本ページのバックは「天色(あまいろ)」と呼ばれている色です。
本ページの写真で撮影者名のないものは,すべてHP管理人が撮影したものです。
1)夕方,同時に見えた二つの不思議な虹色
日時:2015年10月21日16時20分頃
場所:珠洲市野々江町
放課後,職員室で仕事をしていると,5年生の女の子が
「先生,真ん中しかない虹がある」
と言いに来ました。
外は,霧雨が降っているふうでもなく,「虹が出ているなんて不思議だなあ」と思いながら,誘われるまま外に出てみました。すると,その子は,天頂を指さして
「さっきまで,ここに出ていたのに,なくなった」
と言うではありませんか。このときは16時を回っていたので,太陽は西の空にありました。
そのうち,うっすらと姿を現したのは,なんとも変な形をした虹でした。
それに加えて,太陽の右の方にも,なにやら,変わった虹色の部分が見えます。
環天頂アーク
集まっていた子どもたちは,この空の虹色のショーに興奮気味。わたしも一緒に興奮。ついでに,自転車で通りかかった近所のおばちゃんも巻き込んで一緒に見てもらいました。
この現象,なんとな~くだけど,本で見たことがあったような気がしたので,早速,理科室へ。
ありましたありました。『空の色と光の図鑑』(ページ下で紹介)という本です。
天頂にできていたのは環天頂アークと呼ばれる現象で,逆さ虹ともいいます。
幻日
また,夕日の右横にできていたのは幻日と呼ばれる現象です。
これらは,いずれも,いわゆる虹ではなく,氷の結晶(六角柱)に光が屈折されてできる現象だそうです(詳しいことは参考図書をご覧ください)。太陽の高度が低いとき,しかも,巻雲などが出ているとできるようです。このときは,秋の夕方ごろで太陽の高度は低く,巻雲(絹雲)っぽい雲も出ています。
いやー貴重な自然現象を見ることができました。
ちゃんと職員室まで教えに来てくれた子どもたちに感謝です!。
付録:太陽の両側に幻日か?
日時:2011年10月29日16時35分頃
場所:石川県羽咋市
29日,石川県羽咋市で,幻日を見ました。
翌日の『北國新聞』の「北窓」というコーナーでも,同様の写真が紹介されています。新聞の写真は金沢市で観測されたものです。
実はこの右側の幻日から太陽をはさんだ左側にも,薄いけれど明るい虹色がありましたが,写真(上)ではよくわかりませんね。目をこらすと見えてくると思います。右側の幻日が水面に映っているのは,また違った意味で素敵ですね(自画自賛)。
太陽を挟んで両側に見えることは,幻日にはよくあることらしいです。
2)太陽や月を中心にできる円形の虹…暈(かさ,ハロー)
太陽を中心にできた暈
太陽を中心に大きな円形の虹があらわれています。満月の夜などにも見ることができます(欠けた月の時は難しいらしい)。
低気圧が近づき天気が悪くなる前に空に薄く白い雲が広がってきます。高層雲や巻層雲(高さ約5㎞)を通してみえます。これは暈(かさ)やハローと呼ばれます。
暈は,太陽や月を中心としてできる視半径約22°という大きな光の輪(内暈)です。また約46°の外側にも暈(外暈)が見えることもあり,左の写真は,その一部が見えていると思います。
暈は,空気中に浮かんだ氷の粒の屈折でできるそうです。
また,虹色は,太陽に近い方が赤色で外に行くに従って紫色となります。ただ外側の色はあまりハッキリとはしていないようです。
月を中心にできた暈
上の写真は,夜の月を中心にできた暈です。
先に「満月の夜などにも見ることができます(欠けた月の時は難しいらしい)」と書きましたが,この日の月齢は約8.5日。半月よりも少し太った月でした。それでも十分明るくて,空気中の氷の粒もいい具合にあったんでしょう。
ちなみに,右横に見える惑星は木星です。ちゃんとスマホでも写るんですね。
ただ暈の大きさが,太陽の時と比べて小さく見えるのが気になります。おそらく雲が厚くてぼやけているからそう見えるのでしょう。
撮影:紅(元生徒,2022年10月2日20時30分頃,珠洲市飯田町)
3)飛行機から見た光輪(こうりん,グローリー)
撮影:2010年12月14日
場所:ニュージランド→日本の飛行機
この写真は,太平洋上の飛行機からわたしの伯父が撮ったものです。
