夏休みに入る前から暑い日が続いていてたいへんな夏でしたね。
7月になっても,復興の声はなかなか聞こえてこず。その代わりに,公費解体をするユンボの音や,仮設住宅を建てるための槌の音などが聞こえてきます。近所の人たちもいつになったら仮設に入れるのでしょうかね。
さて,7月の例会も,松波公民館の和室で行いました。先月,やや壊れていたエアコンも直っていて,涼しい中でのサークルでした。一方,地震前まで会場にしていた宝立公民館は,まだ水も来ず,下水も回復していません。津波被害や住宅の倒壊被害が今回の地震で一番大きかった地域だけに,復旧にはまだまだ時間がかかりそうです。
7月末には仮説実験授業研究会の合宿研究会が開催されます。そこで学んだことを,9月の例会でお話してくださいね。わたしは,お寺の用事で研究会には参加できませんが,そのお寺で学んだことをちゃんとまとめておきたいと思っています。
今月の参加者 村西正良さんと奥様(金沢より) N.T N.R W.T S.Mi K.M O.M
今月の資料
1.「暑すぎる夏に思うこと」 B5 4ぺ S.M
毎朝「暑いね」という言葉が「おはようございます」の代わりになっているこの夏。Sさんのレポートのタイトルも,その呪縛からは逃れなかったようです。
中学校に間借りして授業をしてきたこの1学期。「寒かった被災当時,こんなことは予想できなかったことですね」と言うくらい,臨時教室の冷房の力は弱いようです。かわいそうなのは子どもたち。はやくこいこい夏休み…ですね。
できあがっていく仮設校舎
運動場に仮設校舎ができあがっていく様子を連続写真で収めて紹介してくれたSさん。それを見た6年生曰く…「なんのために,そんなことしとるん? どうせ削除するくせに…」だって。鋭い指摘ですが,とりあえず,こうしてサークルに紹介しただけでも撮影した意味はあるというものです。建設現場である運動場からは,作業員を叱責する「早くしろ!」という怒号も聞こえてくるとか。教育現場には,あまりふさわしくありませんね。
途切れないお客様たち
一方,普段なら絶対に学校現場に来ないような人たちの慰問・訪問も続いているようです。そのたびに,授業を削って子どもたちを集め…という仕事に追われる現場の教師たち。慰問に来る人たちは被災した子どもたちへの応援に来ているつもりなんだろうけれども,現場としては「そろそろそっとしておいておくれ」と言いたくもなる。
ただ2学期には,オリエンタルランドから来るかも…という噂もあるらしいですが,こちらは喜んで受け入れるのかな。
夏の大会に向けて
夏の大会に向けて資料づくりをしているSさん。もちろん,地震体験をまとめて行くつもりなのですが,どんなことをどれくらい書いていけばいいのか,迷っている様子。リアルタイムな話はすでに話したし…しかし,Zoomに参加していない人たちもいるんだし…。結果,どんな風にまとめたのか,9月の例会に持ってきてくださいね。
通知表の話題
通知表の評価の話題。どの学校でも,観点別評価の取り扱いには不思議な理屈があって,それがまるで真理であるかのように〈ぜったいに守るべきこと〉として職員室を席巻しているようです。でも,一歩ちがう学校へ行けば,そんなこだわりが何の意味もないこととして扱われていることもある。
こんなことにいちいち対応するのは面倒なのですが,Sさんはしっかりと食いつきます。そして,結局,「保護者にちゃんと説明ができるように」という条件付きで緩くなったんですって。考えてみれば,そもそも,どんな評価をつけようが「保護者にちゃんと説明ができないと困る」でしょうが。だから,ほとんどは担任任せでいいんですよ。その方が,担任の力がつくというものです。
はじめて担任を持たない立場になり,通知表渡しの日にも来なくてもいいと言われて,うれしくもさびしいSさん。
