珠洲たの通信・2010年12月号

2010年度

 あけまして,おめでとうございます。
 昨年は,ほんまに楽しい年でございました。仮説実験授業の全国大会を能登で開催できたなんて,まるで夢のようです。長年の夢が叶った思いです。
 さて,例年より少し長めの冬休みも終わりました。いよいよ3学期が始まります。現場は,卒業式に向けて動き出しますが,研究発表云々というようなものはなくなるので,わりとじっくりと生活ができる学期でもあります。ただし,見通しを持っていないと最後にばたばたと子どもたちとお別れってことにもなりかねませんので,ご注意を…これっていつも自分に言い聞かせていることですけれどもね。
 昨日(9日)は,珠洲市の成人式があり,夜の会に私も招待されて行ってきました。8年前に6年生を担任した子どもたちです。やんちゃだった子どもたちも,みんなちゃんと敬語を使っていてちょっと気持ち悪かったです。でもこれはだんだん大人になっていっている証拠なんだなあって思ったりして。
 ところで,これまでも教え子と話をしていて何度も小学校での授業の話が出てきましたが,今回初めて「《割合》の授業プリントのことを覚えている」という男の子がいました。これは,新居さんの絵本を授業プリント化したものですが,それがとても印象に残っているということでビックリ。この授業プリントは本格的な仮説実験授業ではないし…でも,そのお陰で理科が好きになったり算数が好きになったりしている子がたくさんいるんだから,仮説の威力はすごいよ。
 

■12月の例会の参加者(7名)
 S.N(N町U小)  M.S(S市T小)  M.K(NSSI)  M.O(N町U小)  M.N(W市K小)  K.H(S市M中)  T.M(A町A中)

資料の紹介

1 「昔の教科書を読んでみよう」 B5  2ぺ    M.O
 今年取り組んでいるヒストリアクラブ。毎回,何にしようかと悩みながらここまでやってきました。
 前回は,チャンバラごっこをしました。とても過激になっておもしろかったです。
 そして今回は,学校に保存してあった昔の教科書を数ページ印刷し,それを読んでみるという授業をしてみました。
 取り上げたのは『小学国語読本巻十一』「第二十四 月の世界」と,算数の5年生の文章題です。
 読本も算数の本も昭和13年頃のものです。それで旧字体の漢字や仮名遣いが出てくるのでおもしろいのです。子どもたちの知らない漢字も文章の中で出てくると何となく読めてきます。それがたのしかったようです。また,算数の問題も,計算機を使ったりしてやってみました。これも楽しんでやっていました。
 クラブが終わった後,「今日のクラブ,たのしかった」と何人も言っていたので,大成功。「昔の教科書を読む」という単純な作業もなかなか子ども受けがいいと言うことが分かりました。
 ところで,サークルでは,算数の別の問題に釘付けとなって,楽しみました。それは次のような問題です。
(6) 種紙カラカヘツタケゴ1gニハ,ケゴガ約二千五百匹ヰル。ケゴ一匹ノ重サハ,約何グラムカ。
 マユ一ツノ重サヲ約2gトスルト,ケゴ1gカラ,マユガ何瓩(キログラム)トレルコトニナルカ。
 マユ1㎏ヲ1圓20銭トスルト,ケゴ1gカラトレルオ金ハ幾ラカ。

 この問題から学べることの多いこと。だいたいこの「ケゴ」というのがよく分からない。「よく分からなくても解け!」なんて言えません。この「問題」の中身については,もう一度自分のためにまとめておきたいので,それまでは問題の意味も含めてご自分で解いてみて下さい。少なくとも,昔の5年生は,あまり説明をせずともこの問題が分かったはずなのです。う~ん,おそるべし!

2 「記念講演『おもてなしの心 先代女将に学んだこと』」A4  2ぺ    M.K
 第4回全国青少年教育施設運営研究協議会とかいう長ったらしい名前の会に参加したKさん。会場は能登青少年交流の家。その会の記念講演に,加賀屋の客室係教育担当である岩間慶子さんの講演があったそうです。で,その時の講演記録を持ってきてくれました。演題は「おもてなしの心 先代女将に学んだこと」。コンパクトにまとめられているので,講演のエキスが伝わってきます。
 学校現場に置き換えることができる言葉もいっぱいあります。
○お給料はお客さんが払っている
  学:お給料は子どもたち(の親)が払っている
○誇りを持って働くことのできる職場
  学:同じですね
○さりげないサービス
  学:同じですね。どんなことが子どもたちにとって「さりげない」のか。一度,子どもたちの帰った後の教室で考えてみてはいかがでしょう。
○3階にいて,「さあ上がってきなさい」では,今の若い娘はついてこない。1階まで降りていって手をとり「一緒に上がりましょうね」と
  学:特に子どもを導くときにはこんな姿勢が大切ですね。子どもの目線に立ってってやつです。
 この話を聞いてから,サークルをやっている公民館の図書室に『加賀屋の流儀』という本があることに気付いて借りてきて読んでみました。
 その感想をブログに書きましたので,ここに転載しておきます。以下ブログの記事です。

