仮説実験授業を学ぶための本

仮説実験授業への手引き

私的な<思い>による「仮説実験授業の本の紹介」です。興味のある本から,是非,手にとって読んでみて下さい。そして,感想があったら聞かせて下さいね。
一応,下記のように分類してみました。

仮説実験授業とは何か,仮説実験授業の進め方とは

板倉聖宣著『仮説実験授業のABC』(仮説社,初版1977,最新版もあり)

 この本は,初めて「仮説実験授業をやってみよう」という人でも困らないように,仮説実験授業の授業運営法が詳しく書かれています。仮説実験授業に興味を持ったら,授業をやる前に必ず目を通して下さい。というのも,仮説実験授業は,今までの教育界の「常識」とはかけ離れている部分もあるからです。「仮説実験授業の発想と理論」や「評価論」など,仮説実験授業の基礎となる理論も一通り書かれています。また,常に新しい版が出されており「最近3年間の研究運動の成果」や「どんな授業書があるか」といったことも更新されています。

板倉聖宣著『未来の科学教育』(国土社・国土新書,1966,仮説社からも再販)

 典型的な仮説実験授業の授業書《ものとその重さ》を例にとり,仮想授業記録で「仮説実験授業の実際」について説明されています。読みやすくて,仮説実験授業の考え方がよく分かります。わたしが,いちばん初めにやった授業書も《ものとその重さ》でした。子どもたちに圧倒的な支持を得て,「やっぱり仮説はいい」と,それ以来,仮説実験授業にのめり込むことになりました。

『たのしい授業』編集委員会篇『仮説実験授業をはじめよう』(仮説社,2010)

 「仮説実験授業なんて知らない,やったことない。だけど,たのしいことならやってみたい!」という人のために,授業の基本的な進め方や役に立つ参考文献,授業の進め方が分かる授業記録など,役に立つ記事を一つにまとめました。巻末には,すぐに始められる授業書《水の表面》《地球》と,その解説も収録しました。(出版社より)
 初めて仮説実験授業の全体像を知りたい方にとっては,とても読みやすくためになる本だと思います。

月刊『たのしい授業』(仮説社,毎月3日発行,創刊0号1983年3月)

 仮説実験授業,および「たのしい授業」周辺の話題を紹介する月刊誌。
 1983年の創刊ですが,この年はちょうどわたしが教師になった年です。つまり,わたしの教師生活は,『たのしい授業』と共にあるというわけです。初任以来今まで,いろいろな教育月刊誌を買ってきましたが,ずっと購入を続けているのは,この『たのしい授業』だけです。
 退職してからも,ずっと購読を続けています。

単行本(理論的な論文など)

板倉聖宣著『仮説実験授業-授業書<ばねと力>によるその具体化』(仮説社,1974)

 この本は,著者により仮説実験授業を公式に発表するときに書かれた論文「仮説実験授業による力の概念の導入指導-小学校における科学教育の可能性に関する研究」『国立教育研究所紀要』第52集(1967年2月)を改題し,少し手を加えて版を新たにしたものです。
 わたしが初任のときに,同学年の年輩の先生がこの『紀要』の方を持っていて,わたしはそれを全てコピーして読むことができました。そういう意味でも,わたしの教師としての幸運なスタートとだったと思います。授業書《ばねと力》に興味のある人ばかりでなく,「科学的認識論」について興味のある人にも読み応えのある本となっています。

板倉聖宣著『科学と仮説』(季節社,1971)

 わたしの持っている版の箱の裏には,三浦つとむ氏の次のような評が載っています。

板倉さんの提唱し指導している仮説実験授業は科学教育の革命である。どんな革命も原理だけでは成功しない。具体的に仕事をおしすすめ建設していくための,多面的な理論と創造的な能力が要求される。この論文集にはそれが包括的に示されていて,仮説実験授業に直接関心のない人も科学と教育とについて多くを学びとれると思う。

 内容は,
仮説実験授業の提唱と定式化/実験論/仮説実験授業の展開/仮説実験授業の組織論/仮説実験授業の生いたち/仮説実験授業の考え方/評価論/科学教育と読書指導
となっています。

