珠洲たの通信・2024年11月号

2024年度

もうすぐ1年になるんですね。早いものです。
わたしの家族は,ほかの被害者に申し訳ないくらい,今ではほとんど昨年と同様の生活をしています。しかし,サッシを開けて外を見ると,今まで家があった場所が空き地になっています。犬の散歩に出るたびに,多くの人たちの大きな生活の変化を感じざるを得ません。
折しもNHK朝ドラ「おむすび」が取り上げているのは,1995年に起きた阪神淡路大震災の被災者のその後…といえるような内容です。地震で肉親を亡くした人たちが,どのような思いを背負って生きてきたのか,生きていくのか。そんなところに焦点を当てているのが最近のこのドラマの内容です(これがずっと続くのかどうかは分かりません)。
わたしたちは,今も震災を体験しているまっただ中です。これから将来にわたり,この震災体験が自分の心にどのような変化をもたらすのか,それは分かりません。でも,どんな〈もの〉が残っていようとも,それをも〈たいせつな自分の一部〉として生きていくしかないのだと思います。
最初に「昨年と同様の生活をしています」と書きましたが,それは住環境だけの話だなと,いま気づきました。
わたしのやるべきことは,震災前に比べててたくさん増えたのでした。

今月の参加者  S.Mi  K.M  O.M

今月の写真

今月の資料

1 「秋だからかな」 B5 2ぺ  S.Mi
 サークルメンバーが所属している学校教育研究会の部会は,図工が多いようです。奇しくも,今回は,その図工部会の話題が二人から出ました(写真上左)。
 今年度の大会は「奥能登大会」と銘打っていてい,珠洲市の学校が会場となっていたので,大会の開催自体がどうなるか…と思っていたようですが,殆どの作業をその珠洲市のメンバーでやったようです。ただ,加賀市からの参加者の要望で,日程が4時頃終了になったそうです(あの上下左右にハンドルを切らなければならい「のと里山海道」を明るいうちに通り抜けたい!)。大会はそれなりの成果はあったのかな。中身そのものの話は,ほんの少しだったので…。
泥の大谷(涙)
 馬緤に住む同級生の一言をきっけかに,豪雨の後の大谷地区(元勤務地)へ行って来たそうです。目にした大量の泥による被害に心が痛むばかり…
「しんと静まりかえった泥の中を歩いていると,心から悲しくなりました。自然は侮れない。」(レポより)
県庁所在地マッキーノ(写真上右)
 4年生の社会科で,マッキーノを実践。これまでは,「都道府県マッキーノ」をしていたのですが,「県庁所在地マッキーノ」というのを作ってやってみているそうです。「(県庁所在地を書き込む)プリント学習中は,少しイヤイヤだった子も,マッキーノになっとたん,大張り切りで都市名を書いています」とSさん。子どもはたのしいことに敏感です。「マッキーノ」のやり方については「たのしい授業」編集委員会編『たのしくドリル・マッキーノ』(仮説社)をご覧ください。
楽しさの欠如
 ズバリ…「今の職員室にいて,自分の立ち位置」がなかなかわかりにくくなっているSさん。初めて担任を離れて過ごした1年。もっと何かできなかったのか,もっと自分もわくわくする体験がしたい…そんなことを思うこのごろだそうです。
 級外という立場は,徹底的に何かをしてきた教員にとっては,なかなか厳しいものがあるでしょうね。

2.「水彩絵の具を適切に使うことを練習しよう」(写真上中) A5  8ぺ  K.M
 きれいなパレットと汚いパレット…パレットはなんのためにあるのだろう…と考えさせられる前書きでした。
 洗わないパレットを友だちから非難された経験をもつ,同僚の先生の次の言葉も,含蓄あります。
小学校の時に本格的に美術やってた先生に、絵の具は全色パレット出す、パレットは絶対洗わない、と習ったので高校で超絶汚いパレットを出して周囲から笑われました。残しておいた色は、水で溶くだけで、画用紙に馴染む良い色になり、新しく色を作る時も、イメージ通りの色が作りやすい。今どきの子は使う色だけパレットに数本出して、色をちょっと足して作る程度だから水彩画すらベタ塗りポスターみたいな絵が多い。(KさんのFacebook記事に対するTさんのコメント)
 なるほど…と考えさせられる経験ですね。
 これを受けての自分の中の実践を振り返り,取り組んでみたそうです。
 水彩画の指導の際に,不透明水彩絵の具とポスターカラーの違いを,実際に塗った絵を提示しながら伝えたそうです。さらに,絵を塗った後のパレットの様子も示しながら…。
 子どもたちが持っている水彩絵の具は「混ぜながら塗るもの」であることを伝えようという工夫が随所に見られました。
 このレポートを「ものづくり・図工」カテゴリーに紹介しておきましたので,絵の具の指導法について興味のある方はご覧ください。

