珠洲たの通信・2020年7月号

 あり得ない暑さが続いていますが,皆様いかがお過ごしでしょうか。ほんの1時間くらい外に出て動いただけで,しばらく頭痛が続いたりして,熱中症の怖さを身をもって感じています。昔はこんなことなかったよなあ,気温にしても,体力にしても。
 今年のお盆は親戚たちも娘たちも帰省することがなかったので,平々凡々の日々を過ごしていました。気楽と言えば気楽,寂しいと言えば寂しい。そんな中,お墓参りも家族3名+住職さんで細々とやりました。でも家族LINEで娘たちとつなげて,やってみたのがおもしろかったです。お隣の墓にスマホを置いてみると,そのスマホの高さが,お参りの全体を見るのにちょうどよい高さだったのがよかったです。
 さて,例年より遅くはじまり早く終わる夏休み。なんとなくリズムをつかめないまま,2学期へと入っていきそうですね。わたしも,来週から各校の「生き物調査」が入ってきます。午前も午後も入っている日が2日間続くんだけど,大丈夫かな,オレの体。ちょっと心配しながら,子どもたち以上に熱中症には気をつけて,子どもたちと,珠洲の自然とのたのしい時間を過ごしたいと思います。 

今月話題の本

授業書《世界の国旗》

■7月の例会の参加者
 M.K , K.H , T.N , M.S , M.O

資料の紹介

1 「Harf Moon~深みにはまる」 B5 4P     T.N
 コロナ騒ぎで大きな第一歩を踏み出したNさん。
 ついに仮説実験授業研究会にも加入したようです。
 加入したからといって,特にこれまでとは何かが変わるわけではありませんが,自分の立ち位置をしっかり持つことで,いろんなことがよりはっきりと見えてくると思います。どんなことが見えてくるのか…それはこれからの楽しみです。たとえば「おんらいん仮説」で,Nさんが発表した内容に対して他県の人がしっかり反応してくださったことなども,その一つの現れですよね。それが,3度目の石川県での全国大会につながるかもしれません。なかなか楽しみになってきました。
 つづいて授業書について。4年生とは《もしも原子が見えたなら》を実施しました。あのS君は「いろんな原子を知れたし,悪い原子やいい原子やいっぱい知れてよかった」という感想を書いてくれ,評価はなんと5の上の「6」でした。
 5年生とは,《大豆と豆の木》《宇宙への道》を同時に行ったそうです。《宇宙への道》は,担任していた4年生の時に,コロナで学校がいきなり休校となり,途中までしかできなかったのでした。その頃「機会があったら続きがしたいな」とNさんが言っていたのですが,それが実現したというわけです。《大豆と豆の木》も盛り上がっているようです。討論が続く授業,ほんと,教師の授業中の仕事なんて,子どもたちの発言の交通整理でたくさんですね。いい問題がすべてです。教師が自分で考えた指示や発問や板書は,その100分の1の価値もないと思ってしまいます。
 6年生とは,《食べ物とウンコ》をしました。授業中「宇宙船に積んでいくもの」として「尾形」の名前が出てきたのはおもしろい。6年生を担任しているので《世界の国旗》もやっているそうです。もう,仮説三昧ですね。
 そうそう,こういう授業に対して,やはり管理職から「なにやら違うことやっているけど」と言われたそうです。それに対して,しっかり会話として反応できたというのがすごいです。これからも,いろいろと言われると思います。あるときにはのらりくらりと,あるときには毅然として,「子どもにとってどうなのか」を忘れることなく進んでいって欲しいです。
 レポートには,たのしそうな授業の様子の写真も載っていて,よかったです。ちゃんと4ページに収めようとしているのも立派ですな。

2 「何かがちがう今」 B5 4p    M.S
 仮説実験授業の全国大会もなくなった今年,何かがちがう。そう,物足りない学期末ってことですね。
 生活科で「夏祭り」を企画して,着実に準備をしていると,他の学年の子どもたち(掃除の子たちも含む)が探りを入れてきます。「なにをしているんですか」「チョコバナナとか言ってたし」- それに対して菅原さんが「うん?それは言えないよ」とはぐらかすと,2年間担任したこともある少女が一言。
「絶対に何かするはず。だって,先生は最高に楽しいことばっかりするから…」
 こんなふうに子どもたちから見てもらえる先生っていいですね。
 こんな先生になるのは大変難しいことなのでしょうか。Sさんは,夜も寝ずに一生懸命たくさんの指導案を書いて勉強してきたのでしょうか。いや違います。このサークルや全国の仲間たちと,たのしい授業について学んできたからこそ身についてきたことだ,と思います。
 久しぶりに〈怒り心頭〉の話も。○○の余計なお世話のために,それまで楽しんで書いていた「学級通信」を出す気がなくなったという話題です。人の気持ちが分かるか分からないかは,こういうところに出るんですね。「わたしが評価してあげれば,Aは喜ぶに違いない」としか思えない単純な思考回路。これまでメダカ人間だった人たちは「みんな自分と同じ感覚を持っている」と確信しているんです。それが錯覚だとは思えないんです。その一方で,「管理職に評価されるのが一番嬉しい」と言っている若者たちも多いと聞きます。指導案を書いても子どもの方を見るのではなく管理職の意見を重視するんです。そんな現場では〈錯覚管理職が増えこそすれ減らないだろう〉という予想は立ちます。
 オンラインではいろんなことを学んだそうです。コロナのおかげでいろんな講座に参加できて,かえって良かったこともありますね。授業プラン〈生物とニッチ〉の体験もしたそうです。サークルのあとで,探してみたら,2019年の全国大会でいただいたプランがわたしの手元にもありました。
 ベテランの域に達してくると自分に降りかかる火の粉くらいなら払い落とせるけど,残念ながらとなりの人の火の粉までは払えない。それができるためには,火の粉の下にいる人間たちが連帯している必要がある。しかし,その連帯が今の職場にはない。そんなところで,どうやって自分らしく生きていくのか。若者が若者らしく生きていけるのか。ますます,学校以外の研究の場が必要だと感じます。

