珠洲たの通信・1995年12月号

 ちょっと,遅いけど…
 あけまして,おめでとうございます。
 今年もよろしくお願いします。
 さて,新年早々,村山さんが辞表を出して,橋本総理が誕生するという,なかなか刺激的な幕開けでした。今日の新聞によると,世論調査で6割以上の人が橋本内閣を支持しているとか。なるほどねえ。しかし,村山さん,どうせやめるなら,「沖縄の問題にハンコは押せない」とか言ってやめればかっこよかったのにね。それにしても,村山さん,自分の意志と違ったことをやるのってしんどかっただろうね,きっと。とにかく試行錯誤で,日本の政治はまたまた動き出しました。
 さて,学校のほうでは,新学期が始まりましたが,この1週間は結構長く感じました。みなさんはどうでしたか。休み疲れというんでしょうかねえ。理科では《溶解》を始めました。「溶ける」「溶けない」で大騒ぎするんですから,おもしろいですね。
 3学期はあっという間に終わっちゃうのですが,担任の子どもたちといい別れがしたいですね。いいもの(もちろん“授業”)いっぱい,プレゼントして。
 一方,3月の新居信正さんの独演会の件ですが,案内ビラができましたので同封しました。お近くの先生や知り合いの方々にも進めていただければと思います(案内ビラが余分に欲しかったら,1月のサークルで言って下さい。サークルに来れない場合は電話でいいです。こちらから送付します。珠洲市郡内の小学校には配布済みです)。

■12月の例会参加者(9名 ☆は,初めて参加された方です。また来てね)
M.S(内浦町M小)  R.I(七尾市A中)  H.H(珠洲市H小)  K.Y(珠洲市A小)  K.H(珠洲市M中)  M.O(珠洲市K小)  M.T(内浦町O中)  ☆T.K(内浦町M小)  ☆M.S(内浦町M小)

資料紹介

1.「がんの池を教材化するために」  34ぺ   K.Y
 久しぶりにサークルに参加したKさんですが,自主開発教材を持参しての参加でした。
 表題の「がんの池」については,レポートに以下のような説明があります。
がんの池は校区(一部他の校区)にあり,学校から歩いて25分ぐらいの所にある。子供たちの家のたんぼのほとんどはこの『がんの池』の水を利用している。それぞれの家が『がんの池』の恩恵を受けているのである。
 この「がんの池」を,4年生社会科で組織した授業計画と授業の様子が紹介されました。
 「がんの池」の現状と歴史に関する資料もあり,教材化するにあたっての力の入れ具合が伝わって来ます。
 授業記録を載せた学級通信「新芽」も持って来てくれました。でも,飛び飛びにしかないのが残念です。ぜひ,全部のものがほしいです。それで欠けているのですが,その授業の1部を紹介します。
第1時 「自分の家にたんぼがありますか」「その水はどこから来ているとおもいますか」→家で聞いてくることになった
第2時 一番多かったのは「がんの池」→「みんなで見に行こう!見学ノートをつくろう」 
第3・4時 「がんの池」に詳しい地元のおじいさんに話を聞いたり,自分たちで調査をしたりした。
-(途中記録が抜けていますが,自分たちで,小さなため池を作ってみたそうです)-
第10時 学級で一生懸命作ったため池には水がたまらず→「昔のひとたちも同じ目にあったはず。そんな苦労はどうしたらわかるかな」「がんの池はだれがつくったのか」→自分なりに調べてくることに
第11時 授業参観日。市立図書館へ行って「三崎の歴史」を借りてきた人。近くのお寺の和尚さんの所へ行き,実際にお話しを聞いて来た人。珠洲市郷土史研究家の所へ聞きに行った人など,みんな張り切って調べて来たそうです。
 この授業は,最後にまとめの壁新聞を作って終わったそうです。その壁新聞も4年生が書いたとは思えないほど,しっかりしたものでした。何よりも子どもたちが楽しんでいるのがよく分かります。
 「自分たちの住んでいる土地にも,いろいろな開発とその苦労の物語りがあるのだ」ということは,どの地域にも当てはまる普遍性を持ったものだと思います。そういった意味で,この実践から学ぶものは多いです。「がんの池」が近くになくても「がんの池に変わるもの」はあるでしょうから。「教材化にするために切り口」を学べそうです。ただ,力不足で簡単にできないのが現状かもね。

