「生きた証」プロジェクト

レポート綴

菅原美律子
2026/03/21

 今回の東北の被災地を巡る中で, 自分の中のモヤモヤがすっきりしたことがあります。そこは書き残したいです。
 それは,前述したGくんのことです。ご家族が取った行動,特にメディアへの露出が気になって, 嫌だなあとモヤモヤしていたのです。
 ところが,3月15日に立ち寄った大槌町の「大槌町文化センターおしゃっち」の2階の東日本大震災の資料館で出会った本が私の考えをすっきりとさせてくれました。
 その本のタイトルは『生きた証』というものです。かなり分厚かったのですが,本を開いて目を見張りました。それは見開きページに, 震災の被害で亡くなった方の生き様というか,まさに生きた証が書かれていたのです。生年月日はもちろんのこと,その経歴, そしてその最期だと思われる状況とご遺体が発見された場所までが, 町内ごとにまとめられたものでした。以下に大槌町のHPから転載します。

「東日本大震災犠牲者回顧録 「生きた証」の刊行について (増刷しました。)
2021年3月11日東日本大震災津波で犠牲になられた人々の生前の歩みや,大切な人に寄せるご遺族の思いを綴り,災害の教訓と反省を後世に語り継ぐことを目的に,生きた証プロジェクト事業により,東日本大震災犠牲者回顧録「生きた証」が刊行されました。
東日本大震災津波犠牲者回顧録「生きた証」(平成28年度版)
(1)掲載者数  545名
(2)掲載対象  平成26年度 ・平成27年度に聞き取りしたもの
(3)発行日   平成29年3月11日 (編集委員:生きた証プロジェクト実行委員会)
(4)発行部数  1,000部 (ご遺族配布及び一般販売)
(5)価格    税込2,000円 (送料は購入希望者の負担となります。)
https://www.town.otsuchi.iwate.jp/gyosei/docs/374744.html,参照 2026年3月21日)

 なんの予想でもできない中で,家族を失った悲しみ,最愛の人を失った苦しみなどをどう自分の中で受けれていくのか,受け入れることができるのか…。それは当事者でしか分からないのです。そして突然いなくなった人は,ちゃんと生きていたんだということを,その数ページを読んで,その証を残したいという思いが伝わってきたのです。こんなことを思っていること自体が,,ご遺族の方からしたら,傲慢でしかないとも思ったのですが,その時にGくんのお母さんも同じ思いだったのはないかと思い至ったのです。
 Gくんのお母さんが書かれた手紙の一文に「卒業式の中で,Gの名前が呼ばれること,それは人前でGの名前が大きな声で呼ばれる最後だと思う」と。まさにこれなんですよね。この後,残念ながら彼のことは記憶が増えることはないわけです。でもGくんは生きていたんだし,確かにみんなと一緒にいたんだという「証」として記録して記憶したいんじゃないかと。だから,すべての取材を受けてきたし,それを目にするたびに涙を流してきたのであろうと。それがGくんがいたということを確かめることになるのだから。
 ただ手紙を渡しに来られたときに,泣きじゃくるお母さんに,
「式に参列されますか?」
と聞くと,
「そうしたいけれど,返事をしないGを受け入れる自信がない。」
と途切れ途切れに話されました だから私は,
「分かりました。」
とだけ答えました。
 今回の東北の「3.11伝承ロード」の旅は,私にいろいろなことを教えてくれた旅になりました。去年の夏に,生きている父に会いに来てくれた叔母二人が,何度か私に言いました。
「みっちゃんが,お仕事辞めたら,気仙沼に住んでくれないかなと二人でよく話すんだよ。」
って。15歳で故郷を離れた兄の〈生きた証〉が,叔母たちにとっては私なんだろうなと思いました。

菅原美律子「3.11伝承ロードから思うこと」(2026年3月サークル資料)より抜粋

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