ここまで話をして,京都に勤めていたMさんからは「そもそも,なぜ通知表を子どもではなくて親に渡すのか」というもっと核心に迫る質問もありました。仕事を休ませてまで保護者に学校へ足を運ばせる学校側の意図はどこにあるんでしょうかねえ。そのくせ,3学期はそのまま子どもに渡すのに。
2.「クレヨンでじぶんのかおをかく」のとりくみ24 A5 8ぺ K.M
2校を掛け持ちしているKさん。今月は,1年生と2年生と取り組んだ「クレヨンで自分の顔を描く」という実践記録を持ってきてくれました。
いつもどおり,自分で実際に書いてみたものを,一行程ごとに写真を撮ってプレゼンを作り,授業ではその画像を見せながら,ときには目の前で実演しながら(Kさんはこれを「ライブ」と呼ぶ),順を踏んで教えていったそうです。
今回の実践は,以下のネット記事や先行実践を参考に行いました。
・ふき子ばあばの図画工作指導知恵袋
・ヒゴログ
・大家志夫先生のO小1年生に指導されていた手順
自分の描いた絵を見た子どもたちの感想があればよかったと思いました。
3.アサギマダラとみさき A4 1ぺ N.T
本レポートは,市の理科研究会に提出するつもりのものです。
ところで,アサギマダラってご存じですか?
知っている人は知っている「渡りをする蝶」です。知らない人は知らない。当たり前。
この蝶の卵から孵化,さなぎ,羽化の様子を子どもたちと観察したというレポートです。
アサギマダラが卵を産むのはある決まった植物の葉っぱであり,幼虫が食べるのもその葉です。アサギマダラの食草のひとつであるオオカモメヅルや卵などを,アサギマダラに詳しい先生に準備してもらっての実践です。
この実践を成り立たせているのは,Nさんの好奇心と,これまでの人間関係を大切にする心と,子どもたちと一緒に観察したいという強い思いです。決して「教科書に載っているから」というものではありません。
結果として,卵から孵化した10匹の内,さなぎになったのが7匹,羽化したのはたったの1匹だったそうです。他はヤドリバエにやられてしまったそうです。悲しいけれど,これも大切な生き物の学習です。
成虫になったアサギマダラをじっくり観察してみると,なんと足が4本しかないことに気づいた子どもたち。どうしてなのかもちゃんと調べて一安心。
教科書に載っているモンシロチョウは身近で飼いやすいこともあるのですが,こうして,自分の地域に飛んでくる変わり者の蝶について調べることも,また,大切なことですね。
4.「喃々レポ・2024年7月号」 A5 4ぺ O.M
植物2題
まず,植物の話題を二つ。二つとも,S先輩が自宅玄関まで持ってきてくれた情報です。
一つは「ムジナモ」について。ムジナモというのは,牧野富太郎が日本で見つけて名前をつけた植物です。わたしがムジナモを知ったのは,牧野富太郎を描いたNHK朝ドラ「まんてん」で紹介されていたからです。みなさんも知っているのかなと思っていましたが,あまり認知度はありませんでした。朝ドラ見るほど暇ではないですね。
環境省のレッドリストでは絶滅危惧IA類 (CR)に指定されている貴重な植物です。それが,珠洲市のため池で見つかったというのです。S先生は,そのときの新聞記事を持ってきてくれたので,わたしもそれをコピーしてきました。
今,Wikipediaで「ムジナモ」を確認したら,その項目説明の中に珠洲市でムジナモが発見されたことが付け加えられていました。概ね新聞記事の内容が含まれています。
日本でも1890年に牧野富太郎により江戸川近くで発見されたが、1960年代後半までに野生個体群は消失したとされていた。2022年10月に石川県の農業用ため池で発見された個体群が、遺伝子解析などの結果、人為的な持ち込みでなく自然で生き残っていたものと確認された。この池では従来ムジナモは見られなかったものの、水生植物は休眠していた種子が生息地の環境変化で発芽することがあり、周辺にある森林の間伐で日射が増えたことが発芽を促した可能性が指摘されている。(Wikipediaより,下線は引用者)