庄司和晃著『仮説実験授業』(国土社,1965)

 450ページにも及ぶ,仮説実験授業を紹介する本です。1963年に提唱されて,まだわずかしか経っていない時期に出版された本らしく,たいへん読み応えのある論文となっています。これを読むと仮説実験授業の目指すものがよく分かるでしょう。
 小学生の実験観・予想観・討論観といったものにも言及されており,科学教育を研究しようとする人は,是非ご一読下さい。仮説社に直接注文すれば,復刻版が手に入れられるはずです。
 仮説社の本書のリンクはここから。

庄司和晃著『仮説実験授業と認識の理論』(季節社,1976)

 本書の推薦文をカバーの裏から引用します。

 庄司さんは子どもの考え方や発想の仕方についてするどい洞察力を持った教師であるのみならず,またすぐれた理論家でもある。仮説実験授業が生まれたとき,その授業運営法をはじめて具体化するのに重要な役割をはたされ,更にその予想・討論・実験などのもつ意味について深い考察をすすめてこられた。こうした仕事のなかから,庄司さんは独自な認識の理論を構築されるに至った。この本には単なる思弁をこえた認識の理論がある。それはいわば,認識論を一つの実験科学としてしてとらえなおそうとする独創的な試みと言えよう。庄司さんの議論の背景には,現場教師としての具体的実践的な裏付けがある。子どもが感動しながらその認識を成長させていく姿を生き生きととらえることが出来たもののもつ強みがある。科学教育だけでなく,科学論・認識論・哲学といったことに関心をもつ人々に,広く本書をすすめたい。(板倉聖宣)

板倉聖宣他著『仮説実験授業の誕生』(仮説社,1989)

 1963年,初めて人びとの前に〈仮説・実験授業〉の名称と,その具体的な成果が公開された。『理科教室』に発表された,〈科学教育の改造〉を宣言した「テキスト・ふりこと振動」。そして翌年,「ばねと力……仮説実験授業のためのテキスト」が完成することによって,授業運営法が確立した。初期のくわしい授業記録「まさつ力」。初めて仮説実験授業の全体像を天望した「主体的人間の形成と仮説実験授業」など,未公開資料も含めて後生に残る,不滅の初期論文を収録。(出版社サイトより)

フツーの先生が書いた仮説実験授業の授業記録・レポートなど

犬塚清和著『教師6年プラス1年』(仮説社,1972)

 「優等生になることを拒否しつつ,自信を持って生きよう」-仮説実験授業を知ってハツラツと歩き始めた青年教師が贈る授業論・教師論。長く仮説実験授業研究会の事務局を引き受け,若い教師からも慕われている犬塚さんの,20代の論文集です。
 「<あれ>も<これ>も<それ>も気になる,なんでも気になる主義は現状はいずりまわりの原因になることに注意せねばならないのである」

小原茂巳著『授業を楽しむ子どもたち-生活指導なんて困っちゃうな』(仮説社,1982)

 サークルに発表してきた資料を元に出来た本です。ツッパリ君たちの活躍する科学の授業。優等生だって負けてはいません。学園ドラマよりずっと楽しく迫力のある授業が,あなたにもできます。授業通信「かわら版」の試みなど,とっても元気づけられます。小学校から中学校に移ったわたしは,この本のお陰で,安心して自信を持って仮説実験授業を続けることができました。

伊藤恵著『メグちゃんは授業をする女の子』(仮説社,1986)

 教育書の常識を塗り替えた本。発売当時は,「教育書コーナー」ではないところに並べられていた,という噂もありました。マンガあり吹き出しありのユニークな授業記録で読者を魅了。しかも,その子どもたちとのやりとりがコードでスゴイのだ~。読み物としてもゼッ~ッタイおすすめの1冊なのです。世の中にはこんな教師もいるのです。だから未来は明るいのだあ~,フッ。