虹って,もともと円形なんですが,太陽の反対側にできるために,なかなか円形の虹を見ることはできません。ときどき,新聞なんかで,山登りをしたときに,雲海にできた自分の影と,それを囲むようにできる円形の虹が「ブロッケン現象」として紹介されています。
この写真のように,はっきりと二重の円になっているのは素晴らしい瞬間ですね。
この円の直径は,太陽があたっている水滴の大きさに左右されます。光輪の中心は,太陽と人を結んだ直線の延長戦上(対日点)でできます。
それにしても,雲も雲です。見事に規則正しい雲海です。
4)いわゆる 虹
わたしの家と虹(虹が見えるわけ)
虹を見るためには,どの方角を見ればいいのでしょうか。
虹は,空気中の水滴に太陽光が入り,屈折して出てきたものが集まって見えます(右図)。ですから,虹を見るときには太陽を背にして見ることになります。
要するに,太陽が出ている空の反対側に水の粒(霧)などがあるときに見えるわけです。
朝・昼・夕の虹(高い虹・低い虹)
太陽が低い場所にあるとき(早朝や夕方)には,虹は立って見えます。逆に,太陽が空高くあるお昼の虹は平べったくなります。
上左写真:大日岳の頂上にて[撮影:秀雄(近所の登山好き)]
上中写真:珠洲市野々江町にて
上右写真:能登町宇出津にて
下右写真:珠洲市飯田町にて[撮影:きよみん]
これはどうしてでしょうか?
一般的な虹(主虹)は,いつも太陽光線に対して約42度の方向にできます。太陽の反対側(太陽光線に対して42度の空の空間には,常に虹のできる準備ができているわけです。
そのとき,太陽の反対側(人の正面)の空気中に小さな水滴が十分あれば,わたしたちの目には虹が見えます。しかし,右上図のように太陽の高度が42度を超えるような高い位置にあると,地上にいる人には見えないことになります(ただし,上空にいる人には見えます)。地平線(水平線)ぎりぎり虹が見えるのは太陽高度40度あたりです。
ちなみに太陽の南中高度は季節と観測地点によって変わります。東京(北緯35度)の春分・秋分・夏至・冬至の日のそれぞれの南中高度は以下の通り。
春分・秋分の日 約55度(90ー緯度)
夏至の日 約78度(90-緯度+23.4)
冬至の日 約32度(90-緯度ー23.4)
いろんな虹
左の写真には2重の虹が写っています。
よく見ると,内側の虹(主虹という)は普通によく見る虹[外側が赤色]ですが,外側の虹(副虹という)は,内側が赤色です(ちょっと見にくいですが)。外側の虹の色の並び順が違うのはなぜなのでしょう。
それを解説したのが左下の模式図です。
水滴の下から入った光は,水滴の内側で2度反射して水滴から出ていきます(主虹の場合は内側の反射は1度だけ,上の図を参照)。そのとき,2度反射することで赤色と青色の出ていく角度が逆転してしまうのです。さらに,出ていく角度も大きくなるので,主虹の外側に虹ができるのです(主虹の赤色は42°,副虹の赤色は50°)。
また,水滴の中で2度反射しているうちに,光の一部は反射せずに水滴の膜を透過し失われていくので,あまりハッキリしない虹が現れることになります。
さらに付け加えると,主虹と副虹の間にある空は,主虹の下側や副虹の上側に比べて暗くなっています。これをアレキサンダーの暗帯といいます。
撮影:美津子(サークル仲間,2020.07.25 19時過ぎ)
人工的な水滴(霧)できた虹
水槽の水でできた虹色(スペクトル)
予期せぬ場所で,とても鮮やかな虹色が現れて驚くことがあります。
右の写真は,晩秋の夕方,部屋の壁に突然現れた〈虹色の帯〉です。一般的な虹の形はしていません。いわゆる連続スペクトル(分光した光)が見えています。それにしても,鮮やかですよねえ。思わず記念写真を撮ったようです。
この〈虹色の帯〉は,窓際に置いてあったメダカの水槽に太陽光が入ったために,その水槽(透明な直方体)がプリズムの役目をして,太陽光が分光してできたものです。
太陽光が入射する角度や部屋の明るさで,こういうきれいな色の帯に出会えることがあります。
撮影:健(サークル仲間,2022.11.27,15:55)
参考図書
「虹色の写真」から正体を調べる
●斎藤文一・著/武田康男・写真『空の色と光の図鑑』(草思社,1995,182ぺ)
amazonの商品紹介に「虹,稲妻,オーロラ,青空,ブロッケンの妖怪、ダイヤモンド・ダスト…。空を彩る不思議な色と光の現象を、41項目にわたって美しい写真で解説した初めての図鑑」とあります。
