スイス・フィルストで日食観察(1999.8.11)

空・宙・天


日食を調べる準備

 さて,私は1999年の夏,8月5日~16日にかけて,チェコとスイスの方へ,家族で行って来ました。
 チェコで日本人学校の先生をしているNさんの所におじゃまをしに行ったのです。
 さて,8月11日は,20世紀最後の皆既日食がヨーロッパで見られる日です(「理科年表」で2年ほど前に知った)。
 それで,当初の旅行の日程では,ドイツ国内で皆既日食をみようと思っていたのですが,まあ,いろいろあって,今回は結局,約95%程の日食が見える場所にいることになりました(結局当日は,スイスのグリンデルワルトにいた)。
 99年7月の理科研究会で「エコログ」の便利さを知った私は,「是非これを手に入れて,スイスで日食の観測をしてこよう」と思いました。7月中旬,「中村理科」の製品をを扱っている内浦町(当時,現在は能登町)の朝倉さんに「エコログ」を注文すると,1週間以内にボクの手元に来ました。

 この「エコログ」の使用方法も,旅立つ2日ほど前に,しっかり確認。
 私が調べてみたいのは,日食と気温と明るさの関係です。
 よく,テレビなどで「皆既日食になるとあたりが暗くなる」とかいってますが,それは本当に暗くなるのか。暗くなるとすれば,その時気温も下がるはずだが,それははっきりと分かる程度なのかということを知りたかったのです。
 そこで,測定するセンサーを「光」と「気温」に設定し,時間は10秒間隔としました。これで最高10時間の観測ができます。
 また,ついでにDVビデオも購入しました。できれば日食の様子をビデオにも収めたいと思ったからです。でも,相手は自然です。晴れてくれるとは限りません。まあ,天を天に任せて…。さらに,遮光板と虫眼鏡もケースに入れて(娘の研究のため),いざヨーロッパに出発です。

雲と雨の中の日食

 さて,いくら日食を見たいからと言っても,折角スイスくんだりまで来ているのに,それにつきっきりになることは,あまりにももったいないです(日食観察の為だけに出かける人もいますが)。
 そこで,私は,グリンデルワルト(1034m)の宿の窓(2階)の南側に「エコログ」をセットし,掃除に来た人が不思議がらないように
「今は測定中です。触らないで」
と慣れない英語で書いた紙を置いておきました。時刻は7時10分頃です。これで夕方の5時頃まで測定することができます。

 そしてこの日は,朝のバスでグローセ・シャイデック(1961m)まで登り,そこからフィルスト(2171m)まで,約2時間歩くコースをとることにしました。
 上手くいけば,ちょうどフィスルトについた頃に,太陽が一番欠ける頃です。
 アルプスの山々を見ながら2000メートル級の山道を楽しく歩きました。
 最初からやや曇っていたのですが,少し晴れ間も見えます。
 時々顔を出す太陽にちょっと期待しながら,カウベルの音を聞きながら,アルプスの道を歩きます。
 しかし,山の天気は変わりやすく,そのうちに太陽は全然見えなくなりました。
 11時30分過ぎ,久しぶりに見えた太陽は,既に,右の方が1割ほど欠けていました。
 そして,それ以来太陽の姿は見えず,その後,細かい雨も降り出し,フィルストについたころ(12時30分頃)には,もう日食を見ることをあきらめていました。

宿の窓際に設置したエコログ
グリンデルワルド・グローセシャイデック・フィルスト
フィルストまで歩く家族

霧の中の日食撮影

 しかし,フィルストの展望台について荷物を降ろし,昼御飯でも注文しようかと店内を見回していると,ベランダの方で空を見上げている人達がいるではありませんか。
 いそいで外に出ると,なんと雲間から時折太陽が顔を見せています。しかも,この雲がちょうどフィルターの役目をしてくれて,遮光板なしでも,そのまま日食の様子をビデオに撮ることができます。
  小型のビデオカメラ(液晶画面)が珍しいのか,私のまわり(というか後ろ)には,たくさんの人が集まって来て興奮して画面を見ていました。
 小型ビデオカメラの液晶画面にきれいな日食をとらえたときには,まわりから(もちろん知らない外人さん達から)思わず拍手がくるほどでした。言葉はよく分かりませんが,
「おお~,テクノロジー。」「ソニー。」
と言っていたのは理解できました。
 そんなわけで,12時半過ぎから1時40分過ぎまで,時々顔を見せた太陽をビデオに収めることができました。その間,私と5年生の娘は,雨合羽に身を包みながら,かみさんが持ってくるコーヒーを飲みながら,観測をしていたのです(まともな昼食はずいぶん遅かったなあ)。

カメラ目線の次女
雲を通して見えた日食中の太陽

日食と照度と気温の関係

 一方,宿の方では,「エコログ」がちゃんと働いているはずですが・・・。
 この日のグリンデルワルト(宿のあるところ)は,時々曇ったけれども,ちゃんと晴れていたそうです。
 宿のおばちゃんの英語がそういうことを言っていたようです(う~ん,英会話に自信がない)。
 しかし,エコログでの観測結果は,帰国して,自分のパソコンにつないでみないことには,ちゃんと測定できているかは分かりません。

 帰国後,旅の疲れも見せずに,理科教師はパソコンの前に座ります。
 それで,さっそくパソコンに取り込み,エクセルでグラフ化してみました。
  (1)午前10時から午後3時までを1分ごとにグラフにしてみた(2009年作成)
  (2)全データー(7時10分~午後5時10分)を10秒ごとグラフ化(1999年作成)
  (3)記録データ(エクセル)
 変化の激しいのが「照度」です。最大値は5000Lxを越えているので,もしかしたら直射日光が当たっていたのかも知れません。照度の最小値は12時半頃の98Lxです。
 余り変化の激しくない方が「気温」のグラフです。それでも,日食の途中には気温が上下しているのがはっきりと分かります。
 以上の文章は,1999年9月29日にまとめた『「エコログ」を持ってスイスへ(日食時の気温と光の変化)』という私のレポートから〈日食観察に関する部分だけ〉を抜き出して編集したものです。
 「エコログ」というものや,全文をご覧になりたい方はそちらのレポートを読んでください。


フランスで観測された1999年の皆既日食(Wikipediaより)

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