山路敏英著『これがフツーの授業かな-楽しい授業中毒者読本-』(仮説社,1988)

 著者曰わく-「教師になりたてて授業がうまくいかないと思っている人はもちろん,経験は積んだけど試行錯誤ばかりで自分の授業が進歩していないと思える人にも読んでいただきたいのです。とにかく,異常に優れた人でない人に読んでいただきたい本なのです」
 自称・軟弱教師が書いた「肩の張らない教師論」です。この本も,わたしが中学にいた頃の授業に,大変よい影響を与えてくれました。

小原茂巳著『たのしい教師入門-ボクと子どもたちのスバラシサ発見』(仮説社,1994)

 小原さんの論文集の第2弾です。ここに掲載されている文章は,そのほとんどが『たのしい授業』(仮説社)誌上で一度読んだものですが,やっぱりいいです。この本には「子どもとのつきあい」ばかりではなく,家庭訪問や保護者会などの話題にも振れられていて,前著『授業を楽しむ子どもたち』とはまた違った面でとても参考になります。

伊藤恵著『やまねこ文庫3・ちいさな原子論者たち』(仮説社,1998)

 小学1年生たちが繰り広げる「分子運動ごっこ」。ここまで行ってしまうとは…と,はじめて読んだときまたまたビックリしたものです。「小学生に分子原子はわかりっこない」という観念論に浸かっているセンセー方に,実証として,実験結果として,是非読んで下さい。それにしても,原子論を使って新しい問題に挑戦するチビッコたちに,たくさんの楽しさを与えてもらいました。「小学生に原子なんて」とちょっとでも思っている方,是非是非お読み下さい。

犬塚清和著『輝いて!』(仮説社,2003)

 『教師6年プラス1年』の犬塚さんは,2003年3月,退職されました。本書は,その犬塚さんの講演記録や書かれた資料を集めたものです。
「仮説実験授業とかかわってきて一番よかったことはどんなことか」と聞かれたら,わたしは迷わず,「<子どもはすばらしい>ということを発見し続けることができたこと」と答えます。
と犬塚さん。仮説実験授業の思想をしっかり学んだ生き方をすれば,大丈夫だよと呼びかけてくれる本です。

小原成巳著『未来の先生たちへ』(仮説社,2007)

 明星大学の教職課程の「理科教育」で講義をしたときの内容をまとめたもの。
 大学の講義っていうと,「全く興味のないもの」というイメージが強い。小原さんの所に来る学生も最初は同じである。ぺちゃくちゃしゃべっていたり,やる気がなかったりする子もいる。しかし,小原さんが講義を進めるごとに,講義の「視聴率」はあがってくる。そして,「私は本当に教員になりたくなってきた」というのである。いったいこれはどうしたことか。
 仮説実験授業から学んだ,教師論,授業論をもとに講義を進めることで,何が学生たちを引きつけるのか?
 それは,学生たちが今までもっていた「教育界の常識」と,「仮説実験授業を体験しながら納得していく内容」とが,あまりに違うことに目が開かれるからだ。
 最後の講義の時間に,思わず会場から起きる拍手。
▼授業中,みんながすすんで手を挙げる授業は他にないです。しかも,講義の最後に拍手が起こる授業なてのも他にはまったくないです!! これが先生の授業への私たちの評価のすべてを表していると思います。(195p)
 学生たちが書いてくれた最後の感想文を読むと,その講義の内容の素晴らしさがわかるだろう。こんな授業を学生時代に受けられた学生は幸せだなあ。

山路敏英著『理科教育法入門 科学のたのしさ伝えたい』(仮説社,2016)