2.ビデオ『塩田を救った藻寄行蔵』と資料  22ぺ    K.Y
 珠洲市道徳研究会(Kさんも所属している)で作成したビデオ『塩田を救った藻寄行蔵』と,それを使った指導案及び授業記録です。
 ビデオは,約10分で,実写あり動く紙芝居(というのかなあ)ありで,飽きずに見ることができました。子どもたちも,自分の地域のことなので興味を持ってみるだろうと思います。ただ「歴史的な背景(江戸から明治にかけての大きな変化)が分からないと,藻寄のやったことが,どんな意味だったのかが分かりずらいのではないか」という意見もありました。しかし,授業記録を見ると,子どもたちはそのことにこだわっていないので,そんなに心配する必要はないのかもしれませんが。
 藻寄行蔵という人を,ボクはこのビデオで初めて知りました。珠洲で続けられていた塩作りにも,こんな歴史があったのですね。
 なんかしかし,「お上にたてつく勇気」みたいなものが分からないと,この人,いかにも道徳っぽく感じてしまいます。それで,<子どもにインパクトをあたえるかなあ>と思ったのも素直な感想です。

ビデオのあらすじ
江戸時代,加賀藩の保護を受けていた塩を作っていた能登の塩士たち。ところが,廃藩置県により藩の保護がなくなり塩作りが続けられなくなって,彼らの生活は貧窮化して行った。その現状を見るに忍びず,彼らと塩田を救うために行蔵は悩み,やがて知事に直訴する。行蔵の必死の訴えが通じて,塩作りの資金が国から貸し出され,再び能登の塩田に塩を炊く煙が昇った。

3.学級通信『走れ!』No.15~No.17  10ぺ   M.S
 《溶解》の授業記録デス。
「砂糖は水によく溶けるか」という問題の時のOという子どもの意見がすごいです。
「砂糖は,名前でC12H22011だから,塩はNaClだった。なんか,砂糖には水の分子(H2O)がいっぱい入ってるみたいやから溶けるみたい。」
 この意見で,6人もの子が予想変更をしたそうです。そしたら,反論も出て来ました。
「サワに反論。塩になんも書いてなかったけど(たぶんH2Oのこと),水に溶けたから,12とかの意味不明なのは関係ないと思う。」
 上のような意見が出るのも,この授業書の前に《もしも原子が見えたなら》をやって,<粒の集まり>のイメージができあがっているからでしょうね。
 この授業書では「なぜ溶けるのか」「どうして溶けにくいのか」という本質的な部分については何も教えてくれません。「なぜかしらんが,物質により,よく溶けるものと溶けないものがあるのだ」というだけです。砂糖がどうして水によく溶けるのかはよく分かりませんが,-OH基をたくさんもっていることと関係あるのかも知れません。

4.「四條畷学園の研究会に参加して」  2ぺ   M.S
 10月末の四條畷での研究会の参加記です。「あれ以来すっかり仮説病にうなされる私でございます。28日大阪駅に降り立ってから29日雷鳥に乗り込むまで,興奮の連続でした」とまえがきに書いてありましたが,まあ,そうでしょうな。仮説で「学ぶことの楽しさ」を知ってしまうと,もうそれなしではいられなくなります。こりゃ一種の麻薬ですね。
 さて,このレポートの中身は「新居先生は,すごかった」というものです。
「己の実力のなさをごまかすために教科書の悪口を言う奴もおりますが…」で始まった強烈な話でした。
・「練習」「努力」なしでは上達はないことを教えなくてはイケナい。ゲームや「らくらく算数」のようなことはない。
・いらないことは聞かない。つい教師はいらないことを聞いてしまうが,子どもの注意がそれるので,教えることはさっさと教える。