 先日のサークルの話題がらみで,細井勝著『加賀屋の流儀-極上のおもてなしとは』(PHP研究所,2006)を読んでいます。和倉温泉の「加賀屋」は「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で四半世紀以上も年間総合1位を獲得している老舗旅館です。その秘密を探ろうとまとめられたのがこの本です。
 この「もてなしの心」は,客室係の本心から出るものなのでしょうか? それとも金もうけのために,マニュアルに沿って我慢をしてやっているのでしょうか? そんな一般的な問いに,元女将の孝さんの答えが秀逸です。
 果たして,どこまでが商いで,どこからが自分の心なのか―。そんな問いかけをされると,孝さんは,よく「そんな区別,私の気持ちにはない。お客様に通じる真心がサービスなら,それでいいがではないでしょうか」と答えたという。(本書109p)
 私たち自称「たのしい授業学派」も,どこまでが商売としての教員の研究で,どこからが趣味としての研究なのか,すでにその境界は分からなくなっています。というか,女将の言葉を借りれば「そんな区別,オレの気持ちにはない。子どもに通じる気持ちが授業というサービスなら,それでいいがではないでしょうか」ということになるだろう。その結果,加賀屋が一流となり,私たちの授業のリピーターも増えてくる…そんな授業を目指したいものですね。
 でも,怖いのは,子どもへのサービスであるべき授業が,子どもへの大いなる負担になっている場合が多いことです。これじゃ,リピーターなんてあり得ない。
 地元の本屋に平積みされていたときには,手に取ることもしなかったのですが,今回,「教師業はサービス業である」という立場に立って読んでみると,なかなか含蓄のある言葉が出てきて,考えさせられます。

3 「霊峰3つに登ったのだ」他  A4 4ぺ     M.K
 「3つの山」とは,立山・白山・富士山のことです。
 Kさんは,はじめて富士山に行って来たそうです。宝永火口を見て興奮。袋がパンパンになったポテトチップスを食べてきた…エライ。ちゃんと実験してますね。
 白山の山登りが「本当の山登りではないか」とやっと気付いたらしいです。そりゃそうだよね。室堂まで車で行けたり,5合目まで車で行けたりするのが山登りではないでしょう。
 でも考えてみると,そういうのが「山登り」なのだ。立山のように室堂までバスで乗り付けて「立山に行ってきましたクッキー」などを物色しつつ登っていくというのは,「観光」であって,「山登り」ではないのかもしらん。
 そうです。そんなの山登りではありませんな。

4 「お気軽たより」B5 6ぺ          M.S
 今月の話題は,《世界の国旗》,発行差し止めその後,共通理解,そして「チリモン」でした。
 《世界の国旗》の評価は大変よかったようです。国旗の色塗りには賛否両論があるようです。これは私が授業をしたときも同じでした。その後,学年発表では「世界の国から〈ありがとう〉」をやったそうです。小学校3年生だから高度なことを学ぶのが好きなんでしょうね。
 学校現場でよく使われる「共通理解」については,私も注意をしているつもりです。もちろん,「流行らないように」です。個人のやり方を認めないような「共通理解」だから,なかなか定着もしない。だから,こそ何度も同じような言葉が職員室に顔を出してくるのでしょう。中さんの『学校現場かるた』「一時の流行〈共通理解〉」というものがあります。ま,あまり協力できないようなことは放っておくと,そのうち消えていくってことです。中さんは次のように解説しています。
 声高に言われるのは,じつは実行するのが難しいことだから。みんな,最初はそれなりにがんばろうとするが,だんだん手を抜きはじめ,やがて流行は去る。そして,みんながいい加減になりきったころに,思い出したかのようにまた繰り返される。
 こういう社会的な力学を知っているだけで,職員室の言葉に鈍感になれます。
 「チリモン」は,11月末の実行委員会反省会に長田さんが持ってきてくれた話題です。Sさんはチリモンのカードセットを作ってくれたそうなので,授業や学級活動などでチリモンを扱うときには,貸してもらって下さい。私もチリモンの本を持って行きました。

