珠洲たの通信・1996年2月号

 ボクの長年の念願だった「新居先生に珠洲に来て授業をしてもらう」ということをオッチョコチョイ?とみなさんお陰で実現できて,大変満足しています。講座の前日から新居先生と一緒に「時国家」を見学したり,車の中では「差別語の話」を聞いたり,楽しい思いを2人じめ(Sさんと)しました。その夜の勤プラの炉端では,仁義の大切さを教えられ,身の引き締まる思いもしました。ゲテモノがあまり好きではないということが意外でした。
 また,次の日の松波小学校での新居さんの授業・ミニ講演,そして,その後の「新居信正独演会」も,たいへん楽しくて,ためになりました。久しぶりに気合を入れて<「本当の勉強」をしたと>いう感じです。
 さて,2月はサークルの例会をしませんでしたので,このサークル通信では,レポート紹介ができません。
 そこで,新居さんの話に出て来た本や,ボクが,最近,人に紹介した本の中からいくつか紹介をしたいと思います。

○網野善彦著『日本の歴史をよみなおす』(筑摩書房,1100円)[初版 1991年1月30日]
  この本を手に入れたのは,2年ほど前。小学校に来て,久しぶりに6年生に歴史を教えなければいけないということで,手にとってみました。それまでは,網野さんという人の本を読んだことはありませんでした。
 今,あらためてぱらぱらとめくってみると「時国家」から出て来た古文書のことにも少しだけど言及しています。でも,ボクの頭には,全然記憶に残っていません。<問題意識がそこになかった>ということです。
 ボクの頭には<「非人」の出現とその仕事><河原者><差別の進行><穢れと女性>などというところが印象に残っています。
  実は,珠洲市が市政40周年を記念して開催した「珠洲焼フォーラム」に,なんとパネリストとして,網野さんも参加していました。ボクは内容もよく分からずに(珠洲焼の歴史には興味があったので)見に行ったのですが,それなりにおもしろかったです(でも,ほとんど覚えていない)。

○網野善彦著『続・日本の歴史をよみなおす』(筑摩書房,1100円)[初版 1996年1月20日]
 『続』も本屋で見かけるなり購入していたのですが,全く読んでいませんでした。ところが,新居さんが和倉からの車の中で「時国から歴史が変わる」「奥能登から歴史が変わる」「板倉さんの『歴史の見方考え方』に匹敵するくらいの本じゃ」と言われていたのでビックリ。「百姓=農民」ではないこと,水呑=貧乏ではないことなどが,書かれています。こりゃ驚きです。今までの 常識がひっくりかえります。そして,「なぜ<百姓=農民>というような誤った考えが広まってしまったのか」ということについても,日本の政治制度に原因を求めてヒモといています。おもしろくて一気に読んでしまいました。
 ボクのようにあまり歴史の基礎知識がな者が読んでもおもしろいのですから,上の2冊は,絶対のお勧めです。今すぐ,読むのじゃ。

○週間文春編『徹底研究「言葉狩り」と差別』(文藝春秋,1400円)[初版 1994年10月1日]
 ご存じ筒井康隆の「断筆宣言」であらためて問題になった「言葉狩り」問題 をテーマに,週間文春が連載特集した記事を集めたものが,この本です。
 「父兄」を「保護者」に言い換えたり,「婦人部」を「女性部」に言い換えたり,「めくら」を「目の不自由な人」に言い換えたりすることで,本当に差別はなくなるのか。差別語とはなにか。差別語じゃない言葉ってあるのか。
 ボクの今一番興味のあることは「差別語」についてなので,新居さんがもってこられたこの本を真っ先に買いました。
 さて,ボクが筒井の本を手当たり次第に読んでいたのは,大学生のころでした。そのころのボクは,筒井康隆の大ファンでした(文庫本を持っていても古本屋で同じタイトルの単行本を探して買ったくらい)。筒井について書いた解説文や評論集も読みあさりました。今でも本棚には,筒井の文庫本や単行本が50冊ほどあります(古本屋にはまだ出したくない)。筒井から山下洋輔を知り,彼らのジャズコンサートを見にいったくらいです。シュールレアリスムの文献をあさったり,ダリの絵やデュシャンのオブジェに興味をもって美術館へ通ったのも筒井の影響です。
 日教組を笑い,創価学会を笑い,婦人団体を笑い,老人を笑い,病人を笑い,原住民を笑い…それが,筒井のおもしろさの一部でもあります。もちろん,さまざまな実験的な小説もいいのですが,ボクは筒井のドタバタやシュールな作品に興味をもっていました。
 とにかく,筒井の作品が教科書に掲載されるようになったということにも時代の流れを感じますが,それが「差別語」として糾弾されるのは,ひとごとではありません。だって,自分はその作品を支持して来たのだから…。

○ジェームズ・フィン・ガードナー著『政治的に正しいおとぎ話』(DHC,1200円)[初版 1995年5月29日]
 腰巻きを見ると…
表「全米200万部 世界的ベストセラー!!」「差別と偏見のない文学は,差別と偏見のない世界を創造できるか」「Politically Correct Bedtime Stories」
裏「あなたの心を,やさしく,美しく,正しくする魔法のベットタイムストーリー」「『赤ずきんちゃん,女性差別に気をつけて』『皇帝の新しい服』『3匹の相互依存的ヤギたち』『白雪姫と7人の小柄な人たち』『ジャックと豆の木と雲の上の菜食巨人コミューン』『ハメルンの社会環境計画と笛吹き男』など13編」

などと書かれています。
 この本は,ずっと以前から子どもたちの間で親しまれてきた「おとぎ話」から「差別語」を完全に排除して(「言葉狩り」をして)書きなおしたお話です。
 笑いながら,政治的に正しい言葉とはなにか,文学とはなにか,など,考えさせられる本です。新居さんにも紹介したところ,「雷鳥の中で読んでみる」とおっしゃって,金沢の本屋で買っておられました。
ジェームズ・フィン・ガードナー著『政治的にもっと正しいおとぎ話』(DHC,1200円)[初版 1995年12月22日]
 前著の続編です。
 <ゾンビ>は,一部の死者に対する差別語です。政治的に正しく言うと「異なった死にかたをしている人」というそうです。また<泥酔>は「お酒でパワーを増強された」と言い換えます。よくやるよなあ。でも,ここまでくるとおもしろい。

○青木雄二著『ゼニの人間学-社会の裏のカラクリを暴いたるで!』(KKロングセラーズ,1200円) [初版 1995年7月20日]
 今年の県教研の時,全体会会場のホールで本屋を開いていたそこのおっさんに「何か,おもろい本ないかね」と聞いたところ,勧められたのがこの本です。まえがきを読んでみると,『ナニワ金融道』というマンガを描いている人だと分かりました。でも,そのときはまだ,マンガの方は読んだことがありませんでした。まえがきにあった,次の言葉にひかれて買ってみたのです。
「(『ナニワ金融道』を描く気になった理由の)もうひとつは,マルクスの『資本論』との出会いである。/いまではほとんど読む人がいないだろうが,マルクスが執念をかけて書き上げた『資本論』には,人間社会の歴史と真実とが,的確な筆で描きつくされている。こまかい話はあとまわしにして結論だけを言うと,つまり,現代は,ゼニの世の中だということや。僕は,マルクスからそのことを学んだ。」
 もう枚数が尽きた!!!

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