わたしの好きな川柳

川柳って面白いですね。俳句よりも好き。自由だし。これまでわたしが出会ってきた中からお気に入りを紹介します。川柳のあとの(   )の文は(わたしの一言感想)です。

サラリーマン川柳

 これまでの作品は,単行本にもなっていますが,主催者である「第一生命」のサイトでも読むことができます。川柳を有名にしたのは,この「サラセン」の力が大きかったと思います。

『平成サラリーマン川柳』(講談社,2009年版)より

・パパ部長 家の中では ママ社長(頷く人がなぜ多い?)
・スタッフ~と 妻が呼ぶ朝 ゴミ出し日(やはり今年もこれがある)
・叱っても 「ママがいいって 言ってたよ」(結局子育てに口出しできね~)
・「言ったよね!」 覚えていたら ミスしません(そのとおり,わかっちゃいないね)
・仕事減り 休日増えて 居場所なし(居場所くらい作ってあげて)
・妻よりも 家電の方が いい返事(この系統がこれから増えそう)
・父さんに 「似てるね」と言われ 泣く娘(そんなことは言わないで)
・しゅうち心 なくした妻は ポーニョポニョ(ちゃんと流行を使えるのはエライ)
・iPod すぐに沸くかと 祖母が聞く(今時三世代同居は珍しい)
・投げ出すな! 国とは違う 学業は(ここまで言われた日本政府,どこへ行く)
・節約と エコと貧乏 気持ち次第(言い得て妙,プラス思考で乗り切れますか)
・久しぶり ハローワークで 同窓会(あなたもいましたか…)
・円下げて! ドル上げないで 株上げて!(このリズム,本物です)

で,私のイチオシは「投げ出すな国とは違う学業は」です。

『平成サラリーマン川柳傑作選(二匹目)』(講談社,1992年発行)より

・まだ寝てる帰ってみればもう寝てる(田舎で良かった)
・愚痴言える家のママより店のママ(なぜか外では正直に…)
・せまい日本だから急げば早く着く(ごもっともです)
・からだより態度で示せ太っ腹(まったく,根性が小さいのではただのメタボ)
・転勤地良い所だと皆が言う(じゃあ,なんであんたたちはそこへ行かないの)
・帰っても窓の近くにすわるクセ(窓際族という言葉も死語になったのか…今は即首だ)
・ボーナス日ウラをかえせば返済日(耳が痛い)
・知りませんそれは私の担当外(これで世の中がつとまる時代は終わったなあ)
・常識も世代違えば非常識(これを理解していれば,職場でもKYにならなくて済む)
・この世では買えぬとあきらめ墓地を買う(先を見て生きていくのは立派です)
・子育てを終わる頃には邪魔にされ(やってられません!オレの人生,かえせ~)
・辿り着く家にもいます管理職(辿り着くという漢字がかわいそうでかわいそうで)
・子をぶつないまにその子になぐられる(仕返しがこわくて,子育てしておれるか!)
・ねたましや生まれ変われる再生紙(再チャレンジという言葉を言った時代もあったけど)
・塾通い父より遅い晩ごはん(ホント,東京に行くと9時ごろでも電車に乗ってるもの…)
・ハンガーに今日の疲れがたれさがり(背広と私は一心同体)

『平成サラリーマン川柳傑作選』(講談社,1991年発行)より

・無礼講会社にもどれば無礼者(酒の力を借りないと何も出来ない私です)
・正論を吐かぬ聴かぬが出世道(物言わぬが花)
・入社時に作った名刺がまだ使え(出世ばかりが,男の生き方ではありませんよ)
・新任地の記念が今のお母ちゃん(思わず同意してしまいました)
・夢をくれ地獄もくれたかわいい娘(思春期は難しい年頃です。お父さん,ちょっと離れて)
・うちのパパおとなのくせにママとねる(ぼくまだママと寝たいのに…)
・過労死はニュースだけだと妻がいい(お母さん,もう少しお父さんに優しくしてください)
・父帰る一番喜ぶ犬のポチ(誰もいないよりはいいじゃないの,お父さん!)
・運動抜くなその子は課長の子(親の立場が子に影響する,あってはならないことです)
・とこやいく金ひまあれど髪がない(思わず同意してしまいました)
・バカヤロー聞こえぬ距離で言い返す(こういう姿勢なら,けんかはちゃんとおさまります)
・誰がために鐘は鳴るのか終業時間(いつも残業では,身体が持ちませんよ~)
・セクハラとさわげるうちはまだましよ(口が裂けても言えません)
・待望の自由の日々をもてあまし(こうなりたくないから,そろそろ第2の人生を)
・定年後晴耕雨読の土地もなし(確かに,晴耕できるだけでも幸せなのだ)
・酔っぱらいさけて通れば主人なり(夫の寄った姿ぐらい覚えておいてよ~)
・休日の疲れとるため休みとり(本末転倒だね,これじゃ)
・食べざかり子のおさがりを父が着る(これも,同感)
・悪妻も昔夢中になった女(これを自業自得というのです)