5 「クラブ・ワールドカップ」A5 4ぺ            M.O
 今年のクラブワールドカップもおもしろかったです。特にコンゴ民主共和国のマゼンダががんばってくれたお陰で,見る楽しさが倍増しました(ブログにも書きました)。終わってみれば,ヨーロッパ代表が優勝なので,ま,そんなもんです。
 クラブチームには,各国からの選手が集まってきてプレーをしています。でも,今回のマゼンダを見ていると,みんな黒人のようでした。そこで,各チームの登録選手の国籍を調べて【問題形式】にしてみました。みんなの意見が,なかなかおもしろかったです。
 最後のまとめにまではいきませんでした。次回,機会があったときに私の思いも含めてまとめてみたいと思います。ができるかどうか分かりません。
 そうそう,この年末から,マゼンダがらみで『アフリカサッカー』という本を読んでいます。この感想もいつかまとめますので,お楽しみに。

6 「年図」 A4 1ぺ          M.O
 「自分の年図を書いてみよう」という呼びかけが『たのしい授業』誌上でありました。そこで私も10月頃に書いてみました。こういう私的な資料を紹介するのははずかしいのですが,みなさんへの参考と云うことでもってきました。

7 「ふるさとを学ぶ」と資料  B5  3ぺ        M.O
 学校の初任研用に作ったレジメ(B4)とそれに関連する資料を持ってきました。
 今回まとめた〈『能登半島能都町物語』に見る能都町の歴史〉は,今後の宇出津小での総合学習の手がかりとして便利だと自負しています。ここに上げたひとつひとつについて,『能都町史』などでもう少し詳しく調べてみるといいかもしれません。ただ,今の私にはその時間がありませんが。
 どの町にも地方史について触れられている本はちゃんとあるのですが,内容がとても難しくて(専門用語がバンバン出てくるので),普通の人間にはとても読めるものではありません。その点,数馬さんのまとめた『能都町物語』は,ところどころに用語の説明や時代背景の話があったりして,私のような素人でも読み進めることができました。残念ながら,この本が,今では手に入りません。こまったなあ。

8 「小原茂巳『たのしい科学の授業』の進め方」 B5 11ぺ  紹介 K.H
 小原さんの会に参加してきたHさんがその資料を持ってきてくれました。サブタイトルに「仮説実験授業の教育原理から学ぶ」とあるように,仮説実験授業を運営していくときにみんなが気になることを取り上げて,そのポイントを解説してあります。
 それぞれのポイントが「問題形式」になっているので,「自分ならどうしてきたかな」とその問題に答える感じで読むと内容がよく分かると思います。
 例えば…
Q3-教科書や授業書を子どもたちに読んでもらうとき,「この問題,誰か読みたい人,いませんか?」と「誰か,読んでくれる人,いませんか?」という投げかけ方ではどちらが良いのでしょうか。そして,その理由は?
 ここには正解(というか仮説実験授業的教育原理による判断)は書きません。気になった人は,自分の意見を言ったあとでサークル参加者(忘年会参加者)に聞いてみて下さい。

9 《振り子と振動》第1部終了   A5   4ぺ      M.O
 5年生と《振り子と振動》を楽しんでいます。2学期には第1部しか終わりませんでした。それで,一応区切りということで感想を取ってみました。
 《振り子と振動》については,このあと,音やその他の振動についても問題が出てきます。教科書ような「ふりこのためにふりこをおしえる」というのとは,内容が全く違います。科学を学ぶというのは,中身のある内容を学ぶことでもあるのですから,時間が許す限り,仮説実験授業をしてあげたくなるのです。
 教科書にはこのあと「ものの解け方」と「電磁石」の授業があります。これもなるべく時間を確保しながら,仮説実験授業でできればいいなと思っています。

○ミニプラン《ジンベイザメの基礎知識》A6版  8ぺ       M.O
 大会実行委員反省会の日,せっかく和倉に集まるのだし,しかも夕食までは時間があるので,みんなで〈のとじま水族館のジンベイザメを見に行こう〉という計画を立てました。それで,私は,せっかくなので,ジンベイザメを見る前にジンベイザメについて知っておいた方がいいと思われる話題を取り上げて,ミニミニ授業書にして持って行きました。車の中でみんなで予想を立てながら読んでもらいました。ジンベイザメについてはまだまだ分かっていることの方が少ないようですので,このプランの一部はまだ眉唾物として楽しんで下さい。

 他には,外国語通信(O),手作り正月飾り(東京:牛山)などがありました。
 この正月飾りは,今年の全国大会実行委員になっていただいた東京の牛山さんが自分の講座(学校外活動です)で作ったものらしくて,とてもかわいいものでした。ひとつひとつ雰囲気も違うので,みんなでワイワイ言いながら分けて家に飾ることにしました。
 なお,忘年会の席上では当然,いろいろな話が出てきました。
 そして当然,あまり内容は覚えていません。
 あははは…。

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