 親の仕事を受け継がず,公立中学校で理科を担当して,今(2016年現在)は明星大学で教員希望の学生を教えている著者が,その学生達にどんなことを語っているのかが書かれています。
 教育界の常識(実験的に明らかにされたわけではないようなものが実に多い)に対して,居丈高に反論するのではなく,現場にいたときの子どもの授業の様子や感想を紹介しながら,しっとりと「こうじゃないかな」「こっちの方の考え方が,子どもの認識に合っているのじゃないかな」と語りかけてくれます。これぞ,生きて働く〈教育原理〉を教えていただいた感じがします。
 「日本の科学教育の歴史から学ぶ」は,なかなか骨のある論文ですが,こちらも,とても読みやすくなっており,まさに,理科教育法にピッタリです。これを知っているのと知らないのとでは,現在の理科教育・科学教育への取り組み方が変わります。私たちは,雑多な知識を教えて満足していてはいけない。
 これからのアクティブ・ラーニングとやらは,科学の基礎・基本を扱う授業でこそ,その有効性が出てくるんだと思います。
 仮説実験授業から学ぶことが如何に多いかの証明でもあります。

高野圭著『たのしく教師デビュー:通信教育で教員免許を取得し営業マンから高校教師になったボクの話』(仮説社,2018)

 一度は一般の会社に働いた高野さんが,明星大学の通信で教員免許状を取得し,高校に勤め,そして3年が経った…そんなころの事が綴られている本です。
 高野さんは,明星大学で仮説実験授業とその考え方に出会います。そして,採用された現場でも,子どもたちと仮説実験授業をしたり,生徒指導でも,その考え方で接したりしていく中で,「先生の授業は楽しい」「先生のこと好き」「だいきらいな物理も楽しくなってきた」などと言ってもらえるようになるのです。
 ベテランの教師でなくても,子どもたちに歓迎される授業はできる。しかも高校でも可能である。そんなことを示してくれる内容です。

仮説実験授業の研究誌

仮説実験授業研究会編集『科学教育研究・全12集』(国土社,1970~1973)

仮説実験授業研究会編集『仮説実験授業研究・全12集』(仮説社,1974~1977)

仮説実験授業研究会編集『授業科学研究・全12集』(仮説社,1979~1982)

 以上は,わたしが教師になる前に発刊されていた仮説実験授業の『研究誌』です。授業書の全文や授業記録,その他の論文などがたくさん掲載されています。しかし,これらの本は,今では絶版になった巻もあり,簡単には手に入りません。しかし,これらの『研究誌』に掲載された「授業書」「授業記録」や「論文」は,後掲の『授業書研究双書』などの単行本になっています。

『科学入門教育・全12集』(仮説社,1983~1987)

 このシリーズは「仮説実験授業研究会編集」とはなっていませんが,それは,研究会のメンバーが個人的な思いで出版を始めたからです。それで製本もタイプ印刷となっています。しかし,内容は「新しい授業書の発表」「授業記録」「板倉論文」など,十分『研究誌』となっています。

板倉聖宣著『仮説実験授業の研究論と組織論』(仮説社,1988)

この論文集は,上掲の仮説実験授業研究会の研究誌である『科学教育研究』『仮説実験授業研究』『授業科学研究』(いずれも全12巻)に板倉さんが書かれた論文を集めたものです。下に紹介した『授業書研究双書』の別巻の性格を持つもの(板倉氏の言葉)と考えて下さい。

仮説実験授業研究会編集『仮説実験授業研究 第3期』(仮説社,1989~現在も刊行中,2022年で第11集)

 現在,刊行中の仮説実験授業研究会の『研究誌』です。もっとも新しい《授業書》が掲載されています。
 仮説実験授業研究会では〈授業書案〉といったものはたくさんありますが,複数の授業にかけられ,ある程度の成功をおさめることができるとと分かった《授業書》は,『研究誌』上に発表されたり,『たのしい授業』に掲載されたり,ある時には単行本の形をとって提出されたりします。もし,いろいろな授業書案を知りたかったら,研究会に加入するのがいちばんです。
 たとえば,第3巻の内容は下記のようなものです(以下の解説は仮説社のHPより)