『平成サラリーマン川柳傑作選・9回裏』(講談社,1999年発行)

  • 見えそうなスカートはいて押さえるな(これは、世の男性の本音かな)
  • たばこ止め食が進んで医者通い(油濃いものばかり食っちゃいけない)
  • 手を抜いて育てた子供が度肝抜く(手を抜かなくても度肝抜く子もいる)
  • あれ食べたい言うな作れるわけがない(何食べたい?と聞かれても言わない方がいい)
  • 虫歯などいっぽんも無し総入れ歯(あのキーンという音を聞かないだけマシか,こりゃシルバー川柳に近いな)

シルバー川柳

 「シルバー川柳」とは、社団法人全国有料老人ホーム協会が、2001年から毎年募集している川柳作品公募の名前です。サラリーマンを終えて、ゆったり生活できる時代が来た…と思いきや、老いはじっくり、しかもはっきりと近づいてきます。それを笑えるということが長生きの秘訣だったりしますからね。

『シルバー川柳』(ポプラ社,2012年発行)

  • LED使い切るまで無い寿命(科学は進みましたが…)
  • 起きたけど寝るまでとくに用もなし(こんな人生はさみしい,せめて畑でも)
  • 躓いて何もない道振り返り(今のところ,キッチンのマットに躓くだけです)
  • カード増え暗証番号裏に書き(あのー,全くその通りなんですが…)
  • 目には蚊を耳には蝉を飼っている(わたし,数年前から蚊は飼っています)
  • 老の恋惚れるも惚けるも同じ文字(へ~,初めて知りました。どこか近いのか)
  • 婆さんよ犬への愛を少しくれ(内にも犬はいるけど,まだ大丈夫な様な気がする)
  • ご無沙汰を故人がつなぐ葬儀場(退職してからは,この句の通り)
  • 深刻は情報漏れよ尿の漏れ(井上陽水の「傘がない」を思い出す)
  • 定年だ今日から黒を黒と言う(どれだけ我慢してきたか! もうあなたは自由です)
  • 景色よりトイレが気になる観光地(最近早め早めに行動している自分がいる)

『シルバー川柳・2』(ポプラ社,2013年発行)

  • バラに似て妻も花散りトゲ残し(以前は「きれいな花」だったけど,花が散ればトゲだけ)
  • 定年で田舎戻ればまだ若手(これ,まったくのあるある。わたしはまだまだ若手)
  • 美しく老いよと無理なことを言う(老後のHowto本がなんと多いことか。オレはオレでいい!)
  • 老後にと残した夢も夢のまま(確かに「退職したらこれをやろう」ってのができていない)
  • 墓参り「下見ですか?」と尋ねられ(ブラック過ぎる)
  • ああくやし夫の名前がでてこない(悔しくは感じないんだけど,これはわたしだけ?)
  • まな板のへこみに妻の苦労知る(仕事ばかりでごめんなさい。これから妻孝行するね)
  • 早起きはしたくてしてるわけじゃない(今日も4時起きです)
  • 減っていくヒザ軟骨と預金額(まさに骨身にしみます)
  • 幸せは妻と二人の冷奴(いい老後ですな)

反戦川柳作家・鶴彬(ページを改めてご紹介します)

鶴彬(つるあきら)は,石川県高松町に生まれました。1909年1月1日のことです。1924年(大正13),彬は15歳にして初めて『北国柳壇』に投句。柳名は喜多一児といいました。
以後,反戦平和を希求する鋭い川柳を発表しつづけ,1938年(昭和13),赤痢にかかり奥多摩病院へ入院(監視付き)。9月14日,死去,享年29歳の短い生涯でした。

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