国旗が出ている図鑑や地図帳など。

 以上が,大体の内容です。ようは,授業書《世界の国旗》の復習をやってるようなものなのです。文字の大きさやレイアウトや若干の補足をして,各テーマ毎に仕上げるだけですから,ホントに簡単なのです。しかも,見栄えは良く,内容も中学三年生として恥ずかしくないし・・・。生徒達の感想は取りませんでしたが,文化祭後に撮った次のページの写真をみれば,その満足している様子が伺えると思います。

記念写真 これで中学3年生ですよ。たのしい1年間だったなあ

コメント

タイトルとURLをコピーしました