 第3集の中心は,授業書《程度のもんだい》とその解説および授業記録です。副題に「磁石と電気の問題」とあるように,自然科学的な問題が取り上げられていますが,この授業書は道徳や社会科や生活指導などでの「程度の問題」と無縁ではありません。ですから,自然科学の教育関係者以外の人びとにも読んでいただけると嬉しいと思っています。
 その他,松野修さんの「〈社会の科学〉教育の可能性」という論文と,18世紀イギリスの科学啓蒙家「ファーガソン自伝」があります。こちらのほうを先に読んでいただくのもいいと思います。
★★ もくじ ★★
・ 科学の巡回講師となった人の物語
 世界の科学教育を開いた人びと・1
 J・ファーガソン(1710~76)の自伝
・すべての物は磁石に感じるのか?
 新実験……小さな力はどの程度測れるのか?
・〈社会の科学〉教育の可能性
・授業書使用状況調査 何年でどんな授業書が教えられているか
・授業書《程度の問題》
 本文と解説
 授業記録(小学校4年)
 授業記録(高校1年)

『仮説実験授業研究 第3期』に掲載された《授業書》

第1巻…授業書《生物と細胞》と解説  第2巻…授業書《自由電子が見えたなら》と解説  第3巻…授業書《程度のもんだい》と解説  第4巻…授業書《世界史入門》構想と授業書案  第5巻…授業書《電流》と解説  第6巻…授業書《生物と種》と解説 種概念の教育史  第7巻…授業書《偏光板の世界》と解説  第8巻…授業書《図形と証明》と解説  第9巻…授業書《落下運動の世界》と解説  第10巻…授業書《はじめての世界史》と解説  第11巻…授業書《1と0》と解説 

授業書研究双書 -仮説実験授業研究会・板倉聖宣編-

■ 『授業書研究双書 光と虫めがね』(仮説社,1988)
■ 『授業書研究双書 ものとその電気』(仮説社,1989)
■ 『授業書研究双書 磁石・ふしぎな石=じしゃく』(仮説社,1989)
■ 『授業書研究双書 電池と回路』(国土社,1988)
■ 『授業書研究双書 てこ・滑車・仕事量』(国土社,1988)
■ 『授業書研究双書 動植物の分類と進化・たべものとうんこ』(国土社,1988)
■ 『授業書研究双書 浮力と密度・重さと力』(国土社,1988)
■ 『授業書研究双書 力と運動・速さと距離と時間』(国土社,1988)
■ 『授業書研究双書 いろいろな気体・燃焼』(国土社,1989)

 以上の『授業書研究双書』は,いずれも,上記の仮説実験授業研究会編集による
・『科学教育研究・全12集』(国土社,1970~1973)
・『仮説実験授業研究・全12集』(仮説社,1974~1977)
・『授業科学研究・全12集』(仮説社,1979~1982)
から,授業書別に「授業書全文」と「授業記録」,それにその授業書に関する「論文」を集めたものです。既に<新しい版>がでている《授業書》もありますが,「その授業書が作られた当時の新鮮な問題意識」のような内容も知ることができて,大変刺激的な本です。

仮説実験授業記録集成

■ 板倉聖宣・細川準三著『溶解』(国土社,1970)
■ 板倉聖宣・西谷亀之・犬塚清和著『結晶』(国土社,1971)
■ 板倉聖宣 ・犬塚清和 ・小野田三男著『電流と磁石』(国土社,1972)
■ 板倉聖宣・渡辺慶二著『ものとその重さ』(国土社,1974)
■ 西川浩司 ・吉村七郎 ・板倉聖宣著『三態変化』(国土社,1977)

 それぞれの授業書の「ねらいと構成」「授業記録と解説」「テスト問題」「子どもたちの評価」などが載っています。これらには巻末に「授業書全文」が載っているものもありますが,もし,授業をなさる場合は,仮説社に連絡して新しい版の授業書を手に入れられることをお薦めします。

単行本で読める《授業書》&〈ミニ授業書〉

単行本で読める《授業書》

板倉聖宣著『日本歴史入門』(仮説社,1981)

