珠洲たの通信・2008年12月号

2008年度

 新年,あけましておめでとうございます。
 本年も,たのしい授業の実現に向けて,媚びることなく焦ることなく,じっくりと取り組んでいこうと思います。みんなで,どんな小さなことでもいいから,「これは楽しかった」「子どもたちが喜んで学習した」というものを持ち寄りましょう! それが私たちの財産になるはずです。
 と同時に,仮説実験授業をはじめとする「たのしい授業」の輪を広げる努力もしていきたいと思います。私たちが担任する子どもたちへはもちろんのこと,もっともっとたくさんの子にたのしい授業の存在を知らせてあげたいと思います。「つらい中で,ガマンして学習したことこそ本物だ」という努力主義・鍛錬主義は,ほとんどの子たちの学習意欲をうばうだけであることをもう一度確認したいと思います。
 何はともあれ,昨年よりも「動く」サークルでありたいと思います。
・これまでどおり,何があっても毎月1回のサークルを開く。
・これまで以上に「珠洲たのHP」を充実させていく。実践記録やレポートをたくさん載せていきたい。ものづくりのHPも充実させたい。全国大会用のHPも作りたい。
・年に1回は,「たのしい授業入門講座」のようなものをしたいです。今度は,しっかりと仮説実験授業を扱ったものにできないかなあ。
・全国大会へ行って「2010年度は能登大会をします」と宣言してきたい。
 そんなこんなの新年の抱負を考えております。どれくらい実現するのか分からないけれども,1年に1度くらいは大風呂敷を広げてみてもバチは当たらないでしょう。

■12月の例会の参加者(5名)
 M,S(NYSB)   H.H(S市S小)   M.O(N町U小)  K.H(S市M中)  T.M(N小U小)

今月の写真

資料の紹介

1 『奥能登 楽しい教師入門講座』 B5 22ぺ  M.S
 タイトルの講座を開くようになった顛末と,参加者の感想文をまとめてきてくれました。
 今回の講座は,もともとは組合の学習会ということで中さんをおよびすることになり,以下,次のような発想が連なって実現しました。
・せっかく来ていただくのだから,夜はサークルで中さんを囲もう
・せっかくだから,次の日にもサークルのメンバーで学習会をしよう
・せっかくだから,他の人たちにも学習会を広げよう
・それならば,日曜日は別の会ということで設定し呼びかけよう
 こうして「楽しい教師入門講座」は実現したのです。
 今回の会は,「組合員の方々にも「楽しい学習会」「楽しい講演」「楽しい講座」ってものがあるんですよということを体験してもらえるいいきっかけになった」と思います。その点では,たいへん有意義な会だったのではないかと思うのです。
 それにしても,講座終了後,素早くの参加者の感想文をまとめ,2週間で,参加者へ発想までしまう行動力は,立派です。

2 『ブログ的気楽レポ12月号』B5  8ぺ  M.O
 過激な「今月の主張」を書いてみました。これは,今月の通信(一番うしろ)にも載せておきましたので,読んでみてください。たまにはこれくらいのことを思ってふんどしを引き締め直さないと,常識に流されていってしまいます。
 まずは「奥能登楽しい教師入門講座」の総括と後日談。後日談については,中さんの許可を得て,講座後のメールのやり取りも紹介しました。自分たちが行動して何かを成し遂げるっていい気持ちです。
 ふたつめは「教材2題」。その一つはキミ子方式によるカット絵で,今回は「落ち葉」を書いてみました-という報告。もう一つは,「日本の気候」プランの紹介。これは,故松崎重広さんが考案したもので,単純作業を繰り返す中で,日本の気候の全体像が見えてくるという優れものです。おもしろいので,3学期にやってみるつもりです(もう隣のクラスの分も印刷してあります)。
 今月の本棚については,以下の本を紹介しました。
○福田誠治著『競争やめたら世界一-フィンランドの教育の成功』(朝日新聞社,2006,250p,1200円)
○実川真由・実川元子著『受けてみたフィンランドの教育』(文藝春秋,2007,284p,1600円)
○阿部菜穂子著『イギリス「教育改革」の教訓』(岩波ブックレット,2007,63p,480円)
○川合章編『社会科教育の理論』(青木書店,1979,236p,1200円)
○姜尚中・小森陽一著『戦後日本は戦争をしてきた』(角川oneテーマ21,2007,251p,700円)
○山田真著『子育て-みんな好きなようにやればいい』(太郎次郎社,1990,270p,2100円)
 この中のお薦めは,福田さんと実川さんのフィンランド教育関係の本です。せめてこういうものを読んでから「フィンランド教育」について語ってほしいものです。
 個人の生き方については,小児科医の山田真さんの本がおもしろかったです。夫婦して医者なので,当然,家事も子育ても分担です。それで医者もつとまっている!!
 過去10年間にわたって毎月のように書いてきた「今月の本棚」ですが,そろそろやめようかなあって思います。「ぜったいに紹介したいいい本」は,これからもしっかりと紹介することにして,他の本のことはさらりと流そうと思うのです。また,この「ブログ的気楽レポ」形式も3年間やってきたので,そろそろ1本のレポートの方を大切にしようかなとも思います。でも,そうすると,レポートを書くのに時間がかかることになり,気楽にレポートできなくなる可能性もあります。思案中。