わたしは退職以来,珠洲市内のため池などで,小学校の生き物観察会や珠洲市のため池調査を行ってきました。その際,「タヌキモ」と呼ばれる食虫植物なら,何カ所かのため池で見つけたことがあります(持って帰ってきて顕微鏡観察もしました)。今後,この「珠洲市でムジナモ発見!」という情報がどのような扱い方をされるのか,朱鷺の放鳥とともにたのしみな話題です。
もうひとつの植物は「タラヨウ」という木です。この木の葉っぱには,文字を書くことができます。むかしは,木の葉をハガキ(葉書)代わりに利用していたとか。実際に楊枝を使って文字を書いてみましたが,文字がクッキリと残りました。しかし,この葉っぱも,さすがに10日ほどすると全体が黒くなってきて,文字もだんだんとわかりにくくなりました。
本の紹介
東日本大震災の後で読んだレベッカ・ソルニット著『災害ユートピアーなぜそのとき特別な共同体が立ち上がるのか』(亜紀書房,2010)という本を,今回,再読し,その感想を紹介しました。
正月に発生した能登半島地震のあと,自主避難所で生活を続ける中で,わたしが目にした住民の姿は,本書の実例にあるように,人々がものを分け合う姿,お互いを助け合う姿でした。避難者がいろんな役割を分担し,新しい問題が出てきたら意見を出し合い,その解決に向かっていく。誰も彼も,自分が動ける範囲で動き,共同生活を送ってきました。それが,大災害において自然発生的に生まれる「災害ユートピア」であったことに,今更ながら,感心します。
そして,このようなユートピアが,なぜ,普段の社会で行われないのか,逆にそちらの方が気になってきます。
レポートでは紹介しなかった本書の部分を紹介します。
災害の歴史は,わたしたちの大多数が,生きる目的や意味だけでなく,人とのつながりを切実に求める社会的な動物であることを教えてくれる。そして,それはまた,もしわたしたちがそのような社会的な動物ならば,ほぼすべての場所で営まれている日常生活は一種の災難であり,それを妨害するものこそが,わたしたちに変わるチャンスを与えてくれることを示唆している。災害は普段わたしたちを閉じ込めている塀の裂け目のようなもので,そこから洪水のように流れ込んでくるものは,とてつもなく破壊的,もしくは創造的だ。ヒエラルキーや公的機関はこのような状況に対処するには力不足で,危機において失敗するのはたいていこれらだ。反対に,成功するのは市民社会のほうで,人々は利他主義や相互扶助を感情的に表現するだけでなく,挑戦を受けて立ち,創造性や機知を駆使する。この数え切れないほど多くの決断をする数え切れないほど大勢の人々の分散した力のみが,大災害には適している。(下線は引用者,本書「エピローグ 廃墟の中の通り道」,427ぺ)
5.1月2日必着のカールの話 話し手 K.M
お正月に家族で頂こうと,「1月2日必着」にして「カールを1箱」注文しておいたKさん。
しかし,ご存じの通り,元日に発生した能登半島地震により,流通も長い間ストップしてしまった。当然,お菓子は1月2日に着くはずもなく…
それが,ついこの前,忘れた頃に宅配便で届いたという。
このカールの箱は今までどこにあったのか。なぜ今頃届いたのか。何もかも謎のまま,いろんな味のカールを分け合って,おうちで食べたサークルメンバーなのであった。
めでたしめでたし。
授業プラン〈「見える」をさぐる〉体験 授業者 村西正良さん
今月は,金沢市在住の村西正良さんが来てくださり,授業プラン〈「見える」をさぐる〉を体験させてくださいました。
このプラン,なかなか楽しかったです。
これまで断片的になら見たことのある「だまし絵」「錯覚図形」などを,順序よく示してくれることで,プランの題名通り「見える」ということは,どんな状態のことなのか,本当のことってなんだろうか…なんてことまでも考えてしまいました。
