2009年秋,能登半島和倉温泉で「能登仮説実験授業入門講座」を開催しました。
09年夏に2010年度の全国合宿研究会が能登で開かれることになったことをきっかけとして,能登や石川県,そして北陸にも「仮説実験授業」や「たのしい授業」が広がっていけばいいなと思っています。そこで,仮説実験授業の入門者を対象として,今回の講座を開きました。
こういう講座に始めてくる人もいれば,授業書を初めて受ける人もいます。まだ子どもたちと仮説実験授業をやったこともない人もいます。
そういう人たちに,斎藤裕子さんをはじめとする仮説の実践者が,たのしく講座を進めて下さいました。
さっそく《授業書》をやってみたいと思っている,というお話も聞こえてきました。
たのしい授業の輪がもっともっと広がればいいですね。
1日目
【講演Ⅰ】 仮説実験授業と子どもたち 斉藤裕子
いきなりコップの中にビー玉を入れ出す裕子さん。
1つ,2つと入れていくと,あれ不思議,3つ目からは見えなくなるではありませんか。4つ入れたところで,今度は取り出します。1つ,2つと取りだして…もう見えないのになぜか3つ,4つと取り出せます。それどころか,5つ,6つ,7つ,8つ…と,透明な水の中からビー玉がドンドン出てくるのです。????でいっぱいの参加者。見事に参加者の心をつかみました。
こういう学級開きを体験した子どもたちは,初日から,学校にあったことを話すに違いありません。
このあとは,まさに斉藤ワールド。
いわゆる「手のかかる子たち」が,仮説実験授業を進めていくうちにどんな風に変わってきて,それをみた学級集団がどんな風に変化したのか。実際の授業記録(授業書≪花と実≫)を紹介しながら,一人一人の個性にもふれることの出来る講演でした。
こんなにも,一人一人の子どもたちのことをしっかり見ることができるのは,授業書という信頼のおける授業プランがあるからです。教師は,授業書に沿って行い,余裕の出た分を,じっくり子どもたちの意見に耳を傾けていけるのでしょうね。
【講座Ⅰ】 授業書体験講座
【講座ⅠA】 授業書体験講座《ものとその重さ》 野村泰裕
参加者は二つに分かれて講座の体験をしてもらいました。
野村さんには,主に小学校中学年からよく授業にかけられている≪ものとその重さ≫という授業書をやっていただきました。この授業書は,仮説実験授業の初期からある授業書です。授業書とその解説は,板倉聖宣著『未来の科学教育』(国土社,1966年)でくわしく読むことが出来ます。もう出版から40年以上たっているのに,未だに「未来の科学教育」のままなのは,教育界が進歩しないからでしょう。
《ものとその重さ》の講座には,主に初めて仮説実験授業の授業書を体験するという人達が集まったようです。
仮説実験授業の実際を体験しながら,仮説実験授業の進め方やコツを学んでもらいました。
分かっているつもりだったけど,改めて聞かれると「うん?」って思ったというような感想もありました。
【講座ⅠB】 授業書体験講座《燃焼》 貝田 明
授業書≪燃焼≫には,なかなか派手な実験があり,高学年から中学校で人気の授業書です。「物が燃えるとどうなるのか」ということがよく分かるようになります。
教科書的には,まず最初にロウソクを燃やしたり炭を燃やしたり…なのでしょうが,仮説実験授業では「金属の燃焼」から入ります。
授業を進めるうちに,原子が目に見えるようになってきます。
この授業書の実験はとてもおもしろいのですが,理科の専門ではないと,ゴム栓とガラス管の準備や実験上のコツなど,一人で勉強しただけではちょっとこわくてできないような部分もあります(勇気があればできますが…)。そこで,実験に熟練している貝田さんに講座をお願いしました。
講座には,仮説の経験者が多かったのですが,大変参考になる講座となりました。
水素の燃焼もやっていただきました。みんな怖がっていましたが,ちゃんと「もしものこと」を考えて安全の準備もした上での実験でした。
でも自信のない人はしないでね。
休憩時間の様子
売り場
講座の参加者は休憩時間に何をしていると思いますか?
ボッ~としている?
それともやっぱり,学ぼうとしている?
