キミ子方式講座

たのしい授業体験講座

 2009年9月,久しぶりに松本キミ子さんを石川県に迎え,「キミ子方式講座」が開かれました。主催は小松楽しい授業研究会の貝田さんです。
 私も自分でキミ子方式で絵をかいてから,少しずつ絵に自信が出てきた人間です。
 私は魅力的なキミ子さんの話も大好きです。
 そんな講座の様子を紹介します。

=追悼=
 松本キミ子さんは,2022年2月23日,お亡くなりになりました。享年81歳でした。
 ご本人から何度も指導を受け,わたしも,わたしの教え子たちも絵を描くのが好きになりました。『絵のかけない子は私の教師』という著書とこの言葉(○○できない子は私の教師)は,わたしの教師としての座右の銘でもありました。
 謹んでご冥福をお祈りいたします。

松本キミ子2003年の肖像(Wikipedia)

講演「キミ子方式入門」  松本キミ子

 今回のキミ子さん。
 玄関でお会いするなり,左腕をつっていることにビックリ。「骨折したの…」とのこと。
 講演の内容もまずは,「なぜ骨折したのか」「そのときどう対処したのか」「医者とはどうやってつきあっているのか」などの近況から話が始まりました。
 その話もまさにキミ子さんの人柄が表れていて,たっぷり笑わせてもらいました。
 今までの絵の授業は,
・よく考えて
・よく見て
・がんばって
と教師から発破をかけられていました。
 しかし,この言葉から脱却しようとしたのが「キミ子」方式なのです。
 自分で色づくりをしていると,自然と「ものをよく見る」ようになります。輪郭線(下書き)を書かないで描くので,その緊張感から「ものをよく見る」ようになります。
 そして,描きはじめを決めて,となりとなりと描いていくので,画用紙全体を見ての構図なんてものも考えなくていいのです。
 部分が集まり,少しずつ作品ができあがっていくので,キミ子方式で絵を描きはじめると,決まって大変疲れるまでがんばってしまいます。途中でやめてもいいようになっているのに…です。
 キミ子さんのお話って,とっても人間美(味?)にあふれているので,絵を描かなくても満足できるんです。私は。

 ここからは,参加者は二つに分かれて講座を進めます。まずは初級者コースの紹介です。

キミ子方式で絵を描く(初級編)

<色づくり>
 三原色と白でたくさんの色を作ります。おもった以上に色ができてみんな満足そう。
 できた作品は手でちぎってサインをし,色画用紙(台紙)に貼れば立派な作品のできあがり。

 
  

<もやし>
 「今日はこれを描いてもらいます。」といって「もやし」を出すと,子どもたちから「ええ~もやしを描くの?」とビックリされます。今回の参加者にとっても,同じだったはず。
 でも,細筆を持って,三原色(と白)でもやしの色を作りだすと,40人以上の教室はシーンと静まりかえります。
 できたもやしは本物そっくり。満足感もひとしおです。

<イカ>
 二日目の最初の題材は,なんと「イカ」。本物のイカが何匹も床に並びます。
 実物のイカを見て描いたことのある人なんていないでしょう。
 しかも,今度は,画用紙も床に置き,太筆のみを使ってビチャビチャに描いていくのです。当然ながら途中で画用紙が足りなくなる人も…それもまたイカを描く愉しさです。珠洲たののメンバーYさんは,なんと画用紙9枚分にもなる大イカを描ききりました。
 できたイカを全部並べて床に泳がすと,たちまち水族館のできあがりです。

<毛糸の帽子>
 初級の最後の題材は,毛糸で編まれた手製の帽子。
 毛糸の帽子は,中筆で描きます。
 まるで帽子を編んでいくように,点々(ハハハハまたは×××)などと描いていくのです。するとあら不思議。とても柔らかな毛糸の帽子ができあがります。
 以上,色づくりからの三点セットをマスターすれば,キミ子方式に入門したことになります。あとは,モデルを変えてこの繰り返しです。  

キミ子方式で絵を描く(中,上級編)

 私は一応キミ子方式経験者なので,中級に所属しました。
 キミ子方式は,ある程度法則が分かってしまえば,描き方の本を見ながら描くことができます。それで,今回は,ほとんど自分たちで描いていきました。

<果物(リンゴ・ブドウ)>
 丸い形のものを描きます。
 まずは,ブドウから。ブドウは,おいしそうな一粒を選んで中心から描き始めます。疲れるまでやって嫌になったら,やめればいいのです。
 リンゴは,ちょっと上級です。でも,となりとなりと進めていくと,ちゃんとリンゴの形になっていきました。キミ子さんに影の見方・描き方も教えてもらいました。
 パイナップルに挑戦した主催者の貝田さんと富山のSさんは,2日かかって素晴らしい作品を仕上げていました。

<カット絵>
 キミ子方式では,ペンで描く「カット絵」の描き方も紹介されています。
 0.1ミリのドローペンとスケッチブックを持てば,絵描きになった気分です。
 まずは,野の草花の代表,タンポポの葉を描いてみました。
 他には,アメリカセンダングサ,絵の具,チョコ,会場の受付にあったホオズキ。流しに置いてあったタワシなど,思い思いのものを描きました。
 ここでもパイナップルに挑戦している人もいました。すごい!

<ザリガニ>
 中・上級の最後の題材は,ザリガニ。もちろん,生きたザリガニを描きます。
 ザリガニは,イカと同じように太筆で描きます。だから当然,大きく堂々とした絵ができあがるはずなのです。
 しかし…先ほど3時間近く「カット絵」で精密な絵を描いてきた参加者(私も含む)は,どうしてもザリガニを大きく描くことはできません。なんとしても一枚の絵に収めたくなるのです。本物の大きさに描こうとするのです。
 そんなわけでできあがった作品は,子どもとは比べものにならないくらい小さな絵となりました。
 そんな中,私は一番大きく描くことができました。
 写真を撮らなかったので,私の絵だけ載せておきます。

キミ子さんと語る会?

 初級も中・上級もだいたい終わり,講座の終了時間まで少し時間があったので,描いた絵を見ながら,今回の講座について感想を出し合いました。とってもほのぼのとしていい雰囲気で語り合いました。
 初めてキミ子方式で描いた人には「もやし・イカ・毛糸の帽子のどれが好きでしたか?」と聞いていきました。
 人それぞれ,好きな題材があることが分かりました。描き方は同じだけど,できた作品にはしっかり個性があります。そして,描いているときの気分も人それぞれなんです。
 私はイカを描く子どもを見るのがとても好きです。まさに「自由になるために絵を描く」というキミ子方式にピッタリな気がするからです。「他人が用意した画用紙などという型に嵌められてたまるか!」という子どもの姿に感動するのです。

会場スナップ写真

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