3 『徒然レポート12月号』 B5  6ぺ  M.S
 6つの内容について徒然しています。
 一つは,能登大会に向けての決意。
 ふたつめには,前述した「奥能登楽しい教師入門講座」の総括。
 サークル主催の方(日曜日)の話。参加者が,24名(講師含む,定員30名)。赤字も出ずに終わりました。よかった。
 3つめは,超簡単なリース作り。なんと,リースのまわりの部分に「サツマイモの蔓」を利用するんです。さらに,キラキラっぽくみせるために,お花紙とアルミホイルを使うという方法。なるべく簡単に,しかも見栄えよく作るための方法を考えるSさんならではの情報でした。
 松ぼっくりを使ったかわいいクリスマスツリーも紹介してくれました。
 4つめは,カタカナの指導についてのその後の話。
 「ウ」の一画目と三画目は何とかくっつけて書けるようになったものの,「ウ」「モ」のように「線をやさしく曲げる」ということに対して抵抗があることが判明。現在はその指導法について試行錯誤でやっているということでした。
 5つめは,「ものづくり」と「子どもの成長」についての話。どんなときにどんな指導をしていくのがベストなのか。ベストでなくともベターなのかという点での話でした。
 6つめは,忘年会で大いにしゃべりますとのことで,実際,たくさん話しました。

4 『やっぱりすごいぞ仮説実験授業』B5  7ぺ  M.O
 2年ぶりに5年生とやった仮説実験授業《ものとその重さ》
 初任の時に初めてやってから大好きな授業書です。「こんなの当たり前」と思って手をあげると,意外や意外,みんなと自分の考えていることがちがうことに気づきます。そしてノーミソがはたらきはじめるのです。
 今回,7名くらいのメンバーが,激しい討論を繰り広げました。1時間に1問しかできなことも度々でした。こんなことは久しぶりです。そこで,授業通信も何度か書いたりしました。
「仮説実験授業の素晴らしさの再発見」という意味をこめて子どもたちの感想をまとめてきました。

5 『My Book』B5  2ぺ  K.H
 2冊の本を紹介してくれました。
○小泉十三著『頭がいい人の45歳からの習慣術』(河出書房新社)
○笹気健治著『イヤなことは1週間で終わらせるコツ』(すばる舎)
 いずれの本も「やらなければならないこと」よりも「やりたいこと」を優先するためにどのように時間を使えばいいのかというヒントについて書かれているようです。
 私の経験からいうと「やらなければならない仕事」を速く済ませるには「やりたいことを見つける」ことが一番だと思います。「進んでやりたいこと」があれば,「やらなければならないこと」につぎ込む時間がたいへん惜しくなり,そのため,そんなムダなことには力を抜いて速くすまそうーとするようになるのです。

6 『学級通信』B5  10ぺ  M.O
 今月もたくさんの学級通信を持ってきました。タイトルを紹介します。
No.109 パズルを作りました(糸鋸を使ったパズル作りと鑑賞の視点)
No.110 「やったことがある」は信じられるか?(≪ものとその重さ≫授業記録)
No.111 ノーミソはちゃんと動いています(授業記録・その2)
No.116 「わらぐつの中の神様」を終えて(授業で取り上げた視点がよく分かる)
No.117 「うみさか」見学・04
No.118 いわゆる,ならいごと(ならいごとで狭まる自分,広がる世界)
No.119 土下座までしたのに,楽しかったとは…(授業記録・その3)
No.121 落ち葉のカット(キミ子方式によるカット絵)
No.122 落ち葉のカット2
No.127 木ぎれを浮かべるとその重さは?(授業記録・その4)
No.129 漢字っておもしろい!!(今年の漢字「変」,今年の四字熟語)
No.130 「人権集会」を見て
No.131 ノートの取り方・まとめ方(『東大ノート』のこと)
No.132 またまた日記より(子どもがたのしく学んでいることが分かる日記)
No.133 どうやって決めたんだろう?(スポーツのいろいろなサイズ)
 我ながら,よく書くよなあ。それだけ,書きたいことがたくさんあるってことだけどね。
 学級通信を毎日書こうと思っていると,それだけで,いろいろなアンテナを張ってしまうので,わりと記事のネタには困らないんです。子どもの日常から話題を見つけてくるのが一番だと思うのですが,いつもいつも日記から紹介していても飽きてきます。かといって,わたしの趣味だけで書いても…でもそういうのもあります。