仮説実験授業関係の講座では,必ずと言っていいほど「売り場」があります。
今回も,「仮説社」と「ガリ本図書館」と「斉藤さん」の売り場がありました。
そこには,授業書に関係する本や自家製本,実験道具(自分で作るのが面倒な人のため)や子どもに喜ばれるおもちゃなどが所狭しと販売されています。
大きな会になればなるほど,お店も賑やかになります。全国大会では,これを目当てに参加する人もいるくらいですよ。
■ゴン太
右の写真は,休憩時間を利用してカードゲーム「ゴン太」で遊んでいる様子です。
売り場にあったひらがなのカードゲーム「ゴン太」。使い方がよく分からないという声に応えて,一緒にやってみました。
売り場のものがなんなのか分からなかったら担当の人に聞けば,こうやっていろいろと教えて貰えるから便利です。
「ゴン太」以外にも,
・分子ガード「モルQ」
・分子カルタ
・世界の国旗カード「フラッグス」
など,授業書が終わった後にできるカードゲームが考案されています。どれも子どもたちには大受けです。楽しんで復習してしまいます。
【講演Ⅱ】ゆりこさんのおやつだホイ! 島百合子
お隣の富山県で仮説実験授業を実践してきている島百合子さんに,「食べものづくりと子どもたち」という内容で講演をしていただきました。島さんは,仮説実験授業研究会の中でも「食べものづくりの島さん」として知られています。
身近にある材料で,しかもあまり手をかけずに,子どもでも失敗せず,簡単に作れるお菓子や料理のレシピの開発をしています。
編集子も,以前,小学校で「料理クラブ」を主宰し,毎時間,『ゆりこさんのおやつだホイ!』を片手にお菓子作りをしてきました。全員が男子という料理クラブは,なかなか人気でした(このときは,ずいぶん多くの男の子が『ゆりこさんのおやつだホイ』を購入したっけ…。
さて,今回の講座でも,食べものづくりと子どもたちの話から,実際の食べものづくりまでお話をしてもらいました。
まずはマネでいい。そのマネをしている中からオリジナルな物が生まれてくるのだ,というお話。
「お菓子でアート」を体験しながら,ドンドンオリジナルな作品が出てくる様子を見て「マネこそ模倣の第一歩」ということを身をもって体験しました。
【ナイター】いろんな話 話したい人
夕食後は,話したい人が集まって,ナイターを開催しました。このナイターというのも仮説実験授業研究会の講座ではよく設定されています。講師を囲んで,いろんな質問をしたり,レポートの交流をしたりします。
今回は,金沢高校の四ヶ浦さんの「酸・アルカリのたのしい実験とお話」から始まって,現役大学院生の斉藤萌木さんのレポート発表(「まだまだ院生日記 その③」)や,来年度の全国大会に向けての話が出ました。
2日目
【講座Ⅱ】授業書体験《自由電子が見えたなら》 斉藤裕子
斉藤さんから授業書《自由電子が見えたなら》の第1部と第2部を実際に受けながら,仮説実験授業の授業運営法について学びました。
本授業書をよく知っているはずの参加者からも,イメージを膨らませるための数々の教材や準備にため息この声が…。
それは何が特別なことをしているのではなく,すぐにでもマネの出来ることなのですが,「子どものイメージを広げる」という意識を持っていないとなかなか思いつかない準備だったりするのです。
まずは希望者に豆電球テスターを貸し出します。教師実験もするけれども自分でもしてみたいだろうという講師の予想で準備されたものです。教室では子どもたちのために,講座では参加者のためにいろいろと準備しているのです。
しかも,このテスターも欲しい方には実費で分けてくれます。まさに,明日学校に帰ったらすぐにでもこの授業が出来る-という姿勢で講座を進めていくのです。
掲示物も各種用意されていました。
たとえば10円玉なら,実物の10円玉をを貼った物や,10円玉の絵を描いた物などです。
これらはそれぞれ一長一短があります。
例えば,実物を貼っておくと,その場でそれを使ってすぐに実験でききますが,10円玉自体が小さいので,「こんな風に電極を付けるよ」といっても遠くからは見えなかったりします。しかも実物10円玉の場合は,説明する時に本当に電極を付けると実験しちゃうことになりますから,それはできません。掲示物を1つ取っても考えなければならないことがいっぱいありそうです。
「電気を通す物コレクション」というものも初めてみました。
授業を進めながら,「電気を通す物」をCDケースの台紙に順番に貼っていくのです。これは復習にもなるし,少しずつ増えていくのがなんとも言えずうれしい気持ちになります。最後には,授業後に部屋に飾っておけるのでとってもいいアイディアです。今まで何回もこの授業をしてきた編集子ですが,金属を配ったことはあってもこうしてまとめて貼ってあげようなんて考えたこともありませんでした。
ほかにもいろんなグッズが出てきて,目からウロコの講座となりました。子どもたちのイメージを豊かにし,広げるために,もっともっと授業書を読んで自分自身がイメージ豊かにならないとなと思いました。
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