など,授業の本質にかかわる部分の話がいろいろとあったそうです。最後にあとがきを引用しておきます。
私としては,ナマの新居先生の授業を見れただけでも興奮ものだったのに,講座まで参加してしまった。すごい!の連続。その上,O先生からの伝言…「珠洲に来て授業をしてくださいませんか」まで伝えてしまった。実現できたら,これはやっぱり,すごい!,いや,すごすぎどころの騒ぎではないのかもしれない。
で,Sさんのお陰で「実現」してしまいました。う~ん,3月が待ち遠しい。

5.「『ガーン』ときた一言。小林よしのりが,私の脳裏をかけめぐった!」  3ぺ   M.S
 小林よしのり著『ゴーマニズム宣言 差別論スペシャル』の紹介と,教室での出来事について書かれています。
 小林よしのりの『ゴーマニズム宣言』という漫画は,以前,週刊「SPA!」に連載されていましたが,今は違う雑誌で連載しているようです(なんだったか忘れた。ゴメン)。『ゴーマニズム宣言』を集めた単行本ももう8冊ほどでていますが,上記の本は,今までの『ゴーマニズム宣言』から「部落差別や障害者差別」等に関するものだけを集めたもの(部落解放同盟との対談もある)です。この本,Sさんの言葉を借りれば,「この1冊の漫画(と呼ぶにはもったいない豊富な内容の哲学書?)には,自分の中にある,自分では見えないふりをしている差別観を,これでもかこれでもかとむき出しにさせられる力強さが」あるのです。
 この本に出会ってから4日目の放課後の話。
 教室で,何人かの子どもたちが算数の残り勉強をしています。最後に残ったよしのり君(仮名)が,どうもやる気が無さそうです。腹を立ててしまってて「むかつく」の一本調子。なぜ,よしのりはこんな態度をとったのか。ここからはレポートより引用。
よしのりは,算数はできないが,自分より遅いしげちゃん(仮名)がいるから,しげちゃんを下におくことで優越感をもっていたのである。その優越感のおかげでいやな残りもしたのであろう。しかし,いつも自分より遅いしげちゃんが自分より先に終わってしまい帰ろうとしている。彼の心は大きく傷ついたのである。というより,少しでももっていた優越感が音を立ててくずれたのである。
そんな彼の言動は,私にいろんなことを考えさせてくれた。もしかしたら,私も気づかないうちにいろんな人たちに対して,よしのりがしげちゃんにもっているような感情をもってはいないだろうか。

小林よしのりの本で最近出たのに『オウム的!』(ファングス,1200円)があります。今読んでいるところなので,感想はかけません。

6.「5年生の変わり方調べ」  2ぺ   H.H
 「1学期と比べて2学期中に友達がよくなった所はあるか考えよう」と,友達一人一人についてよくなった所を出し合い,「友達の意見を聞いてどう思ったか」「自分がかわったのはなぜだと思うか」を考えてみるという実践です。子供たちは結構いろいろ書いてくれたし考えてくれたようです(実は,この話のときボクは深い眠りに入っていたのだ-忘年会の後だったのでね)。確かに,自分のよくなった所なんて,普通に過ごしているとよくわかりませんよね。子供たちから出た意見や感想もまとめてくれればよかったなあ-だってボク寝てたから。あっ寝てたのが悪いのか。
 それにしても,ボク自身は,この1年でどこが変わったのだろうか-自分ではよく分かりません。これ,人に聞いたら何か答えてくれるかなあ。だれか教えて。もちろんマイナス面は言っちゃいけませんぞ。
 まあ,大人よりも子どもの方が変化の具合も大きいので,答えやすいのかも知れませんね。

