SP盤とLP盤

レポート綴

尾形正宏
1998.10.13

 蓄音機に興味を持って,少しだけ調べたのは別(『蓄音機に魅せられて』)に報告しました。
 ここでは,蓄音機を動かそうとする過程で生じた疑問について考えてみました。質問を用意しましたので,答えを見る前に自分で予想を立ててからスクロールして(下を見て)下さい。

 ボクが放送室で蓄音機を発見したとき,まず,その部屋にあった「LP盤」をターンテーブルに乗せ,針を降ろしてみました。ところが,その針のアームが重くて,すぐに回転が止まってしまいました。しかも横すべりしてしまいます。最初は,「LP盤」だからだめなのかなあと,SP盤を探していました。家に帰って,親父(大正9年生まれ)に聞いたところ「昔は,おれもいっぱい持っていたけど,捨ててしまった」とのこと。これじゃあ,「何が原因で蓄音機がまわらないのか」が分からないままです。
でも,その後,手に入ったSP盤では,見事な音が出ました。
 SP盤ではうまく動いてくれた蓄音機なのに,LP盤ではすぐに止まってしまいました。いやでもSP盤とLP盤との違いが気になります。どこが違うのでしょうか。一緒に考えてみましょう。

【質問1】
 SP盤とLP盤は,略語です。では,元は何というのでしょうか。
 
 この答えは,簡単そうですが…。
 「LP」が「ロングプレイ」だとすると,「SP」は「ショートプレイ」でいいようなきもします。実際,8ミリビデオデッキを見ると,通常の録音が「SP」で,長時間録音が「LP」と出ています。しかし,言葉にすれば「LPがあってのSP」です。レコードが出てきた最初から「ショートプレイ」というのもなんだか変です。「長いもの」があってはじめて「短い」といいたくなるからです。
 すると,もともとは「SP」という言い方さえもなかったのかも知れません。「LP」が現れて,それと区別するために今までのものを「SP」と呼ぶことにしたのでしょうか?
 いろいろなことを考えながら『現代略語辞典』というようなものにあたってみましたが,SPなどという言葉はすでに<現代>ではないようで出ていません(^^;)。
 で,苦しいときの百科事典。今じゃあCD-ROMです。机に向かったままで調べることが出来ます。さすがにちゃんと出ていました。
・SPレコード…Standard Playing Record
・LPレコード…Long Playing Record
 なるほど,SPのSは「ショート」ではなく「スタンダード」だったのですね。でも,もしかしたら,この言葉も「LP」が出てきてから呼ばれ出したのかも知れないなあ…。このなぞは未だに解けていません。

【質問2】SP盤とLP盤の重さはどれくらい違うと思いますか?
   ア.ほとんど同じ
   イ.1.2倍ほど違う
   ウ.1.5倍ほど違う
   エ.2倍ほど違う
   オ.もっと違う
 
 SP盤には直径30センチ25センチのものがあったらしいですが,ボクの手元にあるのは25センチ盤なのでそれで比べてみます。1枚1枚,差があるんですが,SP盤は,だいたい1枚あたり160g~200gくらいです。一方LP盤はほとんどが30センチ盤なのですが,学校に25センチ盤があったのでそれをはかってみました。すると。1枚が85g~90gしかありませんでした。つまり,SP盤はLP盤の約2倍もの重さがあるということです。ちなみにCD(直径12センチ)1枚が約15gです(厚さは同じにして25センチに換算すると約60gになる。厚さが2倍なら約120g)。軽くて長時間録音できるとなると,SPはLPにかないませんな。

【質問3】蓄音機の針をレコードに乗せたとき,LP盤は動きませんでした。SP盤はスムーズに動きます。これは,レコードの溝に違いがあるからだと想像できます。それでは,30倍のライトスコープでレコード盤の溝を覗いてみたら,その違いがはっきり分かるでしょうか?
   ア.SP盤の方の目が明らかに多い(目が細かい)。
   イ.LP盤の方の目が明らかに多い
   ウ.違いははっきり分からない。

余計なヒント:LP盤は1分間に約33回転します。SP盤の方は1分間に約78回転です。

実験:30倍のライトスコープでレコードの溝を覗いてみましょう。割れたレコード盤があったら,その断面も見てみると良いでしょう。
 以下の写真は,ライトスコープの映像をデジカメで撮影したものです(当時のデジカメはこの程度の解像度です)。上から順に,SP盤・LP盤の溝です。

 平凡社の『世界大百科事典』によると,
SP盤…音溝は1cmあたり約30~50本,水平振動式である。使用する針の先端の半径は約0.075mmで,針の材料としては,竹,鋼鉄のものがあり,1枚のレコードを再生するごとに交換していた。レコードの材料はシェラックであり,独特のスクラッチノイズがあった。1963年以後は製造されていない。
LP盤…音溝は,1cmあたり約200本,音溝の幅は約0.05mmである。音の記録は,ものの場合は水平振動式,ステレオの場合は45‐45方式が用いられている。レコードの針先はダイヤモンド(またはサファイア)で作られ,先端の半径は約0.013mmである。レコードの材質はビニルである。

SP盤の音溝(30倍)
LP盤の音溝(30倍)

という説明があります。やはり,SP盤の方がLP盤よりも溝の間隔が広いのです。しかも使っている針の先端も約6倍ほども違いいます。これじゃあ,SP盤の針でLP盤をかけようと思っても無理だと言うことです。LP盤とSP盤の違いは単に回転数の違いだけでなかったのです。ですから,そのレコード盤にあったレコード針やプレーヤーを用意しなければならなかったということです。LPからのCDのときほどではありませんが,SPからLPのときも大きな変化だったことが分かります。

 蓄音機を追ってたときは,SP盤のソフトそのものにはそんなに興味はありませんでしたが,いろいろと調べているうちに,三~五昔前のソフトが欲しくなってきました。SP盤を聞くときには,今の蓄音機がいつまでも健在でいてもらわなければならないし,針だって(レコード盤を痛めないためには)一回ごとに交換しなければなりません。余り凝り出すと,余計なお金を使ってしまいそうなので,ここらで我慢します。

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