珠洲たの通信・2026年3月号

2025年度

ここ数ヶ月,サークル通信を書くときに,レポートをPDF化して「ChatGPT」を使ってある程度の枠組みを作ってもらい,それを編集して公開していました。しかし,サークルメンバーには,それがしっかりわかっていたようで,3月の例会には「これは,これまでの文章とは違っていた」「AIを使っていたでしょ」と言われたのでした。そして,「やっぱり,Oさんの個人的な感想――軽重のある紹介の仕方――の方がスッキリくる」とも言われたのでした。
なるほど,わたしが他人様のレポート紹介をすると,レポート全般を取り上げるのではなく,どうしても自分の興味関心に沿った話題を紹介してしまいがちです。あるときには,そのレポートから派生して,わたし自身の主義主張が入ることもあるくらいです。でも,そちらの方が,なんとなくいいというのであれば,そっちに戻した方がいいですよね。
というわけで,今月から,以前に戻ってAIには頼らずに,わたしの〈独断と偏見のレポート紹介〉をしていきます。

今月の参加者  N.T  H.H(久しぶりの参加) S.Mi  O.M

今月の資料

1 「3.11伝承ロードから思うこと」 B5  8ぺ  S.Mi
なんだかしっくりこなかった(卒業式のこと)
2024年の能登半島地震で亡くなった中学生(Gくん)の同級生が,この春,卒業を迎えました。
そこで,卒業式でGくんのことをどのように参加させることができるのか。卒業生を送る教職員の一人として,試行錯誤した内容を報告してくれました。
Gくんのことは,当然,マスコミはほおっておいてはくれません。表現は適切ではないかもしれませんが,報道各局は〈お涙頂戴感万載のNewsを作りたい〉のに違いありません。しかし,一方で,同級生の気持ちも,何より親御さんの気持ちも,どちらも取り入れた卒業式でなくてはなりません。
今回のマスコミは,学校にアポを取る前にGくんの親御さんにまず承諾を取っていたようです。これは順序としていいのだと思いますが,一方で,こうなると学校側が取材拒否をするわけにもいかず,ますます「News映像に流れても大丈夫な線はどのあたりか」ということも探らざるを得なくなります。
そういうわけで,職員と卒業生とで話し合った結果が,
・卒業生入場のとき,同級生がGくんの遺影を手にして入場する。
・Gくんの呼名はする。子どもたちからは「呼名して,全員で返事をする」という案も出たそうですが,返事はやめたそうです。
・Gくんの卒業証書を,全体の前で校長が読み上げて披露する。
・卒業生答辞には,Gくんに話しかけるような――弔辞のような――内容を盛り込む。
というようなものでした。
このようにして行った卒業式でしたが,夕方のNHKテレビ放映を見て,Sさんは「なんだかなあ」と思ったそうです。

メディアが欲しいのは,そういうこと(註:Gくんの保護者が卒業式の前々日に,生徒と先生宛に手紙を渡しに来ていたこともマスコミは知らされていたこと),インタビューを受けている内容も,当たり前だけれど,ウルッとするようなことを聞き出そうとするわけです。分かっているけれど,なんだかなぁと思わずにはいられなかったのです(レポより)。

そして,Sさんは,亡きGくんに向かってつぶやきます。

「なあGくん。これでよかったのか?」

「3.11伝承ロード」南下の旅
卒業式翌日,Sさんは親戚が住む東北へ向かいました。目的は〈親戚に会うこと〉と〈岩手県沿岸部を見ること〉です。
仙台駅でレンタカーを借りて行動開始。
田老地区には「万里の長城」と呼ばれていた高い防潮堤があったのですが,東日本大震災の津波は,それを軽々超えてきて,大きな被害になったのでした。津波遺構を見学している途中,宮古市災害資料伝承館(https://385-densho.jp/index.html)で,田老第一中学校の校歌が書かれたパネルを見つけたそうです。

「宮古市災害資料伝承館」(https://385-densho.jp/index.html)の掲示物より

校歌の3番に「防浪堤を仰ぎみよ」なんて言葉が入っているほど,田老地区の人たちにとって防潮堤は身近なモノであり,津波対策の象徴だったのでしょう。
編集子は,Sさんのレポートを読んでほかの校歌も検索してみました。すると,田老第一小学校の校歌の画像を見つけました。