7.学級通信『ファイト』  4ぺ   M.O
 《もしも原子が見えたなら》の授業記録-1時間目です。
 5年生のうちに《もし原》をやろう-とは思っていたのですが,なかなか授業時間数のことも気になって,延び延びになっていました。しかし,この前のサークルでIさんやSさんが「やったらすごくよかったよ」と言っていたのを聞いて,もう我慢ができなくて(あとの教科書や時間数のことは考えずに),授業を始めることにしました。
 学級通信には<小学生に原子を教える意義みたいなもの>も書いてみました。たまには,こんなふうに「親向け」に文章を書いて,<教科書を離れて「仮説」ばかりやっていることからくる不安>を和らげてあげたいと思います-もっとも親の感想を聞いていないので,「和らいだかどうか」は疑問のままなのだが。
 《もし原》の授業終了後は,授業書はプロ用紙を表紙にして綴じ,それに自分なりの絵をかき,分子模型も10種すべて作り(今はまだ卵のパックの中[分子模型を卵のパックに入れて整理する方法は松平さんのレポートで知った]に入れてあるが最後はキチンと壁掛けにするつもり),クリスマス・モルQ大会もやり,大喜びです。
 「分子模型下敷き」も注文してくれというので,申し込むことにしました。

8.「元祖『新しい学力観』を発見」  12ぺ   M.O
 10月のサークルで紹介した森下さんの「新しい学力観に思う」というレポートに触発されて,ボクなりに「新しい学力観」の問題をまとめてみたものがこのレポートです。
 率直に結論だけを言うと,「新しい学力観」を言い出した本人は<基礎・基本が大切だ>と言ったのに,いつの間にか<意欲・関心・態度が一番だ>ってな話になり,「支援」だのという言葉がはやったりするようになった-と言うわけです。「ボクらは,時流に流される事なく,一歩一歩進んでいこうじゃないか」という呼びかけでもあります。教育界は,いつも,なんかはやりに追いまくられているようです。「もっと地に足をつけて,子どもたちのほうを向いて,実践を積み重ねて行きましょう」というボクのメッセージです。
 だいたい,「支援」という言葉を言い出したのも一体だれですか? 学校では,それを知って使ってるのですか。言葉にはキチンとした定義が必要です。教育学が教育科学となるためには言葉の問題を避けては通れません。あんたの言う「支援」と私の言う「支援」は違うのよ-と言うのでは話にならないわけです。う~ん,また,調べてみたくなって来た。でも,時間的な余裕があるかなあ。流行に付き合ってる暇があったら,新居さんの授業記録を読んでるほうが数億倍も有意義だもんなあ。
 しかしねえ,「支援」だなんて-PKOじゃあるまいし。「指導上の留意点」を「教師の支援」と言い換えたって,授業内容・授業方法が変わらなければ何も変わらない。まさに「看板の付け変えでしかない」のです。差別語の世界とよくにてるなあ。今,「指導上の留意点」とか書いたら,「あなたは,子どもを指導しようとするんですか。それはイケマセン。教師はあくまで手助けをするのです。子どもが伸びるのを助けるでけです」なんて言われて差別されそうだ。これは言葉狩りではないか! おお~こわ。

 このほかに,「先生,楽になって下さい-優先順位を考えて-(朝日新聞記者:豊田充)」「新居さん・渡辺さんの<授業のテクニック「やさしさときびしさ」を学ぶ会>に参加して」(以上:紹介O),「何事も明るく元気にがんばる学級をめざしてと生徒指導上の話」(紹介:H) などがありました。
 サークルの例会のあとは能登勤労者プラザの炉端で忘年会をしました。参加者は7名でした。この日,3月の新居さんの会で使う会議室を見せていただき,予約もして来ました。忘年会では,どんな話が出たか。酒の場だったので忘れました。だれかに聞いて~

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