ただし,プランで紹介した絵などは,個人的な「見え方」を扱っているので,みんなと同じように見えない人もいるようです。特に,まだ2年生のRちゃんには,大人が見えているようには見えなかったものもありました。それもまた,大人であるわたしたちには興味深いことでもありました。
プラン体験の感想
S.Mさん
5 とても楽しかった
一つ一つの話や実験は、知っているものが多かったのですが、それがおもしろいように繋がっていくワクワク感満載の体験でした。
錯視の本も買いまくって、教室に置いたことがありましたが、こうやって教えてあげていたら、もっと楽しめたんだろうなぁとも思いました。
あの日のうちに、ドラゴンは全部切り取りました。2学期、6年生の図工でやってみようと思います。ものの見え方だから、図工にピッタリですからね(笑)
村西さん、楽しい体験講座ありがとうございました。
フワちゃんのGoogleピクセルの消しゴムの謎、、、どうやって消すんだろうが少し分かった気分にもなれて、それも収穫でした。
K.Mさん
5 とても楽しかった
久しぶりに「センス オブ ワンダ」を体験させていただきました。目からウロコがハガれるのか、目にウロコがとびこんだのか…。大変、興味深い体験でした。帰宅して家内にすぐシカケてみたくらいです。ありがとうございました。
W.Tさん
5 とても楽しかった
自分で体験できるのが楽しいです。
どう見ても色が違って見えるのに、実際は同じ色なんてびっくりしました。
見えるというか、見えているものは不確かなんだなってことと、生きていくために見えていないところを補うようにした脳の凄さに感動です。人間だけでなく、他の動物たちはどう見えているのかもっと知りたくなりました。
「見える」ことから、興味がもっと広がっていく素晴らしいプランでした。
N.Tさん
5 とても楽しかった
知っているつもりの錯覚でしたが、予想と実験を繰り返しやることで、より理解が深まりました。錯覚とわかっていてもそう見えてしまう。人間の目って本当不思議だと思いました。都合のいいように補完することがわかり、人間の心も同じように錯覚するのだろうなと思いました。
娘を見ていると、経験則により錯覚が生まれることもよくわかりました。
お土産もたくさんもらえて嬉しかったです。サイエンスクラブなどでやってみたいと思いました。
O.M
5 とても楽しかった
このプラン。多分,全国大会かサイエンスシアターかどこかで受けているはずだ。
村西さんが最後に見せてくれた「天地が逆転するめがね?」も,売り場かどこかで見たことがあるし,様々な錯覚画もみたことがある。
それでも,こうして実験結果に驚きながら「見える」「見えない」「勝手に見ているつもり」ということを体験していくと,人間の脳のいい加減さ=素晴らしさに感動してしまう。
このプランは「わくわく科学教室」でも使えそうだ。今回,授業ノートや,授業で利用する資料,プリント類もたくさん頂いたので,すぐにでも授業ができそうだ。
今年の冬は,このプランでいこうかな。
というわけで,今月のサークルも盛りだくさんの内容でした。
サークルの後,村西夫妻と一緒に,宝立町鵜飼地区~春日野地区の地震被害の状況を見てきました。
そのすぐあとで,村西さんから頂いたLINEの書き込みを紹介して,今月の「珠洲たの通信」の締めくくりとします。
珠洲サークルのみなさん、今日はありがとうございました。サークル終了後、鵜飼地区を案内してもらって,復興が進んでいない様子を見てきました。尾形さんと別れた後、少し戻って、珠洲サークルが開かれていた宝立公民館を見たあと、帰途につきました。いま、柳田の8番ラーメンです。エネルギーを補充し終わったので,これから金沢に向かいます。(村西さんより)
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