田老第一小学校の校歌(miyako_city_officialより。田老第一小学校150周年記念イベントの記事)

田老第一小学校を卒業したと思われる方のブログ「防浪堤は壊れても~たろうの海から~」を見つけました。
そのブログのタイトルには,次のような解説がついていました。

防浪堤は壊れても ~たろうの海から~
「防浪提に抱かれて磯の香りも生き生きと」
田老一小校歌の歌い出しです
津波が来ても二重の防浪提が守ってくれると思っていました
津波はその防浪提までも破壊して、ふるさとを壊滅さた
それでも、やっぱり海は麗しいし、川は清い

このあと,Sさんは,釜石,大船渡(ここでは研究会仲間の志田さんに案内してもらったそうです),陸前高田,気仙沼,南三陸とまわり,帰途についたそうです。
「生きた証」プロジェクト
本資料のこの項目は,すべて活字で残しておきたい文章だったのでページを改めて紹介しました。上記2つの項目「なんだかしっくりこなかった」「〈3.11伝承ロード〉南下の旅」のまとめとして読んでみて下さい。レポート中の名前は仮名にしてあります。

2 創作の授業  報告 H.H
まったく久しぶりの参加です。いわゆる管理職が終わり,今年から,気楽な平教員。子どもたちとたのしく授業をしているようすを語ってくれました。
持っている教科も学年もさまざまですが,管理職には失い欠けていた感覚が戻ってきているようで,とても生き生きしていました。
今回の資料は,3年国語の小説家の授業『たから島のぼうけん』で書いた子どもの作品です。光村図書のHPを見るとこの単元は「友達とともに絵地図から想像を広げ,冒険物語を書く」ということにあるそうです。
宝島の絵を見て,物語を創造するなんて,とんでもなく高度なこと。教室のだれもがある程度の物語をつくるのは至難のワザだろうなあと,同情してしまいます。
Hさんは,この難題を,パソコンを駆使しながら行ったそうです。たとえば,
・文章はパソコンで打ち込む。訂正しやすいのはおとなも子どもも同じである。キーボードにも慣れている子どもたちらしい。
・できた文章を「AIに聞いて」添削してもらう。その「AIからの意見」は,10中2~3,受け入れる感じで対応する。

3年生は二人だけ。その二人が,交流しながら,たのしくお話を作っていたそうです。少人数だからこそできることかもしれない,と感じたのはわたしだけでしょうか。これを40人学級でやっている人を見てみたい。ちなみに,単元の配当授業時間は8時間です。
途中から担任を引き受けることになった低学年の「学級通信〈きらり〉」も持ってきてくれました。これまた懐かしい。

3 「たのしい教師生活をはじめようin東京」報告記  note  N.T
2月,東京で行われた表記の会に参加したときの内容の報告です。
最近は,Zoomで行われることも多い「たのしい授業」関連講座ですが,今回は,リアルイベントを初開催。参加者は,第1部・21名,第2部・24名,第3部・15名だったそうです。
提示された内容は,本格的な授業書の話から,AIの利用法まで多岐に渡ったようです。
こうして,若者たちが(も)元気で研究している姿を見られるのはいいなあ。講座を計画する人たちはもちろんのこと,時間とお金をかけても参加しようと能登から出かける人も――ね。