3.「ダンボールとわたし」  A5 4p  K.M
 日記風に,能登半島地震発災以降約3週間の自分の避難生活についてまとめてきてくれました。
 そういえば,Kさんの発災後の避難生活をしっかり聞いたことはありませんでした。Sさん,Wさん,Nさんのお話は,Zoomでもよく聞いていたんですがね。
 Kさんの場合は,奥様が福祉施設の責任者でもあったので,自分たちだけ避難すれば…という世界ではなく,わたしたちとは違う苦労もあったようです。
 こんな素敵な表現もあって,心ぽかぽかです。元旦の夜,車中泊でのこと。
ガソリンの確保は重大命題ながら…中略…10分間エンジンをかけ…中略…ヒーターの温風が出ていても,なおガタガタ震えるわたしの手を家内が握ってくれた。すると不思議と震えが止まったことを経験した。この人に,わたしは一生アタマがアガラないなぁ…と思う。(レポ,1ペ~2ぺ)
還暦近くの夫婦の素敵な姿ですね。
 この文章も,どこかに残しておきたいなあ。
 Kさんが退職したら,実名,実在校で,このsiteにアップするかな。 

4.「喃々レポ・2024年11月号」 A5 8ぺ  O.M
 ここんところ月の半分くらいは「その日の予定」が入っているような感じです。それも丸一日というのはまれで,ほとんどが半日(2時間~3時間)。退職してからやることがないのも寂しいけど,あまり忙しすぎるのも…。
復興支援ガイドツアー
 「リブート珠洲」という団体(といっても,今のところ2名)が行っている「被災地をめぐるツアー」の語り部として参加しました。わたしの立場は「民生委員」として,です。そのときの感想をまとめました。
 こうして復旧途上(というか,まだ解体を進めているだけ)の珠洲市を見てもらうことで,ツアー参加者が学ぶことはいっぱいあると思います。「自分の家も耐震しよう」「自分の地区に同じようなことが起きたら民生委員としてどう動けるか」などと,いろいろと考えてもらえればいいなと思います。
 「リブート珠洲」はいち早くツアーを計画・実施し,すでに500名以上の方がツアーに参加しました。中にはリピートもいるようです。2度目,3度目と違った形のツアーを組織できれば,これからの復興にもプラスになってくれるにちがいありません。
 わたしは,11月の下旬にも,もう一度,同じような語り部をしました。2度目は,見付海岸~鵜島の旧国道を通りながらバスの中から解説をさせてもらいました。
 今後も希望があれば参加していきたいと思っています。
挨拶はがき
 発災(9月の豪雨含)以来,心配をかけてきた知人・友人へ,近況を伝えるはがきを1枚書いて送付しました。「家族は無事であること」「自宅に住めていること」などのお知らせです。いまのところ,年賀状は出すつもりはありません。もちろん,受けることは大歓迎。「おめでとうございます」と書いてあっても大丈夫。だって,生きていられたのだから,めでたいもの…。
ご縁サロン
 門徒総代としての仕事というか,対応ですね。大学生の泥だしボランティアなども含め,数々の本願寺関係のボランティアとの対応もわたしの仕事です。タイトルの「ご縁サロン」というのは,「お寺の本堂で,お茶を飲みながら,お菓子をつまみながら,久しぶりに会話をしよう」というだけのものですが,ボランティアさんたちが驚くほど集まってくださいました。これも第2回目が終わりましたが,やはり,1回目同様,25人以上の門徒さんやご近所の方が集まってくださいました。
 特に仮設住宅で一人で住んでいる方々には,貴重な「世間話のできる場」だと思います。来年は,3月に計画しました。
戦後日本住民運動資料集成
 表題のような「資料集」の一つに「珠洲原発反対運動」も取り上げられることになりました。今夏以来,わたしの持っている珠洲原発関係資料などを金沢大学の先生に譲渡したりしていたのですが,どうも,この資料集成のためのものだったらしいです。で,まえがきというか「解題」を書いてもらえないかと,わたしのところに連絡が来ました。もっと適任がいると,何度か断ったのですが,回り回って,結局はわたしに…。来年1月いっぱいの宿題です。
中一夫さんの本の感想
 中一夫さんが書かれた著作『日本の戦争を始めた人々』の感想です。『増補改訂版:日本の戦争を終わらせた人々』とともに,感想をわたしのブクログにも書いておきましたので,興味がある方はご覧ください。本書は,仮説社から注文できます。 

今月の話題本・参考図書

たのしくドリル マッキーノ
仮説社ONLIN ESHOP へ
仮説社ONLIN ESHOP へ
すいれん舎「戦後日本住民運動資料集成」へ

退職して以来,わたしのレポートには,直接,教育・授業に関することは殆ど触れなくりました。こんなんで,「たのしい授業の会」のレポートとして成り立っているのかどうか…。どうせみんないつかは退職するのですから,そのときの参考にしてもらえばいいのですが,そのときは,今とは違う世界が待っているでしょうしね。
20代~30代の若者にとっては,もっと授業に直結した話の方が貴重ですよね。せっかく大切な時間を使って参加しているのだから…でも,わたしは,今の自分ができることしかできないんだから…。

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