 「珠洲たのレポート7月号」 B5   4p     K.H
 たくさんの本を紹介してくれました。
①「たのしい授業」編集委員会編『新学期の定番メニュー』(仮説社,1836円)
②「たのしい授業」編集委員会編『道徳プラン集』(仮説社,1800円+税)
③「たのしい授業」編集委員会編『道徳大好き!』(仮説社,1944円)
④徳大寺有恒著『クルマ運転術』(思想社,1400円+税)
⑤五木寛之著『杖ことば』(文春文庫,690円+税)
 ①~③は,月刊『たのしい授業』に掲載された関連記事を集めたものです。だからどこから読んでも大丈夫。もちろん,掲載当時から読者の反応の良かった文章を集めてあるので,とても役立ちます。以前,教育界でこういうような本を「How toもの」と呼んで馬鹿にする風潮がありました。しかし本書には「なぜ,その取り組み方法やプランが子どもたちを引きつけるのか」ということもちゃんと書かれているので,他の場面でも応用してみようかなと思えると思います。

【蛇足】…「こうすればうまくいく」というのはまさに「How to」ですが,これはこれで立派な研究です。これは現象論です。これはこれで意味があるのです。「それがなぜうまくいくのか」ということを突き止めるのが実体論。さらに,それらの取り組みに共通する教育原理を探し出していくのが本質論。板倉さん,小原さんなどの文章は,本質論的な議論を提出していると言えるでしょう。
 わたしが大学で学んでいた「教育原理」の中で,なにか本質論的なものがあったのかと言われれば,残念ながら皆無です。それは,それ以前の現象論的なものを何も提出しないで(提出したとしてもすぐに反証されるようなものの状態で),学者がある理論を振り回しているだけでした。これは未だに変わらないようです。

 ①掲載の板倉さんの文章を,濱岸さんのレポートから孫引きします。
オモチャの価値を発見するには,それで遊んでみるに限ります。それと同じように,子どもの価値は,その子どもを躍動させて初めて発見できるのです。子どもたちを躍動させることのできない人々は,建前的にはどんなに美しいことを言っていても,子どもの価値を発見できないに違いありません。
 こういうことを言えるのは,子ども自らがついつい躍動してしまう授業(仮設実験授業)やプラン(『たのしい授業』)の積み重ねがあるからです。そこには,普段の授業では目立たない子どもたちが生き生きする姿を見ることができるのです。
 本の他に,BDやCDも紹介してくれました。これらは趣味の世界ですが,そこから受ける影響って本人にとっては大きなものですからね。その歌詞に支えられたり,励まされたり…。時には,自分の趣味をじっくり語ってもらうのもいいですね。

4 「喃々レポ2020年7月号」 A5   12p       M.O
 学生時代に板倉論文と出会い,教師1年目から続けてきた「仮説実験授業」。授業中に教科書以外の内容を取り入れることについて,当時は今より自由度が大きかったとは言え,まわりから何も言われなかったわけではありません。でも,こうして37年間,一年も,否一月も欠けることなく仮説実験授業を続けてこれたのはなぜなのか。そんなことを考えさせる文章が,『たのしい授業7月号』に載っていました。そこで,それについてまとめてみました。
 人様の文章を読んで自分を振り返ることはときどきあるのですが,こんな風に文章にまとめてみると,自分の頭が整理された感じで,気分がいいですね。こうして文章化することで,自分が,なぜ仮説実験授業を続けてきたのかが分かりました。
子どもの価値は,その子どもを躍動させて初めて発見できるのです。(前掲
 これにつきますね。教師の言うとおり〈行動する〉のではなく,子どもが〈躍動!する〉んです。そういう授業なんですよ,仮説実験授業は。それが確認できた今回の「文章化」でした。

躍動…おどりうごくこと。いきいきとして勢いのあること。「―する肢体」「―的な動き」「―感」
行動…①ある事を行うこと。しわざ。おこない。「すみやかに―する」「―をおこす」②〔心〕人間や動物が示す観察可能な動作や反応。   (以上『広辞苑』より)

 もう一つの話題は,チリモンです。「モンスター捜しをやってみたいな」と提案したら,早速,8月のサークルで実現しました。楽しみです。

 さて例年の夏休みには全国大会や各地で催される「たのしい授業」関連の会があり,各自,それらの会に出かけていって楽しんでいました。しかし今年はコロナ禍の中,夏休み自体が短くなり,各種の会も中止になってさびしいです。そこで久しぶりに,8月にもサークルを開くことにしました。ちょっと体験っぽいことを取り入れますので,楽しみにしていてください。もちろん,レポートもOKですよ。

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