本文は,1995年10月5日に開催された「珠洲の教育研究集会」(官民一体の教育講演会,会場は珠洲市立緑丘中学校体育館)の講演会「学ぶよろこび,伸びるよろこび」での講師紹介文です。
当時,石川県教組珠洲支部教育文化部部長だった尾形正宏(本サイト編集者)が担当したものです。

1995.10.05
講師の板倉聖宣さんを,ご紹介をいたします。
板倉先生は,今年の3月末で国立教育研究所を定年退職され,現在は,私立の板倉研究室を設立し,研究を続けておられます。
板倉先生は,いわゆる「博士」です。1958年に東京大学大学院で「物理学の歴史の研究」で学位を得られました。それ以来36年間,国立教育研究所で研究に専念されて来た訳です。
一般に「博士」というと,何か,近寄り難くて,頑固で,書かれた専門書は小難しく,とにかく俺たちには関係ない人,という感じがするのですが,板倉先生の場合は少し違います。ご自身のことを「いたずら博士」とよんで(「いたくら」と「いたずら」は一字違いですから),児童・生徒向きの科学読み物をたくさん書いておられます。また,児童向けに限らず,その著書の多くが,取り扱っている内容からは信じられないほどの平易な文章で書かれており,どの部分をとっても斬新な視点と発見に満ちています。
1930年,東京の下町で,医療器械職人の息子として生まれた板倉さんは,当然のこととして〈ものをつくる人間にならなくては,生きていかれない-と思い込むようになっていた〉と振り返っておられます。「学問のための学問」ではなく〈「生きていくときの知恵として,多くの人びとに直接役立つ仕事」を今までもしてきたし,これからもしていきたい〉と語っておられます。
このような板倉さんの研究領域は,物理学の歴史にはじまり,科学論,認識論,評価論,科学教育史,歴史研究など,個人の仕事としては驚異的な広がりをもっています。
そのなかでも,特筆すべきは,今からおよそ30年前に科学教育改造のために提唱した「仮説実験授業」です。「科学の最も基礎的・基本的な概念や法則を,たのしく学ぶ中で身につける」ことを目指したこの授業は,当初,学習院や成城など,一部の私立校で実践されていたのですが,現在では,公立校でも授業にかける人が増えています。子どもたちは確実にこの授業を歓迎し,科学を好きになっています。
今回のご講演でも,「目からうろこ」のお話しが聞けるものと思います。それでは,板倉先生お願いします。
このわたしの紹介に対しての板倉先生の第一声は次のようなものでした。
板倉でございます。
ただいま,いろいろご紹介いただきましたけれども,ありがたくもあり,迷惑でもあります(笑)。
看板に偽りありということになると大変です(笑)。

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