「歴史的な考え方」はどのようにしたら身につくものなのか。本書は全く新しい観点(米と人口)から日本の歴史を取り上げ,江戸時代に重点を置いて,時代区分の意味と歴史を動かす法則性を明らかにします。「江戸時代の主に農民は何を食べていたのか」という問題を科学的な考え方で切るとどうなるか。始めてこの本を読んだとき,ボクの歴史を見る眼が大きく変わりました。同じ著者の『歴史の見方考え方』(仮説社,1986)も一緒にお読み下さい。

板倉聖宣著『お金と社会-政府と民衆の歴史-』(仮説社,1982)

 古いお金を集めたことがあります。切手なんかもよく集めました。この本は,そういう古いお金のお話です。著者のあとがきを引用します。「この本にとりあげたような問題について正しく考えられるようになることは,「日本歴史について一つよけいに物知りになる」ということにとどまらず,今の世の中を動かしている経済とか政治の法則について深く理解する上で有力な手がかりになると思うのです。」

板倉聖宣著『禁酒法と民主主義-道徳と政治と社会-』(仮説社,1983)

 善意や正義だけで世の中をよくすることができるでしょうか。この授業書は「禁酒法」の成立・廃止の流れを通して道徳と社会と歴史の問題を考えることを目的としています。後掲の『生類憐みの令』と共に,読んでみて下さい。

板倉聖宣著『生類憐みの令-道徳と政治-』(仮説社,1992)

将軍綱吉が出したあの有名な『生類憐みの令』の内容を,楽しく予想を立てながら考えていくことで,「道徳と政治」の問題と社会の法則が見えてきます。わたしのお気に入りの授業書の一つです。小学校でも十分授業ができます。

板倉聖宣・重弘忠晴著『日本の戦争の歴史-明治以後の日本と戦争-』(仮説社,1989)

 明治以後の日本が関わってきた戦争についてその「事実」だけを取り上げたB6版117ぺの小冊子です。
 2000年代に入って,「自由主義史観」だとか「自虐史観」だとかいう言葉が流行って,歴史教育においてはイデオロギーの対立に巻き込まれているようです。こんな時こそ冷静に,「戦争の事実」だけを考えてみることも必要でしょう。「あのときは仕方なかった」とか「日本が先に攻めたからイカン」とかいうのは,横に置いて置いてね。

板倉聖宣著『世界の国旗』(仮説社,1990)

これだけすっきり世界の国旗についてまとめてある本も少ないでしょう。わたしはこの本の簡約版(問題に印が付いている)で,中学生と小学生を対象に授業をして,そのいずれの場合にも喜ばれました。子どもたちは世界の国のこととか,国旗のことに大変興味を持っていますからね。
 初版が出たときにはソ連邦がありましたが,いまじゃロシアですからね。改訂版も出ていますので,必ず最新版をご利用ください。
 特に,オリンピックの開催前には必ずやってきました。子どもたちに大人気の《授業書》です。
 本授業書をやったあとで,その内容を利用して中学校文化祭の学級展示をしたときのレポートをまとめてありますので興味のある方はこちらからどうぞ。

板倉聖宣著『世界の国ぐに-いろいろな世界地図-』(仮説社,1992)

 この授業書は,第1部が「いろいろな世界地図」第2部から第4部が「世界の国ぐに(3部作)」となっています。
 「いろいろな世界地図」の方は入門的なので,小学校の5,6年生で取り上げるといいでしょう。「世界の国ぐに」の方は「大きな国と小さな国」「連邦国家」「世界の国々で使っている言語と国名」という内容で,200近くある国々のことが,見渡せるようになります。『世界の国旗』同様,国の名前も変わるので,小改訂版がでています。

新居信正著『つるかめ算-楽しい文章題への道-』(仮説社,1983)

 著者,「あとがき」で曰わく-「今,私は数学教育協議会と仮説実験授業学派の理論と成果に学びながら,「つるかめ算」を素材にして,最高級難度「文章題」を解く論理と方法を,授業書という形にまとめて一歩ふみ出したのでした。いささかの興奮と充実感をおぼえます。そして明日を生きる勇気の源流が,ふつふつと湧いてくるのです」
 著者の,数学教育と仮説実験授業の研究からできあがったこの授業書は,小学生にも,楽しんで「連立方程式を解く楽しみ」を与えてくれました。第6章の「授業運営法に関する覚え書き」も,じっくりと味わうべし。
 古本屋から手に入れてね~。この本を元にした別刷りの授業書(荒井公毅再編集)もあります。