7 『バンジーチャイム演奏会』 A4  3ぺ  T.M
 郡の音楽教育研究会で公開した授業に「バンジーチャイム」を取り入れたMさん。その授業の様子と参観者の感想をまとめてきてくれました。
 バンジーチャイムは,「楽知ん研究所」(https://www.luctin.org/)でその授業プランとともに手に入れることができます。
 このプランのもともとは「大道仮説実験」(仮説実験とまでは行かないが,その流れをくんでいて)といって,たまたまそこに集まった人たちで盛り上がっていこうという「実験プラン」なのですが,クラス全員でも,だんだんと盛り上がれるようになっていることがMさんの実践からよく分かります。
 参観者をも巻き込んでいくダイナミックな授業はなかなかおもしろいです。
 参観者の感想を紹介します。
楽しい!子どもたちと一緒に演奏してみたいと思いながら見ていました。バンジーチャイムの存在を今まで知りませんでした。テキストの内容にも驚かされ,演出や演技にもビックリ。まさに目からウロコ。音楽の原点にもどったような気がしました。
 子どもたちの感想が書かれている学級通信も持ってきてくれました。
今日,6年2組だけ5時間目の音楽の勉強をしました。真ちゅうでバンジーチャイムをやりました。「星に願いを」と「大きな古時計」と「ふるさと」をやりました。真ちゅうでいろいろ音楽になるんだなあと思いました。能都町初なのでいい思い出になりました。(男子)
 たいそう盛り上がった授業だったようです。
 このレポートは,学級通信とともに「珠洲たのHP」上で読めるようにしました。

8 『「寒天地層ボーリング」教材史』 B5 3ぺ     M.O
 金大連携ゼミから(私の中で)派生した話題を取り上げました。
 寒天で地層を作り,それを利用してボーリングをするという方法は,子どもたちも楽しんでやってくれました。そこで,この教材の開発史を調べてみた結果を持ってきました。
 まだ一番最初に辿り着いたわけではありませんので,何とも言えないのですが,今のところ,1982年に出版された長洲南海男・武田一美編集『中学校理科のつまずきとその指導(第2分野)』(東書TMシリーズ)が,一番古い文献のようです。ただ,この本はまだ手に入れていないので,記事の著者も分かりません。だれか,持っている人いませんかねえ。大学の図書館にはあるようですが,金大にはなくて富山大にはあるようです。

 先月も今月も紹介しそびれたレポートにHさんの『レポート』もありました。「B5,12ぺ」もある膨大なものです(しかも文字のポイントは9pくらい?)。ここにくわしくは書きませんが,これを元にして2月には1年間のまとめのレポートが出されるものと思います。また,「着地ネコ」の「球根版」の紹介(S)もありました。
 少しスペースがあるので,『ブログ的気楽レポ・2008年12月号』のまえがきに書いた文章を転載しておきます。
 歳をとってきた私は「たのしい授業を広める」役目も大切にしていきたいと思っています。

 たのしい授業の輪が広がるのかなあ-それともまだまだかなあ。
 たのしい授業が広がるためには
「やらなければいけないからやる」
のではなく,
「やりたいからやる」
地点に教師が立てるかどうかです。
 というのも,教科書の教材は「楽しくできるから教える」というものではなく,「日本人としてこれだけは身に付けてほしい(これも怪しいが…)」と文科省が思っている教材が並んでいるだけであり,学んで子どもたちが興味を持つかどうかは2の次なのですから。そんな教材の教え方をいくら工夫しようが,たのしい授業が実現できるはずはありません。なぜなら,今までに,何百万人という教師が,その教材の教え方で悩み,実践してきたのに,そんな報告はほとんどないからです。ましてや,自分一人がちょっと教材研究をしただけで子どもたちが楽しんでくれる授業ができるかもしれないなどと思うのは,愚の骨頂。無駄な時間を過ごすだけ。「自分なりの指導案をたくさん作れ!」という初任研なんて,子どもたちにとってなんの役にも立ちません。教師が「自分はがんばった」という自己満足にはなるかも知れませんが…。
 そんなわけで,たのしい授業をするには,たのしい授業ができる教材を準備することが一番です。そうなると教科書の中身にこだわる必要はありません。教科書はさっさと済ませて,そんな「やりたい授業」をやっていきたいものです。「学力向上」という言葉に惑わされないで,日々落ち着いて実践あるのみです。

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