またある方のreviewでは「めずらしい現象を見れば,誰でも不思議だと思う。なぜだろうと思う。わけを知りたいと思う。この本はその「わけ」を教えてくれる。美しい図鑑であるばかりでなく、優れた科学啓蒙書である」と書かれています。わたしもそう思います。ただし別の人が,蜃気楼の記述に間違いがあるとも書いていますのでご自分で確認されるといいと思います。
虹をたのしく学習する
●板倉聖宣・遠藤郁夫著『虹をつくるー虹の見え方と光の性質』(小峰書店,2014,47ぺ,2800円)
本書は,小峰書店が発行している「いたずらはかせの科学だいすき」シリーズ(全10巻)の中の第6巻目です。
まず,このシリーズについて,カバー解説から引用します。
このシリーズの本は〈読み物〉です。 私たちがじっさいに授業して, みんなが 「こんな授業なら毎日でも受けたい」と言ってくれた科学の授業の読み物です。 読み物の中には「問題」が出てきます。「こんな実験をしたら,どんな結果になるか」 という楽しい〈実験の結果〉を予想する問題ばかりです。その後の話を読めば,じっさいに教室で行われた実験のようすを知ることができますが,話を読む
前に自分で予想を立てておいたほうが, ずっとその実験の結果を知りたくなります。
というわけで,本書は,仮説実験授業の授業書《虹と光》の内容を,家庭でもできる実験を取り入れながらやさしく解説したものです。虹のできる理由などがとてもよく分かるようになるでしょう。特にフラスコ(これが空気中に浮いている水滴の代わり)を使ったディートリヒさんの実験の再現は,感動すること間違いなしですよ。
●板倉聖宣著『虹は七色か六色か』(仮説社,2003,60ぺ,600円)
「あなたは,虹が何色に見えますか?」と聞かれたらどう答えますか?
「虹が七色である」というのは,本当なのでしょうか? 子どもの頃から,「せきとうおうりょくせいらんし」と覚えてきたわたしは,もう,それが当たり前だと思っていたのですが,「本当に七色が見えるのか?」と聞かれると…。
本書は,予想を立てながら読み進めることができる「ミニ授業書」となっています。「虹は七色だ」と言われているのはなぜか。アメリカでも七色なのか。いろいろと虹の色に関する話題が出てきます。ニュートンの『光学』についても触れられていて,結構深い科学読み物となっていますよ。
本書の「はしがき」の書き出しを紹介します。
『虹は七色か六色か』と題したこの小冊子の主題は,表面的には〈虹の色数〉を教えるものとなっています。しかし,その〈真のねらい〉はもっと深いところにあって,人びとの「教育」とか,「科学」というものについての「考え方」そのものを考えるものとなっています。
どうです,深そうでしょ。なお,上掲書『虹をつくる』にも,その内容の一部が載っています。
●板倉聖宣・湯沢光男著『光のスペクトルと原子』(仮説社,2008,138ぺ,2000円)
なぜ虹ができるのか気になってきた方へ。虹を出発点としてスペクトルについて調べたい方は,この本がお薦めです。本書は,サイエンス・シアター『電磁波をさぐる編』の第4巻なのですが,本書だけを読んでも理解はできると思います。いわゆる分光学について,分かりやすく解説されています。
本書もまたいろいろな問題に予想を立てながら読み進めることができます。そして,自分で実験できるように,ホログラムシートまで付録でついていますので便利ですよ~。
子ども向けのかがく絵本
●永田英治ぶん・伊東美貴え『にじってなあに』(大日本図書,1995,31ぺ,1388円)
「子どものたのしいかがく」シリーズの一冊ですが,大人が読んでも新しいことを知ったなあと思うでしょう。
上に上げた一般向けの本の内容を分かりやすく解説してあります。虹のできる方向やでき方,作り方,さらには,虹が七色に見える(といわれているわけ)までちゃんと説明されているんです。ここでもやはりニュートンの『光学』に触れています。本格的な科学絵本になっています。お薦めです。
Amazonでは商品がありませんでした。大日本図書のサイトから注文できます。
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