新居信正著『小数の乗法と除法』(国土社,1982)

 現行の指導要領(2010年現在)では小学校5年生に習う「小数のかけ算・わり算」。その指導方法を《授業書》という形でまとめ上げたのが本書です。文章-図式-数式の関係を大切にした内容となっています。わたしは5年生と担当するたびに授業にかけていますが,いつもわかりやすく楽しいと好評です。
 これも別刷りの授業書荒井公毅再編集があります。

出口陽正著『実験できる算数・数学』(仮説社,1997)

 精力的に「算数・数学」の授業書づくりに取り組んできた出口氏の成果がまとまりました。この本には授業書《2倍3倍の世界》を始め,〈電卓で遊ぼう〉〈コインと統計〉というミニ授業書も収録されています。特に《2倍3倍の世界》は,予想を実験で確かめるという仮説実験授業の手法が見事に取り入れられており,楽しく授業をすることができます。小学校高学年から大人まで楽しめます。

宮地祐司著『生物と細胞』(仮説社,1999)

 授業書《生物と細胞》の授業書全文と解説,そしてこの授業書ができあがるまでの研究物語です。大変読み応えのある本となっています。板倉科学認識論にそって研究した成果の一つです。
 この授業書については,わたしも〈案〉からのおつきあいでして,授業記録をとっては宮地さんに送っていました。だから,こうして研究成果がまとめられて1册の本になるのは,とてもうれしいです。
 授業書は『仮説実験授業研究第1集』に載っているものよりも図や写真も豊富になり,字も大きく見やすくなりました。小学校中学年から大人まで楽しめます。

井藤伸比古著『となりの国の文字-ハングルを読もう』(仮説社,2003)

 朝鮮=韓国は日本に一番近い国です。そこで使われている文字・ハングルについて,義務教育段階でもそれ以上での教育現場でも習うことはありません。しかし,500年ほど前にセジョンという国王が研究して作ったというこの文字を楽しく勉強する本ができました。小学生でも,自分の名前をハングルで書いたり,町の看板が読めるようになります。ハングルと仲良くなることで,お隣の国が今までよりもずっと身近になることでしょう。

板倉・吉村・中著『タネと発芽』(仮説社,2005)

 発芽用に売られているのではない「ハトのえさ」(ホームセンター等で普通に売っています。しかも安い!)を使って,タネを分類し,発芽の不思議さ・おもしろさに気づき,生物の力強さ・不思議さが感動的に伝わる授業書です。小学校でも5時間程度で実施できます。理科ばかりではなく,総合的な学習や社会科などの授業にも最適です。

単行本で読める〈ミニ授業書〉

■ 板倉聖宣著『電池であそぼう』(仮説社,1977)
■ 板倉聖宣・吉村七郎他著『ゼネコンで遊ぼう-発電器と電気エネルギー』(仮説社,1987)
■ 板倉聖宣著『日本の都道府県』(仮説社,1987)
■ 板倉聖宣著『焼肉と唐辛子-朝鮮=韓国人とその歴史』(仮説社,1988)
■ 板倉聖宣・重弘忠晴共著『靖国神社-そこに祀られている人びと』(仮説社,2002)
■ 板倉聖宣著『虹は七色か六色か-真理と教育の問題を考える』(仮説社,2003)
■ 板倉聖宣著『えぞ地の和人とアイヌ人-二つの民族の出会い』(仮説社,2004)
■ 板倉聖宣著『磁石につくコイン つかないコイン』(仮説社,2005)

 以上は,A6版の小さな小さな冊子です。形もミニですが,名付けられた名前も「ミニ授業書」と言います。みんな知っている必要は無いけど,知っているといろいろと世の中が見えてくる楽しい話題を紹介しています。

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