4 「喃々レポ・2026年3月号」 A5  8ぺ  O.M
わたしの最近の読書について,近況をまとめてきました。
というのも,はじめてAudibleを体験しているからです。月1500円のところ,3ヶ月だけ月99円で体験できるそうなので,試しに挑戦してみているのです。聞くのは主に犬の散歩の時間,そして外仕事の時間。
ついでに,Kindle unlimitedも再開しました。こちらは月1000円ほどです。
ほかにもKindle電子本を買うこともあれば,地元の書店から紙の本を購入することもあります。図書館から借りることも多くなった…ということで,わたしの読書環境は多岐に渡っています。それぞれ一長一短あって,どれかに絞ることはできないのですが,それこそ〈費用対効果〉という点で,いろいろと考えています。
もうしばらく,これらのすべてとつきあいながら――月2500円くらい負担しながら――〈時間を有効に使う読書パターン〉を探ってみたいと思っています。
今月紹介した本は以下のとおり。
Audibleで聞いた本
・堂場瞬一著『チーム』『チームⅡ』『チームⅢ』…これは箱根駅伝ファンの娘から教えてもらった本。いつかは読もうと思っていた。結局,図書館からも借りたのは,登場人物の名前の漢字などが知りたかったから。
・吉田修一著『国宝(上・下)』…映画を見て,是非,原作を読みたいと思っていた。作品を読んでいるのがホンモノの歌舞伎役者なので,文中に出てくる台詞は,なんとも言えない臨場感がある。Audibleで聞く意味がある貴重な本。
・宮島未奈著『成瀬は天下を取りにいく』…なんとなく人気があると聞いたので,ちょっと体験してみた。
・浅井リョウ著『生殖記』…浅井くんの小説はけっこう読んでいる。高橋優くんが紹介していたから。自分の中の自分が話をするという内容。
・田淵久美子著『ヘルンとセツ』…「ばけばけ」関連本として聞いてみた。時代小説といえるかな。残念ながら,出雲の話までで終わっていた。せめてハーンが亡くなるまで書いてほしいものだ。
・高村光太郎著『智恵子抄』…Kindleでは無料。詩集も耳から聞くのがいいかもしれない。ただし,本文を見ながら…である。
・夏目漱石著『吾輩は猫である』…家には漱石全集もあるが,これまで何度も挫折してきた。今回,はじめて全文を読みとおす――聞きとおす――ことができたのは,Audibleのお陰である。
Audible以外(紙の本)
・リチャード・ドーキンス著『遺伝子の川』(草思社,1995,238ぺ)
・篠原文雄著『日本酒仙伝』(読売新聞社,1971,293ぺ)
・山中伸弥+益川敏英著『「大発見」の思考法 iPS細胞🆚素粒子』(文春新書,2011,206ぺ)
・ラフカディオ・ハーン著/池田雅之訳『新編 日本の面影』(角川ソフィア文庫)
・小針誠著『アクティブラーニング』(講談社現代新書,2018,268ぺ)
・板倉聖宣・竹内三郎・中一夫著『仮説実験授業の基礎とこれからー2013.11.2-3「板倉さんに聞く会」の記録』(ガリ本,2025,178ぺ)
・応援する会編『模倣と創造の哲学―〈模倣美術の授業〉の研究成果とNEXT STAGE』(ガリ本,2025,127ぺ)
以上の著作についての,わたしのレビューは,わたしのブクログ「世の中まとめて好奇心」で紹介してありますので,興味のある方は,わたしの本棚を訪問してみて下さい。ガリ本というのは,個人やグループが研究会で発行している本で,一般の本屋さんには売っていません。あしからず。
よくもまあこれだけ読めるものだと,我ながら感心する。まさに活字中毒である。文字を読んでいないと精神的に落ち着かない。KindleやAudibleでは味わえない紙の本との深い付き合いが,わたしの中にはあるようだ。

OMが紹介した著書

古本しかないようです

5 日本教育史に見る「アクティブラーニング」 A5  16ぺ  O.M
サークルでは時間がなくて検討できず,配付するだけでした。もったいないな。けっこう時間をかけて作ったのに…。
本レポートは,小橋誠著『アクティブラーニング』(講談社現代新書,2018)を元にまとめた「アクティブラーニングに的を絞って書いた日本教育史を学ぶための問題集」です。しっかりした資料にするためには,他の文献にもあたることが必要ですが,ここは,あくまで〈『アクティブラーニング』の内容の介〉と言うことで堪忍してもらいましょう。

このほかには「小泉八雲年図」(A4版2ぺ,OM)もありました。
さて,翌月から新しい年度がはじまります。教師のたのしみ+やりがいの一つが,この〈年度ごとに精算されること〉にあると思っています。前年度の分掌内容と――いかに楽しんでいようが,苦しんでいようが――とりあえず距離をとり,次に進むことができるという仕事って,なかなかないもんね。   

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